英語の授業が小学校低学年から導入されるようになったり、日本も英語の早期教育を叫ぶところが多くなってきましたね!
しかしながら、「週1回英会話教室に行っているけど、ハロー、ハウアーユー?から全く進んでいないような気がします」「中学になるとどうしてもテストのための、また受験のための英語の勉強になり、なかなか話せるようになりません」というお悩みを聞くことがあります。
そんな現代の日本の英語学習に効果がある?と言われるのが「CLIL」(クリル)。
さて、CLILとはどんな学習法なのでしょうか?
1.CLILとは?
CLILは、Content and Language Integrated Learningの略称です。
- contents=教科科目やテーマの内容
- languages=外国語(言葉)
- integrated learning=統合学習
という意味合いになります。「内容言語統合型学習」という意味ですね。
日本では頭文字をとってCLIL(クリル)と呼ばれ、一般的に広まった学習法になります。
英語を通して、何かのテーマや学校での教科科目(数学(算数)、理科、社会、音楽、体育、家庭などの教科)を学ぶ学習形態がそうであると言ってよいでしょう。
つまり「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」といった、今までの学習法とは異なる画期的な学習法になります。
発祥は欧州で、もう10年以上前から広まっていますが、その理由は、欧州は多民族・多文化・多言語社会であるため、言語が担う役割が大変大きいのです。
その問題を解決すべく、欧州評議会(Council of Europe)は1995年に、母国語に加えて2か国語の習得をするようにと提唱しました。
言語だけではなく、それぞれの国民が異文化や価値観の違いなどを知り、協調していけるようにという目的をもって掲げられたのがCLIL学習法なのです。
近年では日本でも取り入れている学校が増えているといいます。
訳)CLILとはContent and Language Integrated Learning(内容言語統合型学習)を表しています。
訳)日本では英文法の学習に重点が置かれているけど…
訳)CLIL学習法は英語以外の言語も使われているヨーロッパ発祥です。
訳)ヨーロッパの人々の大半は英語を理解しているので、統合的に多くのことを学ぶことが重要だと考えたんだと思う。
2.CLILの特徴
CLILの特徴でまず挙げられるのが、「4つのC」というフレームワークが掲げられていることです。
4つのC
・Contents (内容)
新しく得られる知識・スキル、理解を示します。それぞれの強化学習の内容のことで、算数であれば掛け算・割り算、理科であれば植物の光合成、といった学習の内容を指しています。
・Communication (言語知識・言語使用)
「学習の言語」「学習のための言語」「学習を通しての言語」を学ぶことで、言語習得をスピードアップさせることが可能になるという考えに基づいています。
・Cognition (思考)
思考を、表面的な学習(暗記や知識の理解)と深い学習(内容を既存の経験や知識と結びつけたり、考察する)に分けることで、これらをバランスよく取り入れることを目標にしています。
・Community/Culture (協学・異文化理解)
CLILは世界観を教室から学校、市町村、国、地域、地球へと様々なレベルのコミュニティを意識して学習を進めます。
簡単に言うと、be動詞だ、不定詞だ、現在完了形だ、というような単元での学習ではなく、算数や歴史、科学などの教科や人権問題、環境問題などの学習内容の理解が一番であると説き、英語はあくまでもその理解のためのツールであるというのがCLIL学習の特徴になります。
訳)CLILの特徴として、4つのCが挙げられます。
訳)Cが5つあると思うんだけど…
訳)Community/Cultureはまとめて1つという扱いみたいです。
訳)なるほど。
訳)大事なことは英文法の学習ではなく、教科や社会問題の学習で、英語はその学習のツールだということです。
訳)君の言いたいことが分かったよ。
3.CLILの学習法
さて、そんなCLILの実際の学習法はどんなものなのでしょうか?
まず、授業を行う際にこのような原則を満たす教材を準備することになっています。
- 内容と語学学習の比重は1:1
- 4技能(読む・聞く・話す・書く)をバランスよく取り込む
- 作業を増やす
- グループ活動を推奨する
- 様々なレベルの思考力(暗記、理解、応用、分析、評価、創造)を活用する
- 国際問題や、異文化の問題を取り入れる
- 日常にある事柄(ウェブサイト、テレビ、マスメディアなど)をとりあげる
- 映像や音声など、文字以外の情報を与える
- 学習スキルの指導をする
- 内容と言語の両方の手助けになるものを準備する
以上の中から、数点を使い、授業に活用します。
訳)CLIL学習法向けの上記に挙げたような原則のうち、あなたはどれを選びますか
訳)僕は、1, 2, 3, 4, 6, 7を選びます。
訳)内容学習と語学学習の比重を1:1にするのが難しいです。
授業の進め方の手順
CLILの授業は次のように行われます。
①導入 Introduction
学習の導入で、生徒が興味を示すような映像や音声などを使いながら始めていきます。単語や語彙の説明もここで行われます。
↓
②内容理解 Understanding of Contents
ウェブサイトや記事などを生徒が読んで、授業の内容の理解をします。
↓
③思考 Thinking
ブループなどで話し合ったり、与えられた作業をすることで、分析をしたり評価をしたりして、より深く理解をしていきます。
↓
④発表 Presentation
みんなで考えたり、意見を出し合ったことを話したり書いたりして、プレゼンテーションを行う。
こういった流れが一般的なCLILの学習法です。
4.CLILの実践例
海外の実践例
フランス、イタリアではCLILを小学校の授業に取り入れて成功をしていますし、東南アジア諸国のタイ、インドネシア、ベトナムの小学校でも導入され、良い結果を出しています。
生徒同士で話し合いをしながら、難しい社会問題などを考え、プレゼンテーションするといった、小学生にとってもやや難しい内容でありますが、効果が表れていると言えましょう。
日本の実践例
日本でも数校の小学校や英会話教室で導入されています。
しかしながら、各教科の専門知識を持ちながらの、なおかつ高い英語力を持つ教員が日本に少ないためか、英語の成績は上がっても、算数や社会の成績は今一つ、という現状のようです。
訳)将来的に日本でCLIL教育を推進していくことは可能だと思いますか?
訳)インターナショナルスクールでは可能かもしれないけど、日本の一般の学校では厳しいと思うよ。
訳)なぜそう思うの?
訳)専門教科を担当している日本人の先生は、英語力はさほど高くないし、英語の先生は専門教科に精通していないから。
訳)もしそれを導入するなら、CLIL学習法向けの教員養成から始めなきゃならないね。
5.CLILは子供に有効か?
CLILは「高い英語力」が必要なので子供には難しい?と考えるかもしれませんが、自分が興味のあるものを英語で学ぶ、ということで、単に暗記をする英語授業ではない、みんなで作り上げたり考えたりしながら英語を使っていくという方法になります。
これは子供が「英語が難しい」と思う前から導入していくことは可能だと思われます。
もちろん、子ども達がワクワクするような教材やテーマを与えることが出来る、教師の技量が問われることになるでしょう。
6.CLILのメリット・デメリット
メリット
- CLILは言葉とそれぞれの教科の内容教育の両方に焦点を当てるので、言語能力が十分にない生徒であっても、内容に興味があったり、得意科目であったりすればCLILのクラスで十分に伸びることが出来ます。
- 創造性のある活動ができるため、子ども達のやる気を引き起こし、自発性やコミュニケーション力が高まります。
デメリット
- 指導者のレッスンプラン(指導案)や教材の選択が非常に難しく、教科の案が出来てもそれを英語に置き換えなければならないという手間と時間がかかります。
- 内容が重点的になるため、必然的に単語の暗記や文法などの説明が少なくなってしまいます。
7.CLILの今後
従来の詰め込み式、義務的な英語学習法から抜け出せず、いわゆる「テストで高得点を出すための英語学習」になってしまい、日本の子供たちの英語に対する目的意識の低下を心配する声が多くあります。
CLILが提唱するのは「受け身の学習」ではなく「自主的な学習」で、何のために学び、英語をどう使っていくのかを学ぶことによって、高い英語力を養うことが出来る可能性があると言います。
教師側にも効率的でわかりやすいカリキュラムを作る、などの研究がされ、もっと幅広くCLILが活用されれば、将来世界的な学者や専門家を、日本から多く生み出すことが出来るのではないでしょうか?
訳)CLIL学習法の一番良いところは、「受け身の学習」ではなく「自主的学習」を提唱していることです。
訳)すべての教科や社会問題を英語で学ぶのは難しいけれど、たとえばプログラミングとか1つの教科を英語で学ぶことは可能だよ。
まとめ
インターナショナルスクールを営んでいた筆者も、CLILに近いことをレッスンに取り入れていました。
例えば、クッキーを作るときに、必要な材料はなんというか?砂糖を測るにはどうしたらいいのか?など実際に軽量したり、料理をしたりして教えていくことで、子ども達は夢中になり、そしてとても興味を抱き記憶に残っていたようでした。
半面、読み書きなどの面では少し不足していた部分があったりと、まさにCLILの今後の改正点と共通していると感じました。
多くの国がこのCLILを導入して成功しているのには、多国籍や異文化の環境にあるということは、明らかに日本と違うところではあるのですが、
今後日本が世界的に活躍をする人材を生み出すためにも、ますますの研究と実績が望まれるところですね!!