オンライン英会話の市場規模が年々高まる中、業界内のM&Aや、外資系をはじめとした他企業との合併などの動きが盛んになっています。
この記事では、なぜオンライン英会話のM&Aや合併が急増しているのか、その背景にある原因や意図などについて、詳しく確認していきます。
オンライン英会話業界の現在と未来に興味を持つ方は、ぜひ参考にしてください。
英会話ビジネス業界の現状
オンライン英会話を含む英会話ビジネス業界は、グローバル化の拡大による英語需要の増加や、企業の英語公用語化などの影響もあり、近年は市場規模を大きく伸ばしてきました。
しかし、2020年前後から世間に大きな影響を与えた新型コロナウイルスの流行が向かい風となり、業界全体で見ると業績の停滞および減少の傾向が強くなりました。
その後、コロナウイルスのピークが過ぎ、ある程度業績は回復してきたものの、依然油断のできない状況が続いています。
業界全体が低迷する中、オンライン英会話は右肩上がりの成長
コロナ禍がなぜ英会話ビジネスにとっての向かい風になったかというと、接触機会減少のために企業ではテレワーク、学校ではオンライン授業が多く取り入れられ、それが新しい日常になったことが大きく影響しています。
つまり、英会話ビジネスでの市場規模縮小の多くは、店舗型英会話スクールの売上減少に起因するものだということが推察されます。
実際、各業界の市場調査と分析に定評のある矢野経済研究所の調べによれば、英会話を含む店舗型外国語教室全体の市場規模が2021年度まで3年連続で減少傾向を示すのに対し、オンライン英会話の市場規模は対照的に右肩上がりの成長を見せています。
このことから、英会話ビジネス業界全体の今後は、オンライン英会話市場をいかに成長させていくか、そしてその市場にどう関わっていくかがカギになっているといえます。
参考:語学ビジネス市場に関する調査を実施(2022年)|矢野経済研究所
成長を続けるオンライン英会話市場における今後の課題
オンライン英会話市場全体は成長を続けており、今後もその傾向は続いていくものと予想されます。しかし、視点を業界内に切り替えると需要の取り合いが発生しており、各オンライン英会話サービスによる熾烈な生き残り競争が繰り広げられ始めています。
そのため、これまで同じ方向を向いていた各社が、サービスの内容やクオリティで差別化を図ることが、オンライン英会話市場における今後を左右する課題といえます。
オンライン英会話市場におけるM&Aの動向
近年のオンライン英会話市場では、企業間のM&Aが盛んに行われています。
M&Aとは、”Mergers and Acquisitions” の頭文字を取った略称で、企業の合併および買収を表します。M&Aは主に両企業の業績を拡大させたり、経営効率を改善させたりするために行われます。つまり、オンライン英会話市場でM&Aが盛んな背景には、何かしらの市場活性化を図る意図が隠れていると考えられます。
一体どのような目的でM&Aが行われているのか、以下で詳細を確認していきましょう。
M&Aの目的①:売上規模拡大
オンライン英会話のM&Aの目的として、売上規模の拡大は非常に大きな比率を占めます。
先述の通り、近年のオンライン英会話の市場規模拡大は勢いがあり、今後も業界全体の売上規模は拡大していくでしょう。
そんな中、同規模の企業同士が、現状より多くの売上を獲得することを意図して、お互いに手を組む形で行うM&Aが多く行われています。
M&Aの目的②:ターゲット層の拡大
オンライン英会話のM&Aは、それぞれの企業のターゲット層拡大を意図して行われることも少なくありません。
たとえば、社会人を対象にするビジネス英会話を得意とするA社と、幼児や小学生などの子供英会話を得意とするB社があったとして、この2社がM&Aを行えば、それぞれのターゲット層を拡大することができます。また、両者がこれまで蓄えてきたノウハウも共有できるので、更なる業績アップが期待できるでしょう。
M&Aの目的③:他業種からの新規参入
まったく語学教育に関係のない企業が、オンライン英会話企業を買収するM&Aも多く行われています。このようなM&Aは、他業種からのオンライン英会話への新規参入の意図が背景にあると考えられます。
成長を続けるオンライン英会話業界には、今後も他業種からの参入が増えていくと予想されます。他業種の風が入ることで、既存企業にとっては競争の激化が懸念されますが、業界全体ではシナジー効果や新しいビジネスモデルの誕生など、プラスの変化が期待できるでしょう。
M&Aの目的④:講師人材の確保
ここまで見てきた目的は、主に事業拡大を意図したものでしたが、中にはオンライン英会話の講師人材を確保するために行われるM&Aの例もあります。
オンライン英会話では、フィリピン人をはじめ海外の英語話者が講師として従事していますが、事業拡大の中で講師不足に悩むオンライン英会話企業が少なくありません。
そのため、外資系企業などとM&Aを行うことで、自社の講師不足を解消する動きも、近年多くなってきています。
M&Aの目的⑤:後継者不在問題の解消
オンライン英会話のM&Aは、後継者不在問題を解消するために行われる場合もあります。
後継者不在問題とは、企業の経営者が高齢化し、それを継ぐ意思を持つ者がいないときに発生する問題の総称です。後継者がいない中で経営者に何かがあれば、企業の存続が危ぶまれます。
大手のオンライン英会話であれば、株式会社として法人化しているため、後継者問題は生じにくいです。その一方、小規模のオンライン英会話では、今後問題の切実さが増していくので、小規模オンライン英会話を対象としたM&Aの数は増加していくでしょう。
オンライン英会話のM&Aによって得られるメリット・デメリット
オンライン英会話のM&Aが増加しているのは、それによって得られるメリットが多いからに他なりません。しかし、M&Aとはあくまで二社間の取引行為なので、両者が100%得をするとは限らず、中にはデメリットが大きくなるM&Aも存在します。
そのため、オンライン英会話業界でM&Aを検討する際は、メリットとデメリットを照らし合わせたうえで、損のない取引になるよう吟味することが重要でしょう。
以下が、M&Aの買い手側と売り手側、双方における代表的なメリットとデメリットです。
買い手側で想定されるメリット
- 競争力の向上
- 経営の弱点補強
買い手側で懸念されるデメリット
- 不良資産の引き継ぎ
- 事業統合後の方向性の相違
売り手側で想定されるメリット
- 経営リスクの分散
- 株主への利益分配
売り手側で懸念されるデメリット
- サービス品質の低下
- 従業員のリストラ問題
まとめ
今回は、オンライン英会話業界における合併の動向、特にM&Aにおける実情について詳しく確認してきました。
英会話ビジネス全体では伸び悩みがある中、オンライン英会話は順調な成長を見せ、市場規模も年々拡大しています。そのため、様々な意図からM&Aの動きが盛んになっています。
買収や合併と聞くと様々なイメージが喚起されがちですが、M&Aは基本的に未来への投資として行われます。そのため、現在行われているオンライン英会話を取り巻くM&Aも、業界の今後が明るくなることへの布石と考えてよいでしょう。
今回ご紹介したことを踏まえ、業界の今後に期待していきましょう。
それでは、これからも楽しい英語学習を。
Let’s enjoy!!