アフリカ大陸とアラビア半島の間にあるシナイ半島。その中心にそびえる標高2,285メートルのシナイ山は、宗教的にも歴史的にも重要な場所です。
モーセが神から十戒を授かったとされ、ユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の三大宗教すべてにとっての「聖なる山」とされています。
そのふもとにたたずむのが、世界遺産「聖カトリーナ修道院地域(Saint Catherine Area)」です。宗教の交差点ともいえるこの地には、数千年にわたる人類の信仰の歴史が息づいています。
ここでは、英語のフレーズを交えながら、「世界で最も古く、今も機能している修道院」として知られるこの聖地の魅力を探っていきましょう。
世界遺産「聖カトリーナ修道院地域」とは?

シナイ山の北のふもとに位置する聖カトリーナ修道院は、6世紀にビザンツ皇帝ユスティニアヌス1世によって建設された修道院です。その正式名称は「救世主顕栄修道院(Sacred Monastery of the God-Trodden Mount Sinai)」。
モーセとは?
旧約聖書の登場人物であるモーセ(Moses)は、エジプトからユダヤ人を導いて脱出させた「出エジプト記(Exodus)」の主人公です。モーセはシナイ山に登り、神から直接「十戒」を授けられたとされています。
彼が神と出会ったとされる「燃える柴」の場所には、ローマ皇后ヘレナが小さな礼拝堂を建てたとされ、後にこれが聖カトリーナ修道院の礎となりました。
シナイ写本とは?
聖カトリーナ修道院の図書館は、世界で最も古く貴重なキリスト教文書を所蔵している場所としても有名です。その中でも「シナイ写本(Codex Sinaiticus)」は特に有名で、4世紀に書かれたとされる新約聖書の最古の写本のひとつです。
この写本は1844年、ドイツの学者コンスタンティン・フォン・ティッシェンドルフによって修道院で発見されました。
聖カタリナとは?
修道院の名前の由来である聖カタリナ(Saint Catherine of Alexandria)は、4世紀に殉教したキリスト教の女性聖人です。彼女は車輪刑を命じられたものの処刑に失敗し、最終的に打ち首にされたと伝えられています。
天使がその遺体をシナイ山へ運んだという伝説があり、9世紀ごろにその棺が発見されたとされています。それをきっかけに、この修道院は「聖カトリーナ修道院」と呼ばれるようになったのです。
アクセス
成田空港からエジプトの首都カイロへは週1便の直行便があります。乗り継ぎが必要な場合は、ドバイやイスタンブール、フランクフルトなどで乗り継ぎ可能です。
カイロからは長距離バスを使い、紅海沿いの街ダハブまで約7時間。さらにダハブからは、ツアーなどで修道院地域へ向かいます。
(注意)シナイ半島南部(聖カトリーナ修道院を含む地域)は外務省より「レベル2:渡航自粛勧告」が出ています。旅行の際は最新情報を確認しましょう。
聖カトリーナ修道院地域の歴史
この修道院のルーツは、モーセが神と出会ったという「燃える柴」の場所に建てられた小さな礼拝堂にあります。それを囲む形で、527年〜565年の間に皇帝ユスティニアヌス1世が本格的な修道院を建設。
イスラム教の拡大に伴い、このキリスト教修道院はムハンマドによって税の免除を受け、モスクも敷地内に建てられました。このように、多様な宗教と文化が共存する象徴的な場所でもあります。
また、4世紀後半には、ラテン語で書かれた「エゲリアの旅行記」という文書がこの地域を記録。これは当時の巡礼や宗教的儀式の様子を詳細に伝えています。
世界遺産としての価値
聖カトリーナ修道院地域は、2002年にユネスコ世界遺産に登録されました。
訳)聖カトリーナ修道院地域は、2002年にユネスコの世界遺産に登録されました。
登録の理由
世界遺産に登録された理由は、以下のような点です。
- キリスト教初期の修道院建築の優れた例であること
- キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の3つの宗教にとって重要な聖地であること
- 6世紀から現在まで運営を続けているということ
- 聖書写本やイコンなど、キリスト教文化に関する重要な資料が豊富に残されていること
覚えておきたい英会話フレーズ
旅行や英語学習にも役立つ、聖カトリーナ修道院地域に関するフレーズをご紹介します。
訳)シナイ山は、モーセが十戒を授かった場所と信じられています。
訳)多くの巡礼者が、頂上から日の出を見るために夜にシナイ山を登ります。
訳)修道院には、古代の写本やイコン、そして有名なシナイ写本が所蔵されています。
訳)この場所は、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教のいずれにとっても神聖な場所です。
訳)シナイ写本は現存する最古級の聖書のひとつです。
聖カトリーナ修道院地域の見どころ

修道院の建築
堅牢な石造りの建築はビザンツ様式を色濃く残し、外敵から修道士たちを守ってきました。現在でもギリシャ正教会の修道士が生活を続けており、「現役で活動する世界最古のキリスト教修道院」として知られています。
聖カトリーナの遺骸が納められているバシリカ式教会や「燃える柴」礼拝堂があります。
敷地内にあるモスク
この修道院の特徴の一つに、敷地内にモスクが建てられていることが挙げられます。7世紀にイスラム教がエジプトに広がった際、修道院はムハンマドによって保護され、税を免除されました。その証として、修道院の中にはイスラム教徒の祈りの場としてのモスクが併設され、宗教的寛容の象徴となっています。これは、異なる信仰をもつ人々が共存していた証として、現在でも語り継がれています。
シナイ山(Mount Sinai)
巡礼者の多くが夜明け前に山を登り、山頂から朝日を拝みます。「夜明けのシナイ登山」は人気のツアーで、宗教を問わず多くの人が参加します。
おわりに:世界遺産を英語で楽しむ
聖カトリーナ修道院地域は、宗教・文化・歴史が交差する、まさに「世界の聖地」と呼ぶにふさわしい場所です。
エジプトの奥地にありながらも、ここを訪れる人々は「時代を越えた信仰のつながり」を感じることができます。英語でこうした世界遺産を知ることは、言葉はもちろん、文化や歴史への理解を深める一歩にもなるでしょう。
