マザーグースといえば、幼児教育従事者でなくとも誰もが知っている物語であったり、歌であったりと、大変幅広く知られていますね。
でも、この「マザーグース」を一言で表そうとすると、あまりにも幅広く、簡単にはいきません。
「マザーグースって人なの?」「童謡集なの?」素朴な疑問が多い「マザーグース」に迫ります!
マザーグースってなあに?
マザーグースはもともとはイギリスやアメリカで子ども達のために作られた童謡集になります。
私たちがお母さんに歌ってもらった、子守歌のようなとても分かりやすい、覚えやすい作品が多く作られています。
その数はなんと1000以上もあるというから驚きですね!
マザーグースの名前の由来
マザーグースの名前の由来として知られているのは、18世紀の半ば、フランスの詩人の「昔の物語」をイギリスのロバート・サンバーが英訳した童話集が人気を博したことが始まりです。
サンバーはこの英訳本を出版するにあたり、扉絵に描かれたフランス語の「マ・メール・ルアー(ガチョウおばさん)」という言葉を、英語版で「マザー・グース」としたのです。
そしてサンバーの童話集が人々に浸透し、人気が出てきたのに目を付けた出版屋であったジョン・ニューベリーが自ら集めて書物にした童話集に、「マザーグース」の名を借り受けたことで、
「マザーグース」はイギリス伝承童話集の代名詞として、世界中に広がっていきました。
童謡に限ったものではなく、子守歌・おまじない・なぞなぞ・ナンセンス・遊び歌・不思議歌・物語歌など様々な伝承童謡の総称が「マザーグース」なのです。
マザーグースの代表作
- ”London Bridge is falling down”(ロンドン橋おちた)
- “Twinkle Twinkle Little Star” (きらきら星)
- “Humpty Dumpty” (ハンプティ・ダンプティ)
- “Mary had a Little Lamb” (メリーさんのひつじ)
- ”Sing a Song of Sixpence”(6ペンスの歌)
- ”Three Little Kittens” (3匹の子猫)
- “The ants go marching” (アリの兵隊)
- “ABC song”(ABCの歌)
- ” Hush little baby” (おやすみ赤ちゃん)
- ”The House that Jack Built”(これはジャックが建てた家)
- ” Ten Little Indians”(テン・リトル・インディアンズ)
日本語に和訳されて歌い継がれていた曲も、実はマザーグースだった!というのが
見つけられますね。
マザーグースが社会に与えた影響
マザーグースの歌の内容や、詩を引用した映画やアニメ作品は非常に多く作られています。
例を挙げますと
- Humpty Dumpty
「インクレディブル・ハルク」「ルイスと未来泥棒」「コールドケース 未解決事件簿」ローラースケート - Merry had a little lumb
「ベッドタイストーリー」 - Baa, baa, black sheep
「NCISネイビー犯罪捜査班」極秘調査船キメラ号 - Hush, little baby, Don’t say a word
「NCISネイビー犯罪捜査班」レクイエム - Who killed Cock Robin?
「シャッフル」 - What are litle boys made of?
「メンタリスト」赤レンガの虚栄「ナイトミュージアム2」
また、マザーグースをもとに作られた小説などもあります。
代表作には
- 「不思議の国のアリス」(原題:Alice’s adventures in wonderland)
1865年に発表されたルイスキャロルの児童小説で、その後続編として「鏡の国のアリス」が作られました。 - 「そして誰もいなくなった」(原題:And the there were none)
イギリスで1939年に発表された、アガサ・クリスティの長編ミステリー小説です。
これはほぼ同題で戯曲や、映画、テレビドラマなどが非常に多く作られています。
また同じアガサ・クリスティの作品で、「5匹の豚」が有名です。
- 「誰がコマドリを殺したか?」(原題:Who killed Cock Robin?」
イギリスのイーデン・フィルポッツが1924年に発表した推理小説です。
こちらは日本で流行した漫画ですが、「ポーの一族」(萩尾望都)があります。(原題:The Poe clan)
永遠に生きる命を与えられた吸血鬼一族の18世紀から21世紀にかけての物語で、「別冊少女コミック」や「月刊フラワーズ」に掲載され、当時大ヒットしてしました。
日本のコミック誌までもマザーグースが関係しているのも、大変面白いですね。
日本とマザーグース
日本で最初のマザーグースの翻訳とされているのが、1882年(明治15年)に刊行された「ウィルソン氏第二リイドル直訳」(村井道元訳)の中にある「小サキ星ガ輝クヨ」で始まる「キラキラ星」です。
他にも、小泉八雲、竹久夢二、夏目漱石などが文豪が名を連ねています。
とくに有名なのは、北原白秋が訳した「まざあ・ぐうす」ではないでしょうか?
この本のはしがきが、子供たちに向けて書いてありますが、そこにはこう書かれています。
どんなに美しくて、おかしくて、ばかばかしくて、おもしろくて、
なさけなくて、おこりたくて、わらいたくて、うたいたくなるか、
ほんとにゆっくりとよんで
ー北原白秋の擬声語ー
オノマトペの訳は、擬音語や擬声語の表現がとてもおもしろく、マザーグースにとても合っています。
原語と比べながら読んでみるもの、楽しいかもしれませんね!
マザーグース怖い?
マザーグースの作品の中には、登場人物などが死んでしまったり、消えてしまったりなど、どこかホラーチックで、ぞっとするものも少なくありません。
例えば、実際に事件をもとに作られたというこの歌
「リジー・ボーデン」”Lizzie Borden”
Lizzie Borden took an axe (リジー・ボーデンは斧を取り)
And give her mother forty whacks.(お母さんを40回打った)
And when she saw what she had done(そして自分のしたことに気づき)
She gave her father forty-one.(お父さんを41回打った)
この歌は、1892年のアメリカはマサチューセッツで殺された、ボーデン夫妻の事件をもとにしたものです。
当時娘のリジーが容疑者として逮捕されましたが、証拠不十分で無罪となり、真相はわからずに犯人は不明であったと言います。
そしてこの事件が歌となり、奇妙なことに子どもたちの縄跳びのかぞえうたとなって、広がっていったそうです。
このような歌がヒントになり、ホラーやミステリー映画などの作品が多数あるのも、納得できます。
そういえば、日本の童謡にも「かごめかごめ」のように、すこし寒気がするような歌もありますが、なにか共通するものがあるのかもしれません。
マザーグースと英語学習
マザーグースは、英語学習入門では言わずと知れた英語学習教材です。
なぜ、英語学習のはじめに「マザーグース」が適しているかというと、
- 歌なので、音楽的なリズムや抑揚がある。
- 簡単で、日常に使われる単語や表現が豊富である。
- 英語歌に多く使われる「韻」(ライミング)を学ぶことができる
という利点があげられます。
イギリスでは「ナーサリー・ライム」とよばれるようで、特に、子供にも覚えやすいリズミカルな言葉の繰り返しが無理なく頭に入り、口ずさむことで英語特有の言い回しや発音、単語が身につくことから長い間英語教育教材として使われてきたのです。
まとめ
マザーグースと聞くと、たいていの英語教育の教材に使われていて、あまりにも身近にありすぎて、こんなにも社会に広まっているのかと知ると、改めて驚いてしまいました。
その歌や作品には、いろんな教えがあったり、短い言葉の繰り返しが心の底にしみついて、日本のわらべ歌がそうであるように、母から子へ、子から孫へ、そのあとも代々伝わってきたものの代表作ではないでしょうか?
そう思うと、1700年代という300年ほどの時空を超えていけるようなロマンを感じ、もう一度図書館や書店に出向き、「マザーグース」を手に取ってゆっくりと読んでみたくなりました。