前回ご紹介しました、「フォネティックメソッド」とほぼ同時期に考案されたのが「ナチュラル・メソッド」です。

この二つは、「文法翻訳法」という、単語や語彙を翻訳して暗記するという学習法に反し、実践的に会話能力を身につけるための学習法である「直説法」に基づかれて編み出されたものですが、「フォネティックメソッド」と「ナチュラルメソッド」には学習法に大きな違いがあります。

その「会話のための学習法」である「ナチュラル・メソッド」について解説していきましょう!!

1.ナチュラル・メソッドの歴史

ナチュラル・メソッドの誕生を語るのには、大きな歴史的背景を切り離すわけにはいきません。

それは、「産業革命」です。

中学の歴史の時間に習いましたね。18世紀のイギリスで産業革命が起こり、ベルギーやフランスなども影響を受け、人々の行き来が激しく増えて、ヨーロッパでは交通機関が発達しました。

ということは、異なる言語が交流する、ということが起こってきます。

私たちも同じような感情を抱くように、知らない国の人々と交流すれば、「その国の言葉でコミュニケーションをとりたい!」と考えますね!

そうなってくると、それまでの、単語や熟語を暗記して解読するだけの「文法翻訳法」では、「会話をする」という行為が出来るのはほぼ不可能です。

「どうしたら他国の人々と会話ができるのだろう?」

実践的な会話能力を付けるための学習法が次々に考案されていく中で「直説法」の教授法のひとつが「ナチュラル・メソッド」になります。

2.ナチュラル・メソッドの特徴

2.ナチュラル・メソッドの特徴

ナチュラル・メソッドの特徴を一言でいうと「赤ちゃんが母国語を習得するように外国語を習得するのが最良だ」という考えに基づいて考案されたということでしょう。

私たちが日本語を自然に覚えたように、赤ちゃんが言葉を話せるようになる「プロセス」に着眼して編み出されたものです。

ナチュラルは「音声を自然」と考えるイメージでしょう。

このナチュラル・メソッドもいろんな方法が考え出されました。代表的なものは、グアンメソッドやベルリッツ・メソッドです。

グアンメソッド

フランス人のグアン Gouin.F(1831-1895)によっ考案された、ナチュラル・メソッドの代表的な教授法です。

グアンは、幼児の心理的発達に目を向け、子どもが日常の生活の小さな動作の積み重ねで行動を確立させていくように、言語は学習されるべきだと説いています。

この、子どもの精神的な部分を研究したことからも、グアンの教授法は別名サイコロジカル・メソッド(Psychokogical method)とも呼ばれています。

または、日常の小さな動作の積み重ねー連鎖から、連鎖法、もしくはシリーズ・メソッド(Series Method)とも呼ばれているようです。

ベルリッツ・メソッド

ドイツ人のベルリッツ Berlits.M (1852-1921 )が考案したメソッドで、基本的にはグアンと同じで、言語は幼児が覚えるように習得すると提唱しているのですが、特徴として、

  • 学習言語で考えることに重点を置き、学習者の母国語を徹底的に廃止し、習っている言語のみのレッスンを行う
  • 「聞く」「話す」に集中させるレッスン
  • 文法や語彙は、会話の実践演習の中で身についていくという考え
  • レッスンは、生徒のニーズに合わせたゴールを設定する
  • 翻訳を排除する考えがある

などがあり、現代でも世界中にこのメソッドを使っている英語学校があります。

3.ナチュラル・メソッドの学習法

グアンメソッド

大人だと日常当り前に使っている動作も、子どもにとっては「動作の順番」があり、それを達成するまでのプロセスがあるという考えに基づいています。

具体的に、何か一つの動作をするときの手順を書き出していき、その言葉を口で出していく、という学習法です。

例えば、「顔を洗う」という動作をするとします。

顔を洗うには

  1. 袖をめくる
  2. 利き手を伸ばす
  3. 水道の蛇口を握る
  4. 蛇口をひねる
  5. 両手を顔の前に出す
  6. 蛇口から出てくる水をすくう
  7. 両手に顔をつけて水で洗う

・・・といった順番を実際に言葉と一緒に実演して、次に子供達にも同じように再現をさせます。

この一連の、「連続した」動作から、別名「シリーズ・メソッド」と呼ばれることが理解できます。(テレビドラマの、○○シリーズ、といったところでしょうか?)

動作と思考、それに言葉が組み合わさるという、人間の思考に着目したメソッドなので、心理学的な見方からサイコロジカル・メソッド(Psychokogical method)と言われていることがうなづけます。

結果、「話せるようになる」到達点を目標にすることが出来ます。

ベルリッツ・メソッド

上記した特徴に習い、全体的に言えるのは「徹底的に会話を重視」した学習が行われます。

学習法として

  1. フルセンテンスで答える。(単語でなく、文法に即した正確な文章で話す)
  2. ネイティブスピーカーが教師になる。
  3. 単語や語彙、文法などをフラッシュカード(絵カード)や本物(果物、おもちゃなど)を使う。
  4. 「聞く」「話す」「読む」「書く」という順番で学習する。

この学習法は、現在の日本の英会話教室でも似たことをしていると思いませんか?

4.ナチュラル・メソッドは子供にも効果はある?

4.ナチュラル・メソッドは子供にも効果はある?

子どもはどの国に関わらず、自分の身の回りの物から刺激を受けて、それが脳に伝わり、そのものに言葉があるというのに気が付きながら語彙を増やしていきますね。

ナチュラル・メソッドはその脳科学的な方法を活用しているため、子どもが母国語を覚えていくと同じように、外国語を習得するのに無理のない方法だと思われます。

文字の読み書きの認識が難しい子どもにこそ、「聞く」「話す」ことから始まるナチュラル・メソッドは子供に効果があると言っていいでしょう。

5.ナチュラル・メソッドのメリット、デメリットは?

グアン・メソッド

グアン・メソッドのメリットは、音声に触れる機会が圧倒的に多いと言えます。

動詞に着目しているので、覚えやすく使いやすいことも言えます。

一方で、グアン・メソッドのデメリットは、反復練習のために教える範囲が限られてくるのと、人によっては退屈な行為に感じることもあるかもしれません。

ベルリッツ・メソッド

ベルリッツ・メソッドのメリットは、グアン・メソッドと同じく、音声に触れる機会が多いです。

ベルリッツ・メソッドのデメリットは、教師によって技術のばらつきがあると言われます。

解釈や理解が不完全になってしまうと起こりえる現象のようです。

また、母国語を使えないため、わからないとそれを解釈するのも外国語であるので、うまく理解できなかったり、また自分が伝えるのもニュアンスを伝えることが難しいなどのストレスを感じてしまうところにあります。

ナチュラル・メソッドとナチュラル・アプローチの違い

ナチュラル・メソッドとナチュラル・アプローチの違い

このように、ナチュラル・メソッドは「自然法」と言われるように、幼児の言語を習得する過程を取り入れ、「聞く」「話す」ことを重視したメソッドということがわかりましたが、名前が似ているため間違えられやすい教授・学習法に「ナチュラル・アプローチ」というのがあります。

ナチュラル・アプローチとは、母国語を習得した時のように自然に第二言語も習得させるという方法です。

ナチュラル・メソッドが「聞く」「話す」というのを重視するのと少し違うところは、私たちが母国語を覚えるとき、周りの人間が話すのを聞いて、少しづつ話すようになれること、話すようになれるのは「正しい外国語を聞く」のを先決としています。

「話す」ことをあまり強要せず、話したくなるまで待つ、といった教え方になります。

学習の仕方は、

  • ネイティブが使う自然なスピードで話す。
  • 生徒が興味があるようなテーマを用意し、教材をそろえる
  • 生徒に話すことは強制せず、質問などで自然に話すように誘導する
  • コミュニケーションのモチベーションを下げないよう、細かい間違いの指摘をしない

などが挙げられます。

まとめ

中世期、文法翻訳法による「読む」英語から「話す」英語へと改革された学習法は、今でも立派に活用されるものでした。

子どもに英語を教えてる筆者も、子どもがトイレに行ったり、手を洗う時に、「ドアを開けます」「蛇口をひねります」などを動作をしながら教えたことがありますが、こらはまさしくグアン・メソッドを使っていたのだなと改めて驚いています!

自然に、ナチュラルに外国語を覚える・・・それが簡単にできるようになるのは、まだまだ努力と工夫が必要ですね。