フランスといえば、ファッションや芸術、グルメや歴史遺産・・・と長い間日本人がアメリカやイギリスの英語圏と同じく強いあこがれを持っていた国です。一方、どこかまだ全貌がわからない部分も多く、実際フランスに移住して理想とかなり違った、という話もちらほらと聞くことがあります。
そんなミステリアス?な国フランスの教育制度や、英語教育の実態に迫ってみたいと思います!
英語を第二外国語として学習する国々の教育法 ~フランス編~
国名
正式名称は フランス語 で、 République française ( レピュブリク・フランセーズ )です。通称、 France ( フランス )で 略称が FR 。 日本語の表記は、 フランス共和国 です。
日本とフランスの文化交流
日本とフランスの国交は、1858年に「日仏修好通商条約」が結ばれたことから始まりました。以降、美術や芸術の交流が多く行われています。
1.文学
明治時代より、広まったフランス語教育。その後も多くのフランス文学者や研究者が生まれ、文学作品が一般大衆にも人気を博すようになりました。日本の有名作家に与えた影響は、近代文学の大きな特徴であると言えます。
2.芸術
明治に入り、文明開化によって西洋の芸術作品が多く制作されるようになりました。洋画、彫刻などが確立されていき、多くの洋画家や彫刻家が誕生しました。また、日本の浮世絵などの絵画もフランスに影響を与えました。有名な画家モネやルノワール、ゴッホなどが、日本の浮世絵に多大な影響を受けたアーティストだというのも驚きですよね!
3.音楽
日本におけるフランスの音楽の需要の始まりは、「軍隊音楽」でした。トランペットやサックスなどの楽器が普及し始め、その後オペラやシャンソンなどの流行へと繋がっていきました。
4.ファッション
日本が洋装を取り入れた当初からフランスの影響を大きく受けて、礼服や軍服などにフランスのデザインを取り入れました。その後も、日本のファッション界に大きな変化を与え、最近では、逆に日本の「ゴシック&ロリータ」(略してゴスロリ)や、日本のアニメのコスプレなどが、フランスの若者の間で大ブームになっていてます。
5.料理
フランスと言えば、グルメ、美食の国ですね。開国以降に広まったドイツ、イギリス、フランス料理などが俗にいう「洋食」の始まりです。現在でもフランス料理はリッチなイメージがつきものですが、フランス料理にも日本の和食のテイストが多く取り入れられています。
フランスの有名料理店などで長年修行をして帰国し、日本のレストランで働いている日本人シェフは結構おられますね。
人々の暮らし
そんな憧れの対象のフランスですが、実際は失業率が高く、生活もとても質素だと言います。世界的にみても大きい失業率、特に若者の雇用が低いことも大きな問題になっています。共働きが当たり前になり、女性でも長く働き、常に「即戦力」でなければいけない、というフランスの生活は、想像されるような優雅なものとは違うようです。
2024年第4四半期のフランスの失業率は7.3%で、前期の7.4%から少し低下しました。ちなみに日本の完全失業率は2024年1年間の平均の完全失業率は2.5%だったので、日本より失業率が高いと言えます。
フランスの言語
「フランス語」は世界で英語の次に多くの国や地域で、ヨーロッパを中心とした29カ国で公用語になっています。また、国際連合、欧州連合などでは、公用語のひとつにも選ばれています。
17世紀から20世紀にかけて、フランス語は世界的な共通語としての地位を保っていましたが、現代ではフランス語は以前ほど頻繁には使用されなくなりました。その大きな理由は、第二次世界大戦だと言われています。第二次世界大戦中に、フランスはナチス・ドイツに敗北し、その結果フランス語の威信も低下しました。フランスは、イギリスとアメリカの支援を受けてなんとかドイツに勝利しましたが、戦後の国力が米英両国に比べてはるかに低くなりました。
戦後、アメリカのハリウッド映画やIT革命、英語圏全体の経済成長などを背景に、フランス語の地位が低下し、英語が世界の主流言語になりました。とはいえ、フランス語はヨーロッパを中心とした29カ国で公用語になっています。
訳)昨年2024年パリオリンピックが行われましたが、オリンピックの公用語もフランス語と英語です。
フランスの教育
フランスの義務教育は幼稚園から始まります。
2~3歳から勉強を始めて、幼稚園3年間(3~5歳)、小学校5年間(6~10歳)、中学校4年間(11~14歳)という制度になります。
中学校卒業後は普通高校、職業高校へ進学するか、就職するかの進路になっていきます。
学費は公立は幼稚園から大学まで無料になります(一部の費用は除く)。
厳しい教育は幼稚園から!
幼稚園と言っても、朝8時半から16時過ぎまで、また延長保育もあるので、両親は安心して仕事をすることが出来ます。
幼稚園でも、歌やお遊戯、遊びばかりではなく、「幼稚園教諭」の先生と勉強をする時間がちゃんとあります。
年中になったらフランス語のアルファベットを習い始め、発音矯正のクラスなどもあり、なんと留年まであると言います。
そして年長になると、ほぼ小学校と同じスケジュールで授業時間と休み時間が区別されると言います。
15歳で将来が決まる?
中学の義務教育を終わると、ほとんどが高校へ進学を希望しますが、フランスは日本と違って入学試験がありません。
しかし、誰でもが行きたい高校に行けるのではなく、すべてが中学校の成績で決まります。
高校には「普通高校」と「職業高校」がありますが、中学の内申書で決まり、全教科の20点満点中10点以上が目安になります。
成績がこの目安に及ばなかったら、普通高校には行けず、「職業高校に行くように」と学校が判断します。
職業高校は進学するにも不利で、卒業後もいい仕事につけないという構図が出来上がっています。
ゆえに、どんなに高校に入って勉強しよう!と思っていても、中学の成績次第で将来が決まってしまう、ということになってしまうのです。
訳)フランスでは、高校は普通高校と職業高校に明確に区分されます。普通高校に行くには、中学校卒業時に良い成績と取っていなければなりません。
訳)個人的には若い時期に普通高校か職業高校のどちらかを選ぶのは、職業選択につながっていいと思います。
高校卒業試験:”バカロレア試験”
フランスでは、高校に進学しても、成績が悪いと容赦なく留年させられます。日本でも、あまりに成績が悪いと留年させる高校がありますが、総じて日本の高校はフランスの高校ほど厳しくないと言えます。
そして、どうにか3年間のカリキュラムをクリアできても、卒業試験「バカロレア試験」を受けて合格すれば、高校卒業資格を得ることが出来ます。バカロレア(仏: baccalauréat)は、フランスの国民教育省が管理する、高等学校教育の修了を認証する国家試験です。
試験内容は、自分の考えを論理的に文章にする、また口頭で述べるなどの技術が問われる試験となっています。バカロレア試験は、以下の3つの種類があります。
- 普通バカロレア
- 技術バカロレア
- 職業バカロレア
フランスは、1990年代に「教育の大衆化」を経験し、2019年の時点では18歳に達したフランス国民の80%がバカロレアを取得しています。フランスではバカロレアを取得することによって原則としてどの大学にでも入学することができると言われています。もし、大学の定員を超えた場合にはバカロレアの成績や居住地などに応じて、入学できる大学が決まります。
フランスの英語教育
さて、そんな厳しい教育制度のフランスでの英語教育はどうなっているのでしょうか?
フランスでは、2008年より6歳からの英語教育をスタートしました。
現在、フランスでは「義務教育の間にフランス語以外の2か国語を学習する」ことが定められていて、その1言語が英語になっています。
フランスの英語の授業は少人数制で、教育目標の機銃に達するのであれば指導法に決まりはありません。
学校や指導者が自由にカリキュラムを作ることが出来ます。
また能力別にクラスが分かれていて、英語力が上がれば上のクラスに上がることが出来ます。
こうした指導により、フランスの小学生は 卒業時にはCEFRのA1レベル(日常生活でよく使われる非常に基礎的な表現を理解し、使うことができる。日本での英検3級レベル)に達することが目標とされています。昨今では、英検を受験するとCSEスコアというのが出ますが、CSEスコアをCEFRに換算するには、下記の表を参考にしてください。
CEFR | 英検®CSE | 英検®(級) | |
C2 | — | — | |
C1 | 2600~3299 | 1級 | — |
B2 | 2300~2599 | 準1級 | |
B1 | 1950~2299 | 2級 | |
A2 | 1700~1949 | 準2級 | |
A1 | 1400~1699 | 3級 |
英検3級でCEFRがA1、英検2級でCEFRがA2かB1、英検1級でCEFRがB2かC1ぐらいだと見なされています。
フランス人は英語が苦手?
こうして近年、英語教育に力を入れ始めたフランスですが、実はフランスも、特に郊外などに行くと英語が通じないことがよくあるそうです。都市部のパリなどでは、英語が通じないということはほとんどないですが。
そういったフランス人のことを「フランス人は英語を話せるのに、プライドが高いから話さないんだ」という話を聞くことがありますが、実のところ、フランス人も英語が苦手らしいのです!
英語が下手で恥ずかしいから話したくない・・・それに加え、読んだり書いたりはできても、話すのは苦手、それって私たち日本人と似たような感じかもしれないですね。
その原因として、日本と似通ったところがあると言います。
- 文法に細かい
- 小さなミスでも減点される
- 自国語が話せればとりあえず不便はない
- 完壁主義な国民性
などがあげられます。
また、一昔前は、日本の英語教育のように、英文の丸暗記などが多く、会話をやコミュニケーション力を養ってこなかったのも原因のようです。
フランスではそのような英語教育で育ってきた教師が多いため、教師側があまり流暢に英語を話せない、という問題もあります。
フランス国が英語教師にフランス人を雇用するのも、深刻なフランスの雇用問題のためやむを得ないということで、つい「実用英語」から遠のき、文法や読み書きのほうが重点的に行われてきた背景がフランス人の「英語嫌い」にあったようです。
それでも、フランス人は「英語を話せないことをそんなにコンプレックスに感じていない」という点は少し日本人とは違うかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。フランスの教育、特に英語教育について解説しました。
2024年パリオリンピックが行われ、フランスに注目が集まりました。オリンピックの公用語はフランス語と英語です。フランス語は今でもフランス語圏を中心に29カ国で公用語になっていますが、第二次世界大戦前は公用語としての地位がもっと高かったようです。戦後、英語の公用語としての地位が高まり、日本でも英語教育がさかんに行われていますが、第二次世界大戦でフランスが不利にならなければ、日本を含み
もっと多くの国がフランス語を学習していたのかもしれません。
遠い昔から、フランスは日本にとって憧れの国であり、たくさんの影響を受けて現在があるのだと知りました。フランス国家が英語教育に力を入れて、若い優秀な人材がグローバルに仕事ができるようにすることが、今のフランスの目標になっているのかもしれません。こうして長く良い交流をしてきたフランスに、今後も良い刺激をもらい、国境を越えてもっと深くコミュニケーションするためにも、我が国日本もフランスに倣い、英語教育も改革を急ぐべきだと思わずにはいられません。