かつて「地方は英語を学ぶ環境が整っていない」とよく言われてきました。
今や「地方だから英語に触れられない」という考え方は過去のものになりつつあります。
むしろ地方は、ゆったりとした生活環境や家庭との距離の近さを生かし、親と園が協力して「自然に英語が身近にある生活」を作り出せる土壌が整っています。
近年の地方の英語環境の変化

地方は大都市圏に比べると英語教室の数が少なく、ネイティブ講師に直接学べる機会や国際的なイベントに参加できるチャンスも限られていました。結果として「英語は都会に行かないと身につかない」「地方の子どもは不利だ」という声も珍しくありませんでした。
しかし近年、状況は大きく変わりつつあります。タブレットやスマートフォンで使えるデジタル教材は安価で質の高いものが増え、動画配信サービスや音声アプリを通じて、子どもたちは家庭にいながらネイティブの発音や表現に触れられるようになりました。さらに、オンライン英会話や国際交流プログラムの普及により、地方に住んでいても世界中の人と直接やりとりできる環境が整ってきています。
また、保育園や幼稚園でも、日々の活動に簡単な英語を取り入れる取り組みが広がっています。たとえば「おやつの時間に英語の歌を流す」「行事を英語の絵本で楽しむ」といった工夫です。こうした小さな実践が積み重なり、家庭と園の両方で自然に英語が耳に入る機会が増えてきました。
英語学習・オンライン利用の拡大
- 有料英語学習サービスを利用している人で、「オンライン英会話」が最も多く利用されているサービスであり、51.2% の人がオンライン英会話を使っている。これが教室型英会話(36.2%)より多い。(2024年時点)
- また、「オンライン英会話」の利用経験者は約4割(37.0%)にも及ぶという調査もあります。 (2024年時点)
- 「英語を話す機会が増えた」と感じている人の割合も増加しており、2024年11月から2025年5月にかけて、66.4% → 70.1% と伸びています。これは、仕事、オンライン接続、訪日外国人とのやり取りなど多様な原因が挙げられています。
これらのデータは「場所を選ばない英語学習手段(オンライン・アプリ・動画)」が支持されており、地方でも利用しやすくなってきていることを示しています。
英語/英語教育レベルの地域差・学力の変化
- 文部科学省の調査によると、2024年度の「英語教育実施状況調査」で、中学生・高校生ともに国が設定する目標水準を超える英語力を持つ生徒の割合が前年度より増え、両者ともに5割を超える水準となりました。これは調査開始以来、最高値。
- ただし自治体間でのレベル差は依然として大きく、特に「英語教員の英語力」「言語活動(コミュニケーション重視の活動)」の実施頻度や質には地方と都市部でばらつきが見られるところもあります。
家庭でできる英語環境づくりの工夫

英語絵本を生活に取り入れる
毎晩の読み聞かせのうち1冊を英語にするだけでも効果があります。内容をすべて理解できなくても、音のリズムやイラストで物語を感じられるため、子どもにとっては「楽しい時間」として定着します。
日常の声かけを英語でひとこと
「Good morning」「Let’s wash hands」など、短いフレーズを毎日の習慣に組み込むことで自然に耳が慣れていきます。完璧な文法よりも、場面と音の結びつきが大切です。
オンラインで世界とつながる
ビデオ通話を活用し、海外の子どもや英語を話すボランティアと交流する取り組みも増えています。月に1回でも本物の英語に触れることで「教室に通えない=不利」という感覚を払拭できます。
保育園でできる英語の取り組み

英語の歌や手遊びを取り入れる
園で歌う歌の一部を英語にするだけでも、子どもたちは自然に英語の音を楽しみます。リズムに合わせて体を動かすことで記憶にも残りやすくなります。
季節の行事と英語を組み合わせる
ハロウィンやクリスマスなど、行事に合わせて英語のフレーズを取り入れると特別な雰囲気とともに印象づけられます。地方の園でも簡単に実践できる方法です。
保育士が英語を“学ぶ姿”を見せる
保育士自身が簡単なフレーズを学び、子どもと一緒に使うことで「間違えてもいい」「一緒に楽しむ」という姿勢を共有できます。子どもは大人の姿から学び取る部分が大きいのです。
地方ならではの強みを生かす!自然体験や地域交流 × 英語
都会にはない魅力を持つのが地方の子育て環境です。広い自然や地域の人とのつながりを生かせば、英語学習も「机の上の勉強」ではなく、もっとリアルで楽しいものに変えられます。
自然体験を英語で楽しむ
畑や田んぼでの体験
収穫体験や農作業をしながら「apple」「carrot」「water」「sun」など自然に関する英単語を使うと、実物と結びつくので記憶に残りやすくなります。
アウトドア活動
キャンプやハイキングで「Let’s go」「Look at the sky」などの簡単な英語を声かけに取り入れると、遊びと英語が一体化します。
地域の人との交流を英語につなげる
外国人観光客とのちょっとした会話
地方でも観光地では海外からの訪問者が増えています。地域のイベントや観光スポットで「Hello」「Where are you from? 」など簡単なフレーズを交わすだけでも、子どもにとっては「使えた!」という成功体験になります。
国際交流イベントを家庭で再現
地域で国際交流協会や留学生支援団体がイベントを行っていることもあります。参加できない場合でも、家庭や園で「インターナショナル・デー」を企画し、地域の人に来てもらって英語で遊ぶ場を作ることもできます。
地域文化と英語の融合
方言と英語を比べて楽しむ
例えば地元の言葉で「ありがとう」と英語の「Thank you」を比べて遊ぶと、多言語への興味が育ちます。
祭りや伝統行事を英語で紹介
「This is a festival. 」「We dance with drums. 」など、自分の地域文化を英語で言う体験は、自己表現と英語の両方を育てます。
地方は「自然」「地域のつながり」「文化」という豊かな資源を持っています。それを英語と掛け合わせると、子どもは「英語を学ぶ」のではなく「英語で楽しむ」経験を積むことができます。これは都会の英語教室では得にくい、地方ならではの強みといえます。
地方の暮らしを英語で楽しむ!具体的なアクティビティ例

野菜スタンプ遊びを英語で
- やり方:畑や市場で手に入る野菜(オクラ、レンコン、ジャガイモなど)を切ってスタンプに。画用紙に押しながら「This is green」「Circle」「Star」などの英語を添えてみます。
- ポイント:実物を手で触りながら色や形を英語で言うことで、感覚的に覚えやすくなります。
英語で「お祭り屋台ごっこ」
- やり方:地域のお祭りにちなんで「たこ焼き」「かき氷」などを紙やおもちゃで再現。店員役が「Here you are」、お客さん役が「Thank you」とやりとりする簡単な英語を使います。
- ポイント:ごっこ遊びは盛り上がりやすく、子どもが英語を自然に声に出せるチャンスになります。
自然探検ミニハイク
- やり方:家の周りや公園を散歩しながら「tree」「flower」「river」「bird」など自然の単語を探して言ってみる。写真を撮って「English Nature Album」を作ると復習にもなります。
- ポイント:実物と英語を結びつけることで、机の上の単語学習よりも定着率が高まります。
地元の人と「英語インタビュー」
- やり方:地域のおじいちゃん・おばあちゃんに、子どもが英語で簡単な質問を投げかける遊び。実際のやりとりが難しい場合は、大人がインタビュアー役になって再現するだけでもOK。
- 例:「What is your favorite food? 」「Do you like fish? 」
- ポイント:人と関わる楽しさと英語を組み合わせることで「英語はコミュニケーションの道具」という実感が湧きます。
季節行事 × 英語クラフト
- やり方:節分の鬼のお面や七夕の短冊など、地域の行事に合わせた工作をしながら「red」「star」「big」「small」などの英語を加える。
- ポイント:伝統文化を大切にしながら英語をのせることで「日本と世界のことば」を同時に楽しめます。
まとめ
地方では、英語教室が限られている分、家庭と保育園が連携して「生活の中に英語を取り入れる」工夫が重要になります。
特別な教材や大きな予算がなくても、絵本、歌、短いフレーズの積み重ねが子どもにとって大きな力になります。
今や英語環境は都市か地方かに左右されるものではなく、親と園の工夫次第で豊かに広げられる時代です。
小さな一歩が、子どもの未来の大きな可能性につながります。
