前編 に引き続き、山本かなえさんにお話を伺います。

アクシデントも楽しい海外ツアー

今まで数多くのツアーを企画したと思いますが、中でも印象的だったものは?
山本さん
どれも思い入れがあるツアーなので大切なんですけど…。あ、インパクトがあったのはケニアのサファリツアーです。
野生の動物…、なんだか緊張しますね。獲物として襲われそう、みたいな。
山本さん
動物たちはツアーの車に慣れてるんで。
そういうものなんですか。
山本さん
でも、絶対に窓を開けてはいけないとか注意すべきことはありますよ。
姿が見えなかったり動物が寝ていたりすると、うっかり窓を開けてしまいそう。
山本さん
それは絶対にダメ。その時も窓を開けてしまったお客様がいて。その瞬間、ライオンがぐおおおっ!って急に起き上がって、車内全員、大騒ぎになりましたよ(笑)。私もびっくりしました。
無事だったんですか?
山本さん
もちろん大丈夫。現地ガイドもちゃんといるので。この現地ガイドが重要なんです。その人次第でツアーが雲泥の差になりますから。その時も上手いガイドで、目利きがすごいんです。一見、何の動物もいないように見えるのに、「いますよ」と察知している。
あそこにあの動物が、とか、気配ですべてを把握してるんです。やはり体験ツアーですから、遠目に見るだけじゃ面白くない。でも危険がないようにそのギリギリ具合を調節してくれると楽しさが倍増しますね。まあ、実際はギリギリに見えて安全なんですけど(笑)。
ケアンズでカンガルーと
ケアンズでカンガルーと
ツアー中、特に海外だと予期しないことが多くありそうですが…。
山本さん
多少のアクシデントはあります。天候や交通渋滞によって行程のルートを変更したり。その都度、対応ですね。
お客様から「思っていたのと違う」など、クレームを言われたりしません?
山本さん
そういう場合は大抵、事前の説明不足が原因なんですよ。説明を怠ったりコミュニケーションが不足してると、後々不満が出てくるものだと思います。だから、手続きや準備段階はもちろん、旅行中もよく話すようにしてますね。
山本さんご自身の失敗なんてあります?
山本さん
忘れられない失敗がありますよ(笑)。まだ添乗歴が浅い20代の頃、北京ツアーに添乗したんです。出発の朝、ホテルのウエイクアップコールが鳴らずに、目が覚めたら出発時間で。
一瞬、心臓が止まりますね。
山本さん
そう。もう顔を洗わず髪はボサボサのまま、荷物だけスーツケースに突っ込んで、物凄い形相でロビーに走りました。でもロビーに誰もいない。「まさか、添乗員を置いて出発してしまった!?」と焦りました。そこに「随分、早いですね」と現地ガイドの声がしたんです。「出発まであと1時間ありますよ」の言葉に意味がわかりませんでした。
時差ですか?
山本さん
はい。日本との時差が1時間。そのツアーの前にタイに行ったりと添乗が続いてるうちに、アラームを中国時間にしたつもりが日本時間にしてしまったようで。あの時の恐ろしさと恥ずかしさは今でも覚えてます。
その次のツアーから時計の設定は特に注意したんでしょうね。
山本さん
そうですね。自分の不注意を防ぐものはもちろん、お客様のちょっとしたことにも対応できるよう持ち歩くものは増えました。
必須アイテムがあるんですか?
山本さん
「〇〇、持ってますか?」とよく訊かれるものは持ち歩くようにしています。
(左上から時計回り)お手拭き、絆創膏各種、ルーペ、フックホルダー
(左上から時計回り)お手拭き、絆創膏各種、ルーペ、フックホルダー
(左上から)のど飴、手帳、ミニライト、靴ベラ
(左上から)のど飴、手帳、ミニライト、靴ベラ
私も絆創膏やのど飴はいつも持ち歩いてます。他人のためというよりも自分が必要だからですが。
山本さん
お店がなかったり、わざわざ買うまでもない場合もありますしね。

英語は通じれば何でもOK

海外のお仕事には英語が重要になってくると思いますが、山本さんの英語レベルはご自身の中で満足度何%くらいですか?
山本さん
50%くらいでしょうか。日本にいると時々単語を忘れます。
この質問、実際どのくらいのレベルなのかさっぱり伝わらないですね(笑)。英語は学生の頃から好きでした?
山本さん
幼稚園の頃から好きでした。近所に英語で遊ぶ教室があって、引っ越すまでの数か月間、通ってました。楽しかったんでしょうね。
楽しいから好き。いいですね。私は学生の頃、英語の授業が苦痛で仕方ありませんでした。だから成績も悪かったです。でも、海外に行くと中学英語で何とか自分の要望は伝えられるんです。ヒアリングは小学生以下だから、相手が早口だと何を言っているかいまいち分かりませんが。
山本さん
私はヒアリングやスピーキングなど好きですよ。文法を気にしないで、通じればいいと思えるから。ライティングなど文章を作ろうとすると、文法を気にするので前に進まなくなるからあまり得意ではないですね。
山本さんとはレベルが違うと思いますが、分かります(笑)。私の場合は底辺のレベルですけど、海外の人と話すのは好きなんです。ほとんど単語ばかり並べてる感じですが。
山本さん
それでもコミュケーションを取ろうとするのは素敵ですよね。そういう風に、英語が得意じゃなくても、挨拶やちょっとした道案内ができる人も増えてほしいです。まだ日本人は外国人に対して消極的な気がしますから。
山本さんはどうやって上達したんですか?
山本さん
22歳のときに半年間、アメリカ留学したんです。帰国後も録音してきたラジオ番組をBGMにして部屋で過ごしたりしました。
ハイレベルな勉強法ですね。逆に、このやり方は私には合わないと思う方法は?
山本さん
何度も単語を書くことでしょうか。勉強してると思うと苦痛になるのかも。
台湾のクイーンズヘッド
台湾のクイーンズヘッド

したいことが溢れてくる幸せ

次なる野望なんてありますか?
山本さん
旅行好きの人たちが集まるカフェを考えたりしています。英語の勉強になったり、困ってることを相談できたり、必要な人を紹介してもらえたり。人生に寄り添えるコミュニティを作りたくて。
いいですね。外国の方がカウンターやホールにいるんですか?
山本さん
そう。たとえばオーストラリア人のAくんがカウンターに何時から何時まで勤務してるから話しに行こう、とか、近々ハワイに行くからハワイ出身のBさんがいる時間に行こう、とか。そんな風に気軽にお茶しに行けるカフェがあったらってずっと思っていて。
そんなカフェがあったら、旅行の前に必ず行ってしまいそうです。
山本さん
オープンさせたら来てくださいね。
もちろんです。
山本さん
したいことがどんどん溢れてきて…幸せですよね(笑)。なんだか早くカフェを実現させたくなってきました。そういうことを考えるのって楽しいし…この仕事、本当にキリがなくて面白いんです。
プラスのエネルギーが伝わってきます。素敵なお話をありがとうございました。