米国各州が認定する公認会計士資格を持つ会計の専門家「米国公認会計士」。
専門的で高収入のイメージが強い「米国公認会計士」に以下のような不安や疑問を感じている方は多いのではないでしょうか?
- 日本の公認会計士との違いは?
- 米国公認会計士の資格はどのような資格?
- 米国公認会計士の資格取得にはどの程度の英語力が必要?
そこで、「米国公認会計士に興味を持つ方」に向けて、米国公認会計士の仕事やキャリア、通関士の資格・資格試験、資格取得に必要な英語力について紹介しています。
本記事を最後まで目を通していただければ、米国公認会計士について一通りチェックすることができますよ。
ぜひ、米国公認会計士に興味を持ってこの記事にたどり着いた方は、最後まで読んでみてください。
米国公認会計士とは
米国公認会計士とは、”USCPA”(”U.S. Certified Public Accountant”)のことで米国各州が認定する公認会計士資格を持つ会計のエキスパートです。
米国公認会計士として働くためには、試験に合格し、ライセンスを取得する必要があります。
米国公認会計士の資格は、世界的に認知度が高く、汎用性も高いため米国の資格であるにもかかわらず、世界150ヵ国以上の人々が資格を取得し様々な分野で活躍しています。
米国公認会計士の仕事
米国公認会計士の主な業務は、会計や税務、監査に関することです。
具体的な業務内容は以下のような仕事があります。
- 法人税や個人所得税の申告等の会計業務
- 試算表や帳簿の確認、英文財務諸表、決算書等の会計業務
- 国内外の会計、税務、経営に関するコンサルティング
- 国内外とのパートナー企業などとの会計業務の対応
米国公認会計士の就職先・キャリア
米国公認会計士の資格の保有は、プロとして英語で会計実務ができること、マネジメントレベルのビジネスパーソンに必要な知識を持つことを示します。
そのため、以下のような幅広い分野での就業の道が開かれます。
- 監査法人・税理士法人・会計事務所
- コンサルタント会社
- 外資系企業
- 一般企業
監査法人や会計事務所などで専門業務に携わるだけでなく、広い分野から注目されています。
例えば金融機関では、英文経理業務、M&A業務、企業再生などに関する高度な知識が重宝されます。
国内だけではなくアメリカ以外の海外でのキャリアにも役立てることができます。
国際相互承認協定が存在し、一定の条件を満たすと、カナダやオーストラリア、ニュージーランド、香港などで会計士として監査業務を行うことができます。
米国公認会計士の年収
日本国内もしくは海外など働く国により、年収は異なります。
日本の米国公認会計士の初年度の平均年収は、一般的に、400万~700万円程度と言われています。
就業先によって年収に幅があり、初年度のおおよその金額は以下の通りです。
- 監査法人:500万~600万円
- コンサルタント会社:500~700万円
- 外資系企業:400万円
- 一般企業:300万円
経験や在籍年数により上昇する傾向があり、シニアクラスで700万円、マネージャークラスで900万円程度の年収が見込めます。
アメリカで就職する場合、年収500万円程度(40,000~65,000ドル)と言われています。1ドル110円ぐらいだったのが160円ぐらいになると、為替レートの差によっても日本円にした場合の金額が変わってきますし、ドルベースで給料をもらった方が給料は高くなります。でも、アメリカの都市部で就職する場合、住宅費も高くつくので、生活費としていくら残るのかについても考慮した方がよさそうです。
シニアクラスになると1,000万円以上の年収を手にすることも可能です。
米国公認会計士になるには?
米国公認会計士として働くには、米国公認会計士試験の合格が必要不可欠です。
さらに試験合格後にライセンスを取得してはじめて正式に米国公認会計士と名乗ることができます。
資格試験を受けた州によって、ライセンス取得に実務経験が必要なことがあります。
米国公認会計士の資格
米国公認会計士の資格は会計・税務の仕事において、米国各州が認定する資格です。
世界で広く認知されたビジネス資格で、国際的にステータスがあります。
国際相互承認協定があり、一定の基準をクリアすればアメリカ以外の海外でも会計士として働くことができます。
日本の公認会計士との違い
日本の国家資格である公認会計士の資格がなければ、日本で公認会計士として監査や会計などの独占業務を担ったり、開業することはできません。
しかし、外資系企業においては、日本の公認会計士資格を取得しただけではその能力を評価してもらえないことがあります。なぜかというと、日本と諸外国の会計基準は異なるからです。
米国公認会計士(USCPA)の資格を保持している場合、日本にて監査業務や会計業務を行うことも可能です。日本にある米国系の外資系企業では、米国公認会計士の資格を保持していると、即戦力として仕事ができます。
USCPAは、日本国内だけでなく、グローバルなキャリア形成に役立てられるというメリットがあります。
米国公認会計士の資格試験
日本でも受験可能なコンピューター形式の資格試験です。
受験する州によって受験資格やライセンス取得要件が設定されているので注意が必要です。
多くの州では、大学の学位取得や会計学科やビジネス学科で一定の単位の取得が条件となっています。
受験科目は4科目あり、それぞれ75点以上で合格です。
- “FAR”(“Financial Accounting & Reporting”)財務会計
- “AUD”(Auditing & Attestation)監査・証明
- ”REG”(Regulation)商法・税法
- ”BEC”(Business Environment & Concepts)企業経営環境・経営概念
1科目ずつ受験することができ、18ヶ月(1年半)以内に4科目すべて合格する必要があるとされていましが、2024年1月より、科目合格実績の有効期限の18ヶ月が、州によって違う設定になっています。
日本の公認会計士試験は、基本的に全科目に一度で合格しなければなりませんが、米国公認会計士は1科目ごとに合格すればよいため、働きながら合格を目指せるという点も、メリットの1つです。
日本の公認会計士資格と比較しておよそ4分の1で合格が目指せると言われていて、働きながら米国公認会計士の合格目指して頑張れる人にはおすすめです。
科目合格実績の有効期限の変更
科目合格実績の有効期限は18ヶ月でしたが、2024年から州によって、有効期限が変更になっているので、注意してください。
グアム:スコアリリースより30ヶ月
ワシントン:スコアリリースより36ヶ月
アラスカ:2024年の早期段階で30か月へ変更するよう調整中
ニューヨーク:科目合格実績の有効期間はスコアリリースより30ヶ月
2024年1月10日以降の受験に適用
州によって科目合格実績の有効期限が違いますが、おおむね有効期限が30ヶ月になった州が多いようです。USCPAの資格取得を目指している人は、どの州の試験を受験するかについてよく検討してみましょう。
2024年1月から開始した新試験制度
上記に受験科目は4科目と紹介しましたが、2024年1月から新試験制度が導入されました。
科目数は、従来の4科目のままですが、必須3科目+選択科目1科目という構成に代わります。う具体的に説明すると、下記のようになります。
(必修科目)
- “FAR”(“Financial Accounting & Reporting”)財務会計
- “AUD”(Auditing & Attestation)監査・証明
- ”REG”(Regulation)商法・税法
(選択科目)
下記3科目から1科目を選択
- BAR(Business Analysis and Reporting)ビジネス分析及び報告
- ISC(Information Systems and Controls)情報システム及び統制
- TCP(Tax Compliance and Planning)税法遵守及び税務計画
選択科目の3科目のうち、どれを選択すべきか悩ましいところですが、「BAR(Business Analysis and Reporting)ビジネス分析及び報告」がおすすめだと言われています。
会計士として必要な知識はもちろん、経営分析など幅広い分野で活かせる知識を身に着けることができて、会計の専門的な内容ではあるものの、他の2科目と比較をすると一般的な学習内容だからです。
米国公認会計士試験の勉強法
日本の公認会計士の試験と違い、米国公認会計士の試験は4科目の試験に30ヶ月ぐらいかけて合格すればいいので、働きながらでも受験勉強ができますが、どのように勉強すればいいのでしょうか。米国公認会計士試験の勉強法を紹介します。
勉強法としては、次の2つの勉強法が考えられます。
- 予備校で勉強する
- 独学で勉強する
すでに日本公認会計士の資格を持って働いている人が米国公認会計士の試験を目指して勉強している可能性もあります。働きながら何か資格を取るために勉強するのは大変で、挫折しそうになることもあるでしょうし、予備校で勉強した方が効率が良さそうですが、仕事が忙しくて、仕事を通してその試験について学べる機会があるなら、独学で勉強するのもありだと思います。
試験難易度
米国公認会計士資格試験の合格率は50%程度、日本人の合格率は40%程度と言われています。
日本の公認会計士の合格率は5~12%であることと比較すると、米国公認会計士試験は公認会計士試験より難易度が低いように感じるかもしれません。
公認会計士には受験資格が設けられていないことを考慮すると、米国公認会計士資格には受験資格が設けられていて、受験の段階でスクリーニングしているので合格率が高くなることが理解できます。
日本人の合格率は世界平均よりも低く、母国でない英語での試験は難易度は高いと言えるでしょう。
試験日程・時間
ワシントン州、グアムなどでは通年受験制度が導入されており、受験場所、日程、科目などある程度自由に選択ができます。
試験時間は各科目4時間と設定されています。
試験概要
各科目の問題は以下のように設定されています。
- “FAR”(“Financial Accounting & Reporting”)財務会計
四択問題:66問 シュミレーション問題:8問
- “AUD”(Auditing & Attestation)監査・証明
四択問題:72問 シュミレーション問題:8問
- ”REG”(Regulation)商法・税法
四択問題:76問 シュミレーション問題:8問
- “BAR”(Business Analysis and Reporting)ビジネス分析及び報告
四択問題:50% 総合問題:50%
出題形式は四択問題、シュミレーション問題、記述問題があります。
- ISC(Information Systems and Controls)情報システム及び統制
四択問題:60% 総合問題:40%
出題形式は四択問題、シュミレーション問題、記述問題があります。
- ISC(Information Systems and Controls)情報システム及び統制
四択問題:50% 総合問題:50%
出題形式は四択問題、シュミレーション問題、記述問題があります。
米国公認会計士資格試験に求められる英語力
米国公認会計士と聞くと高い英語レベルが求められると思っている方は多いのではないでしょうか。
試験に使用されている英文には、複雑な表現は少なく基本的には簡単な文章で記載されています。
英検であれば1〜2級程度、TOEICであれば800点程度の英語力が少なくとも必要とされています。
米国公認会計士の試験の9割はリーディングスキル、残りの1割はライティングスキルが必要とされる内容です。
4科目中、1科目のみで記述形式の問題が出題されます。
つまり、米国公認会計士の試験に合格するには、リーディングスキルが鍵となります。
1科目4時間という長時間、集中して英文を読み続けることに慣れる必要があります。
さらに、問題数が多いため、試験時間内にすべてに回答するには問題文をスラスラ読み要点を捉えることが大事です。
英検1級の資格を持っていても、翻訳等で生計を立てるのは厳しくなってきているため、英語+専門分野の知識を持っていると、安定した収入を得ることが見込めそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は米国公認会計士の仕事やキャリア、米国公認会計士の資格・資格試験、資格取得に必要な英語力についてご紹介しました。
さまざまな分野の法人や企業から求められている米国公認会計士について理解は深まりましたでしょうか? 2024年1月から、新試験制度が導入され、受験科目や科目合格実績の有効期限に変更があるので、受験を検討している方は注意してください。
国際的に認知度の高い難関な資格で、取得することで就職する国や就職先などキャリアが広がります。米国公認会計士の資格は、米国に住んでいなくて日本に住んでいても、外資系企業などで働く場合に役に立ちそうな資格です。
グローバルな仕事や海外で働くことに興味がある方は、ぜひ資格の取得を検討してみてください。