近年、AIを活用した英語学習アプリや教材が保育や家庭教育の現場に広がっています。
発音チェックやゲーム形式の学習など、AIは子どもの英語習得を大きく助けてくれます。
しかし、「AIに任せておけば安心」というわけではありません。保育士や親にしか果たせない大切な役割も存在します。
今回は、バイリンガル保育士の視点から「AIが得意なこと」「人間にしかできないこと」を、保育園や家庭での具体的な事例を交えながらお伝えします。
AIが得意なこと

正確な発音チェック
AIは音声認識技術で子どもの発音を瞬時に分析し、違いを数値や色でわかりやすく示します。
具体例:
保育園で「dog」「frog」などの単語を練習したとき、AIアプリを使えば正しく発音できたかどうか即座にチェック可能です。子どもは「Good!」と褒められると自信を持ち、次の挑戦にも前向きになります。
ゲーム感覚の反復練習
同じフレーズや単語の練習は退屈になりがちですが、AI教材はクイズや冒険ゲームの形式で繰り返しを促します。
具体例:
家庭で「色の名前」を覚えるとき、アプリが「Find something blue! 」と声をかけます。子どもは部屋の中を走り回り、青いクレヨンを持ってきてAIに見せる。このやりとりは遊びながら自然に反復学習できる良い仕組みです。
24時間いつでも英語の先生に
親が忙しいときでもAIは会話相手になってくれます。
具体例:
夜寝る前に「AIと1分だけ英語でおしゃべりする」習慣を作れば、親が英語を話せなくても「Good night! 」「Sweet dreams! 」と子どもは自然に覚えていきます。
膨大な知識を瞬時に提供
AIは無数の例文やクイズを出せます。
具体例:
保育士が「今日のテーマは動物」と決めたら、AI教材に「子ども向けの動物クイズを出して」と指示するだけで、すぐに簡単な英語のクイズを生成。子どもはワクワクしながら参加できます。
人間にしかできないこと

子どもの感情に寄り添う
AIは正誤の判定はできますが、「がんばったね」「悔しい気持ち、わかるよ」と心に響く言葉はかけられません。
具体例:
英単語の発音で何度も失敗して泣きそうになった子どもに、保育士が「大丈夫、私も小さいとき苦手だったよ。一緒に練習しようね」と声をかけると、子どもの気持ちは安心し、再挑戦できます。
生活の中に英語を取り入れる工夫
AIは練習の場を作れますが、日常生活と英語をつなげるのは人間にしかできません。
具体例:
- おやつの時間に「Which do you want, apple or banana? 」と英語で聞く
- 外遊びで「Let’s run to the tree! 」と声をかける
- 絵本の読み聞かせで「Where is the cat? 」と問いかける
こうした自然な場面での英語体験は、人とのやりとりの中でこそ育ちます。
個性に合わせたアプローチ
子どもによって学び方は異なります。AIは一定のレベル分けはできますが、子どもの気分や性格まで考慮することはできません。
具体例:
- 歌が好きな子には「英語の歌を一緒に歌おう」
- 体を動かすのが好きな子には「Simon says(英語版のフルーツバスケット)」
- じっくり考えるのが好きな子には「英語でなぞなぞ」
保育士や親がその子らしい方法を選ぶことで、学びが「楽しい経験」に変わります。
人とのつながりを通した実感
子どもにとって英語の魅力は「言葉で相手とつながれる」ことにあります。
具体例:
園に外国人ゲストを招いて「Hello!」とあいさつが通じた瞬間、子どもたちは「伝わった!」という感動を体験します。これはAIには決して提供できない「人と人をつなぐ喜び」です。
AIと人間が協力する具体的な使い方
英語教育を効果的に進めるには、AIと人間の役割分担がカギとなります。
保育園での活用例
- 朝の時間にAIで5分間の発音練習
- 保育士がその単語を使って英語のゲーム(「Fruit basket」「Simon says」など)
- その日の活動や給食でも単語を繰り返し使う
家庭での活用例
- AIアプリで寝る前に英語で1分の会話
- 翌日、親が「What did you say yesterday? 」と英語で質問
- 子どもが答えられたら「すごい!」と笑顔で褒める
このように「AIでインプット」「人間が感情とつながりでアウトプットを導く」という流れが理想です。
年齢別:AI教材と人間の役割の取り入れ方

未就園児(0〜3歳)
この時期は「耳を育てる」ことと「英語に親しむ」ことが中心。まだ長い時間AIに向かうのは難しいため、短く楽しい体験が大切です。
AIの役割
- 短い英語の歌や童謡を流す
- 絵カードを音声付きで見せる
- 単語を繰り返す音声モデルになる
人間の役割
- 一緒に歌い、笑顔や動きを交えて楽しませる
- 「バナナ!」とAIが言ったら、実物のバナナを見せて現実と結びつける
- 子どもが発音を真似したら、すぐに抱きしめたり拍手して「できた喜び」を強調
具体例
AIで「Head, shoulders, knees and toes」の歌を流す → 親が一緒に体を動かす
→ 子どもは「音」「動き」「スキンシップ」を同時に体験。
幼児(4〜6歳)
耳と口の発達が進み、簡単な会話やルールのあるゲームができるようになります。
AIの役割
- 発音チェック機能を活用
- 単語やフレーズを繰り返すクイズ形式
- キャラクターと短い英会話(例:「How are you? 」「I’m fine! 」)
人間の役割
- AIで出てきた単語を生活に取り入れる(例:給食の時間に「Milk, please! 」)
- 「発音でつまずいたとき」に励ましたり、一緒に言い直す
- 遊びや工作に英語を組み合わせる
具体例
AIで「動物クイズ」を行い「It’s a lion! 」を学ぶ → 保育士が絵本のライオンを見せて「Here’s a lion! 」と実物とリンク
→ 外遊びで「Can you roar like a lion? 」と体験につなげる。
小学校低学年(6〜8歳)
文字やルールを理解できるようになり、AIを使った自主学習も少しずつ可能に。
AIの役割
- 単語やフォニックスの練習
- 簡単なリーディング教材の読み上げ
- 子どものレベルに合わせて問題を調整
人間の役割
- 学んだ英語を「相手に伝える体験」につなげる
- 「昨日AIで覚えた単語、覚えてる?」と会話で使う機会を与える
- 友達同士のやりとりを作り、英語を実際に「使える」場を設ける
具体例
AIで「Food」の単語を練習 → 翌日の家庭で「What do you want for breakfast? 」と親が英語で聞く
→ 子どもが「Egg, please! 」と答えられたら「Great choice! 」と褒める。
AI教材・学習アプリを取り上げたテレビ番組(ドキュメンタリー/情報番組)
『マグナとふしぎの少女』(AI英語学習アプリ)
AI英語学習アプリ『マグナとふしぎの少女』。ゲームやアニメを通じて英語を学び、AI英会話機能も搭載された教材です 。学校現場と家庭での取り組みに注目が集まっています。
- AIの得意分野:ゲーム要素・アニメストーリー・発音練習・AI英会話でのインプット効率化
- 人間の役割:保育士や親が学びを見守り、励ます/「学んだ表現を日常で使う」場を作る
『ミライダネ』(テレビ東京系)で紹介:英語学習用AIロボット「Musio」の導入
明星小学校・幼稚園でAIロボット「Musio」を英語授業や園生活に本格導入する取り組みが、テレビ東京系列のドキュメンタリー番組『ミライダネ』)で紹介されました 。
- AIの得意分野:会話パートナーとしての役割、発音チェックや対話形式学習の自動化
- 人間の役割:学習設計や子どもとのチーム活動、AIとの協働をサポートするフォロー役
『せかいはふしぎでできている』 (Netflixオリジナル)
科学的なテーマを扱うシリーズで、英語ナチュラル音声と英日字幕が切り替え可能。好奇心と英語の両方を刺激する構成です 。
『ハロー!ニンジャ』および『ことばのパーティー』(Netflix)
『ハロー!ニンジャ』は、子どもたちがニンジャになりきって問題解決する設定。日常会話レベルの英語が使われており、アニメで楽しみながら英語に触れられます 。
『ことばのパーティー』は、赤ちゃん〜言葉が出始めた幼児向けで、1話あたり3〜4語がテンポよく学べる3Dアニメです。
『Word World』(海外アニメ)
単語自体がキャラクター化されており、視覚的で分かりやすく英単語の意味や構成を学べるストーリー構成。読み書きや言語理解に効果的です 。
活用イメージ
- AI的要素:番組形式で「ナチュラル音声や字幕切り替え」により、自主学習をサポート
- 人間の役割:視聴後のフォローアップ(会話、問いかけ、再生学習など)で定着を強化
まとめ
AIは「正確な発音チェック」「反復学習」「24時間サポート」が得意ですが、子どもの心に寄り添い、日常生活と結びつけ、学ぶ意味を体験させるのは人間の役割です。
保育士や親がAIを上手に取り入れ、子どもの心を支えながら英語教育を進めることで、AIと人間の協働がもっとも効果的に働きます。未来の英語教育は「AIが補助し、人間が導く」形でこそ、子どもにとって豊かな学びになるのです。
「AIとの共存」で豊かな人間性と英語力を身に着けていきましょう!


