ロシア音楽はテレビやコマーシャルなどでよく使われていて、私たちの耳にも馴染んでいる音楽です。
主に使われる、「バラライカ」という楽器をご存じでしょうか?
その独特な音色は、広大なロシアの国を物語るような美しい響きを持っています。
バラライカ音楽の歴史
History of Balalaika Music
バラライカは、ロシアの伝統楽器のひとつで、特徴的な三角形のボディと3本の弦を持つ弦楽器です。その起源は16世紀にさかのぼりますが、現在の形に整えられたのは19世紀です。最初は農民や庶民が使う楽器として広まり、宮廷音楽や正式なオーケストラの楽器としては扱われていませんでした。
バラライカは、もともと素朴な民謡やダンス音楽の伴奏楽器として使われ、庶民の間で広く親しまれていました。19世紀末、ロシアの音楽家ヴァシリー・アンドレエフがバラライカの演奏技術を改良し、バラライカアンサンブルを組織したことで、バラライカ音楽は正式な舞台に登場します。これにより、バラライカはロシアの民族楽器として国際的にも注目を集め、クラシック音楽の分野にも広がりました。
バラライカに使われる楽器
Instruments used for Balalaika
バラライカは、ロシアを象徴する民族楽器で、三角形のボディと3本の弦を持つ楽器です。弦楽器のファミリーとして、バラライカには異なるサイズがあり、これらがアンサンブルで用いられます。
プリマバラライカ
最もよく使われるサイズで、通常ソロ演奏やメロディラインを担当します。
セカンドバラライカ、アルトバラライカ
中音域を担当し、伴奏やリズムを補完します。
バスバラライカ、コントラバスバラライカ
低音域を担当し、リズムやベースラインを提供します。コントラバスバラライカは非常に大きく、床に置いて演奏します。
ドムラ
バラライカに似た、丸いボディを持つ3弦または4弦の弦楽器。
アコーディオン(バヤン)
伝統的なロシア音楽で広く使われる手風琴。
ギター(ロシアン7弦ギター)
ロシア独特の7弦ギターが伴奏に使われることがあります。
バラライカの奏法とテクニック
Balalaika Technique and Technique
バラライカの奏法は、シンプルながらも表現力豊かな音を引き出すために独特の技術を駆使します。
指でのストローク(プルッキング)
右手の指で弦をはじく基本的な奏法。爪を使って力強く弾く「トレモロ奏法」がバラライカの特徴的な音色を生み出します。このトレモロは、連続して弦を素早く弾くことで、独特の響きを生み出します。
ダウンストロークとアップストローク
指で下に弦を弾くダウンストロークと、上に弾くアップストロークを組み合わせ、リズムを強調します。
ハーモニクス
弦の一部を軽く押さえて弾くことで、澄んだ高音を出すテクニック。
グリッサンド
指をスライドさせながら音をつなげることで、滑らかな音の連続を作ります。
また、バラライカの弦はナイロン製であり、これが柔らかく、優しい音色を作り出す要因です。
バラライカ音楽の代表曲
Typical Balalaika Music
バラライカはロシアの民謡やクラシック音楽でも広く使われ、多くの名曲が生まれています。以下はバラライカで演奏される代表的な曲です。
「カリンカ (Kalinka)」
ロシア民謡の中でも最も有名な曲のひとつで、バラライカでの演奏が非常に人気です。軽快なリズムとリフレインが特徴的で、聴く者を踊らせるような力があります。
「カチューシャ (Katyusha)」
戦時中に作られたこの愛国的な歌は、バラライカ演奏に適しており、演奏者と観客の感情を共に揺さぶる名曲です。
「二人のギター (Two Guitars)」
このロシアの伝統的なジプシー音楽は、バラライカでの演奏が華やかで、技術的な技巧を見せるためによく演奏されます。
「ドクトル・ジバゴ (Doctor Zhivago)」のテーマ
映画『ドクトル・ジバゴ』で使われた音楽の中には、バラライカが登場する場面があり、この楽器の存在感が大いに発揮されています。
バラライカ演奏で使用されるその他のテクニック
Other Techniques used in Balalaika Performance
トレモロ
バラライカの演奏において最も有名なテクニック。非常に速く、繰り返し弦をはじくことで、音の持続感を出します。
ハンマリング・オン、プリング・オフ
弦を押さえる左手の指を使って、弾かずに次の音を出すテクニックです。これにより、滑らかな音の連続が可能になります。
ポルタメント
指を滑らせて音を変化させ、歌うような音を作り出すテクニックです。
バラライカの文化的背景
Cultural Background of Balalaika
バラライカは、ロシアの風土と人々の生活と密接に結びついています。特に農村部の民謡やダンス音楽の伴奏として、祝祭や農業の収穫期などに演奏され、家族やコミュニティが集まる場で重要な役割を果たしてきました。
この楽器の音色は、ロシアの広大な風景や厳しい冬の生活と調和するような、暖かみと哀愁を帯びた響きを持っています。バラライカの音楽は、ロシアの魂そのものを表現すると言われ、ロシア文化の象徴的存在として、演奏者や作曲家に大切にされています。
バラライカを使った有名作品
Famous Works using Balalaika
バラライカの音楽は、ロシアの映画や国際的な作品において、ロシアの文化や情緒を表現するためにしばしば使われてきました。代表的な作品には以下のものがあります。
映画『ドクトル・ジバゴ』(1965年)
ロシア革命を描いた映画『ドクトル・ジバゴ』でも、バラライカが登場し、ロシアの哀愁や激動の歴史を音楽で表現しています。作曲家モーリス・ジャールの手によるこの作品のサウンドトラックは、映画音楽としても高い評価を受けています。
バラライカの音楽は、このような映画で使用されることで、ロシアの文化や歴史的な背景を視覚的、聴覚的に感じさせる力強い象徴となっています。
映画『バラライカ』(1939年)
アメリカ映画『バラライカ』は、ロシア革命を背景に、ロシアの将校とオペラ歌手のラブストーリーを描いた作品です。この映画の中では、バラライカが象徴的な役割を果たし、ロシアの民族音楽が重要な要素として使われています。
子どもでも楽しめるバラライカの曲
Balalaika Songs that even Children can Enjoy
バラライカの音楽には、子どもでも楽しめる軽快なリズムと明るいメロディの曲がたくさんあります。特にロシアの伝統的な子ども向けの民謡や踊りの曲は、バラライカの素朴な音色がよく合います。
「カチューシャ(Katyusha)」
ロシアの有名な民謡で、戦時中に愛された曲でもありますが、その明るいメロディと簡単な歌詞で、子どもたちが歌ったり踊ったりするのにぴったりです。バラライカによる演奏も盛り上がり、親しみやすいです。
「カリンカ kalinka」
リズミカルなこの民謡は、ロシアを代表する楽曲の一つで、子どもたちにも楽しめる曲としてよく知られています。バラライカの軽快なリズムが特徴で、踊りながら楽しむのに最適な曲です。
現代の音楽との融合
Fusion with Contemporary Music
バラライカは、現代音楽にも取り入れられており、特に民族音楽と現代音楽を融合させる試みが行われています。クラシック音楽、ロック、ポップス、さらにはジャズともコラボレーションが行われ、バラライカの音色は様々なジャンルの音楽に新しい息吹を与えています。
一部の現代アーティストは、エレクトリックバラライカを使用し、電子音楽やロックとの融合を図っています。たとえば、ロシアのバンド「Terem Quartet」や「Beloe Zlato」などは、バラライカを使って現代的なアレンジを施し、若者にも親しまれる音楽を創り出しています。
また、クラシック音楽の分野では、バラライカとオーケストラを組み合わせた演奏もあり、伝統と現代が調和する新しい音楽として注目されています。特にバラライカオーケストラは、ロシアのコンサートホールでの定番となっており、国際的にもその魅力が広がりつつあります。
まとめ
バラライカ音楽は、ロシアの伝統文化を象徴するものであり、その歴史的背景と現代の音楽との融合によって、今なお多くの人々に愛されています。
その素朴でありながら情感豊かな音色は、ロシアの魂を伝え、世界中で親しまれています。
映画音楽やクラシック音楽とのコラボレーションによって、その魅力は広がり続けており、子どもから大人まで楽しめる音楽として、バラライカの音楽はこれからも多くの人に受け入れられることでしょう!