一年の始まりや新学期など、何かのきっかけで「今こそ英語を始めよう!」と思うことがあります。しかし、英語を始めるといっても、「何から取り組んだらよいのかわからない」といった悩みをもつひともいるのではないでしょうか。

どのような目標のための英語の勉強なのか

目標

まずは、英語の勉強を始める上での目標設定が大切です。あなたは、どのようなことができるために英語を勉強しようと思ったのでしょうか。
勉強を始めたからといって、突然流暢に英語が話せるようになるわけではありませんし、自在に英語のニュースや映画のセリフが聞き取れるようになるわけでもありません。外国語学習は、地道な継続によって目標に一歩一歩近づくものです。最初にあまり大きな、漠然としたことを目標にしてしまうと、勉強の手ごたえが感じられず、動機を見失って離脱してしまう――ということにもなりかねません。
たとえば「海外旅行で困らないレベルまで英会話を上達させたい」ということが目標なら、考えられる場面にあったテキストや参考書を用意する、必要な語彙や文法を身につける、実践的な受け答えの練習をする、など、いくつかのステップが必要です。

次の記事は、目標を設定することの重要性と、具体的な設定の仕方について説明しているので、ぜひ参考にしてください。

現在の自分の英語力を知ろう

もうひとつ大切なことは、現在の自分の英語力を知ること、です。

まったく初めて英語を勉強するのでない限り、ほとんどの日本のひとは中学校や高校、大学などで英語の授業は受けているはずです。もっと最近学生時代を送ったひとなら、小学校でも英語の時間は設けられています。

ですから、英語の勉強を再開するのなら、全部を最初からやり直すよりも、これまでの学習で身についていないこと、苦手なことをおさらいする方がずっと効率がいいわけです。

そこで必要なのがレベルチェックです。自分の英語力をチェックすることによって、できる範囲と、できない範囲を明確にすることができます。

この記事では、自分にちょうどよい学習内容を見つけるコツと、英語のレベルチェックを手軽にオンラインで受けることができる、無料のウェブサイトをご紹介します。

自分にちょうどよい英語の学習内容とは?

自分にちょうどよい英語の学習内容とは?

現在の自分の英語力を把握する最大の利点は、これから英語を学ぶためにちょうどよい学習内容を確認するためです。ここでいう「ちょうどよい学習内容」とは「難しすぎず、簡単すぎもしない、参考書や講師の手助けで習得することができる内容」という意味です。

適切な学習内容については、発達心理学の分野の研究があります。

「適切な学習内容」についての発達心理学の知見

ロシアの心理学者レフ・ヴィゴツキー(Lev Simkhovich Vygodskiy)は「発達の最近接領域」(zone of proximal development)という概念を提唱し、教育者は以下の3つの領域を認識する必要があると主張しました。

  1. 学習者がすでに習得している内容
  2. 学習者がまだ習得していない内容
  3. 学習者が、講師などの手助けを得た上で習得できる内容

もっとも理想的なのは、ヴィゴツキーが唱えるように、あなたの英語力を的確に評価し、ちょうどよい学習内容を見定めてくれるひとがいることですが、おとなであれば、この「ちょうどよい学習内容」について考えることで、自分でもより効果的な学習を進めることができると思います。

「適切な学習内容」の例

わかりやすい例を挙げてみましょう。

形容詞”small”や”big”には、対象のものを他と比べる比較級表現があります。

small(小さい)smaller(より小さい)-smallest(一番小さい)

big(大きい)bigger(より大きい)-biggest(一番大きい)

形容詞を学んだあとで、”than”(~よりも)とともに、比較級の形”smaller”、”smallest”や”bigger”、”biggest”を学ぶのはちょうどよい学習内容といえます。

しかし、まだ一形容詞を学んでいない段階で、形容詞の比較級を学ぼうとするのは無理があり、混乱してしまう恐れがあります。

英語の学習を始めるにあたっては、現在の自分の英語力を確かめた上で、どのような参考書やワークブックに取り組んだらよいのか、オンライン英会話であれば、どのようなコースを受講したらよいのか、目標とすることといっしょにぜひ考えてみてください。

手軽なオンライン英語レベルチェック

手軽なオンライン英語レベルチェック

これまで、英語の学習に取り組む前に、現在の自分の英語力を把握することの大切さについて説明してきました。それでは、自分の英語力を知るにはどのような方法があるのでしょうか。

英検やTOEICなどの資格試験は、自分の客観的なレベルを知る助けにはなります。問題練習を繰り返すことで、自分が苦手とする項目に気づくこともできるでしょう。しかし、受験するには費用がかかりますし、会場で試験を受ける時間もかかるので、手軽に受けられないと思う方も多いと思います。

そこで、ここではオンライン上でいつでもすぐに受けることができる、英語のレベルチェックを提供しているウェブサイトを紹介します。ここに挙げたレベルチェックはすべて無料で、比較的やさしいものから難しいものという順番になっています。

初級編:NHK出版 中学英単語タイムアタック!

NHK出版 中学英単語タイムアタック!:

NHK出版は、NHKラジオやNHKテレビの外国語学習番組のテキスト『中学生の基礎英語』『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』などを出版している会社です。このレベルチェックテストは、「3,000語程度をマスターしてしまえば、日常会話の80~90%近くをカバーできる」という前提で、中学卒業までに学ぶ英単語2,200~2,500語の定着度をゲーム形式で測定します。

TEST:

テストは制限時間30秒で、示された日本語に合う英単語を3つの選択肢から選びます。初回のみアンケートがあり、アンケートに答えると得点と順位が表示されます。

時間制限内にいくつ答えられるかで得点が変わるため、回答は正確に、しかしスピーディーにクリックする必要があります。

誰でも受けられる「ノーマルモード」の他に、LINEで友だち登録すると挑戦できる「鬼モード」があります。

POINT:

単語を知っているかどうかだけの手軽なテストで、わずか30秒で判定が出ます。あまり時間のとれない方にもぴったりです。

中級編:Weblio 語彙力診断テスト

Weblio 語彙力診断テスト

Weblio はオンラインの英和・和英辞書を提供しています。英語の語彙力や英単語のボキャブラリーレベルを計測できる、「Weblio語彙力診断テスト」を受けることができます。

TEST:

語彙力診断には下記の4つのテストがあり、いずれも無料、会員登録なしで英語のレベルチェックができます。

  • 総合診断…後述
    TOEICⓇL&Rテスト…「TOEIC® L&Rテスト」のビジネス英語などの出現頻度を基にした診断
    英検…「英検」に含まれる英語の出現頻度などを基にした診断
    大学入試…「大学入試」の英語の出現頻度などを元にした診断
    TOEFLテスト…「TOEFL®テスト」の学術的な英語の出現頻度などを元にした診断

「総合診断」テスト

ここでは、英語の勉強を始める方向けに「総合診断」テストについて説明します。

テストは25問で、表示された日本語に合った英単語を選択肢のなかから選んで回答します。テスト時間は2分半で、1問あたり10秒以内の制限時間内にどれだけ正答できるかによって、あなたの英語の推定語彙数がわかります。

LEVEL:

テストを受けると、レベル、推定語彙数、称号、grade、回答時間、スコアの診断結果が出ます。

レベルは、推定語彙数「1語~500語」までのレベル1から、「9001~10000語」のレベル16まで16段階があります。

称号は、前述のレベルに応じて、やさしい方から「初学者」「初心者」「研修生」「努力家」「中級者」「勉強家」「優等生」「特待生」「上級者」が与えられるので、客観的な自分の英語レベルをつかむことができます。

出題された単語と自分の回答も表示されるので、間違えてしまった単語を復習することができます。また、居住する都道府県別ランキングやレベル別スコアランキング、総合スコアランキング、診断回数ランキングなども表示されるので勉強の励みになります。

POINT:
現在どのくらいの語彙をもっているのか、2分半の短い時間で診断が受けられます。

上級編:ケンブリッジ大学英語検定機構 レベルチェックテスト

ケンブリッジ大学英語検定機構 英語レベルチェックテスト:

ケンブリッジ大学は、英語の技能検定として「ケンブリッジ英語検定」を実施しています。このレベルチェックテストは、ケンブリッジ英語検定に代わる資格試験ではありませんが、受験にあたって最適なレベルを知ることができます。

TEST:

レベルチェックテストには、目的に合わせて以下の4種類があります。

  • General English(総合英語)
    For Schools(学生向け)
    Business English(ビジネス英語)
    Young Learners(子ども向け)

レベルチェックテストの問題は選択式で、内容は質問文に対応する答えを選ぶ問題や、空欄に入る単語を選ぶ問題が25問あります。時間制限はありません。

判定結果では、25問中何問正解したかのかが表示されます。「解答を見直す」ボタンをクリックすることで、出題された問題と自分の解答を見直すことができるので、どの問題で間違えたのかを確認することができます。しかし、解説はありません。

LEVEL:

このレベルチェックテストでは、正解した点数によって「テストスコアから判断すると、あなたの英語力は〇〇または〇〇の試験対策を始めても良いレベルです。」というメッセージが出て、あなたの実力に合ったケンブリッジ大学英語検定のレベルが表示されます。勧められた検定試験のレベルから、現在の自分の英語力を客観的に知ることができます。参考までに、次の項でケンブリッジ英語検定について、簡単に説明します。

ケンブリッジ英語検定のレベル
  • ケンブリッジ英語検定には、複数のレベルが設けられています。
    A2 Key(キー)
    B1 Preliminary(プレリミナリー)
    B2 First(ファースト)
    C1 Advanced(アドバンスト)
    C2 Proficiency(プロフィシエンシー)

そしてA2は「基礎段階の言語使用者」、B1・B2は「自立した言語使用者」、C1・C2は「熟達した言語使用者」というカテゴリになっています。(日本ケンブリッジ英語検定機構

POINT:
「ケンブリッジ英語検定」は日本国内だけでなく、国際的に通用する資格試験です。それに準じたレベルチェックをオンラインで試すことができます。

まとめ

外国語を効果的に学習するためには、動機づけと適切な学習内容が必要です。

この記事では、「英語を始めよう!」と思ったときに、意欲を保ち続けるための目標設定と、現在の自分の英語力に合った学習内容の選び方が大切だということを説明しました。そして、無料で手軽にできる英語力の確認手段として、オンラインで受けられる英語レベルチェックのサイトをいくつか紹介しました。

自分の英語力を把握して今後の目標を立てることは、日ごろの継続的な積み重ねが必要な英語学習において、とても大切な動機づけにも役立ちます。

これから英語学習を始める方も、すでに英語学習に取り組んでいる方も、一度自分の英語力をチェックしてみましょう。十分に理解している部分を確認するとともに、苦手なところ、自信がないところがはっきりわかれば、今後の学習にきっと役立つはずです。

Enjoy learning English!