フランス北東部の都市ランス。この街は、歴代フランス王の戴冠式の舞台として、そしてシャンパンの故郷として知られています。大聖堂に一歩足を踏み入れると、光に照らされたステンドグラスや荘厳な柱列が、訪れる人を時代を超えた旅へと誘います。
この記事では、ユネスコ世界遺産に登録された「ランスのノートル=ダム大聖堂、サン=レミ旧大修道院及びトー宮殿」の魅力を、英語を交えながら紹介していきます。
ランスのノートル=ダム大聖堂、サン=レミ旧大修道院及びトー宮殿とは?

ランスの街を象徴する3つの建築群は、フランス王権の歴史と信仰を物語る重要な遺産です。その歴史を順に見ていきましょう。
シャンパン醸造の街・ランス
ランスはフランス北部、グラン・テスト地域圏マルヌ県にある人口約18万人の都市です。街の起源はローマ時代に遡り、長い歴史を持ちます。フランス国王の戴冠式が行われたことから「戴冠の都市(The Coronation City)」あるいは「王たちの都市(The City of Kings)」とも呼ばれています。
また、世界に名だたるシャンパンの生産地としても知られています。街の地下には総延長120kmにも及ぶワイン貯蔵庫「カーヴ」が広がり、多くのシャンパン・メゾンが拠点を構えています。郊外には一面のブドウ畑が広がっています。
訳)ランスは、シャンパンの生産地としても有名です。
ゴシック建築の女王「ランスのノートル=ダム大聖堂」
5世紀、フランク王国のクローヴィスはランス司教レミギウスのもとで洗礼を受けました。この出来事をきっかけに、ランスはフランス王権と深く結びつく地となり、歴代の国王がここで戴冠式を挙げてきました。特に15世紀、ジャンヌ・ダルクがシャルル7世をこの大聖堂に導いたことは、フランス史に残る大きな出来事です。
現在の大聖堂は、火災で失われた前身の教会の後、1211年に着工され、百年戦争や資金難などを乗り越えて1475年に完成しました。その姿は「ゴシック建築の女王(The Queen of Gothic Architecture)」と讃えられ、今も世界中の人々を魅了しています。
聖レミに捧げる「サン=レミ旧大修道院」
サン=レミ修道院は、クローヴィスに洗礼(baptism)を授けた聖レミに捧げられた建築です。1000年頃に建てられ、1049年にローマ教皇レオ9世によって正式に聖別されました。聖レミの聖遺物が安置されており、巡礼者にとって重要な拠点となってきました。バシリカ式建築を持つその姿は、当時の宗教的権威を象徴しています。
T字型の「トー宮殿」
トー宮殿は、1498年から1509年にかけて建てられたランス大司教の館です。T字型の平面図を持ち、その形からギリシャ文字「τ(タウ)」にちなんで名づけられました。17世紀に改修されましたが、第一次世界大戦中の1914年に火災で大きな被害を受け、その後修復されています。現在は博物館として公開され、戴冠式に関わる宝物が展示されています。
アクセス
パリ東駅からTGVに乗れば、最速で約1時間でランスに到着します。ランス駅からノートル=ダム大聖堂までは徒歩で10分ほど。日帰りでも訪れやすい立地です。
世界遺産としての価値
ランスのノートル=ダム大聖堂、サン=レミ旧大修道院及びトー宮殿は1991年にユネスコ世界遺産に登録されました。
登録名は、「Cathedral of Notre-Dame, Former Abbey of Saint-Rémi and Palace of Tau, Reims」です。
登録の理由は?
主に下記のような点を評価されて、世界遺産に登録されました。
- フランスの歴史に直接結び付いている。フランス王の戴冠式という歴史的意義を持つ場所であり、フランス王家の権力と宗教的側面の関係性が見られる場所であること
- ゴシック建築の傑作としての芸術的価値
- その後のヨーロッパの建築物に強い影響を与えたこと
覚えておきたい英会話フレーズ
ここでは、ランスの世界遺産を訪れたときに使ってみたい英会話のフレーズを紹介します。
訳)この大聖堂は壮大ね。ここにいると、歴史を肌で感じるようだわ。
訳)ジャンヌ・ダルクがシャルル7世をここに導いたって知ってる?
訳)この彫刻の細かさを見て。言葉がなくても物語を伝えているわね。
訳)だから中世の芸術はこんなに魅力的なんだね。
訳)ステンドグラスに太陽の光が差し込むと、本当に素晴らしいわね。
訳)うん、大聖堂の雰囲気が一気に変わるよね。
おすすめの見どころを紹介

ランスに残る3つの建物の見どころをご紹介いたします。
ランスのノートル=ダム大聖堂
大聖堂の西正面には、約2300もの彫像が並びます。彫刻群は聖書の物語を物語り、中世の人々に信仰を伝える役割を果たしました。「微笑みの天使」の像はその代表格です。
また、内部には20世紀の画家マルク・シャガールが寄贈したステンドグラスがあり、古代と現代の融合を体感できます。北側にはバラ窓の『最後の審判』や南側の12人の弟子の物語を描いた壮麗なステンドグラスが。
毎年夏には光と音のショー「レガリア(Regalia)」が行われ、夜の大聖堂が幻想的に輝きます。
大聖堂前にはジャンヌ・ダルクの像が立ち、6月には彼女を讃える祭りが行われます。民族衣装をまとった人々の行進や馬上のジャンヌ・ダルクの姿は、ランスならではの光景です。
サン=レミ旧大修道院
堂内は列柱によって身廊と側廊が分けられ、バシリカ式特有の厳かな空間が広がります。革命期には宝物の一部が失われましたが、12世紀のステンドグラスや、聖レミの生涯を描いたタペストリーが今も残されています。
トー宮殿
トー宮殿には、戴冠式で使用された王のマントや豪華なタペストリー、金銀細工の食器などが収蔵されています。高さ3~4mに及ぶ彫像もあり、その迫力は圧倒的です。ナポレオン1世とマリー・ルイーズの結婚式のために作られた十字架や燭台も展示され、歴史の厚みを感じさせます。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
ランスの街は、フランス王権の象徴であり、シャンパンの故郷であり、そして芸術の宝庫でもあります。その魅力を英語で表現できれば、旅の記憶はさらに深まります。
英語を学びながら世界遺産を訪れることは、知識と感動を同時に得られる特別な体験です。次に旅をするとき、ぜひ「This cathedral is magnificent.」と口にしてみてください。英語があなたの旅の景色を、より豊かにしてくれるはずです。
