近年、保護者や友人のご家族などからよく相談されことに、「うちの子は発達障害じゃないでしょうか?」というお話が増えてきました。
「落ち着きがない」「人の話を聞かない」「他の人がしていることに興味を示さず、自分の世界にいる」など「子どもだから落ち着きはないでしょうが・・・」となんとも判断しがたい状況を目にすることがあります。
さて、「発達障害」とはいったいどういう状態をいうのでしょうか?
発達障害でも英語を習得することは可能なのでしょうか?
検証してみましょう!
発達障害(developmental disorder)とは?
発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによる障害を言います。
発達障害は外見からは判断しにくく、症状や困った点などは十人十色と言われています。
得意・不得意の特性と、その人が過ごす環境や周囲の人との関わりのミスマッチから、学校生活や社会生活に困難を発生します。
そのため、あまり理解のない周りの人たちから、「単なるわがままだ」「親が甘やかしているから」「怠け者だ」というレッテルを張られることも少なくありません。
しかし昨今、研究や、悩みを持つ親同士が情報を共有するなどの活動も盛んになり、その結果、環境を調整したり、特性に合った学びの機会を用意することで、軽減されたり、得意な面を生かしていくことができると言われるようになりました。
発達障害の種類
(Types of developmental disorders)
最近よく話題になる「発達障害」にはどんな種類があるのでしょうか?
ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
注意欠如・多動性障害
ADHDは、注意欠如・多動症/多動性障害と呼ばれ、簡単に言うと、集中力がない(注意欠如)・じっとしていられない(多動症)
思いついたら即行動する・突飛な行動をする(衝動性)といった症状がみられます。
2013年には正式な診断名を「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」としました。
ADHDを持つ子どもの脳では。前頭葉や線条体と呼ばれる部位のドーパミンという物質の機能障害が想定され、遺伝的要素も関係しているという研究発表もあります。
ASD(Autism Spectrum Disorder)
自閉症スペクトラム障害
ASDは、自閉症・アスペルガー症候群・広凡性発達障害などが統合されてできた診断名です。
社会的なコミュニケーションや他人とのやり取りができない、視線が合いにくい、自分のやり方にルールがあり、違うことが起きるとパニックになり、かんしゃくを起こすなど、社会生活や集団生活に支障をきたすことが多い症状が現れます。
LD(Learning Disabilities)
学習障害
全般的に目立った知的発達に遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」などの能力に困難が生じる発達障害のことを指します。
目安としては、学習達成度の遅れが1~2学年相当あるのが一般的だと言われています。
判断が難しく、「努力が足りない」「親の指導が悪い」などと見過ごされることも多く、結果子どもが自信を失い、その後の社会生活にも影響をきたす恐れがあります。
発達障害の特徴
(Characteristics of developmental disorders)
発達障害の子どもの年齢別の特徴を、例として挙げてみましょう。
しかし、前述したように、発達障害の症状は十人十色、非常に繊細に違うものですので、あくまで例としてご覧ください。
乳児期(乳幼児~1歳ごろまで)
抱っこやスキンシップを嫌がる、あやしても笑わない、ちょっとした物音でも起きてしまう。
幼児期(1歳ごろ~6歳ごろまで)
話していても目を合わせない、ちょっとしたことでパニックになる、友達や先生などと一緒に集団行動ができない、急に走り出したり、暴れることがある。
就学期(小学校~中学校)
授業をじっと聞くことができず、動き回る、文字が読めない、書くことが苦手である、一つのことにこだわりが強く、自分のルールに固執する、順番やルールが守れない
思春期(中学校~高校)
学習面の遅れ、偏りが目立つようになる、同級生などとコミュニケーションが取れず、友達関係を築けない、自分の思い通りにいかないとパニックを起こす、自分の関心のあることにはものすごく集中するが、興味のないことにはまったく関心を示さない、などの特徴がみられます。
発達障害児の接し方
(How to treat children with developmental disorders)
自分の子どもが発達障害である、または可能性があると知ったとき、親ですから悩みます。
「見た目は普通なのに、行動がおかしいから周りから理解してもらえない」「子供の将来を見据えて、何をしたらいいのかわからない」このような悩みがエスカレートして、親の方が鬱状態になる、というケースも聞きます。
研究の結果、「発達障害は周りのサポートで軽減されたり、いいところを伸ばすことが可能である」と言われています。
発達障害の子どもの接し方で大切な役割は、やはり一番身近な保護者になります。
- 具体的に説明・支持をする
発達障害の子どもは、「お母さんは(この人は)本当はこう思っているんだ」と想像したり、空気を読むことが大変苦手です。
例えばお友達と数名で遊んでいるときに、もう帰る時間になると、「ほら、みんながお片づけをしているよ」と言っても伝わりません。
「この遊んだおもちゃを片付けようね」と、まさに今「何をどうしたらいいか」具体的に言うのがポイントです。 - 注意欠如型の場合、忘れ物などがないかひとつひとつ一緒に確認してあげましょう。
- 突然起こることに対処できないので、衝動的行動にならないように「この子が終わるまで順番に待っていようね」「車が多いから気を付けて、手を挙げて横断歩道を渡ろうね」など細かい言葉かけをしましょう。
- 話ことばだけでは足りないときは、視覚で確認できるように記号や絵などで表してみましょう。
- 「どうしてできないの?」「他の子はできるのに」というネガティブな言葉は禁句です。
- こだわりが強い分、興味のあることを伸ばすように温かく見守っていきましょう。
発達障害と英語学習
(Developmental disorders and English Language Learning)
普段の生活も難しい発達障害の子どもは、英語学習ができるのでしょうか?
発達障害の子どもが英語を学習するにあたって、難しいと思われることは
- 発音ができない(うまく話せない)
- 分の仕組みがわからないので、文法が理解しにくい
- 単語が覚えられない
などがあります。
発音を克服
聞き流しのような英語を、なるだけ決まった時間に、決まったものをある一定期間続けて聞かせてみましょう。
それがルーティーンになって、英語の耳が発達することも期待されます。
また、「フォニックス」が発達障害の子どもに効果があるという話もあるようです。
文法を克服
文法は一つつまずいたものを放っておくと、ますますわかりにくくなります。
主語+動詞(be動詞)+名詞 などの基本文からゆっくりと時間をかけて、何度も仕組みを考える時間を与えてあげましょう。
カードなどを使って組み立ててみるのもいいかもしれません。
単語を克服
学習障害が疑われるお子さんは特に苦手な暗記。
「一日に2,3個づつ覚えていこう!」と目標を立て、表などを作っていくつ覚えられたか記録するのもいいかもしれません。
また、本人が興味がある絵などがついた、カードを利用するのもいいですね!
あせらず、ゆっくる進めるのがコツです!
発達障害の有名人
(Famous people with developmental disorders)
「発達障害も個性」と、公表して大成功を収めている有名人もたくさんいます。
- スティーブ・ジョブズ・・・アスペルガー症候群
- トム・クルーズ・・・LD(学習障害)
- トーマス・エジソン・・・ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- 黒柳徹子・・・ADHD(注意欠如・多動性障害)、LD(学習障害)
- アインシュタイン・・・アスペルガー症候群
こうしてみると、天才と言われた方々が多いですよね!
まとめ
筆者の生徒にも数名発達障害のお子さんがいました。
日常生活に支障が出ることも多くありましたが、例を挙げると、その中の一人は「数字」が大好きで、そろばんを習い、5歳くらいで3桁の足し算を頭の中で暗算をしていました。
言葉の遅れはあったものの、好きな計算を英語でさせてみたら、英語で質問した問題を英語で答えるようになり、周りを驚かせたことがありました。
お母様の熱心なケアで、今も好きな勉強に励んでいる姿を見ると、発達障害は決して「障害」とは言い切れないのではないか、と思っています。
「生きにくい」「育てにくい」と苦労はあるとは思いますが、子どもの特徴を生かした道を一緒に探してあげられるようにみんなで見守っていきたいですね!