みなさんは、コンシェルジュという仕事をご存知でしょうか?

ホテルなどに常駐し、お客様の要望に答える方のことです。旅行に行った際に、おすすめの観光地や飲食店を教えてもらったりした経験がある方もいると思います。当然、英語での会話ができるスキルが求められることが多いです。

今回はそんなホテルでのコンシェルジュの仕事について、実際に働いていた方のお話をご紹介します!

目次

キャリア概要

学生時代から英語に興味があり、また、アルバイトの経験から接客業を極めてみたいと思い、リゾートホテルへ就職しました。希望部署はフロントでしたが、最初に配置されたのは「コンシェルジュ」です。

コンシェルジュとして3年勤めた後、フロント業務を1年経験しました。

リゾートホテルに勤務しようと思った理由

高校時代はそば屋、大学時代はコンビニとファーストフードのアルバイトをかけもちしており、接客業に携わってきました。コンビニもファーストフード店も、誰でも気軽に入れるという良さがありますが、その反面、常識では考えにくいクレームを言ってくるお客様もいました。

例えば、ドライブスルーで商品を購入したお客様がすぐに戻ってきて、「車内にハンバーガーを落としてしまったから、新しいのと交換してほしい」とか、店内でお食事されたお客様が、「ハンバーガーのソースが服について汚れたから、クリーニング代を出せ」といったことなどです。

常連のお客様との素敵な出会いもありましたが、誰でも気軽に来れるようなお店でスピード勝負の接客をするよりも、もっと丁寧におもてなしができるような場所で働いてみたいと思うようになりました。

また、学生時代は洋楽が好きで英語に興味を持つようになり、英語に関わる仕事をしてみたいという考えもありました。どんな職業がいいか悩んでいたのですが、友人がホテルで働きたいと聞いたのをきっかけに、ホテル業に興味を持つようになりました。

その後、就職活動中に参加した合同企業説明会で話を聞いたリゾートホテルが気になり、実際に会社見学に行ったときのことです。担当してくれた総務課の方は、とても気さくで緊張している私に冗談などを言いながら社内を案内してくれました。その総務の方の対応が良かったことと、海外からのお客様も来られるということを聞き、英語が使えて接客業を極められそうなリゾートホテルへ就職することにしました。

コンシェルジュという仕事について

最初に配属されたのは「コンシェルジュ」という部署で、立ち上げたばかりの新しい部署でした。上司が1人いましたが、3か月ほどで退職されたため、新しく入ってきた方と2人で初めてのコンシェルジュ業務を模索する日々が始まりました。数年前の当時は「コンシェルジュ」というのは知名度が低く、お客様も何の部署だろうという感じで通り過ぎる方が多かったように思います。

コンシェルジュは、一言で言うとお客様の要望に答えたり、困っている時に助けたりと、何でも請け負う部署です。当然いろいろなことに精通していなければなりませんでしたので、休日には今までに行ったことがない観光地に行ったり、体験したことがないマリンスポーツを体験したのを覚えています。

主な業務としては、ホテル内外のレストランの予約、レンタカーの手配、バスツアーやマリンスポーツの予約、おすすめの観光地、居酒屋の案内などでした。

1日のスケジュール

コンシェルジュとフロント、2つの業務の内容やスケジュールをご紹介します。

コンシェルジュの1日

11:30 出勤

事務所で、当日のホテル内の挙式やレストランの団体予約状況、宿泊状況などを確認します。

12:00 コンシェルジュデスクオープン

パソコンで当日の個人のお客様のレストランの予約状況などを確認します。

12:00~14:00 来客対応

レストラン、マリンスポーツ、レンタカーの予約、おすすめの観光地、周辺のお食事処のご案内など、お立ち寄りになるお客様の様々なご要望にお応えします。

14:00 昼食休憩

社員食堂でランチを食べます。

14:00~20:00 来客対応

お立ち寄りになるお客様の様々なご要望にお応えします。18時~19時は、ホテル内のレストランの予約の問い合わせが多いです。

20:00 コンシェルジュデスククローズ

デスク周辺を片づけた後、翌日の手配書をFAXしたり、他部署に連絡したりします。

20:30 退社

お客様からのお問合せが退社前にあると残業になることもありますが、ほぼ定時で帰ります。

フロントの1日

フロントでの主な業務は、宿泊予約をされた方のチェックインです。

個人の予約カードを見ながら、リクエスト通りのお部屋、滞在日数、貸出備品などに間違いがないか確認します。その他に、チェックアウト、当日や翌日の宿泊受付、電話応対、備品の貸し出しサービス、団体のお客様への合同説明、鍵のお預かり、お渡しなど様々な業務があります。

13:15 出勤、部署内ミーティング

10分前までには出勤し、当日の宿泊、挙式、レストランなどの予約状況、VIP情報などを共有します。

13:30 フロントカウンターにてチェックイン業務など

通常は14時からでしたが、チェックインが13時からできるお客様のチェックイン、荷物のお渡しなどを行います。

16:00 昼食休憩

社員食堂でランチを食べます。

17:00 フロントカウンターにてチェックイン業務など

個人、団体のお客様ともに集中して到着される時間帯のため、20時くらいまでは忙しい時間帯です。稼働率が高い時はお客様の列ができ、ひたすらチェックインをしています。それ以外にも電話応対や外出時の鍵のお預かり、お渡し、ルームサービスなど複数の業務があります。

22:30 退社

繁忙期は、1~2時間の残業が続くことがあります。稼働率が低い時は、ほぼ定時で帰れます。

プレッシャーやクレームに苦労することも…

コンシェルジュとフロントをどちらも経験してみて思ったことは、コンシェルジュの時は、どちらかというと時間をかけて丁寧に対応し「ありがとう」と言われることが多かったですが、フロントは激務であり、スピードが求められるということでした。

コンシェルジュの知名度が低かったこともあると思いますが、遠慮がちに来られるお客様のリクエストに対してお調べしている間、椅子にかけてパンフレットをご覧頂くなど、一息つける場所になっていたように思います。

お客様の中には、どうしても予約がいっぱいで取れないマリンスポーツの予約を「コンシェルジュだからとれるでしょ」という方もいて、プレッシャーを感じることもありました。また、ホテルの対応に納得がいかず、大声でクレームを言うお客様と接したこともあります。

しかし、それはほんの一部で、こちらがおすすめした居酒屋から帰られて、「おいしかったよ」とご報告に来てくれたり、観光地の感想や雑談をしたりするなど、お互いに居心地のいい時間を過ごせることが多かったように思います。

フロントは、コンシェルジュとは違い、全てのお客様が必ずいらっしゃる場所になります。特に繁忙期でチェックインが込み合う時間は、並んでいるお客様をなるべく早くお部屋にご案内できるように対応しなければなりません。

チェックイン時は、お客様の対応をしながら、パソコン画面で入力しつつチェックインの項目まで進まなければなりません。タイピングの速さ、正確さが求められますが、忙しい時ほどエラーになり、パソコンの処理が追い付かないことがしばしばありました。

また、電話でお客様に呼ばれ、客室内の清掃が行き届いていない、匂いが気になるなどのお叱りをうけることもありました。

時間をかけて接客をしていたコンシェルジュの部署から、スピードが求められ、クレーム対応が増えたフロントの部署に異動してから思ったことは、ホテルでもスピードが求められるのだなということです。そして私には、スピードが求められる仕事よりも、コンシェルジュのような仕事の方が向いているのではないかと感じました。

年収やキャリアデザイン、働き方について

会社でのおおよその年収はコンシェルジュ、フロント業務ともに、240万円です。ボーナスは、夏・冬ともに1.25ヶ月分で35万円、初任給は、大卒で入社し15万円でした。

キャリアデザインとしては、そのまま管理職コースへ進むか、転職するのが一般的のようです。ちなみに、入社当初は毎月のように辞める人がいました。新入社員として入ってきた30人の同期がおりましたが、1年後には5人になっていました。

働き方としては、繁忙期は残業が多く休みが少ないですが、土日の休みは希望があればとれます。閑散期は、繁忙期の分の休みに加え、有給を使いやすい時期です。この時期に1週間から10日くらいまとめて休みをとり、旅行に行く人もいました。

妊娠すると、オペレーターや総務の事務に部署移動をしてもらえます。ホテル内の託児所を社員も利用できたり、出産後は優先的に17時までの勤務にしてもらえたりするため、子育てをしながらでも働けるのは良い点だと思います。

課題としては、辞める人が多いため、常に人手不足で勤務している社員の残業などの負担が大きいことです。クレーム対応やずっと立ちっぱなしで広い館内を歩き回ることもあるため、精神的にも肉体的にも疲れる割には給料が高くないことが原因で辞める人が多いのではないかと思います。

ホテル業界の今後について

リゾートホテルは年々増え続けており、外資系企業に買収されるなど経営が厳しい状況にある会社も少なくないです。

6年前の退社時と変わっていることは、お子様向けの遊び場が増えていること、ナイトアクティビティがメニューに増えていること、レストランの種類や内容が変わっており、とても魅力的な内容になっていることです。

以前勤めていたホテルの隣のホテルは外資系企業に買収された後、チャペルを新設するなど新たな顧客を呼び込もうと新しいサービスを始めているようです。

英語の習得について

小学生の頃、NHKの英語の番組を母が毎回録画してくれていて、何度も再生しては繰り返しフレーズを一緒に覚えました。

また、中学時代は洋楽が流行し、それから英語に興味を持つようになりました。歌詞の意味を見て英語の歌詞を覚えカラオケで歌ったり、洋楽の週間ランキングの番組を見て新しい洋楽を聞いたりするのが大好きでした。英語のラジオを聞きながら、通学していたこともあります。

大学時代は英語専攻で、4年間勉強しました。教授は外国人もいれば、日本人もおり、英語専攻だからといって、英語で会話をする機会はほとんどありませんでした。そのため、実践的な英語はホテルに就職後、海外から来るお客様への対応で徐々に身につけました。

まとめ

私はホテル業界から2度転職しています。転職した後はたまにホテルのレストランへ食事に行くことがあります。お客様として行くホテルは好きですが、実際に従業員として働くのは想像以上にハードです。

しかし、ホテルで勤務したことを後悔していません。お叱りを受けることもありましたが、お客様との出会いの中で感謝されたり、喜んでもらえたりした時は本当に嬉しく思いました。その全てがいい経験になっていると感じています。また、お客様にきちんと地元の観光地やマリンスポーツなどを体験してからご案内したいという気持ちから、休日は観光地巡りなどをして、新たな地元の魅力に気づくこともできました。

これからホテル業界で働く方は、大変なこともあると思いますが、お客様に満足してもらえると本当に嬉しいものです。どうしたらご満足していただけるかを考えながら、サービスが提供できるといいですね。観光地にあるリゾートホテルにフロントとして勤務される場合は、就職前に地元の観光地やおいしいレストランなどをまわっておくと、自信をもって対応ができるかもしれません。