我が国日本でもグローバル化が進み、英語教育の必需性が大きく叫ばれるようになりましたが、何十年も続いた「日本式英語教育」により、他国から大きく遅れをとっているのも事実と言えるでしょう。

それでは、ネイティブではない、”ノンネイティブ”の国々は、どうやって英語教育を行っているのでしょうか?

各国の歴史や文化を紐解きながら、考えてみたいと思います。

英語を第二外国語として学習する国々の教育法:オランダ編

オランダの教育

国名

国名はオランダ語で「Nederlanネーデルランド」で、これは「低い土地」を意味します。

また、独立国でない時代にイギリスから今のオランダ・ドイツにいる民族をまとめて「Dutchダッチ」ともよばれています。

日本とのつながり

江戸時代徳川家康はオランダ船に興味を持ち、1609年に長崎の平戸にオランダ館を設置して、本格的に通商関係を始めました。

1637年に行われた鎖国政策に際しても、キリスト教に不況をしないという条件に応じた唯一の欧州国がオランダで、その後も200年以上にわたって日本が交流している唯一の西洋国になります。

オランダは自国文化のほかに、ヨーロッパ各国の化学、医学、知識などの学問を渡来品などとともに輸出していました。

オランダこそ、日本にとって西洋観の礎となったというわけで、現在でも身近な外来語として、オランダ語が多く残っているようです。

オランダ語から日本語になった言葉

  • Bier/ ビール
  • Pons/ ポン酢
  • Koffie/ コーヒー
  • Blik/ ブリキ
  • Otembaar/ おてんば
  • Letter/ レッテル

自由の国

オランダは2019年で「世界幸福度報告」では世界5位、2020年では「積極的平和指数」で世界7位であり、経済的自由、報道の自由、人間開発指数、クオリティ・オブ・ライフの最上位国のひとつです。

オランダの言語

公用語はオランダ語です。フリースラント州ではフリジア語も公用語として認められています。

このオランダ語はオランダ全土に加えて、ベルギー北部でも使われています。

同じゲルマン系の言語であるドイツ語にも似ていることから、ドイツ語を話せる人はだいたいオランダ語を理解できるという話です。(日本でいう、方言の違いのようなものらしいです)

文法が英語に似ているところから、学習しやすい言語ともいわれますが、発音は英語とはかなり違うようです。

こういうことからも想像できますが、国民の4分の3は2か国語を話すことができ、3,4か国語を話せる人も多いとされます。

その中でも、全人口の90%以上が英語で会話でき、ドイツ語が71%、フランス語が29%という第2、第3の外国語取得が当然であるというデータを誇る国なのです!

オランダの教育

オランダの教育

さて、このように英語力世界トップのオランダの教育事情はどのようになっているのかをご紹介したいと思います。

オランダは憲法で、「教育の3つの自由」が保証されています。

その三つは、1.学校設立の自由、2.教育方針の自由、3.宗教や理念の自由 という考え方で、200人の生徒が集まれば、どのような学校を作ってもいいというものです。

1割がオルタナティヴスクールで、ほかにはモンテッソーリ、シュタイナー、イエナプラン、ダルトンなどの学校がありますが、それぞれがいろいろな特徴があり、12歳の段階で行われるCITOという全国規模の学力テストでその後の進路を決めるようです。

オランダの義務教育

オランダの義務教育は5歳から始まる

5歳から12歳までのが初等教育になり、小中一貫教育ということが出来るでしょう。

教育費は無料になる

様々な教育方針の学校があり、宗教やカリキュラムなどを独自で行っていて、自由に選択をすることが出来る。

バイリンガル教育

国を挙げてに取り組んでいて、とりわけ英語教育を主とするVVTO*という早期外国語教育をする学校があり、小学1年生から外国語教育を導入している。

*VVTO 早期外国語教育ーオランダでは遅くとも10歳(7年生)で英語の授業を開始しなければならないと法律で決められていますが、VVTOは早い段階から外国の授業があります。
例としてEuropa Schoolという学校は1年生から英語、フランス語、スペイン語を選ぶことが出来るユニークな学校のひとつですが、イギリスの国際プログラムIPCプログラムを採用し、テーマに沿ってグループでリサーチをするという学習法を行っています。

授業時間

小学校の8年間で7520時間学校に通うことが厳しく義務付けられています。学校の休暇は国が事前に設定していて、学年中に他の休暇を学校が作ることはできませんが、学校経営者がこの出席時間を分割することが出来るので、学年が上に上がるにつれて多くに時間を設定したりすることもできます。

飛び級や落第がある

子どもの能力に応じた課題や指導がしっかりと考えられていて、特に飛び級をするような優秀な生徒には、より彼らの思考や能力に対して高度な課題を与える「Day a Week School(週に一度の学校)」に通わせるなどのサポートもあります。逆に落第をしたとしても、ちゃんと理解をしてから進級させるという方向で、指導していくので、わからない子はほったらかし、ということもありません。

義務教育後の進路

K-12といわれる義務教育が終了すると、

  • VMBO:中等職業教育 (12~16歳の4年間)
  • HAVO:一般中等教育 (12~17歳の5年間)
  • VWO:大学準備教育 (12~18歳の6年間)

に分かれます。

本人の成績や将来を考えて選択をすることになりますが、どの学校も「基礎教育課程」が導入されているので、途中で将来の方向性を変えることも可能です。

その後それぞれに

  • MBO:中等職業教育機関
  • HBO:高等職業教育機関
  • WO: 研究大学

などに分かれ、Job-market といわれる労働市場で活躍できる人材が産み出されていきます。

オランダの英語教育

オランダの英語教育

2か国語以上を話せるのが当たり前、15歳以上の94%がバイリンガルというオランダ。

そんなオランダでの英語教育はどのようなものなのでしょうか?

英語教育の開始年齢が5歳から始まる

9歳までは任意とは言われますが、オランダのほとんどの小学校が1年生の時から英語を第一外国語として導入しています。10歳からは必須となっています。

英語教員のレベルが高い

小学校の教員教育コースに入学するためにはCEFRのB2レベル(Common European Framework Of Reference for Languagesの略:ヨーロッパ言語共通参照枠)が必要で、日本の英検で表すと準1級レベルですが、職業や学問上で流暢に英語を用いることができるレベルです。 授業はすべて英語で行われるため、英語が話せない教員が英語の授業をする日本とは大きな違いがあり、教員の英語レベルはかなり高いと言えます。

授業内容が自由で楽しい

決まったカリキュラムや教科書もないので、学校独自のユニークな授業が行われ、特に低学年では、「とにかく楽しい」授業をしているのが特徴と言えます。歌ったり踊ったり、Youtubeなどを使って英語のポップソングを歌ってみたり、学習意欲を向上させると言われる、大きな声を出して音読をしたり、シャドーイングをするなどの生き生きちした授業が繰り広げられています。まず、耳から入った英語を理解し、口に出してみることから始まり、英文法などを叩き込むようなことはしません。「英語でどう表現するのか」「英語で自分の意見をどう伝えるのか」など、自分の生き方にも関わっていく、「生きた英語教育法」がオランダにあると言えるのではないでしょうか?

到達レベルの目安

12歳までにCEFRのA1-A2レベルに到達することが目標とされています。

  • A1レベル (日常表現や基本的な言い回しを理解し、用いることが出来る。)
  • A2レベル (自分の背景や身の回りの状況、日常的な範囲ならば言葉で表現でき、情報交換できる)

ということは、12歳までに英語での日常会話ができるレベルの達するということになります。

”groove.me”メソッドの導入の話

オランダの多くの小学校が導入している「groove.me」は、おもに人気ポップソングを題材に英語を学ぶという教授法です。

歌詞を読んだり書いたり、話したり歌ったりして活用をします。

全ての教材はデジタルでダウンロードすることも可能で曲ごとにワークシート、レッスンプラン、歌詞、フラッシュカードなどが簡単に入手できます。

授業はダンスやゲーム、ディスカッションなどが行われ、単語や文法、会話や読み書きも楽しみながら習得し、カラオケなどで表現するレッスンなどもあり、非常に興味深いメソッドだと言えるでしょう!

まとめ

国民の94%が英語を話し、3か国語、4か国語も話す人が多いというオランダは、英語を話すことが特別なことではなく、生活や仕事に普通に活用されていることが、ユニークな教育法から伺えます。

教育法だけでなく、宗教や法律の在り方から見ても、自由で柔軟な国民性からどんどんと新しいものを取り入れてアップデートをしていく様は、幸福感の高い国としての大きな特徴でもあるのではないでしょうか?

一人一人が自分の生き方を見つけ出すための手助けを国を挙げて実行することに、この革新的な英語教育法が大きく関わっていることは間違いないでしょう。