イタリア北部の都市ミラノは、ファッションやビジネスの街として有名ですが、実は歴史的な芸術作品の宝庫でもあります。その中でも、世界中から多くの観光客が訪れるのが、「最後の晩餐」があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ(Santa Maria delle Grazie)教会とドメニコ会修道院です。
この場所は1980年にユネスコの世界遺産に登録され、今や「世界で最も予約が取りにくい壁画」としても知られています。
今回はこの魅力あふれる場所を、英語のフレーズとともにご紹介します。
「最後の晩餐」がある場所ってどんなところ?

「最後の晩餐」とサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会について、具体的に見ていきましょう。
「最後の晩餐」とは?
レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐(The Last Supper)」は、キリスト教の福音書に基づいた場面を描いた名作です。この壁画はミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの依頼によって制作されました。
イエス・キリストが「弟子の中に裏切り者がいる」と告げる瞬間を描いています。弟子たちの表情や動きにはリアルな感情があふれています。
注目すべきは、一点透視図法を使った構図です。イエスを中心に放射状に視線が集まるよう設計されており、見る者をその場面に引き込みます。作品の大きさは縦4.2m、横9.1m。食堂の壁いっぱいに広がる大作です。
サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とは?
この教会は、1465年から1482年にかけて、ドメニコ会の修道士ソラーリによって建てられました。当初はゴシック様式でしたが、後にルネサンス様式へと改修され、現在の美しい姿になりました。
教会の内部には、美しいドームと大きな中庭があります。
ドメニコ会修道院とは?
この教会には、旧ドメニコ会修道院の建物も併設されています。教会に向かって左側にある修道院の食堂に「最後の晩餐」が描かれています。つまり、壁画は食事の場を飾るアートとして描かれたのです。
アクセス
ミラノの中心地から地下鉄で約10分。最寄り駅はカドルナ駅、コンチリアツィオーネ駅です。事前予約が必要で、鑑賞時間は15分間と限られています。
サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の歴史
この教会は、15世紀にスフォルツァ家がドメニコ修道会に土地を寄付したことで始まりました。当初はゴシック様式で建てられましたが、ルネサンス様式に改修されます。
改築を担当したのは、有名な建築家ブラマンテ。彼は後にローマのサン・ピエトロ大聖堂の設計も手がけます。
第二次世界大戦中、ミラノは連合国軍による空爆を受け、教会も大きな損傷を受けます。ですが、壁画「最後の晩餐」は、周囲を袋で囲って守ったため、奇跡的に無事だったのです。
覚えておきたい英語フレーズ
英語を楽しく学ぶために、この世界遺産にまつわるフレーズもいくつか覚えておきましょう。
訳)「最後の晩餐」は息をのむほど美しい。
訳)「最後の晩餐」を観るには、予約が必須です。
訳)遠近法がすばらしい。
世界遺産としての価値
レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院は、1980年、ユネスコの世界遺産に登録されました。
正式な英語名は下記のようになります。
Church and Dominican Convent of Santa Maria delle Grazie with “The Last Supper” by Leonardo da Vinci
登録対象は?
ユネスコの世界遺産に登録されているのは、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会と、隣接する修道院、そして「最後の晩餐」そのものです。
登録理由は?
登録された理由は、主に次のような点です。
- レオナルド・ダ・ヴィンチによる傑作がそのまま保存されていること
- ルネサンス建築と芸術の融合を体現する場であること
- ミラノの歴史的・宗教的背景を知る上で重要であること
これらの点が高く評価されて世界遺産に登録されました。
『最後の晩餐』の魅力をもっと知ろう

レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は、心理描写、空間表現、構成力、そのすべてが革新的であり、ルネサンス芸術の頂点といわれています。ここでは、その魅力をより深く探ってみましょう。
ドラマティックな瞬間を切り取った構成力
この壁画が描いているのは、イエス・キリストが弟子たちに「この中に私を裏切る者がいる」と告げた直後の一瞬です。
“One of you will betray me.”(あなたがたのうちの一人が、私を裏切る)
この一言が引き金となり、弟子たちは動揺し、驚き、互いに問いただす様子を見せます。
その表情と動作が、まるで舞台のワンシーンのように配置され、絵の中に強い緊張感を生み出しています。13人それぞれの感情が「見える」絵といえます。
それぞれの弟子の個性を描き分ける天才
ダ・ヴィンチは、弟子一人ひとりに異なる表情と動き、そして感情を与えました。怒り、不安、驚き、戸惑い。これらが顔や手の動きで細やかに表現されています。
イエスのすぐ左隣にいるのが裏切り者ユダ。彼はテーブルの上の袋(銀貨)を握りしめ、他の弟子たちのように騒がず、身を引いて影の中にいます。
空間表現の革新:一点透視図法
ダ・ヴィンチは一点透視図法(linear perspective)を用いて、食堂という実空間と壁画の中の仮想空間を見事につなげました。イエスの頭の後ろに開いた窓を消失点とし、そこに向かってすべての線が集まる構造になっています。
この構図により、イエスが絵の中心に自然に引き立てられ、視線がそこに集まるように設計されています。
テンペラ技法
一般的なフレスコ画とは異なり、「最後の晩餐」は乾いた壁に絵の具を重ねるテンペラと油彩の混合技法で描かれました。この方法は発色が良い反面、壁への定着力が弱く、完成後すぐに劣化が始まりました。
しかし、ダ・ヴィンチはあえてこの技法を選びました。細部まで繊細に描き込み、表情や布の質感をより豊かに表現するためです。保存が非常に難しいため、長年にわたって修復が繰り返されてきました。
豊かな象徴とメッセージ
この作品には、さまざまな象徴がちりばめられています。テーブルの3人ずつの配置は「三位一体(Holy Trinity)」を象徴。キリストの手と頭の位置は、暗に十字架の形を形成。食器やパンの配置、弟子の視線の流れなどにも、意味が込められています
一枚の絵に込められたストーリーの奥深さが、多くの人を惹きつけ続けています。
まとめ:英語で広がる世界遺産の旅
今回紹介した「最後の晩餐」のあるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院は、芸術・歴史・信仰という3つの深いテーマが絡み合う世界遺産です。
海外の美術館や教会を訪れたとき、現地のガイドツアーは英語で行われることがほとんどです。基本的な英語がわかるだけでも、その場の体験が深まります。
ミラノに旅をする際には、ぜひ、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会に足を運び、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を鑑賞してみてください。

