筆者はデンマークを数回訪れたことがありました。
デンマークを訪れると、多くの旅行者が驚く点の一つに「コンビニエンスストアがほとんど見つからない」ということがあります。
日本や他のアジア諸国、そしてアメリカなどでは、街の至る所にコンビニがありますが、デンマークではその存在が非常に稀です。
では、なぜデンマークにはコンビニが少ないのでしょうか?
デンマークの経済の背景
デンマークの人々の経済状態は、世界的に見ても非常に安定しており、高い生活水準を誇っています。
デンマークは、北欧諸国の一つであり、社会福祉制度が非常に充実していることで知られています。
高い所得水準
デンマークは、平均所得が高く、国民一人当たりのGDPも非常に高い国です。多くのデンマーク人が安定した仕事を持ち、高い賃金を得ています。また、労働市場は柔軟であり、働く人々にとっても雇用機会が豊富にあります。これにより、経済的な安定が保たれています。
社会福祉制度の充実
デンマークでは、医療、教育、年金など、さまざまな社会福祉制度が非常に整っています。これにより、失業や病気など、人生の予期せぬ出来事が起こっても、国民は十分なサポートを受けることができます。これが経済的な安定感を支えている大きな要因です。
税制と再分配政策
デンマークでは、所得税や消費税が高い一方で、税収を元にした再分配政策が充実しています。高い税率にもかかわらず、公共サービスが充実しており、教育や医療が基本的に無料で提供されるため、全体としての経済的な負担は軽減されています。このような制度により、所得格差が小さく、社会全体での経済的安定が図られています。
持続可能な経済成長
デンマークは、再生可能エネルギーやグリーンテクノロジーの分野で先進的な取り組みを行っており、持続可能な経済成長を目指しています。これにより、環境保護と経済成長の両立が図られ、長期的な経済的安定を実現しています。
生活の質
デンマークの人々は、物質的な豊かさだけでなく、生活の質を非常に重視します。労働時間が短く、ワークライフバランスが整っているため、家族や友人との時間を大切にすることができます。このようなライフスタイルが、全体としての満足度の高い社会を作り出しています。
デンマークの食文化と歴史的背景
素材重視の食文化
デンマーク料理の特徴は、新鮮な地元の食材を重視する点にあります。海に囲まれた地理的条件から、魚介類、特にニシンやサケなどが食卓に頻繁に登場します。また、豚肉や乳製品、ライ麦なども豊富に使われ、これらの食材を中心にシンプルで栄養価の高い料理が作られます。
スモーブロー (Smørrebrød)
デンマーク料理の象徴的な一品として知られるのが「スモーブロー」です。ライ麦パンの上に、魚介類、肉、チーズ、野菜などを乗せて食べるオープンサンドイッチです。見た目も華やかで、ランチとして親しまれています。スモーブローは、19世紀に労働者階級の簡単な食事として広まり、次第にデンマークの食文化の一部となりました。
保存食の文化
デンマークの気候は寒冷で、冬が長いため、保存食の文化が発達しました。漬け物、燻製、塩漬けなどの保存技術が古くから使われ、これらの技術は現代の料理にも受け継がれています。特に、ニシンのマリネや燻製魚、ソーセージなどが伝統的な保存食の代表です。
ニューノルディックキュイジーヌ
近年、デンマークを中心に広がった「ニューノルディックキュイジーヌ」は、伝統的な北欧の食材を現代的に再解釈した料理スタイルです。この動きは、2000年代初頭に始まり、地元の季節食材を使用し、持続可能性を重視することが特徴です。世界的に有名なレストラン「ノーマ」などがこの運動をリードし、デンマークの食文化が国際的に注目を集めるきっかけとなりました。
ヒュッゲと食事
デンマークの「ヒュッゲ(Hygge)」文化も、食事と深く結びついています。ヒュッゲとは、家族や友人と一緒に過ごす温かく居心地の良い時間を指し、その中で楽しむ食事が重要な役割を果たします。温かいスープや焼きたてのパン、デザートなどが、ヒュッゲの象徴的な食事として親しまれています。
デンマークの人々の消費生活スタイル
小規模の専門店が主流
デンマークでは、日常的な買い物はコンビニではなく、地域に密着した小規模の専門店やスーパーマーケットで行われることが一般的です。パン屋、肉屋、チーズショップ、そして果物や野菜を扱うグローサリーなど、各ジャンルに特化した店が点在しており、これらの店で必要なものを購入するのがデンマークの暮らしの一部です。
スーパーマーケットの普及
デンマークでは、スーパーマーケットが主要な買い物スポットとして利用されています。大型のスーパーマーケットには、食品や日用品、さらには衣料品や家庭用品まで幅広く揃っています。そのため、コンビニのような小型店が必要とされる機会が少ないのです。
生活のリズムと購買習慣
デンマークの多くの人々は、週に一度または二度の大きな買い物を行い、必要な物をまとめて購入する習慣があります。日々の少量の買い物が主流である日本と異なり、デンマークでは時間をかけて一度に多くの物を購入し、残りの時間をリラックスした生活に充てることが一般的です。
インターネットショッピングの利用
デンマークでは、インターネットショッピングも非常に普及しています。日用品から食品、さらには家具まで、オンラインで簡単に注文することができ、指定した時間に自宅まで配達してもらうことが可能です。これもコンビニのような24時間営業の店舗が少ない理由の一つかもしれません。
デンマークのコンビニ文化
もちろん、デンマークにもコンビニエンスストアは存在しますが、その数は限られており、日本のように至る所で見つけることはできません。多くのコンビニは、ガソリンスタンドに併設されているケースが多く、食品や飲み物、基本的な日用品を販売していますが、品揃えは限られています。
加えて、デンマークの社会福祉制度が充実しており、基本的な生活必需品を入手するために、急を要する買い物の機会が少ないことも影響しています。これらの要因が組み合わさり、デンマークではコンビニがあまり普及していないのです。
デンマーク名物「デニッシュ”Danish”」
筆者がデンマーク滞在中、コンビニが少ないので「スナック菓子」を買うことも困難でした。
しかし、お昼やおやつの時間に頻繁に目にしたのが「デニッシュ」でした。
普段質素な食生活をしているデンマーク人は、この「デニッシュ」が大好きだったのです。
デンマークで「デニッシュ」という甘いお菓子が広く食べられる理由は、デンマークの菓子文化と歴史的な背景に由来しています。
「デニッシュ」とは、日本でもよく知られているデニッシュペストリーのことで、デンマーク語では「Wienerbrød(ウィーンのパン)」と呼ばれています。
このお菓子がデンマークで広く食べられるようになった理由には、いくつかの要因があります。
歴史的なルーツ
デニッシュペストリーの起源は、19世紀のウィーンに遡ります。デンマークのパン職人たちは、ウィーンで発達した層になったバター生地を使ったペストリーの技術を学び、それをデンマークに持ち帰りました。これが「Wienerbrød」としてデンマークで広まり、独自の発展を遂げました。バターの豊かな風味とサクサクとした食感が特徴で、これがデンマークの人々の味覚に合い、広く受け入れられるようになりました。
日常の楽しみとしてのデニッシュ
デンマークでは、コーヒーや紅茶と一緒にペストリーを楽しむ習慣が根付いています。特に「ヒュッゲ(Hygge)」という家族や友人と過ごす居心地の良い時間を大切にする文化の一環として、デニッシュペストリーが食べられています。甘いお菓子は、日常の小さな楽しみや、特別な時間を演出するためのアイテムとして親しまれています。
デンマークのベーカリー文化
デンマークにはパン屋や菓子店が多く、地元のベーカリーで毎朝焼きたてのペストリーを買うことが一般的です。これらのペストリーの中でも、デニッシュは特に人気があります。地元の材料を使ったバリエーション豊かなデニッシュがあり、その種類も豊富で、季節ごとの特別なペストリーもあります。
伝統行事とデニッシュ
デンマークでは、クリスマスやイースターなどの伝統的な行事に合わせて特別なデニッシュペストリーが作られます。これらの行事では、家族や友人と一緒に甘いペストリーを楽しむことが習慣となっており、これがデンマークの食文化の一部として定着しています。
まとめ
税金が高いデンマークの人々の生活は、とても質素です。
しかし、時間に追われ、食事の時間や家族との時間を削り、働きまくる日本人とは違い、「ヒュッゲ(Hygge)」という家族や友人との時間を大切にする文化が、コンビニがなくても十分に生活が成り立つことを証明していました。
デンマーク、また是非訪れたい国です。