「シュタイナー教育」ということばを目にしたり、聞いたりしたことはありませんか? シュタイナー教育は、暗記で知識を詰め込む方式ではなく、子どもの自発性に着目した教育法のひとつで、「モンテッソーリ教育」と並んで日本でもよく知られています。

ドイツで最初のシュタイナー学校「自由ヴァルドルフ学校」が始まったのは1919年のことです。すでに100年以上の歴史があり、世界64か国に千を超える数のシュタイナー・プログラムを取り入れた学校があります。

発祥国のドイツをはじめ、シュタイナー教育は、フィンランド、デンマークなどのヨーロッパ各国で特に盛んなようです。

最近では日本でも、シュタイナー教育を研究したり、シュタイナー教育の理念に基づくフリースクールなどを立ち上げて運営を始める団体が増えてきました。社会問題になっている「不登校の子どもたち」に対するアプローチとして、シュタイナー教育はとても効果的があるといわれています。

「心」「身体」「頭脳」をバランスよく育てるというシュタイナー教育とは、いったいどういうものなのでしょうか。この記事では、シュタイナー教育の理念とその歴史、英語教育とのかかわりを詳しく紹介します。

1.シュタイナー教育とは?

1.シュタイナー教育とは?

シュタイナー教育は、20世紀初めにオーストリア出身の哲学者で神秘思想家である、ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner)によって提唱されました。

後述するように、シュタイナー本人は自分の名前を冠して自身の教育法を広めたわけではないため、発祥のドイツをはじめ、ヨーロッパやアメリカでは、シュタイナーが最初に設立した学校にちなんで「ヴァルドルフ学校」「ヴァルドルフ教育」とよばれることのほうが多いようです。

ここでは、日本でのよび方にならって「シュタイナー教育」として話を進めます。

シュタイナー教育を始めたルドルフ・シュタイナー

初めに、シュタイナー教育を提唱・実践したルドルフ・シュタイナーはどのような人物だったのか、簡単に紹介します。

ルドルフ・シュタイナーは1861年にクロアチアのクラリエヴェックという町で生まれました。日本では江戸時代終わりごろの文久元年、14代将軍の徳川家茂の時代に当たります。クラリエヴェックは当時オーストリア=ハンガリー帝国の領土であったため、シュタイナーは「オーストリア生まれ」とされることが多いのです。

ウィーン工科大学で学んだシュタイナーは、「ゲーテ自然科学著作集」の編纂に携わり、ゲーテの研究者として頭角を現します。ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)はドイツの劇作家・詩人ですが、文学の領域を超えて広く影響を与えた人物で、政治家や自然科学者の側面もあります。

シュタイナー思想を支える人智学

シュタイナーは、1902年に「神智学協会」ドイツ支部が設立されると、その書記長に選ばれます。「神智学」とは「神秘的直観によって神の啓示にふれようとする信仰・思想」(デジタル大辞泉)のことで、19世紀終わりにアメリカで生まれました。

しかしシュタイナーはその後、「人智学」を唱えるようになり、1912年には「神智学協会」を脱退します。シュタイナーは、方針の違いから「神智学協会」をやめた仲間が1913年に設立した「人智学協会」の指導に当たり、1923年には自身で「一般人智学協会」を創設し、代表に就任します。

人智学は、神智学から出発したものですが、シュタイナーの立場はこのようなものでした。

物質文明が一面的に発達し過ぎた今日こそ,秘教内容を公開する必要があるが,人智学は人類学と神智学,もしくは科学と霊界認識を仲介することでこの要求にこたえ,すべての人間の内にまどろんでいる高次の認識能力を開発して,個人の自己実現と社会の進歩のために役立つ方法を提示しようとする。(改訂新版 世界大百科事典「人智学」

今日では、シュタイナーは人智学の創始者とみなされていて、シュタイナーの活動はこうした人間観・世界観に基づいています。シュタイナー教育や芸術活動、有機農業などはその実践と考えるべきものでしょう。

後にシュタイナーがドイツで設立した「自由ヴァルドルフ学校」にも、人智学の思想・理論と共通するものが強くみられます。

2.シュタイナー教育の誕生

前項では、シュタイナーの経歴から、どのような世界観・人間観をもったかを紹介しました。この項では、シュタイナーは教育において、どのようなことを実現したかったのかを考察します。

シュタイナー教育が生まれたきっかけ

シュナイターが教育研究の道に進んだきっかけとなるできごとがありました。

シュタイナーは23歳のときに、ある水頭症の子どもの家庭教師を依頼されました。水頭症は、生まれつき、または後天的な原因で頭蓋腔内に脳脊髄液が過剰に貯まり、脳室が異常に拡大する病気で、知能の発達が遅れがみられます。

その子どもは、勉強はまったくできませんでした。しかし、家庭教師としてその子を預かったシュナイターは、考えあぐねた末、編み物など、手やからだを使う作業をその子どもに与えます。

すると、からだを使った作業により、その子どもの集中力がどんどん増していき、水頭症の大きな頭部も小さくなるという不思議な現象が現れました。子どもは学校に行けるようになり、その後、医者になりました。

この経験からシュタイナーは、知的教育の押しつけよりも、総合芸術による感情表現の教育が大切なのでないかと研究を重ねました。そして「個性とは、とらわれない自由」であり、すべての子どもの心身の発達のプロセスを整え、個々の個性をそのプロセスに導き入れるためには芸術的教育が効果的である、と説きました。

シュタイナー教育による最初の学校

シュタイナーの思想・教育理論は、ドイツのシュトゥットガルトで実践に移されました。ドイツ神智学協会の会員だった実業家エミール・モルトが、シュタイナーの講演を聞いて感銘を受け、シュタイナーに学校の開設を頼んだのがきっかけでした。

モルトが経営する「ヴァルドルフ・アストリア煙草工場」には当時、千人の労働者が働いていて、労働者の子どもたちのための学校が必要でした。シュタイナーは学校のシステムや教育プログラムについていくつかの条件を提示した上で、学校の指導を承諾します。

シュタイナー教育による最初の学校は、1919年にヴァルドルフ社の私立学校として誕生し、小学校から中等教育(日本の中学校・高校に相当)までの12年間を受けもつ学校は「自由ヴァルドルフ学校」と名づけられました。

ところで、「ヴァルドルフ」はモルトと共に工場を経営するアスター家の出身地で、ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州北部にある町の名前です。

冒頭で説明したように、シュタイナー自身は学校や教育理論に自分の名前を使わなかったため、シュタイナーの思想を尊重した多くの学校は、その最初の学校「自由ヴァルドルフ学校」にちなんで「ヴァルドルフ学校」とよばれるようになります。

シュタイナー教育が評価されるとともに「ヴァルドルフ学校」も世界に広がり、ヴァルドルフという町の名前も知られるようになりました。シュタイナー教育は、英語ではWaldorf education、あるいはSteiner educationとよばれています。

3.シュタイナー教育の特徴

2.シュタイナー教育の特徴

公立校で行われる、いわば標準的な教育と比較して、シュタイナー教育にはさまざまな特徴があります。シュタイナー教育の特徴として挙げられることをまとめると、以下の点があります。

(1)  6~18歳までの 12年間一貫教育

(2)  1教科を数週間集中的に学ぶエポック授業

(3)  1~8学年は学級も担任教師も変わらない担任もち上がり制

(4)  低学年から芸術的科目を導入

(5)  舞踊表現法オイリュトミーを全学年に必須導入

(6)  試験や点数評価の廃止

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「シュタイナー学校」

シュタイナー教育の7年周期理論

シュタイナー教育は、「自由な自己決定」ができる人間を育てることをめざしています。

それを実現のための教育法の考え方として、子どもの発達段階を7年周期で3段階に分けています。

  • 第一期(0~7歳)
    0歳から7歳までの第一期は、「からだ・意思を育てる時期」
  • 第二期(7~14歳)
    7歳から14歳までの第二期は、「心・感情を育てる時期」
  • 第三期(14~21歳)
    14歳から21歳までの第三期は、「頭・思考を育てる時期」

そして、それぞれの発達段階に合わせたプログラムによって、潜在的な子どもの能力を引き出そうとします。

発達段階に応じた教育プログラム

先述の7年周期の3つの発達段階には、それぞれの時期に重視する教育プログラムが行われます。

  • 第一期(0~7歳)
    第一期はからだを動かすことを一番に考え、からだを動かす遊びを重点的に行い、健康なからだづくりをめざします。「のびのびといろいろな遊びを楽しむ」ことが大切という時期と位置づけます。
  • 第二期(7~14歳)
    第二期は、さまざまな芸術体験をさせて表現力や創造力を養います。音楽や演劇などの活動により、感情豊かな子どもを育てる時期と位置づけます。
  • 第三期(14~21歳)
    第三期は「自分で考える力」「論理的なものの見方」を確立していく時期に当たり、思考力を養います。世界の文化を知る、自然活動をするなどして子どもの視野を広め、自立を促すのが目的です。

「オイリュトミー」と「フォルメン」活動

これまで説明したきたように、シュタイナー教育は発達の段階ごとに重視する目標があります。そして、「オイリュトミー」と「フォルメン」という活動が行われることが特徴です。

オイリュトミー

オイリュトミー(Eurythmie)は、ギリシア語の「美しい」と「リズム」を合わせた造語です。英語圏では「ユーリズミー」(Eurythmy)とよばれることもあります。

シュタイナー教育では、0歳から7歳を中心に、音楽に合わせて体を動かしたり、表現したりすることで周りとの調和を大切にする、心を育む活動とされています。

ことばや音に反応して体を動かすことで、感覚機能や身体能力を育てることを意図しています。

フォルメン

フォルメン(Formen)は、線を描くことで、ものの形を理解する芸術教育を指します。

直線、曲線、渦巻きなどの線を色を使って描くことで、運動機能とバランス感覚などを発達させます。

シュタイナー教育では、色を体感することや呼吸・リズムを、すべての芸術活動の基盤であると考え、フォルメンを子どもの内面に潜む芸術性を引き出す有効な手段と位置づけています。フォルメンは主に7~14歳の子どもが行う活動です。

4.シュタイナー教育のメリット・デメリット

3.シュタイナー教育のメリット・デメリット

これまで紹介してきたように、シュタイナー教育にはさまざまな特徴があります。それでは、子どもがシュタイナー教育を受けた場合、どのようなメリットが期待できるでしょうか。また、デメリットがあるとしたら、どのようなことでしょうか。

メリット

シュタイナー・プログラムの学校では、子どもひとりひとりの個性や成長を尊重するための環境が整えられています。子どもたちは、自己肯定感をもって、のびのびと自立していく姿が見られます。

また、「オイリュトミー」と「フォルメン」の項で紹介した通り、音楽や舞踏、絵画など芸術に関するプログラムが多いことから、豊かな表現力や創造性、協調性や感受性をもつおとなに育つことが期待できます。

デメリット

シュタイナー・プログラムの学校では試験や点数で成績を評価をしないため、中等教育以上に進学する場合に学力の遅れを感じる恐れがあるかもしれません。

また、日本では学校法人として認められている学校が少なく、「フリースクール」の形態であることが多いため、進学の際に必要な卒業資格が得られないことも挙げられます。公立・私立の学校に在籍しながらシュタイナー学校に通って、卒業資格は在籍校から受けることになる場合もあります。このため、一般の公立校に通うのに比べて授業料が高額になることもあります。

また、シュタイナー・プログラムの学校では、子どもはコミュニティで育つものと考えられているため、親が積極的に関わることが求められます。しかし、家庭によっては、親の仕事や育児・看護・介護が必要な家族がいるなどのさまざまな事情で、学校の運営や行事に参加することが難しいこともあるかもしれません。

シュタイナー・プログラムの学校はシュタイナーの思想に基づいて自然志向が強いため、食べ物はオーガニック、衣類は天然繊維が望ましいとされており、子どもの感性や想像力を育むために、テレビやラジオ、携帯電話、コンピューターの使用を制限されることもあります。

シュタイナー教育を受ける子どもだけでなく、親やきょうだいなど周囲の生活の仕方、環境などにもかかわる部分があるため、家庭によっては受容しにくいこともあるかもしれません。

5.日本におけるシュタイナー教育

ヨーロッパで生まれたシュタイナー教育は、日本ではどのように知られ、受け入れられてきたのでしょうか。ここでは、歴史的な経緯を振り返ってみることにします。

ドイツのシュタイナー教育を日本に紹介

日本でシュタイナー教育について知られるようになった契機は、1965年にドイツ文学者の子安美知子が書いた『ミュンヘンの小学生: 娘が学んだシュタイナー学校』(中央公論新社)が発表されたことでしょう。

著者が2年間のドイツ留学中に、娘をシュタイナー・プログラムの学校に通わせた体験が、日本の標準的な学校教育とは違う、新しい教育法との新鮮な出会いとして話題をよびました。この著作により、子安は毎日出版文化賞を受賞しています。

不登校の子どもたちを支えるフリースクール

日本は、アジア圏でもっともはやくシュタイナー教育を取り入れた国といわれています。

1970年代から1980年代にかけて、学力偏重、画一化、集団主義といった教育の仕方や、校内暴力、いじめ、不登校など戦後教育が抱えるさまざまなひずみが顕在化するなか、シュタイナー教育は諸問題への対応策のひとつとして人びとの関心を集め、多くの講演会・研究会が各地で開催されました。

その後、校内暴力は次第に減少していきましたが、一方で学校のいじめは深刻化し、いじめを苦に自殺する子どもが現在も後を絶ちません。

学校になじめない不登校の子どもたちの親を中心に、1984年に「登校拒否を考える会」が発足します(当時は「不登校」といわず、「登校拒否」とよばれていました)。そして、さまざまな理由から学校に行かない・行けない子どもの居場所として、1985年にフリースクール「東京シューレ」が始まりました。

1999年には東京都の認可を受けて「特定非営利活動法人東京シューレ」が開設し、2006年には「学校法人東京シューレ学園」が設立されています。

その後も、不登校は増加をたどる一方で、2023年には小・中学校の不登校は30万人に近づくまでになっています。義務教育以上の高校・大学を加えると、さらに多くの子ども・若者たちが学校に行かない選択をしているのは明らかです。

事態を重く見た教育行政と、教育関係者の働きにより、全国で全日制のフリースクールが増えています。2024年現在、公立学校21校、私立学校14校の合計35校が「学びの多様化学校」(いわゆる不登校特例校)とされています。

学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧(文部科学省)

日本のシュタイナー学校

「日本におけるシュタイナー学校およびシュタイナー教育運動の充実と発展」をめざして、2013年には日本シュタイナー学校協会も設立され、学校外の学びの権利を法制化する運動に取り組んでいます。

シュタイナー学校協会の正会員になっている全日制シュタイナー学校は、学校法人・特定非営利活動法人(NPO法人)を含めて7校あります。

6.シュタイナー教育と英語教育

シュタイナー教育は、どのように英語教育に生かされるのでしょうか。

「子どもの個性と主体的な学びを重視する」シュタイナー教育は、「早期教育」や「受験のための教育」とは正反対の位置にあります。しかし、子どもの五感がもっとも発達する時期に、歌ったり、踊ったり、からだを動かしながら運動や音楽、芸術と絡めて英語を教えていくのは無理がなく、子どもが楽しみながら学べる方法です。

実際、シュタイナー学校では小学校から英語が導入されています。オイリュトミーとフォルメンによる芸術的感性を鍛える方法が加わると、英語力が高い子どもに育つといわれています。

文法や単語を機械的に暗記する勉強法と違い、また自信をもって英語で話せるようになることも期待できるでしょう。

7.モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違い

6.モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違い

子どもの潜在能力を引き出すために、感覚を育てるシュタイナー教育は、しばしばモンテッソーリ(モンテッソリ)教育と比較されます。

まず、モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の共通点をみてみましょう。両者とも「子どもを尊重し、子どもがやりたいことをさせる」という点、また、「強制せずに、その子どものタイミングが訪れたときにアプローチする」という考え方があります。

では、モンテッソーリ教育とシュタイナー教育にはどのような違いがあるのでしょうか。

モンテッソーリ教育とは

ここで簡単に、モンテッソーリ教育について説明します。

モンテッソーリ教育は、イタリアの医師マリア・モンテッソリMaria Montessori
(1870~1952)が提唱した教育法です。シュタイナーと同じころのひとですね。

モンテッソーリは初め、知的障害をもつ子どもの教育研究に携わっていましたが、首都ローマのスラム街に開設した「子どもの家」では障害のない子どもの教育に取り組みます。

子どもの発達の源泉は子ども自身の内部にあるものと考え,子どもの自発性や自己活動を基本とする適切な環境(教師が指示しなくてもすむようにくふうされた教具を配置)のもとでの感覚の訓練を重視した。(世界大百科事典「モンテッソリ法」

子どもの自発性や自律性に着目し、感覚を高めるためのさまざまな教具(学習のための教材や用具など)を考えたことで、それまでの幼児教育を変えました。

モンテッソーリ教育については、次の記事がもっと詳しく説明しています。

 

モンテッソーリ教育とシュタイナー教育のそれぞれの特徴

モンテッソーリ教育とシュタイナー教育を比べると、以下のようにいうことができます。

モンテッソーリ教育

手先の動きなど「感覚」を使って「知性」を伸ばす

シュタイナー教育

心や身体」を鍛えて「感性」を伸ばす

どちらも「教具」を使用しますが、モンテッソーリ教育では知能教具の種類がたくさん考案され、子どもが遊びながら学べるような工夫がされています。こうした教具は現在でも使用されています。

シュタイナー教育では「教具」およびおもちゃや遊具を「自然の物を生かして」作ります。

木の実や、貝殻など、身近な自然のものを使うことによって、人間に性質が近いものが一番子どもの心や身体の成長にふさわしい、という考えから、プラスティックのおもちゃなどを使うことはありません。

8.シュタイナー教育の学校の活動

7.シュタイナー教育の学校の活動

シュタイナー教育を取り入れた幼児教育もありますが、ここでは幼稚園を卒園後に入る、小学校からの例を紹介します。シュタイナー教育のカリキュラムでは、小学1年(6歳)から高校3年(18歳)まで、12年間の一貫教育をします。

国語・算数・理科・社会・英語に加え、オイリュトミーやフォルメンを加えた独自のカリキュラムを、学年や子どもの発達段階に合わせてプログラムに取り入れています。

芸術や音楽活動などとともに、木工芸、編み物、園芸、演劇などそれぞれの子どもの希望する活動を組み込んだ、ユニークな学校になっています。

シュタイナー教育を受けた有名人

シュタイナー教育は、「自分自身で考えることができる、自立した感性豊かな人格を育てる」ことをめざしています。これまでさまざまな分野で傑出した人材を輩出していますが、シュタイナー教育を受けた有名人にはどのようなひとがいるのでしょうか。

ー日本の有名人ー

〇子安文(1964年生まれ、東京出身)
音楽家で、日本にシュタイナー教育を紹介した子安美知子の娘です。
ドイツ、ミュンヘンのヴァルドルフ学校(シュタイナー・プログラムの学校)に学びました。
著書に『私のミュンヘン日記―シュタイナー学校を卒業して』があります。

〇斎藤工(1981年生まれ、東京出身)
俳優。親が設立にかかわった「東京シュタイナーシューレ」に小学校時代は通っていました。
現在のシュタイナー学園で、日本で初めてのシュタイナー学校です。

〇坂東龍汰(1997年生まれ、北海道出身)
俳優。アメリカで生まれ、帰国後に北海道シュタイナー学園いずみの学校に入学し、18歳まで学んでいます。
学校で演劇を学んだことが俳優を志すきっかけになったと語っています。

〇村上虹郎(1997年生まれ、東京出身)
俳優。シュタイナー学園で小学校・中学校の8年間を過ごしました。
父は俳優、母は歌手で、両親の離婚後は母と暮らし、高校はカナダに留学しています。

ー海外の有名人ー

〇ミヒャエル・エンデ(1929年生まれ、ドイツ出身)
ドイツの児童文学作家。『モモ』『はてしない物語』などの作品で知られています。
シュトゥットガルトのヴァルドルフ学校に学び、演劇学校に進みました。

〇フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ(1935年生まれ、ドイツ出身)
実業家、カーデザイナー。
自動車メーカー、ポルシェの創業者の孫で、ポルシェ911をデザインしています。
シュトゥットガルト生まれで、地元のヴァルドルフ学校で学びました。

〇サンドラ・ブロック(1964年生まれ、アメリカ出身)
アメリカの女優。イギリス人の父とドイツ人の母をもち、12歳までドイツで暮らしていました。
ニュルンベルクのヴァルドルフ学校で教育を受けた後、アメリカに移住、大学などで演劇を学んでいます。

〇ジェニファー・アニストン(1969年生まれ、アメリカ出身)
アメリカの女優。両親とも俳優という環境に生まれました。
6歳からヴァルドルフ学校に通い始めて演じることに興味をもち、高校時代から演劇の勉強を始めています。

 

やはり発祥の地ドイツにゆかりのひとが多い印象がありますが、その後シュタイナー教育が世界に広がっていることがわかります。この他にも、個性的な才能を開花させたひとが少なくありません。

なお、今なお世界各国に愛読者をもつミヒャエル・エンデについては、次の記事が詳しく紹介していて参考になります。

まとめ

ドイツで生まれ、百年を超える歴史をもつシュタイナー教育は、日本では1970年代に紹介されました。

一昔前には校内暴力が社会問題になり、現在も学校で起きる深刻ないじめや、不登校・引きこもりの子どもたちの支援のあり方など、学校をめぐっては、さまざまな課題があります。シュタイナー教育は、従来型の学校システムや、学力偏重の仕組みになじめない、不登校の子どもたちへのアプローチとして注目されています。

実際、「シュタイナー教育を広まることが子どもたちを救う」と考える熱意のある教師や保護者が、日本各地でいろいろな活動をして支援者・賛同者の裾野を広げてきた経緯があります。

日本の学校教育は、ひとりひとりの個性を重視するよりは、集団を構成する一因として、協調性・連帯感を重視してきたといえるでしょう。ヨーロッパとは異なる背景の日本で「子どもの個性を生かす」とシュタイナー教育がどのように展開していくのか、興味深いところです。