英語には「無生物主語」という、あまり日本語には馴染みのない文章の作り方があります。

「無生物主語」という名前の通り、生き物ではないものを主語にする文章を表すわけですね。

「無生物主語」と聞くと一見難しそうに感じますが、特徴を押さえればしっかり理解して適切に使えるようになります。

この記事では、無生物主語の特徴と、無生物主語が使われやすいパターン、そして無生物主語の上手な訳し方をお伝えします。

無生物主語

無生物主語

英語の無生物主語とは、文字通り「生き物ではないもの」が主語となる英語の表現のことです。

文字で説明してもイメージが湧かないと思いますので、例を交えて話してみましょう。

例えば、日本語で「この本のおかげで私は勉強をする気になった。」という文章があったとします。

この文章を英語に訳すとどうなるでしょうか?

直訳をするなら、以下のような英文になると思います。

  • Thanks to this book, I was motivated to study.
    この本のおかげで、私は勉強する気になった。
  • I was motivated to study by this book.
    私はこの本によって勉強する気になった。
  • After reading this book, I felt motivated to study.
    この本を読んで、私は勉強する気になった。

上述した文章も英語として正しい文章です。

ただし、もっと直接的でシンプルに、英語らしい表現を作ることが出来るのが、以下のような「無生物主語」の英語だと言えます。

  • This book motivated me to study.
    この本のおかげで私は勉強をする気になった。

この例文は、主語が”this book”(この本)になっているのがわかりますよね。

「本」は生き物じゃないですから、「無生物」と言い換えることが出来るので、「生き物じゃないものが主語になる文章」を指して「無生物主語の文章」だと言えるわけです。

日本語では人を始めとする生き物が主語になることがほとんどなので、英語で無生物を主語にする文章を区別する意味で「無生物主語」と呼んでいるイメージですね。

無生物主語になりやすいパターン一覧

無生物主語が使われやすいパターンには、主に以下のパターンがあります。

「原因」が主語になるパターン

無生物主語の形になるパターンとして、「原因」が主語になるケースが挙げられます。

上述した「この本のおかげで私は勉強する気になった」という例文も、「原因」が主語になったパターンですね。

日本語では人が主語になって「これが原因で私は動いた」という感じの文章になることが多いですが、英語では「原因」を主語にして「無生物主語(原因)が、人を(人に)〇〇させた。」という形で文章を作ります。

【例文】

  • The loud noise made the baby wake up.
    大きな音のせいで赤ちゃんが起きた。
  • The lack of food led to many people becoming ill.
    食料不足で多くの人が病気になった。
  • The heavy rain caused the river to overflow.
    激しい雨(が原因)で川が氾濫した。

「手段」が主語になるパターン

無生物主語を使うパターンとして、「手段」が主語になるケースもあります。

例えば日本語では「インターネットのおかげで、人々は世界中のどこでもつながることが出来る」という感じで、「人々」という生き物を主語にしますよね。

対して、英語では「インターネットは世界中の人々をつなげることができる」のように、「インターネット」という「手段」を主語にして文章を作ります。

【例文】

  • The internet allowed me to connect with people worldwide.
    インターネットのおかげで、世界中の人と繋がれた。
  • The new software helped me complete the task faster.
    新しいソフトのおかげで、作業が速く終わった。
  • The instructions enabled us to assemble the furniture easily.
    説明書のおかげで、家具を組み立てるのは簡単だった。

「状況や出来事」が主語になるパターン

状況や出来事を主語にして、無生物主語の英文を作ることもあります。

例えば日本語では「工場の事故により、一時的に操業を停止した」のように、(責任者などが)停止する形で、人を主語にして文章を作ります。

対して英語では、「工場の事故が操業を止めた」といった感じで、「状況」や「出来事」を主語にして文章を作ります。

【例文】

  • The discovery of the artifact excited the entire research team.
    出土品が発掘されて研究チームはみんな興奮した。
  • The accident at the factory caused a temporary shutdown.
    工場での事故により、一時的に操業を停止した。
  • The announcement of the concert thrilled all the fans.
    コンサートが発表されてファンたちは興奮した。

無生物主語の上手な訳し方

無生物主語の上手な訳し方

ここまで、英語では日本語よりも無生物主語が使われやすいこと、そして無生物主語が使われやすい英語のパターンを見てきました。

そんな無生物主語は、日本語には馴染みがない構文も多いので、無生物主語を日本語に訳す時は工夫して訳すと、より自然な日本語訳にできます。

「人」を主語にする

まずは無生物主語が使われている英文を、「人」を主語にしてしまう手があります。

例えば以下の文です。

  • The movie made me cry.

上の例文は直訳すると「その映画は私を泣かせた。」となりますが、「私」という「人」の部分を主語にしてしまうわけです。

すると「私はその映画を見て泣いた。」とすることができ、自然な日本語にすることができますね。

「人」を主語にすることで、自然で読みやすい日本語にできるわけです。

「〜のおかげで」を使う

無生物主語の英文で、主語の部分に「〜のおかげで」をつけて訳す手段もあります。

例えば以下の文です。

  • This book inspired me to study English.

上の例文は直訳すると「この本が私に英語を勉強させるキッカケを与えてくれた。」となります。

この例文の「主語」にあたる「この本」の部分に「〜のおかげで」を加えるわけです。

すると「この本のおかげで、英語を勉強しようと思った。」とすることができ、自然な日本語にすることができるわけですね。

「〜のせいで」「〜で」「〜のため」を使う

無生物主語の英文で、主語の部分に「〜のせいで」「〜で」「〜のため」のどれかをつけて訳す手段もあります。

例えば以下の文です。

  • His long speech bored the audience.

上の例文は直訳すると「彼の長いスピーチは聞き手を退屈させた。」となります。

この「主語」にあたる「彼の長いスピーチ」に「〜のせいで」を加えるわけです。

すると、「彼の長いスピーチのせいで、聞き手は退屈だった。」とすることができ、自然に「聞き手」という「人々」を主語にできるので、自然な日本語訳になるわけですね。

まとめ

この記事では、無生物主語の特徴と、無生物主語が使われやすいパターン、そして無生物主語の上手な訳し方を、以下の点からお伝えしました。

  • 英語の無生物主語とは、文字通り「生き物ではないもの」が主語となる英語の表現のこと
  • 原因、手段、状況や出来事を主語にして、「無生物主語」を作るパターンが多い
  • 「〜のおかげで」や「〜のせいで」「〜によって」といった言葉を使うことで、「人」を主語にして日本語訳すると、日本語らしい上手な訳にできる

この記事でお伝えした内容が、あなたの英語学習をより充実したものにできれば幸いです。

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