いつまでも小さな子供だと思っていた子供も、4歳を過ぎるころから体だけでなく、情緒的な面も大きく成長してきます。時々びっくりするような言葉を発したり、個性的な特徴も出てくる時期です。欧米では「魔の2歳児(terrible twos)」から「悪魔の3歳(horrible threes)」、そして「天使の4歳(wonderful fours)」へと変化すると言われていますが、はたしてそうなのでしょうか?
ここでは5歳までの成長の目安を見ながら、言語のアプローチや、海外の子育て事情をシェアしていきます!
身体的発達
全身を使っていろいろな遊具で遊ぶようになり、運動量が増えるとともにバランス感覚も優れてくる
片足でけんけんをする、でんぐり返しをする、三輪車に乗る、などの体のコントロールが上手になって、思い切り体を動かすことが出来るようになります。体力もついてくるので、長時間ずっと走っている!なんて元気な子供もいて、見ているほうも嬉しかったり、ハラハラしたりですね!
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- けんけん・・・hop on one foot
(けんけんぱ、は”hopscotch”といって日本のものに似たような遊びがあります。) - でんぐり返り・・・somersault
- 三輪車・・・tricycle
- けんけん・・・hop on one foot
手先を使うことがより器用になり、紐結びや細かいハサミの使い方も出来るようになる
細かい指を動かす作業ができるようになり、ボタンをかける、靴の紐を結ぶといった動きが上手になってきます。時々うまくできなくて、自分で癇癪を起したりするときは、ゆっくり「こうやるんだよ」と一緒にやってあげるといいですね。ハサミの使い方など、円形を切り取るときには紙を回すといった動きもできて、自由自在に工作などが出来るようになってきます。
- 紐結び・・・tie
Aさん
Tie your shoes!
訳)靴の紐を結んでね!
- ボタンをかける・・・button
(buttonという動詞になります。)
Button your shirt.
訳)シャツのボタンをかけなさい。
- 紙を回しながら円形を切り取る・・・cut out a circle by turning paper
(cut outで切り取るという意味になります。)
My daughter can cut out a circle by turning paper.
訳)私の娘は、紙を回すことによって、円形を切り取ることができます。
感情が豊かになり、相手の気持ちを汲み取ることが出来るようになる
まだ幼いながらも、口喧嘩や憧れ、やきもちなどの感情が出てきます。また感情のぶつかり合いの中でも、相手が泣いていたり、悲しそうにしていると、相手の気持ちを感じ取り、「大丈夫?」と寄り添ったりする光景も見られるようになります。このころから、友達の好き嫌いも出てくるようになります。
- 感情が豊か・・・rich in emotions
Aさん
My daughter often asks her friend, “Are you okay?” when her friend is depressed.
訳)私の娘は、友達が落ち込んでいるときに、よく「大丈夫?」と声をかけています。
She is so nice. She can sense the feelings of others.
訳)彼女は優しいね。他人の気持ちを感じ取ることができるんだね。
自己主張や自我が強くなり、口答えをする、悪い言葉を使う、うそをつくこともある
時々泣きわめいて駄々をこねることがあります。「悪魔の3歳児」が過ぎて「天使の4歳児」になると思いきや、ああ言えばこう言う、言葉数が増えた分イライラさせられることも少なくありません。
4歳を過ぎると大脳の発達が進み、より複雑な考え方が出来るようになります。心の成長が急速に進むため、子ども自身の中で起こっている変化に葛藤があったり、戸惑いがあったりします。そのため感情のコントロールが不安定になり、乱暴な言葉使いをしたり、かんしゃくを起こしたりします。これを「赤ちゃん返り」という人もいますね。「もう大きくなったのだから」と撥ねつけず、まだ親に甘えたい時期でもあるということを踏まえ、子どもの葛藤を受け止めてあげましょう。
- 自己主張が強い・・・self-assertive
- 自我・・・self-awareness / ego
- 赤ちゃん返り・・・regression (発達した状態から後戻りすること)
Aさん
At the age of four, children reach a point where they begin to develop self-awareness.
訳)子供は4歳になると、自己認識が芽生え始める時期を迎えます。
It’s a time of rapid emotional growth for children, so it can’t be helped.
訳)子供の心の成長が急速に進む時期なので、仕方ないですね。
想像力が豊かになり、現実と、アニメや絵本のお話を自分のことと重ね合わせることがある
このころから、想像の世界に自分を置き換え、主人公になりきって生活したり、会話する子がいます。女の子なのに「僕は男の子なんだ!」とスカートをはかなかったり、四六時中「○○レンジャー、変身!」と言ってポーズしたり、飛び跳ねたりキックしたり・・・大人からすると「大丈夫かしら?」と思ってしまうこともありますが、イメージが持てるということは、子供の知力や能力、精神力が大きく成長しているしるし。「そんなのおかしいからやめなさい」とか「何を変なこと言ってるの?」と頭から子どもを否定するようなことはやめましょう。せっかく芽生えた「想像の種」を潰してしまうことになります。
親も心を豊かにし、子どもと一緒に想像を膨らませていくと、将来創造力やコミュニケーション力を持った人間に成長することでしょう!!
現在、過去、未来の区別がつくようになり、使い分けることが出来る
4歳を過ぎると、大脳の発達が進むことで、時間軸や空間軸への理解が出来てきます。「現在中心」だった考え方が、過去や未来も想定できるようになるのです。「明日は幼稚園でかけっこ競争があるから、行きたくない」とか、「こないだ食べたアイスクリームがまた食べたい」などと思い出したりします。小さい頃の話や、大きくなったら何になりたい?などの子供の成長を喜ぶようなお話をするのも良いコミュニケーションになるでしょう。
- 現在、過去、未来・・・present, past, future
- 時間軸・・・time axis
- 空間軸・・・space axis
Aさん
After the age of four, children can understand the time axis of past, present, and future.
訳)子供は4歳を過ぎると、過去、現在、未来の時間軸が理解できるようになります。
Bさん
Children at that age can understand not only the time axis, but also the space axis.
訳)その年頃の子供は時間軸だけじゃなくて、空間軸も理解できますよ。
さらに言葉が増え、絵本や歌の歌詞などを覚えることが出来る
二つ以上の述語を組み合わせる「複文」を使えるようになり、大人ともほぼ対等に話せるようになります。自分の気持ちや経験を伝えることもできるようになり、子どもによってはおしゃべりが止まらないほど話すことに意欲的になってきます。
このころからバイリンガル教育の成果が出てきて、自由に会話をする様子を見ることもあります。また、記憶力もアップし、一度聞いた絵本のセリフなどを覚えて驚かされることも。脳がリラックスしている状態だと、脳からα波が出て脳を活性化し、記憶しやすい状態になると言います。
子どもの記憶力を伸ばす方法として
- 具体的な質問(今日は何があったの? どんな遊びをしたの?等)をし、記憶を引き出す。
- 虫の名前を覚える、アニメのキャラクターの名前を覚えるなど、得意な分野を伸ばす。
- 子どもの話に共感し、一緒に楽しむ。
- 架空のお話などストーリーを作って遊ぶ。
などがあげられます。
研究者によると、「天才」が出来るのもこの記憶力の訓練から、と言いますので、楽しみながらトライしてみませんか?
幼少期に絵本の読み聞かせをたくさんしてもらって、何かにハマって特定の分野の何かをたくさん覚えた子供は、小中学生、高校生になっても、読解力、記憶力の面で、その成果が表れてくるようです。
子供が英語に興味を示したら、英語の絵本の読み聞かせをしてもいいですし、英単語をたくさん覚えさせてもいいですね。5歳までに勉強とは感じさせずに学習をさせることで、「学ぶことって楽しい!」という学びの喜びを味わせてあげましょう。
集中力を上げる遊び
手遊び
保育園や幼稚園などは、子供を集中させるテクニックの一つとして、手遊びを使います。YouTubeなどで英語バージョンなどもたくさん出ているので、子どもと一緒に覚えてみてはいかがでしょうか?
- 手遊び・・・finger play
- 手遊び歌・・・finger play song
Aさん
Finger play is said to be effective in developing children’s communication skills.
訳)手遊びは子供のコミュニケーション能力の発達に効果的だと言われています。
絵本の読み聞かせ
一人で絵本を眺めるより、大人と一緒に読むほうが集中力がアップします。読んでいる最中に「この子はどんな子なのかな?」「どうして悲しいのかな?」など質問を加えると、より一層集中して読んでくれます。そして何よりも、親子のコミュニケーションに役立ちますね!
- 絵本の読み聞かせ・・・Reading picture books to children
Aさん
Reading picture books to children is said to be effective for their emotional development.
訳)絵本の読み聞かせは、子供の情緒の発達に効果的だと言われています。
折り紙
折り紙は手先を細かく動かす作業を通して集中力が養われます。そして何度も折っていくうちに、折り方を覚えていくことによって、ますます脳が活性化します。手軽で場所も取らず、親子で楽しんでできる、日本が誇る優れた遊びではないでしょうか?
- 折り紙・・・Origami (paper)
Aさん
I taught a foreigner how to fold a crane with origami.
訳)私は、外国人に折り紙で鶴の折り方を教えてあげました。
ジグソーパズル
集中力、記憶力、注意力などが養われるジグソーパズルは、いくつになっても楽しいものです。単純なものからスタートし、徐々にパズルのピース数を増やしてチャレンジさせてあげましょう!
- 記憶力を伸ばす・・・improve memory
- ジグソーパズル・・・jigsaw puzzle
Aさん
Finishing jigsaw puzzles helps develop concentration, memory, and attention.
訳)ジグソーパズルを仕上げることで、集中力、記憶力、注意力などが養われます。
海外の子育て事情
自立心を育むアメリカ流子育て法
アメリカでは日常の些細なことでも子どもによく選択をさせます。例えば「今日は何を着ていく?」と自分で選ばせる、「何がしたいの?」とか「どう思うの?」など子ども自身に考えさせて自立心を促します。
昨今では、日本でも子供に自分で自分の着たい服を選ばせるというご家庭も増えています。洋服をたくさん買い与えるのには費用もかかりますが、できる範囲で服を買い与えて、子供に毎日着たい服を選ばせることで、自分の意志で物事を決めるという習慣が身に付きます。
Aさん
Allowing children to make decisions about something fosters their independence.
訳)子供に何かを決断させることは、子供の自立心を育みます。
Bさん
It would be nice to start by having them make small decisions, not big decisions, like what they want to wear, which one they like better, etc.
訳)大きな決断じゃなくて、何を着たいか、どっちが好きかなど小さな決断をさせることから始めるといいね。
子供が何かがうまくできた時には、ほめてあげることも大事です。
I’m proud of you.
訳)あなたを誇りに思うわ!
などと子どもに対して言ったり他人の前で自慢をします。日本ではちょっと使わない表現ですよね。この言葉を使うことによって、「自分でやり遂げた」「他人の力を借りずにできた」という達成感と満足感が生まれ、それが自立心を育てることにつながります。
日本の親はどうしても「自分の子は自分のもの」でいてほしい気持ちが根底にあり、心のどこかで「いつも頼ってほしい」と思う親も少なくないと思います。「まだ小さいから」とすべて先回りでやってしまっては、子供の自立を促すことはできませんね。見ていてもどかしくても、なるべく手を貸さず、自分でトライさせてみて、自分でできたときは、少し大げさでもいいので褒めてあげましょう!
子供がやってみたいと意思表示したことについては、それが子供のためになりそうなことなら、ぜひやらせてあげましょう。好奇心を示したことをやらせて、困難に直面してもあまり手助けせずに最後までやらせることで、「やり抜く力」が身に付きます。小さな成功体験を積み重ねることで、「やり抜く力」が身に付くと言われています。
まとめ
生活習慣もほとんど自立し、コミュニケーションも自由にできるようになってまだ手がかからなくなったように思えるこの年齢ですが、そうはいってもまだ「甘えたい」という幼い心も残っている時期です。
相手の気持ちや社会の事情がわかるようになるからこそ、自分の思い通りにならないと、「赤ちゃん返り」したかのように泣いたり、反抗したり、「バカ」などの言葉を使い困らせてしまうのです。
このころの子供は、大脳の発達に伴う子どもの中の変化の葛藤があるので、大人もおおらかな気持ちで受け止めてあげることが大切だと言えます。また、この時期の子供の発達には、大きな個人差があります。ほかの子と比べて言葉が遅い、運動能力が劣っている・・・などと過剰に反応しないで、その子のペースや個性を尊重し、温かく見守っていきましょう。
それでも、忙しかったりすると、そんな行動にイライラしてしまい、つい怒鳴ってしまうこともあるかもしれません。そんな時は、「口だけは達者になったけれど、まだ行動が追いつかずにもどかしのだな」と考えて、一息ついて接してみてはいかがでしょうか?