園での英語遊びは、単なる「英単語を覚える時間」ではありません。
歌やゲームを通して子どもたちが見せてくれる姿には、言語習得以上の大切な学びが隠れています。
伝えたい気持ちが言葉を超える
言語遊びの場面では、子どもたちは完璧に英語を話せるわけではありません。それでも「伝えたい!」という気持ちがあると、身振り・表情・声のトーンなどを総動員してコミュニケーションを図ろうとします。
(例)たとえば「赤いカードがほしい」ときに、英語で “I want red!” と言えなくても、子どもは赤いカードを指さし「これ!」と伝えます。先生が「Red? Yes, red! 」と返すことでやり取りが成立し、子どもは「伝わった!」という喜びを感じます。
家庭でのヒント
英語が出てこなくても、「伝えたい気持ち」を受け止めてあげましょう。子どもが指さしや日本語で伝えてきたときに「Oh, you mean red! 」(赤といったんだね!)と返してあげると、自然に英語表現を吸収していきます。
違いを楽しむ柔らかい心

英語の歌 “Head, Shoulders, Knees and Toes” を初めて聞いたとき、子どもたちは戸惑いながら動きをまねていました。ところが繰り返すうちに、歌のテンポに合わせて笑顔で体を動かし始め、やがて日本語の歌にはないスピード感やリズムを楽しむようになりました。異なる文化のリズムを「面白い」と感じる心は、子どもならではの柔らかさを教えてくれます。
「英語の発音やリズム」が有効である理由
聴覚の柔軟性が高い幼児期だからこそ
子どもは生まれてから数年間、さまざまな言語の音を聞き分けられる「耳の柔軟性」を持っています。たとえば日本語にはない “r” と “l” の違い や、強弱のリズムが特徴的な英語特有のイントネーションも、遊びの中で繰り返し聞くことで自然に吸収していきます。この「耳の経験」は、後の発音やリスニング力の土台となります。
リズムが記憶を助ける
英語は 強弱のリズムがはっきりしている言語 です。歌やチャンツを通して「da-DA-da-DA」というリズムに合わせて発音すると、単語やフレーズがメロディと一緒に頭に残りやすくなります。日本語の五・七調とは違うリズム感に触れることは、音や言葉を「遊びながら覚える」効果を高めます。
発音練習が表情筋・口の動きを豊かにする
英語の発音では、日本語ではあまり使わない 口の形や舌の動き が必要です。たとえば「th」の音で舌を歯に軽く挟んだり、「oo」で口をすぼめたり。これらの練習は、ことばの表現力だけでなく 表情の豊かさ にもつながります。実際、英語の歌を歌うときに大きく口を開ける子どもは、声量も増して自信を持つようになります。
身体と結びつくことで理解が深まる
英語のリズム遊びでは、動作と組み合わせることが多いです。たとえば “Clap your hands!” で手を叩く、 “Jump!” で跳ぶ。リズムと動きを一体化させることで、子どもたちは意味を頭で翻訳せずに「体感」として理解します。これが「生きた英語」に触れる大切なステップになります。
自分の声に自信を持つ経験になる
日本語に比べて英語は 抑揚が大きい言語 です。子どもたちは英語のリズムに乗せて声を出すことで、普段よりも堂々と表現するようになります。発音やリズムは正解・不正解だけでなく「のびやかに声を出すこと」に価値があるため、失敗を恐れずに楽しめるのです。
つまり、英語の発音やリズムは「早く正確に覚えるため」だけではなく、
- 音を聞き分ける力
- 言葉を覚える記憶力
- 表情や身体の使い方
- 自信を持って声を出す態度
といった 総合的な成長 に効果をもたらしています。
仲間と一緒に挑戦する姿勢

英語遊びでは、友達の声をまねたり、一緒に歌ったりする中で「協力して挑戦する力」が育ちます。
(例)ある時、先生が絵本を見せて “What’s this?” と聞いたとき、最初は誰も答えませんでした。しかし一人が小さな声で “Dog” と言うと、他の子も続き、次のページでは全員が大きな声で答えられるようになりました。仲間の挑戦が次の子を勇気づける瞬間です。
家庭でのヒント
おうちでも「親子で一緒に挑戦」することが大切です。例えばカードを使って “Which one is blue?” と聞き、大人もわざと間違えて “This one?” と答えると、子どもは自信を持って「No! Blue is this one! 」と訂正してくれます。
「間違えてもいい」という安心感
英語学習では間違いがつきものです。大切なのは、間違えたときに否定されず「挑戦してよかった」と思える環境です。
(例)実際、ある子が “apple” を “apuru” と言ったとき、先生が “Good try!” と返しました。その子は安心した表情で歌を続け、やがて自然に「apple」と言えるようになりました。
家庭でのヒント
子どもが英語を間違えても、直す前に「Good try! 」「Nice! 」と肯定してください。失敗を恐れず挑戦し続けることが、英語だけでなく新しいことへの積極性につながります。
間違えを恐れないアイデア
先生や親も「わざと間違える」
子どもは大人の姿をよく見ています。親や先生がわざと “This is a cat” と言いながら犬の絵を見せると、子どもは笑いながら「No! Dog! 」と訂正します。
→ 大人が間違えて見せることで、「間違えは笑って楽しめること」「直すのはカッコいいこと」という空気が生まれます。
「Good try! 」を合言葉にする
間違えても「間違えたね」ではなく、「挑戦したね!」と評価する言葉を使いましょう。園や家庭で合言葉のように “Good try!” を繰り返すと、子どもは「間違えても拍手される」という安心感を持ちます。
ゲーム感覚で「変な英語大会」
正しい英語を目指すだけでなく、あえて「わざと変な発音」や「おもしろい文」を言って笑い合う遊びを取り入れます。
例:りんごを見せて “Banana!” と言い、みんなで「Nooo!」と突っ込む。
→ 笑いを交えながら「間違いを指摘し合う」経験が、間違いを恐れない土台になります。
歌やチャンツで「間違えても流れる」経験
歌やチャンツはテンポが早いため、多少間違えても止まらずに進んでいきます。この「間違えても気にせず次へ行ける」体験を繰り返すと、「完璧に言えなくてもいい」という感覚が自然に育ちます。
親自身が「失敗を楽しむ姿」を見せる
大人が「発音できなかった!もう一回!」と笑ってやり直す姿を見せると、子どもは安心して「失敗してもいいんだ」と感じます。家庭で英語遊びをする際は、親自身が「失敗を笑い飛ばすモデル」になることが最大の教育です。
親子でできる英語遊び5選
ここからは、家庭で気軽にできる具体的な英語遊びを紹介します。園での学びをおうちでも取り入れるヒントにしてください。
歌って動く「Head, Shoulders, Knees and Toes」
体を使いながら歌う定番ソング。日本語にはないリズムに自然と触れられます。最初はゆっくり、慣れたら早く歌って盛り上がりましょう。
カードで遊ぶ「Color Hunt」
色のカードを用意し、 “Touch blue!” と声をかけます。子どもがカードを見つけたら “Great!” とほめるだけ。身近な色を使うと日常でも応用できます。
絵本をまねして答える「What’s this? 」
英語絵本のイラストを見せながら “What’s this?” と聞いてみましょう。分からなければ親が “It’s a dog.” と答え、子どもにリピートしてもらいます。真似するだけでも効果大。
ジェスチャーゲーム「Action Time」
“Jump! Clap! Run!” といった簡単な動作を指示し、親子で一緒にやります。ジェスチャーがあるので、意味が分からなくても楽しめます。
おままごと英語「Let’s Cook! 」
おままごとの中で “Apple, please!” “Here you are.” “Thank you.” のようなやり取りを英語でしてみましょう。短いやり取りでも「通じた!」という喜びを味わえます。
まとめ
園での英語遊びから見えてくるのは、「言葉を覚える」以上に大切な力です。
- 伝えたい気持ちを表現する勇気
- 違いを楽しむ柔軟性
- 仲間と挑戦する協力心
- 失敗を受け入れる安心感
英語はそのきっかけにすぎません。子どもたちが遊びを通して見せてくれる姿は、グローバル社会を生きる上で必要な力そのものであり、大人である私たちに「学びとは何か」を改めて問いかけてくれます。
