「コミュニケーション能力が足りない日本人」とよく世界中から言われてしまうことがありますね。
誠実で、謙虚で、人に迷惑をかけたくないという穏やかな国民性も、裏を返せば、主体性に乏しく、自分を出さないので何を考えているかわからない、とも言われがちです。
特に、英語教育において、この「コミュニケーション力」は一番身につけたいスキルでもあります。
さて、この「コミュニカティブアプローチ」はその問題を解決する手法なのでしょうか?
1.コミュニカティブアプローチとは?
コミュニカティブアプローチ (Communicative Approach) は、コミュニケーション能力の育成を中心とし、コミュニケーション能力の向上を重視した学習法及び教授法を言います。
実物の教材を使用したり、ロールプレイやディスカッションをするなど、実生活などで使う言語を、それぞれの場面を設定して活動を行います。
英語圏では「Communicative language teaching (CLT)」という名称で呼ばれることも多いようです。
2.コミュニカティブアプローチの特徴
コミュニカティブアプローチは「意味の伝達」を重視していると言えます。
言葉というのは、形式(文法や語彙・文型などを指す)と、意味(これらの形式を使って話す内容や意志のこと)に分けられています。
コミュニカティブアプローチとは、「相手とコミュニケーションをして、自分の意志や情報を伝えることが大切である」と説いています。
① 学習者が中心の学習法である
語学の授業では、教師が学習するものに知識を与えることが目的ではなく、学習者の目的や目標を知ってそれに協力をし、学習者の能力を引き出すことに意義があると説いています。
どんなに教師が素晴らしい抗議をしたとしても学習者の成長が見られない場合は、それは失敗なのです。
「学習者の活動しやすい条件を整える」ことが教師の役目であり、あくまでも「学習者が中心」であるのです。
②メッセージ伝達の重視
また、コミュニカティブアプローチは「言語教育の最大の目的は、言語の構造や規則を教えることではなく、実践的なコミュニケーション能力の育成にある」と説いています。
自分の伝えたいことや、自分の気持ちをどうやって伝えるのか、また適する言葉を知らないときは、自分の知っている言葉を組み合わせてどうやって相手にメッセージを伝えるのかなどの実践的な知識やテクニックが重要になってきます。
コミュニカティブアプローチは、「メッセージを伝達すること」が一番大切であり、正確より、流暢さに重きを置いています。
③意味の重視
現実のコミュニケーションとは、文法や文の型というよりもメッセージの交換や「意味」のやり取りです。
文章の暗記だけではなく、それに含まれている意味や周りの状況なども考えながら、覚えていくことが重要であるとしています。
3.コミュニカティブアプローチの歴史
コミュニカティブアプローチは1970年代初頭にイギリスのウィルキンズら応用学言語学者によって、提唱され始めました。
外国語学習は、単に言語の構造を習得するだけでなく、コミュニケーション能力をつける必要がある、というものです。
それは、当時のヨーロッパの移民や季節労働者の増加に伴い、医師の伝達の必要性が早急にあったためと思われます。
一方で、アメリカでも、「コミュニケーション能力」を提唱したハイムズや、機能言語学などの研究がすすめられた、その一連の流れがコミュニカティブアプローチ、またはコミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング(CLT)として広まり、現代の外国語教育法の主流になっています。
4.コミュニカティブアプローチの学習法
① インフォメーションギャップ
コミュニケーションには、「インフォメーションギャップ」が欠かせない、と言いますが、さて、「コミュニケーションギャップ」とは何なのでしょうか?
これは、一言でいうと「話し手と聞き手の間に情報の差がある」ことを言います。
そしてそのコミュニケーションを通じて、聞き手は数多くの情報を得るのです。
例えば、スーパーマーケットに行って買いたいものを探すとします。
目の前には、アイスクリーム、ドーナツ、本、花などはあります。
話し手はそれがなにかを知っています。
Do you want some ice cream?
No, I don’t.
Do you want some flowers?
Yes, I do.
Why do you want to buy them?
Because tomorrow will be Valentine’s day.
というように、相手が何を欲しいのか、何をしたいのか、質問などをして情報のギャップを埋めていく、といった方法です。
これは、学習者の年齢やレベルなどで内容を変えたり、ゲームに発展させたりと、いろいろとアレンジが可能です。
②ロールプレイ
ロールプレイは学校や英語教室でもよく取り入れられていますね。
店員とお客、お母さんと子ども、のようにある場面を設定しながら会話を繰り広げていきます。
その場面で使う小道具や、決まり文句なども確認しながら、子どもだと「ごっこ遊び」のような感覚でできますし、指導者が一方的に与えたセリフでなく、アドリブなどを言えるような活動になると、効果があると言えましょう。
③フィードバック
ここでもフィードバックとは「反応」を指し、言語活動の際の相手の反応のことです。
この場面で相手は何と言ったか、必要に応じて指導者が文法的なミスの訂正や補足を行いますが、会話の流れ(学習者が言いたいことの意味)を変えずに言い直しをして、学習者に気づかせる、といった手法を使います。
5.コミュニカティブアプローチの効果
コミュニカティブアプローチによる学習法は、細かい間違いを気にしたり、正解をしなければならない、というのが目的ではなく「自分の言いたいことを伝える」のが最終目的なので、「相手に興味を持ち、目的をもって相手の話に耳を傾ける」という行為はリスニング力の向上に役立ち、「自分の意志や情報を伝える」というのは、どうにかして相手に伝えようとするモチベーションが上がったり、アウトププットする力がついていくと思われます。
6.コミュニカティブアプローチのデメリットは?
正確さを重視せず、コミュニケーションが出来ればよい、というのが重要なので、正確さが向上しにくい点があるでしょう。
あと、あまりたくさんの人数だと学習が進まないので、クラス編成も考えないといけないところがあります。
7.コミュニカティブアプローチは子供にも使えるのか?
子どものように、固定観念がなく何にでも興味があるうちに、場面に応じた会話を学習することは、子供たちが楽しく言語を習得できるヒントに繋がると思われます。
子ども達は「ごっこ遊び」が大好きなので、パン屋さんになりきったり、お客さんになってお金を払ったりする動作を英語で覚えることは、そう苦にはならないでしょう。
これも指導者の準備や、授業の運び方が重要になってくると思われます!
8.コミュニカティブアプローチの可能性
現代はインターネットによる活動が増えてきた半面、顔と顔を合わせてコミュニケーションをする、という場面が少なくなって来ています。
自分の気持ちを表現する、ということだけではなく、今後発達障害や言語障害の指導にも有効ではないか、という学者もいるようです。
学習の中で、「聞く、話す、読む、書く」に加えて「コミュニケーションする」という技能が加わることで学習者の言語力や人間力の成長を促すことが出来る、という期待があります。
まとめ
コミュニカティブアプローチは、少なからず授業や英会話教室で取り入れられていると思います。
しかし、幼いころから「自分の意見を言う」「相手の意見を聞き出す」というのが苦手な日本人が多い中、なかなかおもうように学習の効果が感じられないこともあるようです。
他人に興味を持つ、社会に興味を持つことが、コミュニケーションに繋がってきて、またそれが英語でできるのであれば、今後の自分の世界も変わってくるのではないでしょうか。
そのためにも、このメソッドは注目をしていきたい学習法です!