前編に引き続き、川嶋澄乃さんにお話を伺います。
目次
どん底のときは自分を奮い立たせるしかなかった
イギリスへの留学はどのくらいの期間ですか?
川嶋さん
1年です。元々、英語が好きでしたが、仕事で通用するくらいまでになりたくて。
ホームスティ?
川嶋さん
最初の3ヵ月は寮でした。ロンドンから北に1時間行ったところにある英会話スクールに通ったんです。そこは色々な国の人が集まっていて、食事も毎日、前菜・メイン・デザートが数種類ずつあって選びたい放題。ここで4㎏太りました。
イギリスの食事はいまいちな評価を聞きますが、ビュッフェなら食べてしまいますね。
川嶋さん
そう。で、その後、海辺の町、ボーンマスの英会話スクールに移って、ケンブリッジファーストサーティフィケートの試験を受けました。そこでは、クラスメートは私以外全員スイス人で、年末とお正月はスイスの友達の家で過ごしました。試験に受かった後は、地元のカレッジの秘書コース(3ヵ月)に入りました。ボーンマスではずっとホームステイだったんですが、ここでも食べ過ぎて、留学期間中で合計7㎏太りましたよ。
あらら。そのカレッジは英会話スクールではないんですね?
川嶋さん
違います。クラスメートは地元のオバサマたちがほとんど。ビジネスコミュニケーションやスキルを磨く職業訓練校って感じでした。美容院もカレッジの中にあって、美容学校の学生がカットやパーマをしてくれるので、私も行ってみたのですが、日本人の髪は扱いが難しいと言われました。
一人でそこまでやるのは大変だったでしょうね。寂しくなったりは?
川嶋さん
冬はいつも空がどんよりとしていて、寒さも厳しいので、それだけで寂しい気持ちになりました。でも、オックスフォード英検の上級試験も受けることにしていたので、勉強漬けで、ぼんやりしている暇はありませんでした。
真面目か、と突っ込みたくなります。
川嶋さん
そのせいで長く付き合っていた彼氏にフラれましたけど。
え!
川嶋さん
マメに連絡をし合う二人じゃなかったんですが…。安心しきっていたんですよね。結果的に、帰国してから別れることに。
7㎏増量してフラれて、悲惨な状況でしたね。
川嶋さん
その時が人生どん底でした。結婚すると思ってましたから。
せっかく留学が終わってこれからのときなのに。
川嶋さん
気を紛らわせるために忙しくするしかなかったです。帰国後、貿易会社の秘書として働きながら、夜と休日は英語力を保つためにエクステンションカレッジに通ったり。
仕事にまい進してたんですね。
川嶋さん
仕事も頑張ってましたが、友達と会ったりジムに行ったりもしてましたよ。ともかく空いている時間がないよう、スケジュール帳を全部埋めて…。
健気で泣けますね。
川嶋さん
で、その中のひとつとして、シナリオスクールに通っていたんです。
お。冒頭の話とつながったような。
川嶋さん
はい。それで今、脚本を書いてるわけなんです。でも、基本的にアクティブな性格なので、机の前にかじりついている生活に疲れると、外に出かけちゃいます。この2、3年は英語のブラッシュアップも兼ねてmeet upイベントに参加したりしています。そこで出会ったアメリカ人の友達に誘われて、ラフティングにも挑戦しました。
部活のようなトレーニングでフルマラソン完走
時間があるとジムにも通っているようですが、マラソンも趣味のひとつなんですね。
川嶋さん
今はジョギング程度ですが、以前はハマってました。ひるドラ『オーバー30』を書いた年は私にとって12年に1度のラッキーな運気だったようで、何でもしてみようと思ったんです。
いつも何でもしてるように感じますが。
川嶋さん
そうかも(笑)。
そのときはランニングを始めてみようと思ったんですね。
川嶋さん
はい。どうせ始めるならちゃんと教えてもらおうと思って、スポーツメーカー主催のランニングクリニックによく参加しました。専任のコーチから、走り方や呼吸、ペース配分のレクチャーなどを受けながら、ゆっくり走ることから始めたんです。
本格的ですね。
川嶋さん
ラン友も増えて、楽しかったんですけど、タイムにこだわる本気モードの人が多くて、練習は部活のようでした。大雨の中、坂道ダッシュとか。
一人じゃ続けるのは難しいですもんね。
川嶋さん
そう。東京マラソンに当たって、コラムとか書いてみたいな、と思っていた矢先に、ランニング雑誌の編集長をしていた知人にたまたま再会し、マラソンコラムを書かない? と言われて…。本気で思うと夢って叶うんだなと思いました。
また何か面白いことが転がり始めたんですね。
川嶋さん
コラムのための取材も兼ねて、マラソンの練習にも熱が入りましたね。フルマラソンを走るために、皇居6周(5㎞×6=30㎞)練習とか。
フルマラソンってまた凄いですね。
川嶋さん
月間100㎞、週に25㎞走れたら完走できるって言われていて。皇居や赤坂御所周辺でトレーニングしていました。
最初のフルマラソンは?
川嶋さん
ホノルルマラソンです。
おお…。いきなり海外ですか。完走できました?
川嶋さん
はい。友人たちと参加したので、皆が頑張ってると思えばなんとか。それに沿道で見ている人たちが応援してくれるじゃないですか。あれは本当に心強いんです。
苦しさの方が勝ちそうですけど。
川嶋さん
だからちょっと衣装を凝って走ったりするんですよ。プラハマラソンのときはうさぎの耳をつけて走ってたんですけど、そうすると、「うさぎちゃん頑張ってー」と声援がくるんです。もう嬉しくてまた頑張れるんです。
褒められると伸びるタイプですね。
川嶋さん
まさに(笑)。完走すると完走証というのをもらえるので、それも励みになります。
フルマラソンはその後、何度も参加したんですか?
川嶋さん
はい。国内は東京、京都、名古屋、那覇、海外はホノルル、ニューヨーク、L.A.、プラハ、台北など。でも最近はフルでは走ってないですね。
足にきちゃいました?
川嶋さん
それもありますが、日焼けするのも嫌だったので、4時間を切ったらフルはやめようと思ってたんです。で、その頃ちょうど名古屋ウィメンズマラソンで4時間を切ることができて、そこで。
何でも目標を立てて一生懸命ですよね。
人とのつながりを実感できることにかかわりたい
今でも英会話のレッスンをしているんですか?
川嶋さん
はい。毎日25分、オンライン英会話をしています。
毎日?
川嶋さん
もう日課になってるんで。
朝食を食べながら新聞を読むんです、くらいの軽さですけど、苦じゃないです?
川嶋さん
全然。楽しいからあっという間ですよ。苦痛に感じたら続かないですよね。
ごもっともです。
川嶋さん
何もしなかったら英会話力は落ちるので、少しでもキープしたいんです。次のステップにも活かしたいし。
次の目標があるんですか?
川嶋さん
うーん…。今の仕事で言えば、海外の制作会社と共同で作品を作ってみたいという気持ちはありますけど、あまり具体的ではないですね。ただ、日本と海外をつなぐ仕事をしてみたいというのは常にあります。
2020年東京オリンピックもありますしね。
川嶋さん
そう、オリンピックのボランティアはしてみたいんです。
いいですね。経験を活かせそう。
川嶋さん
貿易会社の秘書時代、海外からのお客様のアテンドもしていたので、少しは役に立つのではと。なので、オリンピックパラリンピックにはとても興味があります。
こんな機会は生きてる間にもうないでしょうしね。
川嶋さん
はい。寝る間も惜しんでがむしゃらに仕事に没頭するという時期はもう過ぎた気がします。自分のためだけでなく他人のために何ができるのかも考えるようになりましたね。
仕事に集中する時期を経たからこその思いですよね。
川嶋さん
元々、誰かのためになってると思えることが好きだったし、それが自分のパワーにもなっていました。脚本を始めたときも、「皆を元気づけられたら」という思いがあったし、オンエアしたドラマを見てくれた友人から「面白かったよ」と感想をもらったら「また楽しんでもらいたい」とエネルギーが沸いてきましたし。
反応をいただけると嬉しいですもんね。
川嶋さん
はい。でもそれは「脚本」を通してのことなので、今度は「直接」喜んでもらえるようなこともしてみたいなと。そのひとつがオリンピックボランティアなのかも。
コミュニケーションをとるのが上手なのでとても合いそうです。
川嶋さん
何の仕事をしていても、あるいはそれが趣味でも遊びでも、“コミュニケーション”が自分にとって一番大切な人生のキーワードなんだと思います。そしてそれが、私の毎日を楽しく、輝かせてくれると信じています。この先、脚本のお仕事だって新しい展開があるかもしれないし、それはコラムかもしれないし、海外の仕事かもしれない。何があるかわからないけど、国を超えた人と人とのつながりを実感できることに関われたらいいなと思っています。
なんだか自分の手で未来を作っていくような力強さを感じます。素敵なお話をありがとうございました。