子どもの成長に欠かせないと言われる「お昼寝」。しかし、その扱い方は世界共通ではありません。
国や地域によって、保育園・幼稚園でのお昼寝の位置づけは大きく異なります。
本記事では、日本をはじめ、欧米やアジア各国の事例を比較しながら、お昼寝文化の背景にある価値観や生活リズムについて考えていきます。
子どもにお昼寝が必要な理由
Why Children Need Naps

脳の発達と記憶の定着
幼児期の脳は急速に発達しており、起きている間に得た刺激や学びを整理・定着させる時間が必要です。睡眠中には記憶の整理や感情の調整が行われ、言語習得や社会性の発達にも良い影響を与えます。
感情の安定と集中力の維持
睡眠が不足すると、イライラしやすくなったり、衝動的な行動が増えたりします。適切なお昼寝は、午後の活動への集中力を保ち、情緒の安定につながります。
体の成長と疲労回復
成長ホルモンは夜だけでなく、昼寝を含む睡眠中にも分泌されます。特に体力を多く使う幼児期には、日中の疲労を回復する時間として重要です。
年齢別:お昼寝の目安とその理由
Recommended Naptime Duration by Age and Why
0歳(乳児)
- 目安:1日に複数回、合計3〜4時間以上
- 理由:睡眠と覚醒のリズムが未熟で、短い睡眠を繰り返しながら脳と神経系を発達させている段階です。昼夜の区別がつくまでは、必要に応じて眠ることが最優先されます。
1〜2歳
- 目安:1日1〜2回、合計2〜3時間
- 理由:活動量が増え、刺激を多く受ける時期です。午前・午後に分けた昼寝や、長めの1回睡眠で疲労を回復し、感情の爆発を防ぐ役割があります。
3歳
- 目安:1日1回、1〜2時間
- 理由:生活リズムが安定し、夜にまとめて眠れるようになりますが、まだ午後まで起き続ける体力は十分ではありません。午後の活動を穏やかに過ごすための調整時間として必要です。
4〜5歳
- 目安:0〜1時間(個人差が大きい)
- 理由:体力がつき、夜間睡眠が安定するため、昼寝が不要になる子も増えてきます。一方で、長時間保育や活動量が多い場合は、短時間の昼寝や「横になって休む時間」が有効です。
6歳以降(小学校入学前後)
- 目安:基本的には不要
- 理由:夜間睡眠で十分な休息が取れるようになります。昼寝をすると夜眠れなくなるケースもあり、生活リズムを優先することが重視されます。ただし、体調不良や特別に疲れている日は例外です。
大切な視点:年齢より「その子の状態」
A crucial perspective: The child’s condition matters more than their age
年齢別の目安はあくまで参考であり、実際には
- 夜どれくらい眠れているか
- 午後に集中力が続いているか
- 夕方に極端に機嫌が悪くならないか
といったその子自身の様子を見ることが最も重要です。
お昼寝は「必ずさせるもの」でも「早くやめさせるもの」でもなく、子どもの成長段階と生活リズムに合わせて調整していくものです。適切なお昼寝は、子どもが安心して一日を過ごし、健やかに成長するための土台となります。
国によってお昼寝の扱いは様々。文化的背景を比較
The treatment of naps varies by country. Comparing cultural backgrounds
日本:集団生活の中で大切にされるお昼寝
日本の保育園では、特に0〜5歳児においてお昼寝は日課として組み込まれていることが一般的です。長時間保育が主流であることや、集団生活の中で午後の活動に備える必要があることが背景にあります。また、「生活リズムを整える」「情緒を安定させる」といった教育的観点からも重視されています。
一方で、幼稚園では年齢が上がるにつれてお昼寝の時間が短くなったり、なくなったりするケースも見られます。ここには、小学校生活への移行を意識したカリキュラムの考え方が反映されています。
アメリカ・イギリス:個人差を尊重するスタイル
アメリカやイギリスの保育施設では、お昼寝は「必要な子どもが取るもの」という位置づけであることが多く見られます。特に3〜4歳以降は、無理に寝かせることはせず、静かに本を読む、横になって休むといった選択肢が用意されます。
これは、早い段階から子どもの自主性や個人差を尊重する教育観が根付いているためです。家庭での就寝時間が比較的早いことも、日中の長い昼寝を必要としない理由の一つとされています。
フランス・スペイン:生活文化と結びついた休息
フランスでは、午前中の活動後にしっかり休息を取る時間が設けられることが多く、特に小さな子どもには昼寝が推奨されます。一方、年齢が上がるにつれて「休息の時間」へと移行していきます。
スペインでは、伝統的なシエスタ文化の影響もあり、昼間に休むという考え方自体は社会に根付いています。ただし、現代の都市部では保育施設での長時間の昼寝は減少傾向にあり、家庭や地域の生活リズムに合わせた柔軟な対応が取られています。
アジア諸国:中国・韓国の場合
中国の幼稚園では、比較的年齢が高くなるまでお昼寝の時間が確保されていることが多く、規律ある集団生活の一環として位置づけられています。午後の学習活動に備える意味合いも強く、静かに横になることが求められます。
韓国でも、日本と同様にお昼寝は重要視される傾向がありますが、近年は「必ず眠る」ことよりも「体を休める」時間として柔軟に運用する園も増えています。
各国の平均的なお昼寝の時間(幼児期)
Average Naptime Duration by Country (Early Childhood)

アメリカ
保育園・幼児教育施設における調査では、3〜5歳児でお昼寝の平均時間が約75〜115分(約1.2〜1.9時間)というケースが報告されています。これはフルタイムの保育園での昼寝時間でのデータです。
日本
日本では保育園での標準的な昼寝時間として午後およそ1〜1.5時間程度が多いとされますが、正確な全国統計は公開されていません。園によっては13〜14時台に昼寝時間を設定する例が一般的です。
中国・アジア地域(東アジア)
研究によると、中国などのアジアの幼児は昼寝を続ける比率が高く、昼寝時間も長めである傾向が報告されています。これはアジアの文化圏全般で夜間睡眠が遅めになる人が多いのに対して、昼間の睡眠を重視しているためと分析されます。
西ヨーロッパ(フランス・スペインなど)
フランスやスペインの幼児期にも昼寝の時間はありますが、国によっては平均1時間前後、あるいは園によって休息(横になる)時間として設定されることが多いです。スペインでは歴史的にシエスタ文化が根強く、家庭生活における昼休み・昼寝の時間そのものが長いことが知られています。
イギリス・ヨーロッパ北部
イギリスなどでは、お昼寝は必須ではなく、必要な子どもだけが1時間前後の昼寝をとる傾向があります。年齢が上がるにつれて昼寝時間は短くなります。
国や文化による違いのポイント
Key Differences by Country and Culture
文化的背景
東アジア(中国・日本・韓国など)では、家庭や保育園ですぐに眠れる文化があり、昼寝が継続されやすいという結果が大規模調査でも示されています。
西欧(米国・欧州)では、むしろ昼寝の選択肢や休息時間として設定し、寝ない子でも静かに過ごす時間を設ける教育方針が多い傾向があります。
夜間睡眠とのバランス
ある国際比較調査では、アジアの幼児は夜間睡眠が比較的短く、昼寝を続けることが多いのに対し、欧米では昼寝を早めに卒業して夜間睡眠を確保する傾向があると報告されています。
まとめ
各国の事例を見ていくと、「お昼寝が必要かどうか」という問いの答えは一つではないことが分かります。
そこには、保育時間の長さ、家庭の生活リズム、教育観、さらには社会全体の働き方や価値観が深く関わっています。
大切なのは、「寝かせる・寝かせない」という二択ではなく、その子どもにとって最適な休息の形を考える視点です。
世界のお昼寝文化を知ることは、日本の保育を見直すヒントにもなり、子ども一人ひとりの育ちを尊重するきっかけとなるでしょう。
