オリンピックと同様、パラリンピックでも陸上競技は世界中から注目を集めています。競技名など、覚えておけば陸上競技を観戦する時に役立つ英語の用語やフレーズがたくさんあります。この記事では、パラリンピックの陸上競技で使う英語について紹介しています。また、パラリンピックの陸上競技の歴史などについても紹介します。
パラリンピックの陸上競技を英語で覚えよう
まずは、陸上競技の競技名や関連する用語を説明します。陸上競技は英語で「athletics」といいます。パラリンピックの陸上競技ではさまざまな障がいがある選手たちが、車いす(wheelchair)や義足(prosthetic leg)などの一人一人に合った器具を使い、障がいの種類や状態によって分けられたクラスごとに順位を競います。陸上競技のクラスは競技をあらわすアルファベットと2桁の数字を組み合わせて表記されています。トラック競技と、跳躍競技、マラソンを示すアルファベットは「T」、投てき競技を示すのは「F」です。また、2桁の数字の十の位は障がいの種類をあらわし、一の位は数字が小さいほど障がいの程度が重いことをあらわしています。
トラック(track)
・短距離走(sprint)100m、200m、400m
下肢切断の選手は義足を、上肢切断の選手の多くは義手をつけて出場します。義足は主にカーボンファイバー製で、板をアルファベットの「J」のように曲げた形状になっています。選手自身の筋肉によって強く踏み込んで反発力を生み出し、左右のバランスをとっています。また、義手にはスタート時や走行時にバランスをとって身体を支える役割があります。
・中距離走(middle-distance running)800m、1500m
・長距離走(long-distance running)5000m
・リレー(relay)
パラリンピックのリレーでは、両腕切断などのバトンを保持できない選手も出場します。よって、バトンを使用せずに背中や手にタッチ(touch)することで次の走者へつなぐようにルールが変更されています。4×100mユニバーサルリレー(universal relay)では男女2名ずつの混合チームを構成します。視覚障がいから立位の切断・機能障がい、脳性まひ、車いすと走る順番は決められていますが、男女の順番は自由になっています。4人の走者のうち、それぞれの障がいの中で重度が最も軽い選手の出場は2人までにする必要があります。
フィールド(field)
・走高跳(high jump)
・走幅跳(long jump)
パラリンピックの走幅跳には、義足などの身体障がいと視覚障がいがある選手が出場します。基本のルールはオリンピックと同じですが、義足による踏切も認められています。視覚障がいのクラスでは、選手をサポートするアシスタント(assistant)をつけることが可能です。アシスタントには選手を誘導して走る方向を教えるガイド(guide)と、踏切位置で声や手拍子などを使って音をだすことで選手を導くコーラー(caller)がいます。一人でガイドとコーラーを兼任することも出来ます。全盲クラスの場合は、アイマスク(blindfold)を着用することが決められています。
・こん棒投げ(club throw)
こん棒投げは、パラリンピックでしか見られない競技です。ボウリングのピンのようなこん棒(club)を使用します。握力が弱かったり車いすで競技したりする選手らのために考案された投てき(throwing)競技で、出場できる選手は限られています。
・やり投げ(javelin throw)
やりは男性は長さ2m60~70cmで重さ800~825gのもの、女性は長さ2m20~30cmで重さ600~625gのものを使用します。投てきでは、クラスによっては専用に開発された投てき台に身体を固定して座ったまま投げることが認められています。投てき種目の中で、やり投げは唯一助走をつけることが出来る競技ですが、やりが落下するまでは助走ラインからは出てはいけません。視覚障がいがある場合は、コーラーにタイミングを教えてもらうことが出来ます。跳躍種目ではガイドとコーラーを分けることも出来ますが、投てき種目では必ずガイドがコーラーも兼任する必要があります。
・円盤投げ(discus throw)
・砲丸投げ(shot put)
投てき種目の中で、他の種目は全て「~ throw(投げる)」といいますが、砲丸投げだけは「put(押し出す)」を使います。選手が肩を痛めないための配慮から、砲丸投げではオーバーハンドで「投げる」ことは禁止されています。
マラソン(marathon)
視覚障がいがある選手は、ガイドランナー(guide runner)という伴走者と一緒に競技を行います。2人でデザーというガイドロープを握り合い、声掛けなどを通して選手をスタートからゴールまで誘導します。また、車いすのクラスではレーサーという競技用の車いすを使用することが認められています。
パラリンピックの陸上競技の歴史
次に、パラリンピックの陸上競技の歴史について説明します。「パラリンピック(Paralympic)」という名前は「parallel(もう一つの)」という言葉とオリンピックを組み合わせたもので、「もう一つのオリンピック」という意味になります。
パラリンピックの歴史
現在のパラリンピックの原点は、第二次世界大戦で負傷した兵士たちの治療のために、イギリスのストーク・マンデビル病院の脊髄損傷科で取り入れられたスポーツ大会です。1948年のロンドンオリンピックに合わせてアーチェリーの大会が開催され、男子14名と女子2名が参加しました。世界にも広がっていき、1952年には第1回国際ストーク・マンデビル大会が開催され、ヨーロッパ諸国が参加しました。その後1960年に大会委員会が設立され、委員会での話し合いによってオリンピックの開催国でオリンピック終了後に大会を開催することが決まりました。1960年はイタリアのローマで大会が開催されていたので、後にIPC=International Paralympic Committee(国際パラリンピック委員会)によって当時のローマ大会が第1回パラリンピックと定められました。第1回パラリンピックでは、23の国と地域から400名が参加して8つの競技が行われました。
陸上競技の歴史
パラリンピックの陸上競技は、はじめて開催されたローマ大会から実施されています。当時は脊髄損傷によって車いすを使用する選手だけが参加していました。1976年のトロント大会では四肢切断や視覚障がいの選手も参加するようになり、競技数の大幅な増加につながりました。2020東京パラリンピックでは、陸上競技は167種目が行われます。パラリンピックの競技の種目数が多いのは、障がいの種類や重度によって細かくクラス分けされているからです。
陸上競技の観戦に役立つ英語
陸上競技の観戦でよく聞く英語
英語で選手は「player」、陸上競技の監督は「director」です。コーチは「coach」ですが、監督を「coach」、コーチを「assistant coach」と呼ぶ場合もあります。
スタート
クラウチングスタート(crouching start)での「位置について」は「on your marks」、「用意」は「set」と合図を出します。また、フライング(不正スタート)は「false start」または「jump the gun」と言います。実は「フライング」は和製英語で、英語の「flying start」は「飛ぶようなスタート」というポジティブな意味で使われています。
記録更新
選手個人の自己ベストは、「personal best」と言います。世界記録は「world record」なので、世界記録保持者は「world record holder」と呼ばれます。また、パラリンピック記録は「paralympic record」となります。
応援に使える英語の例文
レース前にかける言葉
レース前に選手を激励する言葉として、以下のような表現があります。相手に「頑張れ」という気持ちを伝えることが出来ます。
Good luck!
訳)幸運を祈る!
You can do it!
訳)君ならできる!
レース中の声援
レース中は、「Let’s go ~!(行け!~)」と声援を送りましょう。選手の調子が良い時は「Keep it up!(その調子!)」、悪そうな時は「Hang in there!(踏ん張って!)」などと応援します。
Let’s go ~!
訳)行け!~
Keep it up!
訳)その調子!
Hang in there!
訳)踏ん張って!
レース後のねぎらい
レース後は「Congrats!(おめでとう!)」や「You did it!(やったね!)」と言って祝福します。良い結果を出せなかった選手にも「I’m proud of you(君を誇りに思うよ)」とねぎらいの言葉をかけてください。
Congrats!
訳)おめでとう!
You did it!
訳)やったね!
I’m proud of you.
訳)君を誇りに思うよ。
英語が分かるともっと応援が楽しくなる
陸上競技に使う英語は日本語のカタカナと同じものもありますが、「フライング」のようにそのまま使うと日本語と英語で反対の意味になってしまう場合もあります。陸上競技の名前や用語についての英語を覚えておけば、レースの流れや結果を理解するのに役立ちます。また、応援するときに使う英語の表現を知っていれば、競技の観戦がより盛り上がります。