今回は、海外の語学学校に実際に通っている日本人の、語学学校体験レポートです。

英語を学ぼうとおもったきっかけ

私が英語を学ぼうと思ったきっかけは「危機感」です。

私は中学生の時に初めて学校で英語の授業を受けました。その時に「英語が話せるようになると自分のなかの世界が広がるかもしれないなあ」とぼんやりと考えていたことをよく覚えています。この時が、まともに英語に触れた初めての瞬間でした。

私が中学生だった20年以上前は、現代と比較して、まだまだ英語が日常的なものではありませんでした。英語が話せる人はほんの一握りだけだったと思います。インターネットもなく、英語に触れる機会は、学校の授業とテレビやラジオだけという時代。

中学生で英語に興味を持ち始めてから、学校で習う授業のなかで一番英語が好きになりました。文法中心のテストでは、決していい点数を取ることはできませんでしたが、いつか英語を話せるようになりたいと思う気持ちはだんだん強くなっていきました。

高校生のときは部活に一生懸命だったため、授業以外に英語に触れる機会はほとんどありませんでしたが、大学に進学してから、幸運なことに3年生の時、研究室の恩師の学会に同行して行ったスペインとイギリスで大きな衝撃を受けました。

「英語が話せないと何もできない」ということに直面したのです。空港やホテル、学会の受付、スーパーマーケット、レストランなどあらゆるところが英語で、当然ながら会話は英語のみ。英語が使えないとまともに行動すらできないという、一種の危機感を味わいました。

ヨーロッパなど海外の留学経験が豊富な恩師の達者な英語を横目に、ただひたすら「このままではまずいぞ」と思っていたことをよく覚えています。20歳の頃に感じたこの危機感こそが、後にアメリカに語学留学をする原点になったのでした。

今の語学学校

私が現在通っている語学学校は、アメリカのアリゾナ州にあるアリゾナ大学付属の語学学校です。アリゾナ大学はアメリカンフットボールやバスケットボールなどのスポーツが盛んな州立大学で、おおよそ4万人の学生が在籍しています。

車で移動しなければいけないほど巨大なキャンパスの一画に、私が通っている語学学校があり、歴史的なレンガ作りの建物内に学生専用のコンピュータールームや自習室などがあります。様々な国から集まる学生用に、あらゆるところに大きな世界地図が貼ってあり、それを使ってお互いの国や文化を英語で語っているのをよく見かけます。

この語学学校では、授業以外にも学生同士が英語の練習を兼ねて交流できるように工夫されているのが特徴で、定期的にバレーやピクニック、ハイキングなどのクラブ活動のアクティビティも充実しており、英語を使う機会を提供してくれています。

私のクラスメイトは、サウジアラビアやドバイなどの中東諸国を始め、中国、韓国などのアジア。さらにはフランスやメキシコなど様々な国籍の学生です。なかでも中東諸国からの留学生は全生徒の50パーセントを超えるほどで、彼らの文化や英会話の基礎能力の高さにはとても刺激を受けています。

講師陣のレベルは非常に高く、どの先生も経験豊富で、いくつかの国で教師を経験しているような人ばかり。個人的には、厳しい先生と優しい先生の比率は、50対50という印象です。ここでいう厳しい先生と言うのは、授業の内容に真剣勝負を求めてくるような先生のことで、決して怒ったりするわけではありません。優しい先生と言うのは、気さくで楽しみながら英語を学ぶことを尊重する先生のことです。

アメリカらしくハロウィンやクリスマスの時期には、コスプレをして授業をしてくれたりとお茶目な部分も多く、学校全体で我々学生を歓迎してくれているような学校です。教師以外のスタッフもとても優秀で、すべての学生の顔と名前を覚えてくれており、積極的に話しかけてきてくれます。

語学学校での学習内容

私が通っている語学学校のプログラムは大きく分けて、4つの授業タイプに分かれます。「オーラルコミュニケーション」、「ライティング」、「リーディング」、「グラマー」。

月曜日から金曜日まで毎日オーラルとライティングがそれぞれ1時間30分ずつ。月曜日、水曜日、金曜日はグラマーが加わり、火曜日と木曜日はリーディングが加わります。つまり、オーラルとライティングを軸にして、日替わりでグラマーとリーディングの授業を受けることとなります。1年で春、夏、秋プログラムがあり、それぞれ10週間で構成されています。

学生が多いため午前の部と午後の部に分かれて授業が行われ、朝8時から始まるグループと、お昼1時から始まるグループに分けられます。朝グループの場合、早起きが必要になりますが、午後すっぽり時間が取れるので、自習やアクティビティなど時間を有効に使えます。語学留学では、社会人になったら難しい「まとまった時間」があるのも、ひとつの醍醐味ではないでしょうか。

私が通っている語学学校のプログラムは、徹底して「TOEFL」に照準を合わせており、将来的にアリゾナ大学に限らず、アメリカの大学に入学する際に求められるTOEFLのスコアを伸ばすことを視野に入れています。

TOEFLのスコアを伸ばしたい人にはとてもいいプログラムですが、単純に英語を勉強したい人にとってはほぼ無用と言える、ライティングクラスでのアカデミックエッセイの書き方なども受講しなければいけないので、学校選びの際には考慮したほうがいいでしょう。

私はアメリカの大学に入学することを視野に入れていないので、アカデミックエッセイを学習する必要はないと思っていたのですが、いざクラスに通ってみると、エッセイの書き方や、エッセイの決まり事を学ぶことを通じて、英語でのコミュニケーションに必要な論理的思考(ロジカルシンキング)を学べ、とても貴重な体験になりました。

さらに、オーラルコミュニケーションのクラスでは、授業で習ったトピックについて5分から10分程度のプレゼンテーションが複数回あります。もちろんすべて英語ですが、プレゼンテーションの組み立てかたや、資料作成、チームワークなども学べるので、社会人としても役に立つ貴重な経験を積めていると思います。

成績については、いずれのクラスもGPAと呼ばれるグレード評価があります。テストの点数、宿題のスコア、出席率などで先生によって評価対象は変わりますが、それぞれのクラスでGPA2.5以上を取らなければ再履修となります。GPAの数値によってAからE評価が決まり、C以上取得しなければいけません。遅刻に厳しく、授業開始後10分経過した時点で、1分でも遅れるとその日の授業を受講できないルールがあります。

語学学校でかかった費用(概算・学費や生活費)について

私が通う語学学校は10週間プログラムがひとつの区切りとなりますが、10週間プログラムでおおよそ$3,000。プログラムが始まる30日前までに入金すると、10パーセント割引があるので$2,700ほどが授業料です。

この授業料のなかには、アリゾナ大学で義務づけられている、学生用の健康保険や、図書館などのあらゆる大学の施設使用料も含まれており、語学学校の学生であっても、アリゾナ大学の学生同様に学生生活を送れます。

$25の手数料が必要ですが、語学学校の学生でもアリゾナ大学の学生証が発行してもらえるため、街のスーパーマーケットや様々なお店で学生割引を受けられるのも覚えておくといいでしょう。

私は単身でアパートを借りているので、毎月光熱費も含めて$700ほどかかっています。さらに車や車の保険、ガソリン代、食費など諸々を合計して、毎月$1,500ほどかかります。アパートを借りずに、大学の寮やルームシェアなどをすれば毎月$1,200ほどで収まるでしょう。さらに、車も保有しないとなると毎月$800程度で生活できるかもしれません。もちろん、自炊を心がけて、贅沢もせず、散財しないことが条件です。

その後のキャリア(現在のキャリア)について

私は現在は学生という身分になりますが、前職で宝石系の販売をインターネット上で手がけていました。このビジネスをより高いレベルで、さらには国際的な展開も視野に入れていきたいという思いがあることから、現在の語学留学を決意しました。

まずは現在の語学学校で、最低限の英語力を身につけて、引き続きアメリカのインターネットマーケティングに関する勉強をしていく予定です。語学学校を通じてできた友人と情報交換をしながら、様々な国のビジネスや宝石業界の特徴なども教えてもらっています。英語とアメリカのビジネスを学んだ後に帰国して、自身で会社を立ち上げる予定です。

この語学学校での経験によって得られた人生観

私の通っている語学学校は、日本にいる限りあまり接点がない中東諸国の人と接することができるので、彼らの文化や価値観そして底抜けに明るい性格は、私の価値観を大きく変えてくれたと思っています。

特に彼らの宗教観については、宗教が違えど互いを尊敬する気持ちの大切さを教えてくれ、さらには、絶えず感謝の気持ちを持って生きている姿にはとても感心します。これらの国は、政治情勢の問題を抱えている側面もありますが、中東諸国の友人からは多くのことを学んでいます。

クラスメイトのなかには、南アフリカから難民としてアメリカにきた人もいます。彼の母国の話を直接聞いていると、にわかには信じられない世界がまだまだ存在しているということを痛感します。電気や水道がなく、いつ爆弾が落ちてきてもおかしくないという生活を送っていた彼からは、平和の尊さと日本がいかに平和な国であるかを学びました。

そして、一番大きな人生観の変化は「日本人であることの誇りを得た」です。クラスで唯一の日本人である私は、授業でプレゼンテーションをする時も、ディスカッションをする時も、クラスメイトから尊敬の眼差しを受けている感じがします。

日本と言う国は、自動車、家電、平和、裕福、アニメ、日本食など様々な分野で世界のトップクラスのため、クラスメイトからは毎日のように様々な日本の文化について質問をされています。それを通じて感じることは、どの国の人も本当に日本のことをよく知っているということ。

アジアの小さな島国である日本のことを、どうしてここまでよく知っているのだろうと不思議に思うほど、みんな日本のことに詳しく、大好きなのです。ここまで興味深く、好かれる国に生まれて本当に幸運だなと思っています。

語学留学を通じて、様々な国の文化や様子を知れたこと、そして、日本人であることを誇りに思えるのが、人生観において大きな収穫です。

最後に – 英語力で日本のために働きたい

私はまだまだ留学の道半ばですが、英語力よりも自分自身の価値観が大きく変わってきていることに大きな収穫を感じています。恥ずかしい話ではありますが、留学をして初めて日本人であることへの誇りが芽生えてきました。そして、日本という国をもっと多くの人に知ってもらいたい、そして日本の素晴らしさを伝えたいと思うようになっています。

戦後復興から高度成長を遂げた先代たちが築いた日本という国を守り、さらには、よりよくしたいと思っています。

そのためにも目標、日本人としての誇り、そして英語力が必要になります。これから英語を学ぼうとする人には、英語だけではなく、様々な環境下で日本という国の素晴らしさを学ぶことも経験してほしいと思います。