シンガポールと聞いたら、皆さん何を想像しますか?マーライオン? 高層ビルで働く世界のエリート集団? 船のようなホテルがある、マリーナベイサンズ?世界でもトップクラスの先進国と言われているシンガポールですが、シンガポール共和国として独立してから、まだ56年問という若い国なのです!
さて、この若い国が、どうしてこんな短期間で世界のトップレベルにのし上がったのでしょうか?シンガポールに住んでいたことがある筆者が、皆さんの知らないシンガポールの部分にも触れつつ、シンガポールをここまで大きくしたといわれている独特の教育環境と、英語教育に迫ってみたいと思います!!!
英語を第二外国語として学習する国々の教育法 ~シンガポール~
国名
国名はサンスクリット語で「獅子」を意味する「シンハ」と、街を意味する「プーラ」から来ていて、「獅子の街」を意味しています。通称はSingapore (英語:Republic of Singapore)
シンガポールの歴史
14世紀までは、シンガポールは名もない瘦せた土地で、海賊などが済んでいたといわれます。シンガプーラと呼ばれていたこの土地に、イギリス東インド会社の書記トーマス・スタンフォード・ラッフルズがシンガプーラに新たな港を作り、名称も英語で読みやすいように「シンガポール」としたのが現在の国名の由来です。以後、ラッフルズの「無関税の自由港」の政策により、東南アジア。インドや中国の人々がシンガポールに移住をし、人口がどんどん増えていきました。
シンガポールが都市国家になった政策とは?
1.急速な経済の発展
シンガポールは近隣の東南アジア各国へのアクセスの良さ・無関税の自由港という理由から、国際的な金融や貿易市場で目覚ましい発展を遂げます。1965年に独立して以来、30年間の間平均10%の年間経済成長率を達しています。
2.観光地としての発展
経済的に大きな発展をしたシンガポールは、常に観光としての開発を進めています。有名なところではセントーサ島、マリーナベイサンズホテルなどの巨大でユニークなランドマークを作り、カジノなどを設置して外資系の巨額な資本を入れ、次々に観光都市としての発展と成功を収めています。
3.4つの公用語の指定
独立したシンガポールは、周辺の国々から移住してくる人々の市民権を認め、市民の大部分を占める中国、マレー、インドのコミュニティを代表する中国語、マレー語、タミル語、そして英語を公用語に指定をしました。
シンガポールの教育
PSLE (Primary School Leaving Examination)
シンガポールの義務教育は6歳~12歳までの小学校(primaryプライマリー)のみになります。primaryを卒業するにあたり、卒業試験PSLE(Primary School Leaving Examination)が実施されます。
このPSLEの結果によって、Secondary(セカンダリースクール)と呼ばれる中学校(4~5年間)に振り分けられるのですが、ここでその子供の人生が決まる、と言ってもいいような特別なシステムになっています。
PSLEの成績で
- Express・・・スペシャル
- Normal (Academic)・・・学術
- Normal (Technical)・・・技術
の3つのコースに原則振り分けられます。
この制度はストリーミング制と呼ばれていて、日本でいう中学入学の時点で進路が決まるというものです。
この3つに振り分けられたのち、Post Secondary School (ポストセカンダリースクール)という大学進学コース、ポリテクニック(技術専門学校)、職業訓練専門学校へ進むことになります。
Expressコース
学業優秀な生徒が大学進学を目指し、通常4年間通う学力重視の学校で、シンガポールの約65%がこちらへ進みます。卒業前にGCE-Oレベル試験という、日本でいうセンター試験のようなものを受け次の進路が決まります。
Normal(Academic)コース
このコースの生徒は、成績が平均的な生徒が通うコースで、約20%が進学します。こちらは卒業するのにGCE-Nレベルの試験があり、大学に通いたい場合は、さらにもう1年通ってGCE-Oレベルの試験を受けることもあります。なんだか予備校みたいな感じでしょうか?
Noemal(Technical)のコース
勉強があまり得意でない子供が通うコースで、全体の15%に当たります。こちらのコースも卒業試験でGCE-Nレベルの試験を受けますが、大学に進むことはできませんし、ほとんどが上の学校に進学することが出来ないようです。それぞれに進学時に試験があり、成績が悪かったら留年が決定します。
このように複雑なシンガポールの教育制度なのですが、大学を目指し、良い仕事に就く、つまり「高い給料を取る」というのが一貫した国民の夢で、公務員、とりわけ官僚クラスになるとシンガポールのトップクラスで年収1億くらいになると言います。
ですから、シンガポールの成績優秀な子どもたち、そしてその親たちは、生まれてすぐから(これは嘘でなく本当なんです)早期教育をはじめ、教育水準のの高い幼稚園、小学校(インターナショナルスクールなども含む)に通わせて、小学6年の卒業試験であるPSLE試験で高得点を挙げるために非常に厳しい教育を受けさせているのです!
厳しい受験戦争のひずみ
筆者がシンガポールに滞在していた時も、このPSLEテストが行われた後に、数人の自殺者、それは年端もいかない12歳の子供たちが「いい成績をとれなかった」と自らの命を絶つ報道がされました。報道がされた、といっても、英語サイトや新聞には載っていません。中国語などの地元のメディアでしか知らされませんでした。ものごころついた時から、大学に入るための英才教育のために毎日のように塾に行き、親からも「どうしてこんな成績しか取れないんだ」と暴力を振るわれる子供もいると聞きました。この状況は、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してきたシンガポールの大きな問題になってきて、このPSLE試験を廃止する動きも出てきたということです。
シンガポールの英語教育
シンガポールでは正式な英語教育は小学校1年から始まりますが、苛酷な学歴社会で生き抜くには英語は必須であるため、1歳半くらいから英才教育が始まる家庭もあります。
また、シンガポールの小学校は授業はすべて英語で行われ、すべての科目が英語であるのも欧米の教育と変わりないと言ってよいでしょう。
シンガポール人がほとんど英語を話せる要因に
- シンガポールのバイリンガル政策
英語が必須であり、第2言語として中国語、マレー語、タミール語の中の一つを選択する。 - 世界トップクラスの教育予算
国家予算の20%にあたり、高いレベルの教育が受けらる。 - IT教育の取り入れ
科学的、論理的に丸暗記ではない表現力や説得力を身に着ける。 - 絶えず英語に触れる環境
看板、書類、表記などすべてが英語である。
などが挙げられます。
英語が話せて当たり前、ほとんどの人は英語と自分の母国語を使い分け、仕事や生活をしています。
また、シンガポールの英語は強い癖があり、それぞれ中国の癖やインドの癖などが顕著に表れて、最初は聞き取りにくいかも知れません。
独特のイントネーションから、「シンガポール」と「イングリッシュ」を合わせて「シングリッシュ」と呼ばれています。
おもしろい!シングリッシュ
シンガポール人は、言葉の語尾に「ラ~」と付けることがあります。
「OKラ~」とかなにか注文すると、「アイスクリーム、ラ?」といった感じです。
また、「~できますか?」「~できます」というのを共に「キャン」と言い、できる=Can から来たと思われます。
タクシーに乗って行き先が言えなくても、地図やGoogleマップを指して「キャン?(行けますか)」と聞くと「アー、キャンキャン(あー、行けます行けます)」と返事をされ、目的地につけることも!!笑
このようなシンガポール独特の英語もあるので、知っていると楽しいかもしれません。
番外編:時は金なり?
シンガポール人の多くは、とにかく休憩する時間給料をひかれるのを惜しむのか、お昼休憩を取らない人も多くいます。
びっくりした話ですが、買い物に行って商品をレジに持っていったら、レジの横で店員がご飯を食べているではありませんか!!
「この人だけなのだろう」と思っていたら、いたるところに(店員さんが多かったようでしたが)人目をはばかることなく、応対カウンターなどで平気で食事をしている人を見かけました。
「時は金なり」で食事をしている暇があったら、お金を稼ごう!という風潮があり、なんと中国系シンガポールの子供の童謡に「お金を稼ごう、お金を稼ごう」と連呼する歌があって、とても驚いたのを忘れません。
まとめ
この50数年間でこのように大きな成功を遂げたシンガポール。しかし、暮らしてみると競争が激しく、かなり強い意志と財力が必要な国でもあります。今後どう変化していくのか、目が離せませんね!