オリンピックに続いて、2021年の8月24日からはパラリンピックも東京で開催されました。障害を持っている人が真剣にスポーツに取り組んでいる姿に、感動を覚える人も多いのではないでしょうか。パラリンピックでは、日本ともなじみが深いスポーツである柔道も開催されますが、ここでは、パラリンピックの柔道のことを英語で話したい時に役立つ、英語の表現について、詳しく紹介したいと思います。

通常の柔道とは若干ルールが違うパラリンピックの柔道

パラリンピックの柔道は、視覚に障害がある人を対象にしておこなわれています。ルール自体は通常の柔道とあまり変更点はありませんが、互いに組み合った状態から試合が始められるのが、大きな違いになっています。常に組み合った状態で試合がおこなわれるために、通常の柔道よりも緊張感があるのが特徴です。「組み合う」という言葉を英語で表現する場合、「grip」という動詞が使われることが多いですが、これは直訳すると「つかむ」という意味です。柔道の組み合った状態では、相手の柔道着をつかんでいることが多いために、gripという動詞が使われています。

Aさん
They gripped each other’s judo wear and the match began.
訳)選手が互いに組み合って試合が始められた。

この例文では「柔道着」のことを「judo wear」と訳していますが、「judo suit」や「judo uniform」と訳される場合もあります。「組み合う」という言葉をそのまま訳すのではなく、上記のように「柔道着をつかみ合う」という表現に置き換えているのがポイントです。視覚に障害のあるパラリンピックの柔道選手が、互いに柔道着をつかみあって相手の存在を確認しているのを表現することができます。「つかむ」という表現にはその他に「grab」という単語もありますが、grabには急に何かをつかむという意味があるので、試合の始まりに使用する場合にはgripの方が適切です。

パラリンピックの柔道の歴史と障害に関する表現

パラリンピックの柔道は、非常に長い歴史を持っています。パラリンピックで柔道の種目が開催されるようになったのは、1988年のソウル大会のことで、すでに30年以上もパラリンピックの種目としておこなわれている人気の競技です。ですがこの時は、男子のみの競技として開催されていました。女子の柔道競技がパラリンピックでも開催されるようになったのは、2004年のアテネ・パラリンピックからです。以降、男女ともパラリンピックの柔道競技に出場できるようになりました。パラリンピックの柔道は当初から視覚に障害がある人を対象におこなわれてきましたが、視覚に障害があることを英語で表現したい場合に使用できるのは、「visual impairment」と言う表現です。

Aさん
the judo athlete with visual impairment
訳)視覚に障害を持った柔道の選手

柔道選手は「judo player」という言葉で置き換えることもできます。上記の翻訳でポイントとなっているのは、障害を持っていることを表現するために、「with」という前置詞が使用されていることです。一般に、障害を持っていることを表現したい場合には「with」を使うことが多くなっています。「腕に障害を持った柔道選手」という表現を英語で言う場合には、「the judo athlete with the physically challenged arm」した方が適切で、「disabled」を使用するよりも表現がやわらかくなります。

柔道の専門用語を英語で表現する方法

パラリンピックの柔道のことを英語で話したい場合には、各種の専門用語も覚えておいた方が良いでしょう。試合の勝敗が決まる「一本」という判定は、英語でもそのまま「ippon」と言います。「一本を取る」という表現は、「score an ippon」と表現することが多いです。

Aさん
He scored an ippon with a back throw.
訳)彼は背負い投げで一本を取った。
Aさん
He scored an ippon with a overhead throw.
訳)彼は巴投げで一本を取った。

「技あり」や「有効」などの専門用語も、日本語がそのまま英語で使われています。「技あり」は「waza-ari」と表記されていて、「有効」は「yuko」というつづりで書きます。技ありは試合中に2回獲得すると、一本を取ったことと同じこととみなされて、試合に勝つことができます。有効は何本取っても一本にはなりませんが、時間内に試合の決着がつかなかった場合、多くの有効を取った選手の方が、判定で勝つことができます。以下は、パラリンピックの柔道の試合を英語で話したい時にも、使いやすい表現です。

Aさん
She scored two waza-ari and won the match.
訳)彼女は技ありを2回取って、試合に勝利した。

パラリンピックでおこなわれている柔道の種目

パラリンピックでおこなわれている柔道の種目

パラリンピックでは、オリンピックの柔道と同じように、男女別・体重別に競技が開催されています。男子と女子で体重の区分が大きく違っているところも、オリンピックの柔道競技と共通しているところです。女子の一番軽い種目は、48キログラム級です。これは体重が48キログラム以下の、視力に障害を持つ女子選手が参加できる種目で、小柄な選手が多く活躍しています。「48キログラム級の女子柔道選手」を英語で表現すると、「female judo player in the 48-kilogram class」となり、より重い級の選手であることを表現したい場合には、数字の部分を置き換えるだけでOKです。ちなみにパラリンピックの女子柔道では、48キログラム級から70キログラム超級まで、6種類の種目が開催されています。

男子のパラリンピック柔道種目も、オリンピックの柔道と同様に体重でクラスが分けられていて、男子の場合一番軽いクラスは、60キログラム級です。以下、66キログラム級・72キログラム級と続き、一番重たいクラスは100キログラム超級です。男子のパラリンピック柔道種目は合計で7種目あり、女子より1クラスだけ種目が多くなっています。メダルを「獲得した」という表現をしたい場合には、「win」の過去形である「won」を使用します。

Aさん
He won the gold medal in the over 100-kilogram class.
訳)100キログラム超級で、彼は金メダルを獲得した。

パラリンピックの柔道を説明するためのその他の表現

パラリンピックの柔道種目を英語で話したい場合には、選手以外の関係者を表す英単語も知っておいた方が、会話がしやすくなります。パラリンピックの柔道日本代表にも監督がいますが、「柔道の監督」を英語で表現したい場合には、「judo coach」という言葉が使用されるのが一般的です。「監督」という言葉を意味する英語には「director」という単語もありますが、スポーツ競技の監督という意味で使用される場合には、「coach」が使用されることが多いです。柔道の代表チームに、監督とは別にコーチがいる場合、「coach」という言葉を両方に使用すると区別がつきにくくなりますが、監督だけ「head coach」という英単語を使用して区別することもできます。

パラリンピックの柔道競技を英語で説明したい場合には、パラリンピックの柔道特有のルールも知っておいた方が良く、試合中に選手同士が離れてしまった場合には、再度組み合ってから試合を再開するのが、パラリンピックの柔道特有のルールです。「試合を再開する」という日本語に相当するのは「resume」という英語の動詞です。試合が再開してから、瞬時に勝敗がつく可能性があることも、パラリンピックの柔道の特徴になっています。そのためにテレビで観戦しながら応援している人も、試合の開始直後は特に目を離すことができません。

Aさん
They gripped each other again and the match resumed.
訳)彼らは再度組み合って、試合が再開された。

 

パラリンピックの柔道のことを話せるさまざまな英語の表現

パラリンピックで開催される柔道競技のことを英語で話す時に便利な表現について、まとめて紹介してきました。パラリンピックの柔道は一般の柔道とは若干ルールが違っていますが、パラリンピック独自のルールを説明できる英語の表現を知っていれば、英会話もしやすくなります。英語を使用して、外国の人とパラリンピックの柔道のことを、存分に話し合ってみてはいかがでしょうか。