皆さん海外旅行に行かれた際、知らない人に挨拶をされて驚いてしまい、上手く挨拶を返せなかったといった経験はありませんか。私はアメリカに住み始めたころ、文化や習慣の違いを知らなかったために、英語を上手く使えなかったという経験を何度もしました。

英会話と文化や習慣の違いは、一見あまり関係がないように見えますが、実は文化や習慣の違い(その言葉や表現が使われる背景)を意識していないと、英語を上手に使えない場合があります。今回は、私のアメリカでの経験談と共に、文化や習慣の違いを意識することの大切さをお伝えしたいと思います。

アメリカで感じた文化や習慣の違い

早速ですが私が実際のアメリカ生活で感じた、コミュニケーションに関連した文化や習慣の違いについてご紹介します。ここに挙げるのはほんの一例です。私の失敗談から、文化や習慣の違いを意識することで、英語を使う幅が広がることを感じてもらえればと思います。

知らない人同士のアイコンタクトと挨拶

先ず初めに驚いたことは、知らない人同士でも目が合うと微笑み合うことです。ただすれ違うだけでも、目が合うと大抵の人は「ニコッ」と微笑み返してくれます

また、エレベーターの中で少人数の時には、アイコンタクトや簡単な挨拶をすることが一般的です。例えば、私が先にエレベーターに乗っていた場合は、相手が乗り込んでくる際に目が合えば微笑みます(軽くHiと挨拶することも)。そして、先に降りる相手が “Have a nice day.” や “Have a good one.”などと挨拶の言葉を言って去っていくことが多いです。私が初めてこのエレベーターでの挨拶を経験した時は、エレベーターで乗り合わせた相手に挨拶をする習慣を知らなかったため、挨拶を上手く返すことができなかったのを今でも覚えています。

くしゃみと “Bless you!”

次に驚いたのは、大学の図書館で勉強をしていた時、くしゃみをした私にかけられた複数の “Bless you!” の言葉でした。周りにいたのは、全く知らない学生達でしたが、数人の学生が私のくしゃみに一斉に反応したことに対して衝撃を受けました。

この “Bless you!” は直訳すると「(神の)ご加護がありますように」ですが、「お大事に!」の意味合いで使われています。そして、”Bless you!” と言ってもらった場合は、”Thank you” と返します。

初めはビックリして何も返すことができなかったのですが、そのうちアメリカの習慣に倣って “Bless you!” や “Thank you” と自然に言えるようになりました。

残念な気持ちを表す “It’s a shame”

アメリカに留学して生活していたときに、”It’s a shame …” という表現をたびたび聞きました。

初めてその表現を聞いた時は、”shame = 恥” と覚えていたので、「… のことは恥だ」と解釈していたのですが、何度かその表現を聞いているうちに、「… のことは残念だ」という意味で言っているんだなということに気づきました。

Aさん
It’s a shame you are leaving.
訳)あなたが去ってしまうのは残念だ
Bさん
It’s a pity I won’t be able to see you.
訳)君に会えなくなるのは残念だよ
It’s a shame の部分は、It’s a pity という表現でも置き換えられます。

“shame = 恥” という解釈になるフレーズとしては、”Shame on you!”「恥を知れ」ぐらいで、”It’s a shame … ” の場合は、残念な気持ちを表す表現と解釈して問題ないです。

共感の “I’m sorry”

一番馴染みにくかったのが、共感の “I’m sorry” です。アメリカに渡ったばかりの頃の私は、”I’m sorry” 「ごめんなさい」といった謝罪の表現だと認識していました。

ある日、アメリカ人の友達に「今日はテスト勉強で寝不足な中、早起きして朝一番の講義に行ったのに、講義がキャンセルされていた」と愚痴をこぼしました。すると友達は “I’m sorry” と言ったのです。今考えると恥ずかしいですが、私はこの時友達の真意を理解できずに、”it’s not your fault.”(あなたのせいではない)なんて頓珍漢な返しをしてしまいました。

実は英語圏では “I’m sorry” は「ごめんなさい」と言うよりも「残念な、気の毒な」といった共感の表現として使われることが多いです。だから、私の友達がかけてくれた “I’m sorry” は「それは気の毒に」と言う意味の共感の表現だったのです。

もちろん “I’m sorry” には「ごめんなさい、すみません」と謝罪するときにも使いますが、”I’m sorry” と “Excuse me” の違いは何でしょうか?

“I’m sorry” は、何か起こったことについて、「ごめんなさい、残念です」という気持ちを表すときに使います。

一方、”Excuse me” は、これから起こることについて、許可をとりたいときに使うのです。

例えば、「1. 混んでいる場所で、人の前を通るとき、2. 見知らぬ人に質問したり話しかけたりするとき」などに、事前に許可をとりたい時に使います。

励ましの気持ちを伝える “I’m always on your side”

アメリカに留学していた時に、友人からかけてもらった励ましの表現で一番うれしかったのは、この表現です。

Aさん
I’m always on your side.
訳)私はいつもあなたの味方よ。
Bさん
Thank you!
訳)ありがとう!
誰も知り合いのいない海外に留学すると、学校や滞在先の人達と何とかうまくやっていくしかなくて、不安になることも多く、「いつもあなたの味方よ」という表現にどれだけ励まされたことでしょう。
同じ内容を日本語で言われると、気恥ずかしい感じがしますが、身寄りのいない異国の地でこの表現を聞くと、とても勇気づけられました。

よくやったとほめる時に使う “I’m proud of you”

“I’m proud of you” は、留学しているときに、スピーチや作品がうまくできたときなどに、先生からかけられた言葉です。

直訳すると、「私はあなたを誇りに思う」となりますが、そこまで深い意味合いはなくて、何かがうまくできたときに、「よくやった!」ぐらいの意味で、この言葉をかけられます。

親が大きな成功を収めた子供に対して、”I’m proud of you”と言うときには、まさに「私はあなたを誇りに思う」という意味で言っているのでしょうが、学校のアサインメントでうまくできた程度だと、そこまで深い意味はなくて、気軽にこの言葉をかけられることがあります。

試験の結果が良かったときには、”You are right on [the] track” という言葉をかけられることもあって、「あなたは、うまく軌道にのっている」という意味です。

プライバシーに触れてほしくない時に使う “That’s none of your business”

海外留学をしていると、励まされたり褒められたりなど、いいことばかりではありません。

相手のプライバシーに触れることを聞いてしまって、機嫌を損ねてしまったときには、こう言われます。

Aさん
That’s none of your business.
訳)それはあなたに関係ないことでしょ。
Bさん
I’m sorry to bother you.
訳)煩わせてしまってすみません。

親しくなっても、相手のプライベートの問題を何でも聞いていいというものでもなく、適度な距離感を保つことが大事だったりします。

触れてほしくない仲間内の問題について聞いた人に対して、英語ネイティブが “You are not invited” (あなたは招かれていない)と言っているのを聞いたこともあります。

英会話でも文化や習慣の違いを意識する

英会話でも文化や習慣の違いを意識する

私の経験談のように、文化や習慣の違いを意識していないと、言語をうまく使えなかったり、真意が伝わらなかったりしてしまうことがあります。上記では、アメリカの文化や習慣について挙げましたが、日本の文化や習慣においても違いを意識する必要はあります。

例えば、日本では謙遜することがよくありますが、英語でも日本語のように謙遜してしまうと、謙遜ではなく否定として伝わってしまう恐れがあります。このように英会話においても、知っている文化や習慣の違いを少し意識して会話をすることが大切です。

ここで紹介した表現についても、機会があれば、ぜひ使ってみてください。

状況に合った英語表現を使うことがとても重要です。状況に合っていない表現を使ってしまうと、相手もどう反応していいか困ってしまいますし、相手から返ってきた言葉を聞いて、何だか変だなと気づくこともあるでしょう。

円安の影響もあり、気軽に海外留学するのも厳しくなってきましたが、海外からインバウンドで留学生や労働者が日本に入ってきているので、留学生や海外からの労働者と英語で話すことで、ネイティブの英語表現や文化・習慣が学べるでしょう。

実際に英語を使って文化や習慣の違いに触れる

実際に英語を使って文化や習慣の違いに触れる

文化や習慣の違いを意識するためには、まずその違いを知る必要があります。そして、文化や習慣の違いに触れるには、実際に英語を使うことが一番です。留学などをしなくても、英語を使って何かをすることで、たくさんの文化や習慣の違いに気づくことができるはずです。

例えば、英語で人気の携帯アプリについて調べようとしたとします。検索を試みて少しすれば、applicationの略は日本語で使われている 「Appli(アプリ)」ではなく、「 App(s)」だということに気が付くと思います。

この様に、英語を使って自分の興味のある分野や必要としている分野の本を読む、動画を見る、調べものをするといったことによってテキスト上の英語とは違った実践的な英語に触れることができます。そして、こうした実践的な英語に触れることによって、英語を話す上でポイントとなる文化や習慣の違いに気が付くことができます。

ぜひ英語を使っていて気が付いた文化や習慣の違いを、会話でも意識してみてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、英会話でも意識すべき文化や習慣の違いについてご紹介しました。

英語圏の文化や習慣の違いに驚くことも多いですが、違いを見つけたら英会話を上達させるヒントだと思って、実際に自分が英語を話す時も意識してみてください。そして、違いを意識して話すには、ネイティブスピーカーの真似をしてみることをお勧めします。私も例に挙げたアメリカのエレベーターでの挨拶は、他の人の真似をして挨拶をしてみることから始め、スムーズにコミュニケーションが取れた時はとても嬉しかったです。

英会話を学習する時も、こういった文化や習慣の違いも意識して会話をイメージしてみてください!