この年齢の子供になると、自分を客観視するようになり、劣等感が生まれてくる時期になります。子どもが初めて直面する、成長の変化に、親はどう対処していけばいいのでしょうか?

ここでこの年齢の子供の身体的、情緒的発達を見ていきながら言語のアプローチや海外の子育て情報をお知らせいたします!

身体的発達  Physical development

体力がつき、瞬発力やバランス力を必要とした運動能力が急速に伸びる

自転車に乗って遠距離を移動するなど、行動範囲も広がってきます。スポーツの得意な子はさらにテクニックを極めてきて、 大人顔負けのプレーをする子などがいます。競争心も出てくるので、団体での競技なども迫力が出てきますよね!

  • 瞬発力・・・instantaneous power
  • 競争心・・・competitive spirit
Aさん
When children reach the age of nine, their physical skills, which require instantaneous power, grow rapidly.
訳)子供は9歳になると、瞬発力を必要とする身体的スキルが急速に伸びます。

手指の動きも活発で技巧的になる

細かい作業が上手になります。 小さい紐をむすんだり、ハサミだけでなくカッターなどを使って、丸をくりぬいたりする技術も備わってきます。手先が器用な子は、繰り返し練習することを好んだり、集中力が持続する傾向にあり、結果頭がいい子が育つといわれています。

  • 集中力・・・concentration

Aさん
Children also become very good at fine work with the fingers.
訳)子供たちはまた、手指を使う細かい作業がとても上手になるね。

Bさん
Yes. Children who are good with their hands repeatedly practice fine work, and they also acquire concentration.
訳)そうだね。手先が器用な子は細かい作業を繰り返し練習して、集中力を身につけるね。
Aさん
That will probably result in the training of smart children.
訳)それが結果的に頭のいい子供の養成につながるね。

情緒的発達 Emotional development

身体的発達

同性・同年齢で集団を作り同一行動をする「ギャングエイジ」

仲間同士の結びつきが強く、自分達が作った集団内のルールを守るといった行動をする一方で、大人から「やってはいけません」と言われている、ちょっとした悪さも一緒にする仲間といった意味から「ギャングエイジ」”Gang age”と呼ばれています。

聞こえはあまりよくありませんが、ギャンググループは子供にとっての「小さな社会」。仲間に入れてもらうには、自分のわがままなどは抑制しなければいけません。それに、集団行動においてのルールも守らなければいけません。このグループでリーダー役が出来たり、協力をしたりといった社会的スキルを身に着けているのです。

  • 集団行動・・・collective action
  • ルールを守る・・・follow the rules

Aさん
Gang-aged children develop social skills within their own groups, taking collective action and following rules.
訳)ギャングエイジの子供たちは、自分たちのグループ内で集団行動をしたりルールを守ったりして、社会性を発達させているね。

Bさん
They tend to group together with others of the same sex and age, behave the same way, and exclude others.
訳) 彼らは同性・同世代の子とグループを作って同じように行動し、他人を排除する傾向あるね。

仲間意識が変わってくる

このころから自分や他人を客観的に見る力が育ち始めます。「家が近いから」とか「お母さん同士が友達だから」という、狭い範囲での友達関係から、「○○ちゃんは面白いから好き」「親切で優しいな」などの情緒的な要因から「気の合う」友達を選ぶようになります。

親よりも友達を選んで行動するため、以前よりも交友関係が見えにくくなると言えるでしょう。食事と時など、「好きなお友達の話聞かせて」など、質問攻めにならない程度に話を聞いてみるのもいいかもしれませんね!

言い訳、言い逃れ、口答えをするようになり、時々嘘もつく

話を聞かず、「ママだって○○するじゃん!」などとへりくつを言ったり、「うるさい!」「ウザい!」など悪い言葉を使いだしたりして、今までかわいかったわが子が、急変したようなショックを受けることもあります。自我意識が出てきて、自分の価値基準で行動するようになるため、親に口答えするんですね。

  • 言い訳・・・excuse
  • 口ごたえ・・・talk back
  • 自我意識・・・self-consciousness

Aさん
Children this age often make excuses, talk back, and sometimes lie to get out of an argument.
訳)この年齢の子供たちは、よく言い訳したり、口答えしたり、時には言い逃れするために嘘をついたりするよ。

Bさん
They develop self-consciousness and come to act according to their own value standards.
訳) 自我意識が芽生えて、自分の価値基準で行動するようになるね。

 

海外の子育て 事例1

海外の子育て

メキシコは反抗期がない?

日本で子供を連れて外食に行くとなると、レストラン選びに苦労しませんか?本当はイタリアンが食べたいのに、子供がいると迷惑をかけるから・・・と、結局ファミリーレストランやファーストフードになってしまいますよね。

メキシコでは、週末には家族一同が揃って、レストランで食事をとる、という習慣が残っているそうです。そしてその場には、幼い赤ちゃんの時から大人と同じようにテーブルに着き、食事をすることが当たり前のように育っているためか、子どもが騒いだり走り回ったりする光景はほとんど見られないというのです。

メキシコは格差社会が大きな問題ですが、どこに行っても恥をかいて見下されないようにと、小さなころから「TPO」を厳しく叩き込められます。外出先に合わせた立ち振る舞いをさせることに気を使い、「きちんとしたマナー」を教えられます。

このように、幼いころから「子供だから、大人だから」というのではなく、「同じ人間」として扱われることが、都合よく子供にされたり大人にされたりするモヤモヤがなく、結果反抗期が少ないのでは、という理由が一つ。そして、世界レベルで治安が悪いメキシコは、子供が単独で行動することはありえなくて、始終大人と一緒に行動し、塾といったシステムもないので、多くの宿題が出されます。よって、家庭で両親と一緒に勉強する、といった点でも家族の距離が近い、と言うのも大きな理由になるでしょう。

自力学習と読書の習慣

調査によると、9歳ごろから読書をする機会がぐっと減ってしまうと言います。どうしてこの時期は読書をしなくなってしまうのでしょうか?

9歳ごろになると自主性が出てきて、スポーツやゲーム、課外活動や学校行事と、スケージュールもいっぱいになってくる上に、親が一緒に本を読んでくれる機会もぐっと減ります。このあたりから、よほどの興味がない限り、本を読む時間を取らなくなってしまう子、逆に本を読み続けること分かれるようです。

子どもの本離れを防ぐには

  1. 読み聞かせをして本の世界を共有する。
  2. デジタルのものでも好みで使わせてみる。
  3. 親子で同じ本を読んでみる。

などの方法があります。

子供たちは2、3歳から携帯電話をいじることを覚えますが、携帯電話やタブレットしか使えない人に育たないようにするために、親が子供に本を読み聞かせしたり、自ら勉強や研究のために本を読んでいる姿を見せるといいですね。

子供の読書離れは深刻な問題ですが、デジタルのe-bookでも、audiobookでもいいので、何かテーマを決めてその本を最後まで読む習慣を子供のころに身につけさせましょう。

本を読む子は自力学習をする力もあるということなので、ゲームする時間を少し読書に充てられるといいですね!

・9歳の壁

「9歳の壁」という言葉をご存じでしょうか?幼児期の頃は「自分はすごい」「自分が一番!」と自信を持っていた子供が、自分よりは他者が優れていることに気づき、また、勉強なども難しくなってきて、不得意なものも出てきます。自分を客観視して自分のダメなところが見えてきて「劣等感」を持つようになります。

これは、この年頃の子が脳の発達によって自分を客観的に認識が出来るようになり、抽象的な概念も理解できるようになることで生まれる気持ちであり健全に成長している証拠でもあります。しかしながら、それを放っておくと自尊心(自己肯定感)が低い子になってしまう恐れもあります。

「自尊心」とは自分の短所も長所も好きになること(自己肯定感)、それでは、子供の自尊心を高めるにはどうしたらいいのでしょうか?それには親や周りの大人の関わり方が重要なポイントになってきます。

1.たくさんほめましょう Praise your child a lot!

例えば運動が得意であったとして、単に「スポーツができていいね」ではなく、「ジャンプ力があるね!」とか、「走るのがどんどん早くなってるね!」など具体的に褒めるようにしましょう。自分の得意なものを確信し、自信がついてきます。

2.「結果」ではなく「経過」(プロセス)をほめましょう Praise the “process”, not the “outcome”

勉強を頑張っている最中や、練習をしている最中など、「頑張ってるんね、偉いね」とほめていくと、コツコツと頑張る癖がついてきます。

3.他者(兄弟や同級生など)と比較するのはやめましょう Don’t compare your child with others such as his/her siblings or classmates

これは兄弟がいる人なら、少しは経験したことがあるのではないでしょうか?一番近い関係の兄弟などと比較されると、親の愛情欲しさにライバル心が出て互いに比較してしまい、さらに劣等感を抱いたりしやすいのです。

4.「やっぱり」「ほらね」は言わない! Don’t say “I knew it”!

叱ったり注意をするときに、「ほら言ったでしょう?」「やっぱりあなたはできないのね」などは禁句です!! 「どうせ自分はダメなんだ」というネガティブな思考を植え付けてしまうので絶対にやめましょう。

このように「自尊心」(自己肯定感)を高めてあげることが、「9歳の壁」を乗り越える大きなヒントになると言えましょう。

  • 自尊心・・・self-respect
  • 自己肯定感・・・self-esteem

先ほど紹介した4つのルールを実践してみるだけでも、子供の「自尊心」や「自己肯定感」を高められることが期待できます。

いつも親から自分の兄弟姉妹やクラスメートと比較されて、「経過」よりも「結果」ばかり重視される環境の中で育った子供は、自尊心がとても低くなり、自己肯定感も得られなくなります。

Aさん
It seems very difficult to overcome the 9 year old barrier. Is there any good solution?
訳)9歳の壁を乗り越えるのってとても大変そう。何か良い解決法はあるかな。

Bさん
When you praise a child, it’s important to praise the process, not the outcome, and not to compare your child with other children.
訳) 子供をほめる時に結果ではなく経過をほめることや、他の子供と比較しないことが重要だね。

Aさん
I agree. That would result in raising their self-respect and self-esteem.
訳)そうだね。それは、子供たちの自尊心や自己肯定感を高めることにつながるね。

海外の子育て 事例2

海外の子育て

アメリカの子供の自己肯定感が高いわけ

自己肯定感とは、「何ででもできるから自分に自信がある」というのではありません。いいところも、悪いところも含めて「ありのままの自分でいい」という感情です。自分が何をしたくて、どう思うのか、を小さいころから徹底的に主張するように育てられるアメリカの子供たちは、日々の生活の中で、親から選択を迫られます。

Aさん
It’s your choice.
訳)あなたが決めることよ。
Aさん
It’s up to you.
訳)あなた次第よ。

この、「自分で決める」というのが、自己肯定感を育てるのです。たとえそれで失敗したとしても、失敗の中から子どもが学んでいくのも見据えた上の子育てであるのです。

「道を間違わないように」「苦労をしないように」と戒めるのも愛情ではあると思いますが、自分で選択をしていない育ち方では、自分の人生を自分でコントロールするという力も備わらないのかもしれませんね!

まとめ

9歳ころまでの子供は心も体も大きく成長して、自分を客観的にみるようになってきます。自分より優れたものを知った時に、今まで一番だった自分ではない、と劣等感を抱いたり、親に対して反抗的な態度をとったりして、親からすると「扱いにくくなる年頃」であり、子どもにとってはこれが9歳の壁となって、なんとなくギクシャクする時期かもしれませんね。

ここで頭ごなしに𠮟りつけるのではなく、どんな小さなことでも、その子の良さがあるのだと認めてあげて、子どもが自分自身を受け入れ認められる「自尊心」「自己肯定感」を育ててあげると、何かにぶち当たって失敗したとしても、自分を否定することなく前に進んでいけるのです。

もう手がかからないように見えても、まだまだ親のかかわりが必要な時期、しっかりと受け止めてあげて、生きる勇気を持たせてあげましょうね!