みなさんは「フォネティックメソッド」という外国語取得のためメソッドがあることを聞いたことはありますか?

人々は昔から、海外に行ってその国の言葉を話してコミュニケーションをとるために、どうしたらいいのかを考え、色々な学習法を研究してきました。

「フォネティックメソッド」もその一つです。

その特徴、効果などを徹底分析したいと思います。

1.フォネティックメソッドとは? その歴史は?

外国語教授法として一番最初に中世ヨーロッパで生まれたのが「文法翻訳法」といって、「文学作品を読めるように、教養として外国語を習得するため」に考えられた学習法でした。

その技法は、ひたすら単語を暗記して翻訳をする、といったものでした。

しかし、読むことはできるようになっても、これでは一向に外国語を話せるようにはなりません。

そこで、研究され開発されたのが会話を身につけるための教授法・学習法の「直説法」で、「フォネティックメソッド」はその「直説法」に基づいて編み出された方法です。

このメソッドを提唱したのは、

  • スゥイート H.Sweet(1845-1912)
  • イエスペルセン O.Jespersen(1860-1943)

の二人です。

そしてこの「フォネティックメソッド」が現代の発音学習の中心である「フォニックス」の基になっています。

フォネティックメソッドとは、「外国語を実際に話せるようになることを目的とした」学習法なのです。

2.フォネティックメソッドの特徴

2.フォネティックメソッドの特徴

一言で表すと、フォネティックメソッドは、「耳から音声を聞くこと」を重視した方法が特徴と言えます。

目で文字を見るのではなく、耳で音声を聞きながら学習し、そして口頭練習が重要であるとし、文字学習はそれに付随したものである、とした考えです。

その背景には19世紀半ばに「音声学研究」が盛んだったということが挙げられます。

有名な音声学者にヴィエトーw.vietor (1850-1918 )がいますが、彼は従来の文法翻訳をして読むだけの学習法を批判して、口頭での練習と音声学習が必要と説きました。

言語学者のスィートやイエスペルセンは、そのヴィエトーの流れを受けて、この「音声教育と口頭練習学習」を確立させていきました。

大きな特徴は、

  1. 音声教育と口頭練習学習の徹底
  2. 文字学習は音声学習に付属したものである

という考えに基づいています。

4.フォネティックメソッドの学習方法

4.フォネティックメソッドの学習方法

さて、フォネティックメソッドが「耳から音声を聞いて学習する」というのはわかりましたね。

では具体的にどうやって学習するのでしょう?

「聞く」のであれば・・・

  • 先生の発音の後に発語して練習する。
  • CD(現代ならYouTubeなど?)の後について真似をして発音する。

もしくは

  • 文字を見ながら発音をする。

といったイメージではないでしょうか?

しかし、フォネティックメソッドの学習法はこうなっています。

  • 先生やCDなどの真似をしない
  • 文字を見て発音しない
  • 発音記号を使って単語や熟語の発音練習をする

この発音記号が特に大きな特徴です。

発音記号 phonetic alphabet

phoneticは、発声学、音声学、音声組織、音標文字の意味を表し、言い換えるとsound alphabetになります。

文章は、単語に分解され、単語はアルファベットに分解されます。

アルファベットもさらに、国際発音記号に分解することができ、

これを知っていれば英語に限らず、他の外国語も発音することが出来る仕組みになっています。

英語の発音を表記するphonetic alphabet は、44個で、母音は17、子音は27となっています。

日本語は母音がaiueoの5つで、それと比べても非常に多いですよね。

発音記号の母音(vowels)とは日本語でいう「ア(a)・イ(i)・ウ(u)・エ(e)・オ(o)」のことです。

  • 短母音 (ア、イ、など)
  • 長母音 (アー、イーなど)
  • 複合母音 (アイ、エイなど)

そして子音、半母音などを組み合わせ発音するような仕組みです。

*母音ɪ, e, æ, ɒ,  ʌ, ʊ, iː, ɑː,  ɔː,uː,ɜ:, ə , eɪ, aɪ, ɔi, aʊ,  əʊ, ɪə, eə, ʊə

*子音p, b, t, d,  k, g, f, v , θ, ð, s, z,  ʃ, ʒ, h, tʃ, dʒ, m, n, ŋ,  l, r, j, w

5.フォネティックメソッドは子供も学習できるの?

フォネティックメソッドはフォニックスの基になっている、と最初に記しましたが、見てみると、小さい子供のフォニックスと似ているな、という印象を受けます。

フォニックスはアルファベットの綴りと発音の関係を学ぶ分野になります。

例えば、「bake」は「べイク」と発音し、「バケ」にはならないですし、chは「チ」「ク」となり、フランス語の「シュ」とは違うなど、つづり字を読む手法で、欧米では子供のころから身につけられるように学習しますね。

しかし、フォネティックは一言でいうと「音声学」で、フォニックスをもっと細かく拡張したものと言えます。

発語のメカニズムや音響分析、アクセントの研究などたくさんの分野を取り扱う学問ではありますが、早期教育でフォニックスを習得した高度な英語学習を求める子どもでも、コツコツと練習すれば、記憶することも可能で、もっと長い文章や、専門的な単語も発語することが可能だともいわれています。

6.フォネティックメソッドの効果

6.フォネティックメソッドの効果

英語を母国語としないノンネイティブでも、このメソッドによる発音の研究から、初めて見る単語や語彙を発音しながら覚えることが出来るメソッドですので、一人で学習することが可能になります。

また、言葉のアクセントや強弱、舌の使い方なども正確に近い発語を可能にすることが出来ます。

発音記号が英語の学習に役立つ理由は?

子どものフォニックスと共通して言えることですが、英語とは、スペル(つづり)と音の関係が組み合わされている言葉になりますね。

この関係は非常に複雑で、一定の法則はあるものの、習得するのが難しいと言われています。

しかし、発音記号を知っていれば、その単語がどのように発音するのかを知ることができ、実際に発語することが出来るのです。

例えば、libraryですと、発音記号にすると[láibrèri] となります。

「図書館」の意味ですが、日本語のカタカナにすれば「ライブラリー」と書けますが、これは実は正しい発音になりません。

最初のLは舌を上の葉の付け根にくっつけて、はっきりと「ラ」と発音します。

「ラ」「イ」「ブ」はカタカナ日本語のような発音になりますが、そのあとの「rè」を見てみましょう。

カタカナに置き換えると「レ」になります。

そして、「è」にアクセントがおかれているので、気持ち長めに発音をします。

そのあとの「R」の発音は、ご存じの通り「L」とは違いますね。

舌を丸めて、舌先が触れないようにして気を付けながら、のどから出た音が歯茎と舌の間から出るように発音します。

そして最後の「ry」も「R」の発音を保ちながら「リィ」と言います。

トータルしてカタカナで書くならば「ライブレェリィ」といった発音になり、非常にネイティブの発音に近づくのがわかりますね!

発音記号を覚えるのは大変ですが、一度覚えてしまえば、自分で正しい発音が出来る仕組みになってるのを知ると、フォネティックメソッドが英語の学習に役立つということが言えるのではないでしょうか?

発音記号は意外と簡単?挑戦してみましょう!

英語辞書(現代では電子辞書でしょうか?)で単語をチェックするときに、発音記号を読みますか?

見たこともない特殊文字が入っていたりスラッシュ//などがあったり、[ ]というカッコに囲まれていますね。

つい、音声機能とかで聞いて真似する、ということも多いかもしれません。

しかし、発音記号のほとんどがローマ字読みなんです。

例えば

  • name [néim]ネイム
  • blue [blú:] ブルー

[’ ] はアクセント記号で、[:]は長音記号で伸ばします。

もちろんたくさんの難しい記号がありますが、覚えていけば、日本人が話すカタカナ英語から脱出することも不可能ではないかもしれません!

まとめ

筆者が大昔(笑)英語を習い始めた時は、確か発音記号の授業があったように記憶しています。あまり覚えていない、ということはそんなに厳しく教えられていなかったからかもしれません。

時代とともに、学習する手段も、指先一つで音声が聞けたり、また声を録音したりしてチェックする、など便利に変わってきました。いつの間にか発音記号の存在すら忘れていた気がします。

しかし、遠い昔、海外の言葉を音声を聞かなくても発語できるような仕組みを作ったこのメソッドは、改めて調べてみると、相当画期的であったろうと思いますし、フォニックスにしろフォネティックにしろ、あまり日本では積極的に取り入れられてこなかったのが、日本人の発音コンプレックスに繋がっているのかもしれない?という想像をしてしまいました。

海外に行って知らない言葉で話せるようになりたい!という気持ちは今も昔も変わらないんですね。

生涯学習、頑張っていきたいと思いました!