皆さん、「英語で説明したのに、上手く伝わらなくて苦労した」といった経験はありませんか?特に、何かを説明するときやリクエストをする時など、日本語と同じような流れで話すと上手く伝わりづらいことがあると思います。
このような場面でより伝わる英語を話ために使えるのが、「ロジカルスピーキング(論理的な話し方)」の考えです。アメリカなどでは、ロジカルシンキング(論理的思考)がとても重要視されているため、何か説明する際も「論理的であること」が求められます。
ロジカルスピーキングと聞くと、アカデミックやビジネス英会話で使う難しい話し方と思われる方も多いと思います。
しかしこのロジカルスピーキングは、日常の英会話にも簡単に応用することができます。今回は、ある2つのポイントを意識することで「ロジカルに伝える」英会話、より伝わる英語を話すコツをご紹介します
ロジカルスピーキングとは
ロジカルスピーキングとは、理論的に道筋を立てて話す方法です。元マッキンゼーコンサルタント、バーバラ・ミントさんは、彼の著書で論理的な伝え方を以下のように説いています。
まず、キーメッセージやポイント、つまり結論を伝え、それを裏付ける2~4点の理由・根拠を説明し、更に具体的な説明や事例を加えていく
確かにこの伝え方は、アカデミックやビジネスシーンでのレポートやプレゼンテーションに最適だと思います。一方、日常の英会話では小難しい感じになってしまいます。
では、日常の中で上手に「ロジカルな会話」を用いるには、どういったポイントを押さえればよいのでしょうか?
1. ロジカルに伝えるためにまず意識する2つのポイント
ずばり、「先に結論を伝える」点と「具体的に伝える」点を意識します。
さらに噛み砕くと、ロジカルな会話が必要な時に意識してほしいポイントは以下の2点です。
- 伝えたい内容 (結論)
- 相手に起こしてほしい行動/理解してほしい点 (具体的な内容)
この2点を「相手に伝えよう」と意識するだけで、会話がグッと伝わりやすくなります。
ロジカルに伝える日常の英会話具体例
具体例
恵子さんは友人のJaneさんと午後7時にA駅で待ち合わせをしていました。しかし、その日仕事が長引きそうだと思った恵子さんは、お昼にJaneさんに電話をして待ち合わせ時間と場所を午後7時半B駅に変更したい旨を伝えました。
ロジカルでない場合
Hi Jane, I’m sorry but I’ve got an urgent work to do today. I’ll try to wrap it up as soon as possible, but I think I can’t make it at 7pm at A station. B station is closer to my office, so if it’s B station I can be there at 7:30….
(こんにちはJane、悪いけど急な仕事が入ってしまったの。できるだけ早く終わらせるけど、午後7時にA駅には行けないと思う。B駅は私のオフィスから近いから、B駅になら7時半には行けると思う・・・)
ロジカルに伝えることを意識した場合
伝えたい内容→待ち合わせ時間と場所を変更したい
相手に起こしてほしい行動→19時半にB駅に来てほしい
Hi Jane, I’m calling to change our meeting time and place today. I’m sorry, I can’t make it at 7pm at A station today because I’ve got an urgent work to do. Since B station is closer to my office, I want you to come to B station at 7:30….
(こんにちはJane、今日会う約束の場所と時間を変更したくて電話したの。急な仕事が入ってしまって、7時にA駅には行けそうにない。B駅の方が私のオフィスに近いから、7時半にB駅に来てほしいの)
最初の例では、始めの一文からは待ち合わせをキャンセルしたいのか、変更をしたいのかが分かりません。ロジカルに伝えることを意識した場合の例では、始めの一文から、時間と場所を変更したい旨がはっきり伝わります。
ロジカルに伝えるために役立つ10フレーズ
- Let me explain~ (~を説明させてください)
- Let me tell you about ~(~について話させてください)
- I’m calling to ~(~をするために電話しました)
- I’d like to ~ (私は~したいです)
- The reason is ~ (その理由は~です)
- My point is ~ (私のポイントは~)
- I want you to ~ (私はあなたに~をしてほしい)
- I need your help (あなたの助けが必要です)
- Can you~? (~してもらえますか?)
- How about ~? (~はどうでしょう?)
2. 結論を先に述べて主要ポイントに番号を振って説明
結論を先に述べて、その後具体的な内容を話すべきですが、会議やプレゼンなどでは、主要ポイントに番号を振って説明すると、ロジカルな話し方になって、リスナーも分かりやすいです。
英検の3級以上のライティングや二次試験スピーチでも、理由に番号を振って説明するという形式をとって、ライティングしたり話したりすることが推奨されています。
First, …. Second, …. Third, ….と番号を振って説明するのとしないのでは、ロジカルな話し方という観点から、大きな差が出てきます。First, Second, Third 等は、signposts (道標)と呼ばれますが、聞いている側も、1番目の具体的説明、2番目の具体的説明、3番目の具体的説明がここから始まるというのがとても分かりやすく、内容が頭にすんなり入ってきて、整理しやすくなります。
日本の会社や省庁の場合、重要な会議ではほぼ必ずと言っていいほど「議事録」を取って会議の内容を文書に残します。会議の音声を録音したり動画で録画したりして、後でその音声を議事録に残しますが、議事録を残す上でも、signposts (道標)があると、議事録を見直した時にとても分かりやすいですね。
ロジカルに伝えるスピーチの英会話具体例
Do you think electric vehicles will become popular and widespread in Japan?「日本でも電気自動車に人気が出て普及すると思いますか?」と聞かれた場合の答え方について、signpostsを使った答え方を紹介します。
ロジカルに伝えることを意識した場合
While many countries around the world are aggressively pursuing electric vehicle adoption, I believe Japan may not follow the same path toward widespread electric vehicle popularity. I have three main reasons to support my belief.
(世界の多くの国が電気自動車の普及に積極的である一方、日本は電気自動車の普及に同じ道をたどらないかもしれないと私は考えています。私の信念を支える主な理由は3つあります。)
First, Japan faces significant challenges when it comes to the infrastructure needed to support a widespread transition to electric vehicles. While Japan has a highly developed public transportation system, the network of charging stations for EVs remains limited, especially outside major urban areas.
(第一に、電気自動車への移行を広く支援するために必要なインフラに関して、日本は大きな課題に直面しています。日本には高度に発達した公共交通機関がある一方で、EV用充電ステーションのネットワークは、特に主要都市部以外では限られています。)
Second, Japanese consumers have a strong attachment to traditional cars. Japan is known for its innovation in automotive technology, with companies like Toyota and Honda leading the world in gasoline and hybrid car production.
(第二に、日本の消費者は伝統的な自動車に強い愛着を持っています。日本は自動車技術の革新で知られ、トヨタやホンダはガソリン車やハイブリッド車の生産で世界をリードしています。)
Third, Japan has been making significant strides in the development of hydrogen fuel cell technology. Companies like Toyota, Honda, and Nissan have heavily invested in hydrogen-powered vehicles, seeing them as the future of green transportation.
(第三に、日本は水素燃料電池技術の開発で大きく前進しています。トヨタ、ホンダ、日産などの企業は、水素自動車を環境に優しい交通手段の未来と見て、多額の投資を行ってきています。)
3. 問題 Problem、解決法 Solutions、利点 Benefitsを明確に述べる
人を説得して何かアクションを起こしてもらいたいとき、問題 Problem、解決法 Solutions、利点 Benefitsの順に述べると、論理的になって説得しやすくなります。
例文として、英語で問題提起をして、その解決法と利点を提示してみましょう。
Problem: Today, the reality of declining birthrates and aging populations is a clear and undeniable fact. This trend leads to two major consequences: shrinking workforce and strain on social systems
(問題:今日、少子高齢化という現実は、明確で否定できない事実です。この傾向は2つの主要な結果、労働人口の縮小と社会システムへの負担という問題につながります。)
Solutions: However, there are some solutions. We can address these challenges with a combination of thoughtful policies and initiatives that promote family growth, support the elderly, and encourage social and economic sustainability.
(解決法:しかし、いくつか解決策はあります。私たちは、家族の成長を促進し、高齢者を支援し、社会的・経済的持続可能性を促進する、思慮深い政策やイニシアティブを組み合わせることで、これらの課題に対処することができます。)
The benefits of these policies are clear: they create a more supportive environment for families and increase the likelihood of higher birthrates.
(このような政策の利点は明らかで、家族をより支援する環境を作り、出生率が上がる可能性を高めることです。)
社会問題について取り上げましたが、さまざまな問題提起があり、問題によってその解決法や利点も違ってきます。Problem → Solutions → Benefits の順に説明していくと、ロジカルで説得力があります。
まとめ
ロジカルにより伝わる英語を話すコツについてご紹介しました。日本語で何か説明する際は、どうしても背景や細かい部分から話し始めてしまいます。しかし英語では、日常の会話であっても結論やポイントを先に述べることが多いです。そしてより具体的な説明に入っていきます。
英語で何か説明をする際は、ロジカルに伝えるために、「伝えたい内容」と「相手にしてほしい行動/理解してほしい点」を意識してみてください。会話の早い段階でこの2点を明確にすることで、相手により伝わりやすくなります。
文法が苦手であったりボキャブラリーに自信がない方ほど、ぜひロジカルな伝え方を意識してみてください。多少英語に間違いがあっても伝わりやすいはずです。
この記事が皆さんの英語学習の参考になれば幸いです。