アジア諸国の中でも100以上の言語を持つ多言語社会でありながら、ビジネス英語のレベルが非常に高いフィリピン。

海に囲まれた、7000以上の島を領有する島国であるフィリピンで、どうしてこのように高い水準の英語教育が行われるようになったのか、この国の歴史や文化を訪ねながら、考えてみましょう!

英語を第二外国語として学習する国々の教育法 ~フィリピン編~

国名

正式国名はタガログ語で Republika ng Pilipinas(レプブリカ ナン ピリピーナス)。略称は英語では The Philippinesです。

日本との関係

フィリピンと日本は、なんと1592年豊臣秀吉による朱印船貿易(江戸幕府から与えられた朱印状を持った西国の大名や京都・今の大阪である堺・長崎などの承認が、東南アジアなどへ船を出して行った貿易)のころからつながりがあり、貿易に従事した日本人がフィリピンのマニラに日本人町を作り住んでいたとされます。

しかしながら、鎖国によって日本人町は衰退しやがて消滅をします。開国後1910年代に農園経営のために多数の日本人が移民し、大きな日本人町が再び形成されますが、太平洋戦争後町は激戦地となり壊滅してしまいます。

現在では、日本はフィリピンにとって最大の輸出・輸入相手国となっており、互いに良い関係を続けています。

経済

2014年には人口が1億人を超え、若者の人口が年々増加して国民の平均年齢が23歳という労働力を持ち、東南アジア諸国の中でも最も経済成長を遂げている国だと言われているのがフィリピンです。

特にサービス業の成長が目覚ましく、労働力が安価で教育水準が高く、公用語が英語であるというところから、コールセンター業が有名だと言います。

また、我が国日本や韓国や中国などからの語学留学先としても人気が高く、近年多くの学生が英語留学にフィリピンを訪れています。

言語

国語はフィリピン語で、公用語はフィリピン語と英語です。フィリピン国内では170を超える言語があり、中でも、タガログ語、セブアノ語、イロカノ語、ヒリガイノン語、ビコール語、ワライ語、カパンパンガン語、ボホラノ語はフィリピンの8大言語と呼ばれています。アメリカの植民地であったことから、アメリカ英語が多く普及していて、共用語として英語を使う人口は、アメリカ・イギリスに次いで3番目に多いと言われています。

現在、フィリピン人同士が会話をしていると、タガログ語に加えて英語が聞こえてきたりすることが多く、タガログ語と英語を混ぜながら話す「タグリッシュ」という言葉もあるようですよ。

フィリピンの教育制度

フィリピンの教育制度

フィリピンの義務教育は、幼稚園1年間、小学校6年間、高校が2つに分かれていて、4年間が日本の中学に当たるジュニアハイスクール、2年間が日本の高校に当たるシニアハイスクールになり、合計13年間で、日本の9年間より4年も長くなっています。

以前は小学校6年間、高校が4年の6-4制でしたが、高校卒業時がまだ16歳であることや、他の国と比べて学力が低下していたことなどの理由から、2013年からアメリカの教育制度K-12が導入され、現行の13年の義務教育となりました。

学校の種類と現状

富裕層の子供たちは、幼稚園から教育環境が整っている私立学校へ通いますが、一般家庭の子供たちは授業料が無料の公立に通います。

私立の学校がとても多いのが特徴と言えますが、生徒数は圧倒的に公立学校が多いようです。

貧富の差:公立学校のリアル

フィリピンの公立学校は1クラスが40~50人ほどがぎゅうぎゅう詰めの上、あの常夏の国で冷房も扇風機しかなく、教室内はとんでもなく蒸し暑いのです!教室が足りずに、体育館で授業をすることもあります。学校はすべて制服ですが、10人以上の大家族が多い貧困家庭では新しく制服を買うことは難しいです。また、私立では毎年更新される新しい教科書が配られますが、公立では教科書を学校から借りて、進級時に返却をするという形になります。このように裕福な私立の生徒と大きな学力の差が出てしまうのです。教育制度が改正されて公立は無償となったというものの、実際は制服や必要な備品などは有償ですし、特別授業や試験を受けるのも有償なのです。

こういうところから、貧しい家庭で家計を助けるために働いたり、小さな弟や妹の世話をしなければならない子供などは、学校に行っても十分な学習が出来ず、また平均点75点以下が3科目あると落第してしまう「落第制度」によって、学校に行かなくなってしまう子供が多くいるのも現状です。

フィリピンの英語教育

フィリピンの英語教育

フィリピンでは公立学校でも小学校1年から英語の授業が始まり、だいたい1日1時間は英語の授業が行われます。

日本の小学校における「外国語活動」が5・6年生の2年間合わせて26時間ですが、フィリピンでは小学校6年間の英語授業の総時間が約2000時間という数字を見ても、その差は歴然ですね。

高いレベルの授業内容とモチベーション

フィリピンでは小学3年生から数学や理科の授業も英語で行われます。日本のように「英語に親しみましょう」的な内容ではなく、書類作成を行うなど、ビジネス英語の基礎ともいえるトレーニングを行っているのも特徴です。

「将来いい仕事に就き、高い給料をもらって家族を養うには、英語が出来たほうが有利である」という考えが幼いころから定着しているため、高い英語力を求めれ給料が高い英語講師やコールセンタースタッフなどの仕事を目指し、一生懸命英語習得のために学習するモチベーションの高さもフィリピンの英語力を支えているのでしょう。

娯楽コンテンツもすべて英語

フィリピンで供給される映画や音楽はすべて英語が一般的です。本や映画なども翻訳はされておらず、よって映画などは字幕なしで楽しむことになります。

生活のためだけではなく、ゲームなどで遊ぶのにも英語が必要ということになれば、どの世界の子供も必死で英語を覚えようとしますよね?

このような状況は、子ども達も自然に英語を日常的に使うことになるので、結果フィリピンの英語教育に大きなプラスになっていると言えます。

フィリピンの英語講師

語学留学などでフィリピンは人気の国ですが、実際「フィリピンの英語講師のレベルはどうなの?」と思っている人も多いようです。

フィリピンの英語講師の採用基準は

  • 4年制大学卒は必須である。
  • 教育関連のTESOLなどの有資格者は有利である。
  • 教育学部、英文学部、マスコミ系学部卒は有利である。

などの高いスキルが求められ、実際講師になれるのは大学を卒業した上位5%未満の狭き門になっているのです。

ゆえにフィリピンの英語講師は「英語学習を極めた成功者」といっても過言ではないといえます。

まとめ

「仕事をするうえで必要だから英語を身につける」というスタンスは、普通に学校に行き、食べるところや寝るところを心配することが少ない日本と比べて多少胸が痛くなるものの、そのバイタリティが近年のトップクラスの英語力を作った源であったのだろうと尊敬の念を抱かずにはいられません。どの世界でも、子どもは教育を受ける権利がある。子供たちの未来が守れるようになることを心から祈ります。