子どもに英語を学ばせたいと思っても、「地方に住んでいて環境が整っていないから不利なのでは?」と感じる親御さんは少なくありません。

けれども、英語とのふれあいは都会か地方かに関わらず、子どもの心の育ち方に合わせて工夫していけるものです。

「英語が身近にない=悪いこと?」という誤解をほぐす

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「英語が身近にない=悪いこと?」という誤解はなぜ生まれるのでしょうか。

英語が自然にあふれている都市部と比べて、地方は「英語にふれるチャンスが少ない」と思われがちです。ですが、それは必ずしも「悪いこと」ではありません。

英語を“急いで身につける”よりも、安心してじっくり取り組める環境のほうが、子どもにとっては大きなプラスになります。地方の落ち着いた暮らしや地域の人とのつながりの中で、子どもは「自分のペースで学んでいいんだ」と感じやすいのです。

学校教育や受験制度の影響

日本の英語教育は長く「早く始めた方が有利」という考え方に影響されてきました。
受験や資格試験でも「単語量」「文法知識」が重視されるため、親御さんは「小さいうちからたくさん触れておかないと出遅れる」と思いがちです。結果として、「英語が日常にない=学習が遅れる=不利」という誤解が広まりやすくなっています。

都会と地方の“差”を意識してしまう

都市部では英会話スクールやインターナショナルなイベントが多く、外国人との交流の機会も比較的豊富です。一方、地方ではそうした環境が少ないため、親御さんが「都会と比べると劣っているのでは?」と感じやすくなります。
実際には、都会にいても英語が自然に話せるようになるわけではないのに、「身近にない=チャンスが奪われている」という思い込みにつながってしまうのです。

メディアや広告からの刷り込み

「0歳からの英語教育」「英語漬け環境でバイリンガルに」といったキャッチコピーは、親御さんの不安を刺激します。特にSNSやインターネットで「幼少期から英語にふれている子の成功例」が拡散されやすいため、「英語がない環境は遅れている」と錯覚しやすいのです。

「日本語だけでは不安」という心理

グローバル化が進む社会では「英語ができなければ将来困る」というイメージが強くあります。そのため「今この瞬間に英語に触れていない=将来の可能性を狭めてしまうのでは」という不安が親御さんの心に芽生えます。
この「不安」こそが、英語が日常にないことを“悪いこと”のように感じさせてしまう大きな要因です。

「学び=都会的・特別なもの」という固定観念

日本では「外国語を学ぶこと=特別なこと」「都会的な教育」というイメージもまだ根強く残っています。そのため「自然に英語がある環境に育つ子=恵まれている」「そうでない子=不利」という対比が生まれ、誤解を強めてしまうのです。

日常の小さな英語体験が子どもの宝物になる

英語の習得は特別な教材や環境だけに頼る必要はありません。

  • スーパーで商品パッケージの英語を一緒に読む
  • 絵本を親子で楽しむ
  • 自然の中で「bird」「flower」などシンプルな単語を口にしてみる

こうした小さな体験は、子どもにとって「遊び」として心に残ります。後になって「英語って楽しい」と思い出す原点になり、無理なく学びの芽を育んでくれるのです。

地域に根ざした育ちと英語力は両立できる

地域に根ざした育ちと英語力は両立できる

「英語を頑張ると、日本語や地域とのつながりが薄れてしまうのでは?」と心配する親御さんもいます。しかし、地域の文化や人との関わりを大切にすることと、英語を学ぶことは矛盾しません。
むしろ、自分のルーツを大事にする子どもほど、異なる言語や文化を尊重できるようになるのです。地元の祭りや自然体験など、日本語と地域文化をベースにした育ちは、英語を学ぶときの「自分らしさ」を支えてくれます。

子どもが地域に根ざした暮らしを楽しむことと、英語を学ぶことは決して対立しません。むしろ、「自分のふるさとを英語で伝えられる子」は、国際社会でも強い個性とアイデンティティを持つことができます。

地元の行事を英語で紹介する

例:子どもがお祭りに参加したあとに「This is a festival. 」「We dance with drums. 」と簡単に英語で言ってみる。
→ 地域文化を誇りに思いながら、外の世界に伝える表現力も養える。

農作業や自然体験に英語をプラス

例:田植え体験で「rice」「water」「mud」を覚えたり、山登りで「mountain」「tree」「river」と口にしてみる。
→ 地域にある自然や仕事を英語で表すことで、「自分のふるさとを英語で紹介できる」力につながる。

 地域の人との関わりを国際的に広げる

例:地域に住む外国人や旅行者に、子どもが「Hello!」と声をかけ、親が「This is our local festival. 」と続ける。(親も一緒に国際交流)
→ 地域社会のあたたかい交流が、国際的なコミュニケーションの入り口になる。

伝統遊び+英語

例:けん玉やお手玉をしながら「One, two, three」と数える。
→ 日本の遊びに英語を少しのせるだけで、文化とことばの両方を楽しめる。

地域食材や料理を英語で言ってみる

例:「Miso soup(味噌汁)」「tofu(豆腐)」「Green tea(お茶)」
→ 地元の食を英語で紹介できることは、海外の人と話すときに大きな自信になる。

親ができるのは“環境を整えること”ではなく“安心を与えること”

親ができるのは“環境を整えること”ではなく“安心を与えること”

親ができる一番のサポートは「教材や教室をそろえること」ではなく、子どもが英語に触れるときに“安心できる心の居場所”を用意することです。
子どもにとって英語が「親に笑顔で受け止めてもらえた体験」と結びつけば、それは将来につながる大きな財産になります。

わからなくても大丈夫と伝える

子どもが英語を聞いて「わからない」と言ったとき、
「全部わからなくてもいいんだよ。ひとつでも聞けたらすごいね」
と受け止めてあげる。
→ “できていない”ではなく“できている部分”を認めることで、安心感が生まれる。

一緒に楽しむ姿勢を見せる

「ママ(パパ)も英語はまだ勉強中なんだ。一緒にやってみよう!」
と声をかけながら歌ったり絵本を読んだりする。
→ 親が“先生”ではなく“仲間”になることで、子どもはプレッシャーを感じずに取り組める。

小さな達成を大げさにほめる

「Good! 」「言えたね!」「すごい!」とシンプルな英語や笑顔で反応する。
→ 英語を使う=楽しい、うれしい体験として心に残る。

 完璧さを求めない

発音が多少違っても、「通じれば大丈夫だよ」と伝える。
→ 親が“間違えてもいい”という態度を示すことが、子どもの挑戦心を守る。

 学びよりも安心の時間を優先する

疲れている日や気分がのらない日は「今日はやめておこうか」と休ませる。
→ 「無理して続けなくていい」という安心感が、長く学びを続ける力になる。

子どものペースを尊重した英語との付き合い方

日本から離れて海外で子育てをするために、ということに視点を合わせて執筆

英語は「早く」「たくさん」やれば良いというものではありません。子どもによって、興味を示す時期も学び方も違います。

  • 歌が好きなら英語の歌を一緒に歌う
  • お話が好きなら英語絵本を取り入れる
  • 体を動かすのが好きなら英語の指示遊びを試してみる

こうした子どもの個性に合わせたペースが、一番の学びになります。

地方の子どもたちの生活は、自然・移動・地域行事・家族の時間といったリズムで動いています。そのリズムに無理なく英語を重ねることで、「がんばって勉強する英語」ではなく「暮らしの中にある英語」になっていきます。

地方ならではの具体例をあげてみましょう。

自然体験のあとに英語

地方の子どもたちは、放課後に外で虫取りをしたりと自然と関わる時間が多い。
→ そのときに「This is a beetle! (これはカブトムシだよ)」と一言添えるだけで、遊びや暮らしのリズムの中に英語が自然に入る。

移動時間を英語時間に

バスや車での移動が長い地域も多い。
→ 通学や習い事の送迎のときに、英語の歌やオーディオブックを流すと、特別な勉強時間をつくらなくても無理なく英語に触れられる。

早寝早起きリズムに沿う

地方は都市部に比べて夜が早い家庭も多い。
→ 英語絵本の読み聞かせを「寝る前の習慣」にすると、静かな時間に無理なく取り入れられる。

学校や地域の人との交流を利用する

小規模校や地域交流の場で英語に触れる機会をつくる。
→ 例えばALTの先生に会ったときに「Hello!」と声をかける練習をしておき、実際に言えたら大きくほめてあげる。

まとめ

地方に住んでいるからといって、英語の学びに不利になるわけではありません。

むしろ、子どもの心を大切にしながら無理なく取り入れられる“ゆとり”が地方の強みです。

英語を「競争」ではなく「ふれあい」として楽しむ。

その視点を親が持つことで、子どもは安心して言葉の世界を広げていけるのです。