イランと聞いて思い浮かべるのは、ペルシャ文化やイスラム建築かもしれません。実はイランには、キリスト教の建造物が静かにたたずんでいます。それが世界遺産「イランのアルメニア修道院群(Armenian Monastic Ensembles of Iran)」です。
場所はイラン北西部、トルコやアルメニアの国境付近。この地域は、かつて古代アルメニアの一部であり、古くからキリスト教が信仰されてきました。
本記事では、この貴重な世界遺産を紹介しながら、歴史的背景や見どころ、そして英語で表現したいフレーズもあわせてお届けします。
世界遺産「イランのアルメニア修道院群」とは?

イランの北西部には、アルメニア正教会に属する3つの重要な修道院があります。それが、聖タデウス修道院(St. Thaddeus Monastery)、聖ステファノス修道院(St. Stepanos Monastery)、そして生神女マリア聖堂(Chapel of Dzordzor)です。
これらの修道院群は、アルメニア文化の南東の端に位置し、建築や装飾においてアルメニア文化の伝統を示しつつも、ビザンチン様式やペルシア文化、イスラム建築との融合も感じられる遺産です。
地震が多発するこの地域で、修道院は何度も破壊されながら、そのたびに修復され、何世紀にもわたって信仰と文化を守り続けてきました。
アルメニア王国とは?
これらの修道院が建てられた背景には、アルメニア王国の存在があります。紀元前190年から紀元前66年まで独立国家として存在し、その後ローマ帝国やペルシア帝国の影響下に置かれながらも、キリスト教を深く受け入れました。
301年、アルメニアは世界で初めてキリスト教を国教とした国となります。以降、修道院は信仰の中心地となりました。
さまざまな文化の融合
この地域の修道院群は、アルメニアの建築様式や装飾が色濃く見られるだけでなく、ビザンチン文化、ギリシャ正教、ペルシア文化、そしてイスラム文化との融合も感じられます。
東方正教会の信仰体系、ビザンチン建築の影響、ペルシャやイスラム文化との接点が見事に表現されているのです。
世界遺産としての価値
2008年にユネスコの世界遺産に登録された「イランのアルメニア修道院群」。英語では “Armenian Monastic Ensembles of Iran” と呼ばれます。
訳)イランのアルメニア修道院群は、2008年にユネスコの世界遺産に登録されました。
登録された理由は?
この世界遺産は以下の点が評価されました。
- アルメニアの建築と芸術の卓越した例であり、さまざまな文化の融合を示すこと
- 現在はイスラム教徒が多く住むエリアにおいて過去にキリスト教文化が存在したという証拠であること
- アルメニア正教の伝統を継承してきた歴史的証拠であること
UNESCO World Heritage Convention:Armenian Monastic Ensembles of Iran
覚えておきたい英会話フレーズ
旅行や歴史を紹介するときに役立つ英語表現をご紹介します。
訳)建築にはアルメニアとペルシャの様式が混ざっています。
訳)修道院は地震で何度も再建されています。
訳)ここにはビザンチンやイスラムの芸術の要素が見られます。
訳)ここを訪れると、別世界に足を踏み入れたような気持ちになります。
訳)この修道院は7世紀にさかのぼります。
登録されている構成資産の見どころ

聖タデウス修道院(西アーザルバーイジャーン州)
別名「黒の教会(Qara Kilise)」と呼ばれ、黒い石材で建てられた外観が印象的です。円錐型の屋根が並ぶ姿は、まさにアルメニア建築の特徴です。
伝説では、イエスの使徒の一人である聖タダイ(タデウス)がこの地で殉教し、その墓の上に建てられたとされます。14世紀に地震によって崩壊し、現存する建物は14世紀に再建されたものです。
訳)黒い石で建てられているので「黒の教会」として知られています。
訳)円錐形のドームはアルメニア建築の特徴です。
。
聖ステファノス修道院(東アーザルバーイジャーン州)
アラス川の渓谷に築かれ、まるで大自然の中に溶け込んでいるような美しさを持つ修道院です。1世紀に聖バルトロマイが教会を建てたという伝説があります。
幾度もの破壊と再建を経て、現在の姿は17世紀のものです。サファヴィー朝時代に再建されたことから、イスラム建築の影響も感じられます。
訳)この修道院はアラス川の渓谷に美しくたたずんでいます。
訳)本当に美しいですね。渓谷と修道院が一体になっている感じ。
生神女マリア聖堂(ゾルゾル礼拝堂)
Makuchay川沿いに建てられ、14世紀に栄えた聖堂。ダム建設により修道院の一部は移設されましたが、礼拝堂の部分は現地に残されています。
荘厳な雰囲気を漂わせるこの聖堂も、アルメニア文化の粋を感じることができる貴重な建築です。
訳)この礼拝堂はダム建設で一部は移動されましたが、主要な部分は残されています。
まとめ
イランというイスラム国家の中に、これほどまでに古く、神秘的で、美しいキリスト教建築が存在することは、多くの人にとって驚きかもしれません。砂漠と山岳地帯にひっそりとたたずむこれらの修道院は、異なる宗教と文化が重なり合って築かれてきた、まさに「人類の遺産」と呼ぶにふさわしい場所です。
英語を学びながら、こうした世界遺産を知ることは、言葉と文化をともに理解する第一歩となるでしょう。
