英語でEメールを書いたことはありますか。ある種のパターンに慣れてしまえば、何ということもないのですが、最初のうちは、英語でEメールを書く上でのちょっとしたルールやマナーがわからず、どうしたらよいか迷ってしまうことがあるものです。
今回は、ビジネスの場面で作成する英語のEメールの書き方や注意点についてお伝えします。仕事上で出す英語のEメールの書き方に不安を感じている人や、改めて注意点を確認しておきたいという人は、ぜひ参考にしてください。
件名は具体的かつシンプルに
Eメールを受け取ったときに、まず目に入るのは件名ですよね。何の内容について送られてきたEメールなのか、件名を見て瞬時にわかるような工夫をすることが大切です。それは、日本語でEメールを書くときでも、英語でEメールを書くときでも同じです。
件名を丁寧に書こうと意識すると、だらだらと長くなってしまう結果に終わることがあります。ポイントを押さえて、簡潔な文章にまとめるようにしましょう。長くても6単語から8単語ぐらいにまとめておくと、見てすぐわかるので、ぐっと読みやすくなります。
また、件名には基本的に”a”や”the”といった冠詞は必要ないので、状況に応じて省略しましょう。
内容に応じた件名の例
Eメールで受け手に何かを依頼する場合は、そのように件名に書きます。
Request for 〇〇
request: 依頼、要望
例)見積りを依頼したい Request for quotation
Inquiry for 〇〇
inquiry: 質問、問い合わせ、照会
※イギリス英語などでは、enquiryとつづることがあります。
例)記事について質問したい Inquiry for article
Order for 〇〇
order: 注文、(料理の)オーダー
例)ラップトップ・コンピューターを注文したい order for laptop
内容が想像できる件名に
Eメールの件名は「具体的かつシンプルに」と初めに書きました。それではどのような件名がよいのでしょうか。
わたしたちは毎日大量のEメールを受け取ります。仕事の上であれば、優先度の高いものから対応することもあるわけで、振り分けに影響するのが件名です。
件名に、”Information”(情報、お知らせ)とだけ書いてある場合と、”Meeting on April 5th”(4月5日の会議)と書いてある場合、あなたならどちらを先に読もうと思うでしょうか。<4月5日にミーティングがあるのだな、その前に何か準備が必要だろうか>と考えたりしませんか。
Eメールの件名は、本にたとえると「見出し」のようなものです。単語のみの表現や、抽象的な表現は避け、ミーティングなど相手の参加や関与が必要な内容なら、そうわかるように具体的に書くことが大切です。
宛先には敬称を忘れずに!
日本語でEメールを書く場合、本文の冒頭に「〇〇社 ○○様」のように宛名を記載することが多いと思います。英語でEメールを書く場合も同じです。
英語の場合は、Dearを用いて「Dear+敬称+名字+コンマ」と表記していきます。
dear: かわいい、親愛な/(手紙・Eメールの書き出し、呼びかけで)親愛なる、敬愛する
手紙・Eメールの書き出しに使う場合は、日本語の「様」に相当する語です。
“Hi 〇〇,”や”Hello 〇〇,”のような書き出しは、主に友人など親しい間柄のひとに対して使います。相手との関係にもよりますが、仕事で対外的なやりとりをするEメールではあまり向いていません。もちろん、たとえば気の置けない同僚への業務連絡なら差支えないでしょう。
一般的な敬称の例
後で詳しく説明する称号などを相手がもっていない場合、よく使われるのは以下の敬称です。
男性に対する一般的な敬称 Mr.
女性に対する一般的な敬称 Ms.
※イギリス英語では”.”(ピリオド)をつけないのが普通
既婚女性に対して Mrs.
未婚女性に対して Miss.
“Ms.”は、女性に対する敬称にだけ既婚と未婚の区別があるのは性差別ではないか、という異議申し立てによって生まれた、比較的新しい敬称です。ひとによって考え方も違うので、相手が希望を伝えてきた場合は、それに沿って呼びかけるほうがいいでしょう。
また、夫妻の場合には Mr. and Mrs. (~夫妻)という言い方があります。
特別な肩書がある場合
敬称には順位があり、学位や称号をもっている場合はそちらを優先します。知らない場合はともかく、一般的な敬称を使ったり、敬称を付け忘れたりするのは失礼にあたるので、気をつけましょう。
医者や博士号取得者に対する敬称 Dr.
大学の教授に対する敬称 Prof.
司祭、神父に対する敬称 Father
牧師に対する敬称 Revd. (Reverend)
教授に対する敬称はここで紹介しましたが、それでは「准教授」はなんというのでしょうか? 大学関係者の肩書きや敬称については、次の記事が参考になります。
なお、王族、貴族については国によって細かいルールがあるので個別に確かめることを勧めます。
さて、大統領が”President”なのはかなり知られていると思いますが、直接呼びかける場合には、どのように言ったらよいのでしょうか?
次の記事では、「大統領」「首相」「大使」など、要人に対して使われる表現を紹介しています。
敬称が選べない場合
実務の上では、未知の相手で性別がわからないとか、複数人へEメールを送ることも出てきます。こういった、ふさわしい敬称が選べない場合に使う表現もあります。日本語で「各位」に相当する場合には、このように呼びかけることもできます。
関係者各位 To whom it may concern
お客様へ Dear Customer
従業員各位 Dear Employees
英語の「関係者」にはいろいろな表現があります。次の記事では「関係者各位」をはじめ、英語でよく使われる言い方を紹介していて参考になります。
本文の書き方のポイントとは
ビジネス上のEメールには、一定の形式があります。この項では本文を書く上で必要なことを説明しましょう。
まず必要なのはあいさつ
本文の書き出しには、まず簡単なあいさつ文が必要です。日本語でビジネス上の手紙やEメールを書くときによく使う、「いつもお世話になっております」にあたる部分です。内容に合わせて、いくつか書き出しの文例を紹介します。
用件を先に書く場合
冒頭で、何について知らせるのかを明示したい場合は、用件を先に書いておきます。
例)〇〇について連絡いたします
I am writing about 〇〇.
初めてEメールを書く場合
仕事では、これから関係を築きたい相手に連絡をすることもよくあります。
初めてEメールを送る場合には、最初に簡単な自己紹介をします。
例)〇〇社の〇〇と申します。
I am ○○ in 〇〇 corporation.
My name is 〇〇 from 〇〇 company.
所属と名前のシンプルな表現だと、読み手の頭に入りやすいでしょう。
お礼を伝えたい場合
何かの機会に好意を受けた相手に対してEメールを書く場合には、感謝を示す書き出しから始めることもできます。
例)〇〇をありがとうございます。
Thank you for 〇〇.
例)先週の金曜日のミーティングではありがとうございました。
Thank you for having a meeting last Friday.
例)このたびは、ご連絡(Eメール)をありがとうございました。
Thank you for your e-mail.
日本語でもそうですが、お礼は英語のEメールでもよく使う表現ですので、かたちを覚えて単語を入れ替えたりして使えるようにしておくと便利です。
おわびを伝えたい場合
感謝とは反対に、謝罪したい場合には、おわびから書き出すことがあります。
例)〇〇について申し訳ありませんでした。
We are sorry for 〇〇.
例)〇〇についておわびします。
I apologize for 〇〇.
おわびの表現で注意すべきこと
日本語でもそうですが、英語にもおわびの表現には軽重があります。日常の話しことばでも、次のような違いがあります。
例)失礼します(失礼しました)。
Excuse me. / Pardon me.
…ひとの前を横切るとか、その場を離れるときなどの断り
例)ごめんなさい。
I’m sorry.
…ひとの足を踏んでしまった、迷惑をかけたときなどのおわび
例)おわびします。
I apologize for 〇〇.
…謝罪する
いずれも「ごめんなさい」の意味ですが、<ちょっと失礼>から、<謝罪する>では意味合いが違います。”sorry”は、”apologize”に比べると少し軽い印象の単語ですから、自分がかかわったことについてわびる際には、謝る内容や送る相手に応じて、表現を使い分けるようにしましょう。
また、特に仕事の上でのおわびの場合、誤解が生じた、相手に不快感を与えたことをわびるのと、自社の過失によって相手に不都合が生じたことを謝罪するのかでは、対応の仕方が変わることがあります。製品やサービスの不備であれば、損害を補償する話に進むこともしばしばあるからです。
特に契約や交渉事においては、起こっている不都合な事象について、”とりあえずわびた”つもりが、”責任を認めて謝罪した”と受け取られると不利なこともあります。特に注意して表現を選びましょう。
謝罪の気持ちをさらに強めたい場合には、このような副詞を”sorry”や”apologize”の前につける表現もあります。
例)心からおわびします。
I am deeply sorry.
deeply: 強く、深く
例)誠に申し訳ありません。
I must sincerely apologize.
sincerely: 心から、誠実に
本文を書くポイントは「達意簡明」
Eメールの本文は、相手に内容が正確に伝わりやすいよう、簡潔に書くことを心がけましょう。
文章を書く上でめざすべきことのひとつとして、昔から「達意簡明」ということばがあります。
【達意】
自分の考えを人にわかるように十分に述べること。
精選版 日本国語大辞典 「達意」
【簡明】
簡単ではっきりしていること。また、そのさま。簡単明瞭めいりょう。
「簡明な文章」「要点を簡明に述べる」
具体的には、最初に結論や目的を書き、さらに説明するかたちで詳しい内容を展開していきます。
日本でも、仕事上の文書・Eメールは内容をわかりやすく簡潔に書くことが求められています。しかし、海外、特に英語圏ではさらに効率のよさ、明快さを求められる傾向があります。
読み手によってはまわりくどく感じるあいまいな表現や、関係代名詞が連続する長い文章は、とても読みにくくなるので避けるほうがよいでしょう。目安として、一文が70文字以内に収まるようにしてみましょう。
短縮形は避けたほうがいい理由
ただし、文字数を減らそうとして短縮表現を使うのは、仕事上のEメールでは勧められません。短縮形は、あくまで略式の表現です。話しことばで使うことがあっても、文書・Eメールでは省略せずにきちんと表記するほうが丁寧です。
例)〇 will not / × won’t
「ありがとう」などは、つい普段も使う”Thanks.”を使いたくなってしまうかもしれませんが、これは省略したカジュアルな表現なので、仕事上のやりとりにはふさわしくありません。”Thank you. “と正しく書くようにしましょう。
例)〇 Thank you. / × Thanks.
文章は簡潔に、しかし表現はできるだけ丁寧に
仕事の上でのEメールでは簡潔に書くことを心がけましょうと、この項の初めに書きました。けれども、正確かつ丁寧な表現することも同じように大切です。
相手に何かを頼むときには、”Please”(~してください)や助動詞 wouldなどを使った丁寧表現を用います。仕事の上でよく使われる英語の依頼には、次のような表現があります。
例)もし〇〇であれば、メールをください。
Please send me an email if 〇〇.
例)ご対応をお願いいたします。
I would appreciate your attention.
例)〇〇について伺いたいのですが。
I would like to ask some question about 〇〇.
日本語に比べて、英語は率直で明快な表現を好む傾向はあります。しかし、相手に配慮や敬意を示す丁寧表現は存在するので、特に仕事の上でのやりとりをする場合には知っておきたいものです。
「英語に敬語はない」というのは本当でしょうか? いいえ、日本語のような尊敬語・謙譲語といった単語はなくても、相手に敬意を払った言い方は英語にもきちんとあります。次の記事では、主に仕事の場面で使われる丁寧な表現を紹介していて参考になります。
Eメールにファイルを添付する場合
添付ファイルがあるEメールを送る場合は、Eメールの本文中にそれを明記しておきます。うっかり見落としがちな添付ファイルも、文中に記載があれば注意を向けやすくなるので、親切な添え書きです。
英語にはこのような表現があります。
例)添付ファイルをご確認ください。
Please check the attached file.
例)添付ファイル(複数)をご確認ください。
Please check the attached files. <fileの複数形>
例)〇〇を共有します。
I am sharing 〇〇 with you.
例文にあるように、添付ファイルが複数の場合は、file → files と複数形になることに注意してください。
結びの言葉もしっかりと
英語のEメールで結びになる項目はふたつあります。
おしまいのメッセージ
最初に、メールで送った内容の再確認や、おわび・お礼などを伝える文章を入れます。
今後のやりとりのために「連絡をください」でも結構でしょう。
例)何かご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡ください。
If you have any questions, please feel free to contact us.
例)お時間をいただき、ありがとうございました。
Thank you for your time.
例)ご連絡お待ちしております。
I look forward to hearing from you.
結語
一番最後に書く次に結びの部分は、日本語の「敬具」などの結語に相当します。
カジュアルな表現
例)どうもありがとう
Thank you,
例)良い一日をね
Have a good day,
ビジネスEメールでの表現
例)敬具
Sincerely,
例)敬具
Best Regards,
仕事のEメールでは、ややかしこまった表現を使うようにしましょう。さらに改まった表現もあります。
例)(少し丁寧な)敬具
Sincerely yours, <アメリカ英語>
例)(少し丁寧な)敬具
Yours sincerely, <イギリス英語>
いずれにしても、Eメールを送る相手に合わせて、ふさわしい表現を選ぶことが大切です。
読み手とは私的な会話もするような仲であれば、丁寧でかしこまった表現も、よそよそしい、堅苦しい印象を与えるかもしれないので、相手との関係性を考える必要があります。
「敬具」に当たる結びのことばは、英語ではずいぶんたくさんあります。丁寧さや親しさなど、相手との間柄によっても表現は変わるので、いろいろな言い方を知っておきましょう。次の記事が役立ちます。
署名の書き方
日本語でEメールを送る場合、Eメールの最後に自分に関する情報を記載しますよね。英語のEメールでも同じです。
基本的に署名は、名前、役職、部署、会社名の順番に書いていきます。会社名からはじまって部署名や名前と続けていく、日本語の署名とは順番が逆になっていることに気をつけましょう。
連絡先として、電話番号やFAX番号、そしてメールアドレスなども記載しておきます。電話やFAXの番号を記載する場合は、「+81」という日本の国番号も忘れずに書いておくようにしましょう。
まとめ
仕事の上でのEメールは、書き出しや結びの文章など、ある程度のルールを知っていれば、それほど難しいものではありません。定型文を組み合わせたりすることで、きちんとした印象のEメールが書けるようになります。
本文に書く内容は、できるだけ要点をまとめて、簡潔に書くように心がけましょう。