2020年、世界中を恐怖に陥れた「新型コロナ」の流行から、毎日のようにメディアで見かけていたのが オードリー・タン(とう ほう、タン・フォン)【旧名:唐 宗漢 (とう そうかん、タン・ツォンハン、英語ではAutrijus Tang)】でした。

この世界的天才の出現に、世界中の人が注目し、拍手を送りましたが、この天才オードリー氏の人生も、普通ではなかったようです。

そんなオードリー・タンに注目します!!

1.オードリー・タンの略歴

  • 1981年 4月18日
    中華民国 台北市で、父唐光華(タン・グアンホア)、母李雅卿(リー・ヤーチン)夫妻から誕生する。
  • 1990年(9歳)
    飛び級をして6年生だったが、父が仕事をしているドイツに移住する。
  • 1995年(14歳)
    中学を中退する。
  • 1996年(15歳)
    IT企業「資訊人文化事業公司」を起業。
  • 2000年(19歳)
    アメリカ・シリコンバレーでソフトウェア会社を起業。
  • 2005年(24歳)
    Perl 6の実装Pugsを開発。
    この年、自らがトランスジェンダーで女性であることを公表し、改名する。
  • 2014年(33歳)
    ビジネスからの引退を宣言。
  • 2016年(35歳)
    台湾で35歳の若さで入閣し、デジタル担当大臣に台湾史上最年少で就任する。
  • 2019年(38歳)
    アメリカの外交専門誌「フォーリン・ポリシー」のグローバル思想家100人に選出される。
  • 2020年(39歳)
    台湾の新型コロナ対策として「マスクマップ」を導入。

2.幼少期のエピソード

2.幼少期のエピソード
  • 生後8か月で言葉を話し始め、一歳半で歌の歌詞をすべて覚えて歌うことができました。
    3歳では百科事典の文字をすべて覚えてしまいました。
  • 生まれながらに心臓に疾患があり、心臓に負担がかからないように医者から、「できるだけ泣かないこと、激しい運動をしないこと、風邪をひかないこと」と言われて育ち、4歳になったころ手術をしましたが、長い投薬生活のせいで肝臓が弱ってしまいました。その後14歳で再手術をし、健康を手に入れました。
  • 幼稚園での「給食やお昼寝をみんな一緒にする」というのが受け入れられず、幼稚園に行かなくなったそうです。
  • IQが180あったオードリーは、小学校の授業が簡単すぎて足並みを揃えることができず、算数の時間は一人で図書館へ行き本を読んでいました。
  • 同居していた祖母と話していて、「おばあちゃんは太陽の黒点も知らない!」「何を聞いても何も知らない!」と腹を立てたことがありました。
  • 夏休みの宿題をしたくなくて、幼稚園や小学校を合計9回変わりました。しかし本当の理由は、頭が良すぎて周りになじめないのでいじめを受けていたということです、
  • 中学を中退してからは、家で独学をしていましたが、当時はオンラインの「プロジェクト・グーテンベルクという電子図書館で独学していました。
  • 時々大学に行って聴講し、問題があると討論をしていたそうです。
  • 能力が高い特別クラスに編入しましたが、そこでは壮絶な嫉妬がありました。

3.オードリー・タンの母親の大きな存在

3.オードリー・タンの母親の大きな存在

最年少で台湾のデジタル担当大臣になり、IQ180のいわゆる「ギフテッド」である、オードリー・タン。

そのすさまじい頭脳によって、子どものころから社会生活を営むことができなかった天才児を、母親の李雅卿(リー・ヤーチン)はどうやって育てたのでしょう?

李雅卿はその壮絶な子育てを「成長戦争」という手記にして、20年ほど前にベストセラーになりました。

李雅卿は結婚前から業界でも有名なジャーナリストだったそうです。

集団生活ができなかった息子

集団で平均的な学習をする学校の授業では、彼の知識欲が満足するわけがなくて、幼稚園や小学校、中学と10回も転校をしなければならず、教師も閉口してしまうその頭脳から、「態度が生意気だ」と体罰を受けるのが当たり前に行われていました。

また、優秀なクラスに編入しても、イジメにあい、精神までも侵されそうになった息子を「そんな学校なら行かなくてもいい」と決意したのが母親だったのです。

そして子どものためにキャリアを捨て、仕事を離れる決意をしました。

母親の覚悟

仕事ではかなりのキャリアがあった李雅卿は、当然のごとく会社から辞めることを引き止められます。

しかし、彼女は「私が辞めても私のポジションに誰かが入り、私がいなくても新聞社は倒産しない。でも二人の子供の面倒を見る母親は、私しかいないのよ。」「もし息子が普通の子どもだったら、私は仕事と家庭を両立できたかもしれない。でも息子は違う。彼は入学したとたんに主流の価値観と衝突した。 彼の人生を賭けて、母親が家庭に戻って彼に付き添うしか選択肢はないんです」と言い放ちました。

オードリー・タンの家庭は、「家族一人一人が家庭を支える」という価値観があり、この時の李雅卿は、子どもを支える決断をしたのです。

この時のことをオードリー・タンはのちに振り返ってこう話しています。

「このころの私は、どんな経験をして、どんなことを感じたのかをうまく説明できませんでした。しかし、母は、”あなたがそう感じたのは本当の事ですよ”と感じたことを否定せず、受け入れてもらったことで私の感受性は少しずつバランスを取り戻すことができました。もしここで否定されていたら、私は外の世界とコミュニケーションが取れなくなってしまっていたでしょう」

学校の設立

オードリー・タンのようなギフテッドの子どもたちのために、李雅卿は台北市から少し離れた場所に「種子学校」を設立し、初代学長になりました。

ここは、「オルタナティブスクールの発祥」的存在で、

・生徒自ら担当教師を選択

・生徒の興味と各人が持つ能力の違いを尊重する

・生徒は学習の進度によってクラス分けされ、年齢でのクラス分けはしない

といった特徴を持っています。

必須科目のほか、農芸、演劇、手工芸、生命科学、野外サバイバルなどを選択することができます。

また、学園内で問題が起きると、裁判形式で討論を行い、そのことによって子どもたちは、他人の意見をよく聞き、自分の気持ちや意見を表現することができるようになるのだそうです。

天才を育てた母親が、人間は学歴や点数で競争するものではなく、「人格育成教育」こそが大切である、と説いているのです。

4.新型コロナを封じ込めたオードリー・タン

4.新型コロナを封じ込めたオードリー・タン

新型コロナが世界中に流行し始めたころ、日本でもオードリー・タンの顔をテレビでよく見かけせんでしたか?

オードリーが世界的に知られるようになったのが、台湾での新型コロナ対策でした。

これはオードリーが考えた対策で、「Fast(素早く)」「Fair(公平に)」「Fun(楽しく)」という3つのFで考えられました。

  • Fast(素早く)
    コロナウイルスが何者あるか発見される前から、2020年1月20日には「中央感染指揮センター」を設置して、いち早く水際対策を開始しました。
  • Fair(公平に)
    誰でもが公平ににマスクを入手できるように、大勢のプログラマーを集め、マスクの製造や在庫が一目でわかるアプリを開発。「マスクマップ」と呼ばれました。
  • Fun(楽しく)
    2020年4月にトイレットペーパーの買い占めが起こった時、「おしりはみんな一つしかない」と描いた絵を使ってメッセージし、不安でパニックになった台湾の人々の心をやわらげ、 事態は沈静化しました。

このような政策はオードリー氏のもとで実施され、「一人残さず、台湾の人たちを新型コロナから守る」という信念のもとで成果を上げました。

5.オードリー・タンの名言

I never started the project. It is always innovations from the social sector.

私はプロジェクトを立ち上げたことはありません。常に社会がイノベーションを起こしているのです。

I’m just a channel through which intergenerational, cross-sectoral, transcultural solidarities can be built.

私は、世代間、分野間の文化的な連帯を構築するためのチャンネルにすぎない。

We’re more like “Amplifying” the analog processes so that it reaches more people.

成果が多くの人に届くように、我々はアナログなプロセスをむしろ「増幅」させているようなものだ。

まとめ

オードリー・タンの誕生からまだ40数年しか経っていないのに、これだけのスピードで成し遂げた数々の功績は、まるで人よりも数倍速く成長する、SF映画に出てくる人のように感じます。

それだけに社会とは適合せず、体罰やいじめにあってきたのを、家族に支えられ、そして今は世界を救う人物になるとは、なんと凝縮されたミラクルな人生なのでしょうか!

今後オードリー氏によって、この不安な世の中が変わっていくかもしれないという期待が、神を崇めるような気持ちで湧き上がってきています。

There is a crack in everything. That’s how the light gets in.

すべてのものには裂け目がある。そこから光が漏れている。その光を見つけよう。

 オードリー・タン