モンテッソーリ教育と並んで、有名な教育法の「シュタイナー教育」。

聞くところによると、すでに約100年もの歴史があり、世界60か国で取り入れられる有名な教育法です。

思い当たるところでは、ドイツやフィンランド・デンマークなどのヨーロッパ各国が特に盛んなようです。

最近では日本でも問題になっている「不登校児」へのアプローチにとても効果的ということで、色々な団体が研究をしたり、実際にフリースクールなどを立ち上げて実施している活動が増えてきました。

「心」「身体」「頭脳」をバランスよく育てるといった、この「シュタイナー教育」とはいったいどういうものなのでしょうか?

1.シュタイナー教育とは?

シュタイナー教育は、20世紀初めにオーストリアの哲学者で神秘思想家である、ルドルフ・シュナイターによって提唱されました。

その理論は1919年にドイツに創立した「自由ヴァルドルフ学校」に取り入れられます。

シュタイナーがこの教育を説いた経緯

シュナイターが教育の研究の道に進んだきっかけとなる出来事がありました。

シュタイナーは23歳の時に、ある水頭症の子供の家庭教師を依頼されました。

水頭症の症状から、その子供は全く学習活動を行うことが出来ませんでしたが、考えあぐねたシュナイターは、その子供に編み物など、手や身体を使う作業を与えます。

すると、その子供が身体を使った作業により、どんどん集中力を増していき、不思議なことに水頭症が小さくなるという症状が現れ、その後学校に行けるようになり、医者になったということがありました。

その経験から、シュタイナーは知的教育の押し付けよりも、感情表現の総合芸術による教育が大切であると研究を重ね、「個性とは、とらわれない自由」であり、すべての子供の心身の発達のプロセスを整え、個々の個性をそのプロセスに導きいれるために、この芸術的教育が効果的である、と説きました。

2.シュタイナー教育の特徴

2.シュタイナー教育の特徴

教育の柱

シュタイナー教育は子供の発達段階を

  • 0~7歳
    第一期(身体・意志を育てる時期)
  • 7~14歳
    第二期(心・感情を育てる時期)
  • 14~21歳
    第三期(頭・思考を育てる時期)

のように、7年周期で3段階に分けて教育をする方法です。

それぞれの段階では

  • 第一期(0~7歳)
    体を動かすことが一番と考えられ、体を動かす遊びを重点的に行い、健康な体作りを目指し、「伸び伸びといろんな遊びを楽しむ」ことが大切だという教育活動です。
  • 第二期(7~14歳)
    様々な芸術体験をさせて、表現力や創造力を養う活動により、感情豊かな子供を育てるという時期になります。
  • 第三期(14~21歳)
    思考力を養う教育活動により、「自分で考える力」「論理的なものの見方」を確立していく時期に当たります。

世界の文化を知る、自然活動をするなどして子どもの視野を広め、自立を促すのが目的です。

また、シュタイナー教育にはこの3段階を支える「オイリュトミー」と「フォルメン」という活動が行われています。

<オイリュトミーとフォルメン>

オイリュトミー

0歳から7歳を中心に音楽に合わせて体を動かしたり、表現をすることで周りとの調和を大切のする心を育む活動を言います。

言葉や音に反応し、体を動かすことで音感や身体能力を育てることが出来ます。

フォルメン

線を描くことで、ものの形を理解する芸術教育を言います。

直線、曲線、渦巻きなどの線を色を使って描くことで、運動機能とバランス感覚などを発達させます。

色の体感、呼吸やリズムはすべての芸術活動の基盤であるといい、子どもの内面に潜む芸術性を引き出す有効な手段で、主に7~14歳の時期に行われます。

3.シュタイナー教育のメリット・デメリット

3.シュタイナー教育のメリット・デメリット

このような特徴を持ったシュタイナー教育ですが、メリット・デメリットはどんなものでしょうか?

メリット

子供一人一人の個性や成長を尊重するための環境が整えられているため、子ども達が伸び伸びとした自己肯定感を持って自立していく姿が見られます。

また、音楽や芸術などに関した活動が多いことから、表現力や創造性、協調性や感受性を持った人格になることが期待できます。

デメリット

勉強するということに力を入れていないので、進路によっては遅れを感じる恐れがある、シュタイナー教育の認定校でなければ卒業資格が得られない、などが挙げられます。

また、自然志向が強い教育のため、食べ物もオーガニックでなければならないなど家庭における生活面の負担も懸念されるところです。

4.日本におけるシュタイナー教育

現在日本でもシュタイナーの認定校がありますが、2021年時点で正式に認定を受けている学校は、フリースクールを含めて7校になっています。

日本はアジア圏でもっともはやくシュタイナー教育を取り入れたと言われていて、1970~1980年代に荒廃が進んだ教育への対策として人々の関心を集め、多くの研究会などが各地で開催されました。

そして校内暴力などが減少していく半面、増加していく不登校児の居場所であるフリースクールが1985年東京から始まりました。

その後も不登校児は増加をたどる一方で、事態を重く見た教育行政と、シュタイナー教育関係者の働きで、全日制のフリースクールが全国に増え、その活動のためにシュタイナー学校協会も設立され、学校外の学びの権利を法制化する運動を行っています。

5.シュタイナー教育と英語教育

さて、この「子供の個性と主体的な学びを重視する」シュタイナー教育は英語教育に生かされるのでしょうか?

いわゆる、「早期教育」や「受験のための教育」とは真逆でありますが、子ども達が一番五感が発達する時期に、運動や音楽、芸術と絡めて英語を教えていくというのは、文法や暗記の勉強法と違い、子どもが楽しみながら、無理をせず、また自信を持って会話をするようになることが期待できるでしょう。

実際、シュタイナー学校では小学校から英語が導入され、オイリュトミーとフォルメンの芸術的感性を鍛える方法が加わると、英語力が高い子供になると言われています。

6.モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違い

6.モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違い

まず、モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の共通点から見てみると、「子供を尊重し、子どもがやりたいことをやらせる」という点、また、「強制せずに、子どものタイミングが訪れた時にアプローチする」という考えがあります。

では、この二つの違いは何でしょうか?

モンテッソーリ教育

手先の動きなど「感覚」を使って「知性」を伸ばす

シュタイナー教育

心や身体」を鍛えて「感性」を伸ばす

といったところにあるでしょう。

また、どちらも「教具」を使用しますが、まずモンテッソーリ教育では知能教具の種類がたくさんあり、子どもが遊びながら学べるような工夫がされていて、現在でも使用されています。

シュタイナー教育では「教具」およびおもちゃや遊具を「自然の物を生かして」作られます。

木の実や、貝殻など、身近な自然物を使うことによって、人間に性質が近いものが一番子どもの心や身体の成長にふさわしい、という考えから、プラスティックのおもちゃなどは使うことはありません。

7.シュタイナー教育の学校の活動

7.シュタイナー教育の学校の活動

幼稚園を卒園した後の小学校からの例を挙げますと、カリキュラムは小学1年(6歳)から高校3年(18歳)までの12年間の一貫教育をします。

国語・算数・理科・社会・英語に加え、オイリュトミーやフォルメンを加えた同時のカリキュラムを、学年や子どもの発達段階に合わせたプログラムにしています。

芸術や音楽活動などと一緒に、木工芸、編み物、園芸、演劇など子どもの希望する活動を組み入れているユニークな学校になっています。

シュタイナー教育を受けた有名人

「自分自身で考えることが出来る、自立した感性豊かな人格を育てる」シュタイナー教育をうけた有名人は誰でしょうか?

ー日本の有名人ー

    • 斎藤工 (俳優)
    • 坂東龍汰 (俳優)
    • 黒柳徹子(芸能人)

ー海外の有名人ー

  • ジェニファー・アニストン(女優)
  • サンドラ・ブロック(女優)
  • ミヒャエル・エンデ(児童文学作家)

などがシュタイナー教育を受けて育ちました。

とても才能があり、個性のある人が多いと思いませんか?

まとめ

一昔前の学校での暴力が増えた時代に日本に導入されたシュタイナー教育が、時を経て、不登校児の問題へ生かされていることは、最近の教育事情をみるとよくわかります。

実際、身近な熱意のある教育者の方々が、「もっとこのシュタイナー教育を広まることが子供たちを救う」という活動を日本各地でされていますね。

日本の「一斉教育」により「協調性・連帯感」を重視してきた私たちの環境の中で、「子供の個性を生かす」というこの教育がどのように功を奏していくのか、今後も注目していきたいと思います!!