「英語を使った役職」と聞かれるといくつか候補が挙がりますが、中でも英語を使った「憧れの」職業と聞かれると、「外交官」が候補の1つとして挙がるのではないでしょうか。
外交官は外務省に所属する国家公務員で、日本国の窓口として外国との交渉や調整などに関わる重要なポストです。
そんな外交官ですが、具体的にはどれくらいの英語力を持っていれば外交官になれるのでしょうか。
この記事では外交官や外務省職員の持つ英語力や、外交官の役職の序列を紹介します。
この記事を読み終わる頃には、外交官の持つ英語力や役職について具体的なイメージを持てる知識が備わるのでぜひ最後まで読んでください。
英語が話せない外務大臣はいるの?
「英語が話せない外務大臣はいるの?」という問いに対して、結論から申し上げれば、「英語が話せない人が外務大臣を務めることはあり得る」と言えます。
日本の外交を司(つかさど)る外務省。そして外務省を動かすのが外務大臣です。
つまり日本の外交のトップと言える外務大臣ですが、実は大臣の英語力の高い低いに関わらず、外国人との交渉や調整は通訳を通して行われます。
外務大臣は国の代表として各国の要人と言葉を交わすので、自国の言語に誇りを持って、例え相手国の母国語を話せたとしても、自国の母国語を話すというわけですね。
日本の母国語は日本語なわけですから、例え英語や他の国の言葉を話せたとしても、外務大臣は日本語を話し、通訳を通して相手とコミュニケーションを取るわけです。
外務大臣は「政治家」なので、外国語力よりも、政治家としての手腕をメインに選出されることも、「外務大臣は英語が出来なくてもなり得る」と言える要因のひとつです。
ただし、河野太郎大臣が外務大臣だったときに、外務省入省式で「英語力があることを前提に仕事をする」と話したことがあります。↓
河野太郎外相は1日の平成31年度外務省入省式で、「英語力がある前提で今日から仕事をしてもらう。泣き言を言わないように」と厳しい言葉を交えながら、約140人の新入省者を激励した。
引用:産経新聞 2019年4月1日
また河野太郎大臣自身も非常に英語が堪能で、通訳を入れずに会話をすることもあるほどです。
このように「英語が話せなくとも外務大臣になり得る」といった中でも、卓越した英語力も含めて評価された人が外務大臣になるケースも同時にあり得ると言えます。
外交官の英語レベルはどれくらい?
前項では政治家である外務大臣の英語力について触れましたが、官僚である「外交官」の英語力はどうでしょうか?
結論から言えば外交官には高い英語力が求められます。
なぜなら、ルール作りや国の代表としての役割を担う「政治家」である外務大臣に対して、外交官に代表される外務省職員は「官僚」であり、「実務」を担うからです。
具体的な英語レベルの目安としては、「外務省専門職員採用試験」で問われる英語試験のレベルを参考にしてみましょう。
「外務省専門職員採用試験」で問われる英語試験では、一次試験で和文英訳と英文和訳、二次試験で英会話の形式で出題されます。
公務員試験を扱う「アガルートアカデミー」によれば、英語力の目安として「TOEICなら800点以上、英検なら準1級以上、国連英検ならB級以上」を挙げています。
外務省専門職員の採用試験で求められる語学力は、英検準1級、が目安といえます。
もちろん、これは標準的な合格ラインの目安であり、これとは別に、外交官や公務員として必要な国際英語・ビジネス英語の能力が求められます。
英語に関しては、TOEIC®TEST800点以上、国連英検B級以上、英検準1級以上レベルの語学力が目安と言って良いでしょう。
引用:アガルートアカデミー
また「外務省における採用情報」では、TOEFLかIELTSのスコアを提出することを勧めています。↓
外務省職員として活躍するために英語力は重要ですので、外務省としては、官庁訪問や外務専門職試験の際に、TOEFL又はIELTSのスコアを提出することを推奨しています。
優れたスコアは高い語学能力を示すものとして評価されます。
引用:外務省における採用情報
前述した「外務省専門職員採用試験」で出題される英語力目安のTOEIC TEST800点以上、国連英検B級以上、英検準1級以上レベルをTOEFL、IELTSにそれぞれ換算すると、大まかにTOEFLiBTで90点以上、IELTSで6.5以上レベルに相当すると言えるでしょう。
※ただし、もちろん英語力だけを見て採用されるわけでもないですし、入省後の研修で後から語学力を身に着けて活躍する外交官も少なくない(外務省における採用情報より)ことも留意しておきましょう。
外交官の役職ごとの序列は?
外交官は、外務省本省と在外公館(大使館や総領事館等のこと)を数年ごとに異動しながらお仕事をします。
在外公館では、「大使」をトップとして上から順番に、大使とほぼ同等の外交特権や職務を持つナンバー2の役職「公使」、大きな大使館では部の長を務める「参事官」、ベテランの外交官が務める「一等書記官」、中堅の外交官が務める「二等書記官」、若手の外交官がなる「三等書記官」、そして在外公館の庶務や事務仕事を行う「理事官」がいます。
- 在外公館のトップ「大使」
- 大使と同等の特権と職務を持つナンバー2「公使」
- 大規模な大使館で部の長を務める「参事官」
- 若手からベテランまでの外交官が務める、一等から三等までの「書記官」
- 在外公館の庶務、事務を務める「理事官」
また、外交官には大きく分けて「キャリア外交官」と「ノンキャリア外交官(外務専門職)」、「ノンキャリア外交官(国家公務員一般職)」がいます。
一般的にキャリア外交官、ノンキャリア外交官(外務省専門職)、ノンキャリア外交官(国家公務員一般職)の順番に出世が早いです。
キャリア外交官は国家公務員総合職試験(旧1種試験)を合格したメンバーで、外務省に限らず国家公務員の中でも要職に就くことを期待されて入省してきます。
日本は約200もの在外公館を持つので、キャリア外交官のほとんどが大使まで昇進します。
外務省専門職試験から入った外交官は、初めは理事官として在外公館の庶務や事務を経験しますが、数年で外交官である「書記官」として業務をこなします。
外務省専門職員はベテランになれば一等書記官への昇進、さらにキャリア外交官が多い参事官への昇進が可能ですし、途上国などの規模が小さい在外公館であれば大使になれる可能性もあります。
一般職のノンキャリア外交官は、主に庶務、会計、事務を担当する「理事官」を務めます。(理事官のほとんどがこの一般職の職員です)
ただし、本人の能力と意思が認められれば、外交官として活躍することも可能です。
まとめ
この記事では、英語を学ぶ人にとって憧れの仕事の1つに挙がりやすい「外交官」について、外交官になるのに必要な英語力と、外交官の役職それぞれの序列をお伝えしました。
ここまでお読みのあなたは、外交官になるために具体的にどれくらいの英語力が必要なのか、外交官の中でもどんな人が、どんな名前のどういった役職に就いているかを知っていて、外交官という役職について具体的なイメージを持つのに十分な知識を備えているでしょう。
この記事でお伝えした内容が、あなたの英語を使ったキャリアをより充実した豊かなものにできれば幸いです。