ポルトガル中西部の町トマールには、まるで時が止まったかのような荘厳な修道院があります。「トマールのキリスト教修道院」は、テンプル騎士団によって築かれ、後にキリスト騎士団の本拠地となった歴史的な場所です。
その後、王や芸術家たちによって増改築が繰り返され、ロマネスク様式、ゴシック様式、マヌエル様式、ルネサンス様式などが融合した、「建築の博物館」と呼べる空間が完成しました。
中でも、サンタ・バルバラの回廊から望むマヌエル様式の大窓は圧巻。大航海時代の栄華を今に伝えるこの修道院を、英語のフレーズを交えながら旅してみましょう。
トマールのキリスト教修道院とは?

トマールのキリスト教修道院(Convent of Christ in Tomar)は、1160年にテンプル騎士団によって建てられた要塞修道院です。
14世紀、テンプル騎士団がローマ教皇によって解散された後、ポルトガル王ディニス1世は、国内の騎士たちを新たに「キリスト騎士団」として再編し、この修道院を彼らの拠点としました。
キリスト騎士団は、航海術や地理学を学び、大航海時代のポルトガルを支える知的・経済的な基盤となりました。彼らの力によって、アフリカ、アジア、南米にまでポルトガルの影響力が及んだのです。
テンプル騎士団とは?
テンプル騎士団(Templar Knights)は、1119年にエルサレムで設立されたカトリックの騎士修道会です。正式名称はラテン語で「キリストとソロモン神殿の貧しき戦友たち」とされ、十字軍の一員として聖地を守る任務を担いました。
彼らは修道士でありながら戦士でもあり、莫大な富と影響力を手に入れますが、1307年にフランス王フィリップ4世の陰謀により壊滅。その影響を受けなかったポルトガルでは、名称を変え、活動を続けることが許されました。
キリスト騎士団とは?
1317年、ポルトガル王ディニス1世の要請により、教皇ヨハネス22世はテンプル騎士団の資産と権限を引き継ぐかたちで「キリスト騎士団」を創設しました。彼らは聖職者としての務めに加え、ポルトガル王国の海外進出を支援する役割を担い、航海王子エンリケもこの騎士団の長でした。
アクセス方法
トマールはリスボンから日帰りも可能な距離にあります。
リスボンのサンタ・アポローニア駅またはオリエンテ駅からトマール行きの列車に乗ると、所要時間は約2時間。終点がトマール駅なので迷うことはありません。バスも運行していますが、鉄道の方が本数も多く便利です。
世界遺産としての価値
この修道院は、1983年にユネスコ世界遺産に登録されました(登録名:Convent of Christ in Tomar)。
登録理由とは?
ユネスコは、以下のような理由からこの修道院を世界遺産に登録しました。
- 長い歴史を持つ宗教建築であり、ヨーロッパ中世の騎士修道会の遺産を伝えていること
- 複数の建築様式が融合したユニークな設計
- 大航海時代とポルトガルの象徴としての文化的意義
建築の見どころ
修道院の建物群は、実に多様な建築様式が組み合わさっています。
ロマネスクから始まり、ゴシック、ムデハル(イスラム風)、マヌエル様式、ルネサンス建築へと発展。その融合が、訪れる人に強烈な印象を与えます。
トマールの町の起源は、この修道院のある丘に築かれた要塞です。当時、住民の多くはこの要塞内に住んでいたとされており、修道院はまさに町の心臓でした。
覚えておきたい英会話フレーズ
旅行英会話で使える、トマール修道院にまつわるフレーズを紹介します。
訳)この修道院、すごくきれい!あの窓、見て!
訳)本当に見事だね。マヌエル様式の傑作なんだって。
訳)あの壁のうず巻き模様、何の意味があるの?
訳)大航海時代のロープやサンゴを象徴してるんだ。
訳)まるで時代をさかのぼって旅してるみたい。
訳)ほんとに、歴史の中を歩いてる感じだよね。
トマールのキリスト教修道院の見どころ

トマールのキリスト教修道院には、時代ごとの建築様式が融合した見どころが点在し、宗教的・芸術的な価値にあふれた空間が広がっています。
沐浴の回廊
15世紀、航海王子エンリケによって増築された回廊で、修道士たちが衣服を洗ったり、沐浴をした場所です。中庭には水場があり、質素ながらも機能美を感じさせます。すぐ近くには、エンリケの私邸跡も残っています。
訳)修道士たちが静かに歩いている姿が目に浮かぶよ。
墓の回廊
沐浴の回廊と同時期に増築され、修道士の墓所として使用されました。白と青のアズレージョ(タイル)で装飾され、穏やかな光が差し込む中、深い祈りの空気が漂います。探検家ヴァスコ・ダ・ガマの弟もここに眠っています。
テンプル騎士団の聖堂
建設当初の中心であり、円形に近い八角形の構造を持つ特異な聖堂です。内部は金や彩色された木彫、フレスコ画で豪華に装飾され、まさに騎士たちの精神的拠点でした。騎士たちは、戦場へすぐ出発できるよう、馬に乗ったまま礼拝したと伝えられています。
訳)この聖堂は、聖域でもあり要塞でもあるように感じる。
主回廊
ルネサンス様式の優美な回廊で、建築家ジョアン・デ・カステーリョの手によるもの。イタリア・ルネサンスの影響を受けたアーチや柱のデザインが見事で、明るい日差しが優雅な幾何学模様を描き出します。
この回廊は修道士たちの日常の生活の場でありながら、まるで貴族の宮殿のような雰囲気を持っています。観光客が最も長く足を止める場所の一つであり、建築美に目を奪われることでしょう。
マヌエル様式の大窓
修道院西側の壁にある大窓は、サンタ・バルバラの回廊の2階から間近に見られ、海のモチーフ(ロープ、サンゴ、鎖など)が彫り込まれています。マヌエル様式の代表作であり、ポルトガルの黄金時代を象徴する芸術作品です。
訳)この窓には、ポルトガルの黄金時代のすべてが詰まっている。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
トマールのキリスト教修道院は、ポルトガルの歴史、信仰、芸術、そして大航海時代の精神が凝縮された空間です。英語でその背景を学び、現地で自分の言葉で語り合うことで、旅はさらに深いものになるでしょう。
感動を分かち合える瞬間が、世界遺産を旅する本当の醍醐味かもしれません。
