前編に引き続き、永田美絵さんにお話を伺います。
目次
犬に負けたコミュニケーション力
プラネタリウムでは今現在の場所から見る夜景、星空を映すことが多いですけど、たまに南半球の星空を見せてもらえるとテンションが上がりますよね。
永田さん
そうそう。普段は見られない地域の星空は気になりますよね。日本では見られないけど同じ日に地球の裏側で見える天文現象なんて特に。
実際に観測しに海外に行ったりするんですか?
永田さん
そうですね。海外旅行に行くときは、普通は観光地などを中心に廻るんでしょうけど、この仕事をしていると星を中心に場所や日程を決めたりしますね。
なるほど!昼間ではなくて、夜の行動を中心にスケジュールを決めるんですね。
永田さん
昼間も観光しますけど(笑)。せっかくだから。
印象深い場所はどこですか?
永田さん
エジプト…かな?ギザやその他の各地をめぐり、最終的にリビア砂漠で皆既日食を見ました。もう10年以上前ですね。
空気が乾燥してそうだし、クリアな日食が観測できそうですね。
永田さん
良かったですよ。機材準備とかはプロがいたのでお任せできるし(笑)。
羨ましい環境での観測ですね。しかもエジプトでなんて神秘的です。
永田さん
本当に。あと、オーロラを生で見たときも感動的でした。
どこから見たんですか?
永田さん
アラスカです。チェナホットスプリングスというところ。
一生に一度は生で見てみたいです。でも、強烈に寒そう。
永田さん
完全装備してますしね。まあ、寒さには慣れてますから(笑)。
そうですよね。私みたいにちょっと思いついたように流星を見つけようとして、軽装のまま1時間くらい外にいて凍える、というようなことはしませんよね。
永田さん
しますよ(笑)。帰りに道に立ち止まって、とか、部屋の窓を開けて、とか、真冬なのにあっという間に時間が過ぎたり。
海外あちこちに行かれてるということは、語学も得意なんですか?
永田さん
さっぱりです(笑)。学生の頃は英語が苦手でしたし。
そうなんですか。コミュニケーションを取るのが得意そうなのに。
永田さん
実は大学時代、イギリスに1カ月留学していたんですよ。でも1カ月じゃダメですね。お世話になった家に犬がいたんですけど、犬の方がよっぽどそこのご家族とコミュニケーションが取れてました。犬に負けてるって思いましたね(笑)。
長年の関係性には負けちゃいますね(笑)。
永田さん
英語は今までに何度も挫折しています。
このやり方は合わないなと思う勉強法は?
永田さん
英会話学校でのグループディスカッションは苦手でしたね。
意外です。得意そうなのに。
永田さん
勉強してる、みたいな雰囲気がちょっと…。発音やフレーズなど同じことを繰り返し言ったり聞いたりしてるとやる気が失せるというか(笑)。ディスカッション形式ならまだ楽しめるんですけどね。とは言え、そこまで話せませんけど(笑)。
渋谷のプラネタリウムだと外国人の方も多そうですよね。案内や質問に困りません?
永田さん
そうなんですよ。近くに大きなホテルもあるし、かなり多いです。なので、マニュアルを見ながらカタコトで話してます(笑)。マニュアルごと見せたりして。これ、これです、みたいな(笑)。
頑張って説明しようとしてる感はありますよね。
永田さん
他のスタッフに話せる人がいるので、その辺は安心なんですけど。私ももう少し落ち着いて英語対応できるようになりたいです。
もし英会話が上達できたら、してみたいことはありますか?
永田さん
国際プラネタリウムのミーティングが世界各地で開催されるんですが、それに出席して、当館の紹介をしたいです。
それは素敵ですね。プレゼン原稿を暗記して臨むという方法もありますよ。
永田さん
無理無理無理(笑)。
まあ、アドリブの永田さんですから、完全暗記よりもその場の空気を感じて話したいですよね。
永田さん
夢ですね。あと、現実的…というか身近な目標としては、外国人向けのプログラムを作ってみたいです。先ほども話に出ましたが、やはり外国人の方が増えているので。
そうですよね。郊外では難しいかもしれませんが、渋谷ならそういう番組もできそう。
永田さん
渋谷ならではの特性を活かしたプログラムを考えるのは、難しいですけど楽しいんです。
同じ空を他の場所で見てる人がいる
職場のデスクに置いてあるような「お仕事に欠かせない必須アイテム」というのはありますか?
永田さん
仕事用の携帯電話と星座早見表…、あと何と言っても「理科年表」と「天文年鑑」ですね。
何ですか?それは。
永田さん
日の出、日の入りは毎日変わっていくでしょう?惑星の位置や星との距離など、軌道によって変わるし。そういう日々の変化を知るためのもので解説員には本当に重要なんです。
分厚い本ですね。
永田さん
1日ごとの天文現象が詰まってますから。これを元にして解説のアドリブに使うこともありますよ。
細かい文字ばかりの資料や本も、永田さんの解説で楽しくわかりやすく教えてもらえるんですね。
永田さん
せっかく「今日」という日にプラネタリウムに来てくれたんですから、今日だけの何かをお伝えしたいんですよ。
永田さんのお話を伺ってると、宇宙規模のお話や仕事も一瞬一瞬の積み重ねなんだなって思えてきます。永田さんは日々のこだわりはありますか?
永田さん
こだわりというか…毎日することと言えば、空を見ることでしょうか。晴れていれば必ず空を見上げて雲や星をみます。
仕事で空を見てるのにまだ見ます?
永田さん
好きなんです。毎日違うし。この事務所(12階)から夕陽や雲の動きをしばらく見ていると、あぁいいなって思いますよ。
邪魔するものがなくて見通しもいいですもんね。
永田さん
そうなんです。たまにすごくキレイな夕焼けが見えたり、変わった雲の形なんかが見えると、スタッフ皆に「見てみてー」って窓に呼んじゃいます。
「へぇー」で終わらないんですか?
永田さん
終わらないですよ。皆、好きですから。スタッフ皆でぼんやり窓の外を眺めたりしています(笑)。
いいですね。
永田さん
同じ空を他の場所で見てる人がいるかも、とか、そういうことを想像するのも好きなんですよ。スーパームーンのときなんかは日本中が同じ月を、世界中が時差で多少のずれがありながらも眺めてる、そんな風に想像すると皆で同じ「地球」にいるんだなって感じて。
素敵ですね。国土は違っても同じ地球で、見てるものも同じ。私も毎日の日課にしてみようかな…。
永田さん
そのうち癖になりますよ。
ですね。素敵なお話、ありがとうございました。