誰でも幼いころにお母さんやお父さん、幼稚園や学校の先生に読んでもらった「思い出の一冊の絵本」があると思います。

幼いころに感じたことが、大人になってから読み返してみると、作者が伝えたかったことが見えてくることもありますよね?

そんな心に残る「世界の絵本」をもっと深く研究してみましょう!

今回は誰もが大好きな子供絵本作家、「エリック・カール」をご紹介します。

エリック・カール

エリック・カールは小さな子供のための鮮やかな挿絵と、斬新なデザインを施した絵本作家として世界中で絶賛され愛されてきました。

有名なものでは、”The Very Hungry Caterpillar”があり、これは文字通り世界中の数億人の子供たちに愛され、世界の66か国に翻訳をされて、約5000万部以上発行されました。

Hungry caterpillarが出版されてから以降も、エリック・カールは70冊以上のベストセラー本を作りました。

エリック・カールの生い立ちと遍歴

エリック・カールは1929年、アメリカのニューヨーク州シラキュースで生まれました。

エリックは、6歳の時に両親とともにドイツに移住し、シュトゥイットガード造形美術大学を卒業します。

しかしながら、彼の夢はいつも、子供のころ幸せに暮らした思い出がいっぱいのアメリカにありました。

そして1952年にポケットにはわずか40ドルと、カバンだけを持ってアメリカニューヨークへと戻りました。

そしてすぐに、エリックはニューヨークタイムズの広告部門でのグラフィック・デザイナーとして働くようになります。

その後は数年、広告代理店のアートディレクターでした。

ある日、尊敬していた教育者で作家であるビル・マーティン・ジュニアが、エリックが広告で描いたロブスターの絵に魅了されたと、彼に自分の絵本のイラストを描いてほしいと連絡をしてきました。

それが1967年に発行された有名な”Brown bear, brown bear, what do you see?”であり、絵本作家のデビューとなったのです。

この作品がエリック・カールのルーツとなります。

その後、エリックは自分でストーリーも作るようになりました。

彼の最初の本は ”1,2,3,to the Zoo”で、その後1969年に”The Very Hungry caterpillar”が刊行され、

これはアメリカのほかにもドイツやフランスなど各国で多数の賞に輝きました。

代表作品

  • Brown bear, brown bear, what do you see? -1967
  • 1,2,3,to the zoo- 1968
  • The very hungry caterpillar -1969
  • The nonsense show -2015
  • pancakes, pancakes! -1970
  • The tiny seed -1970
  • 10 little rubber ducks -2005
  • Dream snow -2005
  • papa, please get the moon -1986

など、まだまだご紹介したい素晴らしい本がたくさんあります。

ぜひ、手に取ってご覧いただきたいものばかりです!

エリック・カールのスタイル

エリックカールの作品は、ユニークでわかりやすいものになっています。

彼の芸術作品は、ハンドペインティングした紙を切ってそれを重ね、明るく元気なイメージを作るコラージュテクニックで作られています。

彼の本の多くがカットしたり、染色されて型とられ、”The Very Lonely Firefly”のようにキラキラと光ったり、”The Very Quiet Cricket”の中にあるコオロギの音のリアルさを出すような、遊びにあふれたクオリティがあります。

遊べる本であり、読めるおもちゃなのです。

子どもたちは、彼の作品に影響を受け、コラージュなどを楽しんで自分で作ったものをたくさん送ったりしているようですよ!

子供たちへの思い

子供たちへの思い

エリック・カールの本の魅力の秘密は、彼が子どもたちの感情や一番大切にしていることを本能的に理解をして、尊敬の気持ちや理解をもって作られているところにあります。

エリックの物語のテーマは、小さな子どもが興味を持つような自然への愛と、彼の広い知識によって描かれていると言えましょう。

そしてまた、その美しさと面白さは、子どもたちに世界についての多くを学ぶ機会を与えているのです。

エリックの、子どもたちの感情や好奇心、創造性や知性の成長を促すための想いは、彼の美しい美術品に込められて、刺激的で印象に残る絵本を作っているのです。

エリック・カールの言葉

私は、たくさんの本で家と学校の隔たりの懸け橋になろうと試みています。

私にとって家とは、暖かく、安心できて、おもちゃがあって、手をつないで、抱きしめてもらえる場所です。

学校は子どもにとっては未知の世界です。 さて、そこで幸せな気持ちになれるのでしょうか?

新しい人々、先生、クラスメイトは優しくしてくれるのでしょうか?

私は、子どもにとって家から学校へ行くことは2番目に大きな恐怖だと思います。

(最初はもちろん、誕生するときのことです)

確かに、この二つの恐怖は、私たちが温かさと安心からの旅立ちなのかはわかりません。

知らないことは怖さを生み出します。

この本を読んでもらうことで、その恐れを打ち消し、明るい希望に変えてほしいと願っています。

子どもたちは想像し、学ぶことに熱意を持っています。

私は学ぶことは魅力的で楽しいことだ、ということを伝えたいのです

ーエリック・カール

主な受賞歴

  • ボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞ー1970
  • リジャイナ・メダル文学賞ー1999
  • 児童文学遺産賞(ローラ・インガルス・ワイルダー賞)ー2003

その他多数受賞しています。

エリック・カール ミュージアム

エリック・カール ミュージアム

エリック・カール ミュージアム

2002年、アメリカのマサチューセッツ州のアマーストに「エリック・カールミュージアム」が設立されました。

この土地は、当時エリックが住んでいたノーザンプトンに近いために選ばれたそうです。

ここはエリックカールの絵本、特に児童書をおもに展示してあります。

エリック・カールはこのミュージアムを妻のバーバラと一緒に作りました。

この美術館はそれぞれの作品を収容した3つの回転するギャラリーを含んでいます。

西ギャラリーは、特にエリック・カールが熱心に作ったようです。

他にも体験できるアートスタジオや、動画が上映される上映ホール、図書館などがあります。

エリックといえば、指や筆で色を付けた色紙を切り抜いて貼り付ける「コラージュ法」が特徴ですが、その手法なども紹介されています。

上映ホールでは、毎日異なる動画が上映されています。

図書館には、多くの本がおいてあり、それぞれ自由に読むことができます。

エリック・カールの絵本や、そのキャラクターのグッズなども購入が出来ます。

美術館内には、The Very Hungry Caterpillarの装飾がされた車も展示してあります。

町はずれのひっそりとした小さな町にたたずむエリック・カール美術館は、訪れる人々に安らぎと幸せを与えているようです。

エリックカールの晩年

子どもたちのために生涯をささげた絵本作家、エリック・カールは2021年、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ノーサンプトンにある自身の家で、91歳で腎不全でなくなりました。

晩年、エリックは日本もよく訪問しており、2017年に最後の来日をしています。

エリック・カール絵本美術館と共同で東京・PLAY!MUSEUMの開館記念展「エリック・カール 遊ぶための本」が、2020年6月から2021年3月まで開催され、多くの来場者が来るのを見届けてから逝ったようでもありました。

亡くなる前の最後の仕事として力を入れていたドローイングシリーズには”50¢”と描かれた多くの作品があり、子どもたちにアーティストとして参加するように促し、

「子供たちは自分たちも自分たちの作品を売ることができるということを知ってほしい」と言葉を残しました。

エリック・カールの訃報は世界中に知れ渡り、多くのファンが深い悲しみに包まれ、彼の冥福を祈りました。

エリック・カールは亡くなりましたが、彼の残した多くの偉大な作品は、後世に語り継がれていくに違いありません。

まとめ

子どもの教育に携わる筆者が、気づかない頃から、自然と子どもたちのために選んで購入していた絵本がエリック・カールのものでした。

その鮮やかな色彩と、音楽が聞こえてくるような言葉のリズムに子どもたちは瞬時に魅了され、絵本に見入っていきます。

また、ストーリーの中に体の動き、動物のしぐさの特徴や生態、丸や四角などの形、温かい両親の愛情などが詰まっていて、絵本という枠を超えて、教科書のような、また詩集のような、ボロボロになっても手放したくない絵本であると思います。

写真を拝見すると、子供のようなお茶目な表情をされていて、思うに、エリック・カール自身も永遠に子どもの心を持っていたのだということが想像されます。

「子供が生まれたら一番に読んであげたい絵本」といっても過言でないとでしょうし、今後もテクノロジーの発展とともに、いろんな形で子供たちの心に寄り添っていく、そんな絵本たちをこれからも大切にしていきたいと思います。