海外との貿易関連の業務に携わる「通関士」。
国際的な仕事や専門的なイメージが強い「通関士」に以下のような不安や疑問を感じている方は多いのではないでしょうか?
- 国際的な仕事に携わりたいけど通関士ってどういう仕事?
- 通関士資格はどのような資格?
- 通関士には英語力が必要?
そこで本記事では、「通関士に興味を持つ方」に向けて、通関士の仕事やキャリア、通関士の資格・資格試験、通関士の英語力について紹介しています。
記事を最後まで読んでいただければ、通関士について一通り確認することができますよ。
ぜひ、通関士に興味を持ってこの記事にたどり着いた方は、記事をチェックしてみてください。
通関士とは
通関士とは、税関と輸出入業者間の事務を業者の代理で行う専門家のことです。
通関士は英語で”Customs Broker”と言います。「税関」は”Customs”で、「代理業者」は”Broker”なので、通関士の英訳がそのようになるのも納得できますね。
国際貿易における輸出入は、税関に申告と許可を得る必要があります。
その通関手続きに必要な書類の作成や審査をするのが、通関士です。
通関士として働くためには、通関士試験に合格し、資格を取得する必要があります。
通関士のニーズ
近年、AI技術の発達により、一部の仕事はAIロボットに奪われてきていますが、通関士のニーズはどれぐらいあるのでしょうか。
日本は貿易立国ですし、日本の貿易額は年々増加しており、今後もますます増加していくことが予想されます。日本は輸出入なしに国の経済が維持していけないと言っても過言ではないぐらい、輸出入に依存していています。
「財務省貿易統計 年別輸出入総額」によれば、2022年の日本の輸出総額は、輸出が約98兆1736億1209万で、輸入が約118兆5031億5278万でした。輸入が輸出より20兆円も上回っていますが、日本の輸出入総額は右肩上がりに伸びていますので、通関業務を行う通関士のニーズは高く、今後も高まっていきそうです。
通関士の仕事
通関士は輸出入の手続に関する専門家で、通関士の業務は、税関を通るために必要な業務を代行することです。
主な仕事内容は以下の通りです。
- 通関申告書類の作成代行
- 通関申請の代行
- 関税計算書等の審査
- 不服申し立ての代理
- 主張・陳述の代行
通関の書類には、輸出申告書、輸入申告書、仕入書など多くの種類があり、適切な書類を提出する必要があります。
通関士は通関のさまざまな書類を依頼者の代理で作成します。
さらに、書類の確認だけではなく、輸出入する物品が法や規則に違反していないこと、関税や消費税の発生について審査を行います。
また、税関の処分や対応に不服がある場合は、代理で異議を申し立てることもあります。
通関士の就職先・キャリア
通関士は貿易に関わる多くの企業で活躍しています。通関士の資格を取得後に活躍できる就職先には、次のようなものがあります。
- 通関業者
- 海運・航空・倉庫・物流関連企業
- 商社
- メーカー
それぞれの就職先について詳しく見ていきましょう。
通関業者
必ず通関士の有資格者を雇用する義務があるのは、通関業者のみです。通関業者は、商社やメーカーからの依頼により、通訳業務を行っています。
近年では、自社内で通関業者の業務を確認するため、通関士の資格を持つ社員を雇用する企業も増えてきています。
海運・航空・倉庫・物流関連企業
海運・航空・倉庫・物流関連企業の多くでは、資格保有者を採用しています。
海外から日本へ商品を輸入する場合、海運会社の船舶や航空会社の飛行機を利用して運ばれます。通関手続が終了した商品は、一時的に倉庫業者の倉庫で保管され、物流企業のトラックを利用し輸入元に配送されます。海運・航空・倉庫・物流企業では、本業以外にも通関業務を行っていることが多く、通関士が活躍しています。
商社
通関士は、貿易事務として商社でも活躍できます。商社では、輸出入者からの依頼を受けて、さまざまな貨物の輸出や輸入をおこなっています。税関に対する輸出入申告には専門知識が必要なため、通関手続を通関業者に依頼することが一般的です。
商社の担当者として通関に関する正確な知識を持っていると、国内の依頼者に対して的確な説明ができ、通関業者に対しても迅速で正確な依頼ができる、というメリットがあります。
特に食品を輸入する場合、単に輸入申告して許可を受ければよいわけではなく、食品衛生法という法令を通過しなければなりませんので手続に時間がかかります。そのことを国内の輸入依頼者に説明しておけばトラブルが防げます。また通関業者に対してどういう書類を提出すればよいかを知っていれば手続をスムーズに進めることができます。
大手の総合商社に就職するのは競争が激しくて大変ですが、通関士の資格を持っていれば、貿易事務において即戦力となるため、就職しやすくなるかもしれません。
メーカー
メーカーは、自社製品を製造するための原材料を海外から輸入し、でき上がった製品を海外へ輸出しています。また、海外の自社工場で生産した部品を国内に輸入することも多くあります。
メーカーにおいて、税関に対する輸出入申告については複雑な専門知識が必要なため、通関手続を通関業者に依頼することが一般的です。その際、通関士の知識があれば、商社の場合と同じく、国内の依頼者への対応や通関業者への依頼をスムーズに進めることができます。
通関士の資格を取った後、どういった企業に就職した働くかを選べる点も、通関士の魅力ですね。
通関士の年収
通関士の平均年収は一般的に350~500万円程度と言われています。
全国平均の年収が436万円であることを考慮すると、 全国平均程度もしくは平均より少し高い水準になります。
雇用形態や企業の規模によっても年収は大きく左右されます。通関士の資格を取って、正社員として総合商社に雇用された場合は、1,000万円近くの年収になることも期待できますが、中小企業に雇用された場合は、年収500万円未満になる可能性が高いです。
通関士資格を取得して採用されてので、もっと年収が高くてもいいように感じますが、雇用主が大手企業か中小企業かや、雇用形態や業務内容によっても、年収に差が出ると考えられます。専門職なので、数年どこかの中小企業で働いた後、大手企業に転職すると、年収アップが期待できます。
通関士の仕事の魅力
通関士の仕事の内容、就職先・キャリア、年収について解説してきましたが、通関士の仕事の魅力とは何なのでしょうか。
通関士の一番の魅力は、貿易業務の中では最も専門性が高い仕事であることです。関税の取り扱いは、税理士でさえ許可されていませんが、通関士には許可されています。
専門性の高さゆえに、通関業者はもちろんメーカーや商社での評価も高く、通関士の求人が安定していることも、この仕事の特長です。
訳)通関士の仕事ってとても魅力的だと思うわ。
訳)なぜそう思うの?
訳)日本の輸出入は近年増えてるし、通関士の需要も増え続けるだろうから。
訳)それは専門性が高い仕事だね。通関士の試験を受験することを検討してみるよ。
通関士になるには?
通関士として働くには、通関士試験の合格が必要不可欠です。
通関士試験に合格し資格取得してすぐに通関士として働けるわけではありません。
試験に合格した後、通関業者へ就職すると、通関業者から通関士として届け出がされます。
実際に通関士として業務に携わるには、財務大臣による確認終了後になります。
通関業者や通関業務部門のある企業に所属している人のみ、通関士と呼ぶことができます。通関士の国家資格を取って、通関業者に就職して、通関士として届け出が出されて初めて通関業務に携われるという点が厳しいですが、専門性が高い職業なので、長年続けていけそうです。
通関士の資格
通関士の資格は貿易関連の仕事において、財務省が認定する日本唯一の国家資格です。
日本国内でのみ有効な資格ですが、世界貿易機関(WHO)の規則に基づいた国際的な法を使用する業務のため国際的にステータスがある資格です。
海外にも同様の資格がある国もあり、試験の難易度やシステム等異なる部分はあるものの国際的に共通点のある資格です。
グローバル化が進み輸出量が増加している近年において注目されている資格のひとつです。
通関士の資格試験
通関士試験は財務省が主管しており、毎年10月に全国の会場で実施されるマークシート式の国家資格試験です。
受験資格は設けられておらず、誰でも受験することが可能な資格試験です。
「通関業法」、「関税法等」、「通関実務」の3科目があり、それぞれ満点の60%以上で合格になります。
通関業務の経験、官庁において関税その他通関に関する事務の経験によって、一部の科目が免除になります。
通関業者の通関業務または官庁における関税その他通関に関する事務の経験が通算15年以上ある方は、「通関実務」と「関税法等」の2科目が免除になります。
通関業務または官庁における通関事務の経験が通算5年以上ある方は、「通関実務」の科目が免除されます。
合格率
例年、通関士試験の受験者は7000人程度です。
通関士資格試験の合格率は10~15%と言われています。
高難易度の試験とされる司法書士で3~4%、社労士で6~7%の合格率です。
- 2021年度:合格率15.8%
- 2020年度:合格率16.9%
- 2019年度:合格率13.7%
- 2018年度:合格率14.6%
過去4年間の合格率も15%程度で、決して高い合格率ではありません。
試験難易度
通関士の資格試験の合格率から、難易度で高いことがわかります。
通関士の資格を取得するために必要とされる学習時間は400~500時間が目安とされています。
多忙な社会人や学生が1日に勉強に費やせる時間を2時間とすると、7~8ヶ月程度が必要になります。
通関士試験の難易度が高い理由は、主に3つあります。
- 法律や貿易に関する専門用語が頻出
- 法改正への対応
- 通関実務における申告書の作成
法律や貿易に関する専門用語は、馴染みのない方にとっては暗記しにくいと感じるでしょう。
イメージしにくい専門分野のため、慣れるまでに時間が必要になることが多い部分です。
法改正や更新された内容を理解し、自身の知識をアップデートする必要があります。
試験では、受験する年の7月1日現在で施行されている法律とその関係政令、省例、告示・通達が範囲になります。
「通関実務」では、実際の業務に関連する問題が出題されます。
暗記だけでは対応できない問題のため、過去問題集を解くなど実践練習が必要です。
試験日程・時間
10月の第1または第2日曜日に全国13都市で実施されます。
試験時間は以下のように設定されています。
- 通関業法:50分
- 関税法等:120分
- 通関実務:120分
試験概要
各科目の問題数と配点は以下のように設定されています。
- 通関業法:択一式10問(10点)、選択式10問(35点)
- 関税法等 択一式15問(15点)、選択式15問(45点)
- 通関実務 択一式5問(5点)、選択式5問(10点)、計算式5問(10点)、申告書2問(20点)
択一式、選択式、計算式、申告書作成のマーク形式の試験になっています。
すべての問題が、選択肢に正解がひとつの択一式の問題ではないため、曖昧な知識では回答できないようになっています。
通関士に求められる英語力
通関士は国際貿易における輸出入の業務を担うため、海外とのやり取りが多く、扱う書類は英語で記載されています。
英語の書類の内容を理解し、処理する程度の英語力が求められます。
よく使用する英単語や定型文があり、書類の形式に慣れれば問題なく業務ができるため、通訳のような高い英語レベルは必要ありません。むしろ、通関業務や関税法に関する知識をしっかり持っていることが重要になります。
新卒採用の募集要項にて、TOEIC600点以上の英語力を挙げていることもありますので、一定の英語力は必要です。総合商社の通関士の募集では、TOEIC730点以上という条件が記載されていました。
まとめ
今回は「通関士に興味がある方」に向けて、通関士の仕事やキャリア、通関士の資格・資格試験、通関士の英語力についてご紹介しました。
グローバル化が進み活躍の場が広がっている通関士という職業について、興味が湧きましたでしょうか?
通関士は、通関業者や通関業務部門のある企業以外にも、商社やメーカーなどでも活躍が期待されています。
海外とのやりとりや英語を使う仕事に興味のある方は、ぜひ選択肢のひとつにしてみてください。