この「ことわざ」、「英語」で何と言う?シリーズ、今回は、「牛」のつく「ことわざ」を英語に翻訳してみました。
「牛」は、哺乳綱鯨偶蹄目ウシ科ウシ亜科の動物です。全世界では15億頭近い牛が飼育されているといわれています。
西洋では古くから牛肉食・酪農を目的とした飼育・放牧が行われており、日本でも牛は牛肉や牛乳など食用として重宝されています。
このように牛肉食文化は世界中に存在していますが、主にインドで信仰されている「ヒンドゥー教」では、牛は神聖視されています。そのため、「ヒンドゥー教」では牛肉を食べることが禁止されています。
「干支」においては、2番目に位置する「丑」として登場します。また、「丑」は方角では北、時刻では午前1時から3時を示しており、この位置は鬼が出入りする方角「鬼門」として知られています。そのため「丑」が差す方角・時間には、日本古来の呪術「丑の刻参り」が行われることでも有名です。
そんな「牛」のつく「ことわざ」を英語に訳しました。
牛を英語で言うと?
「牛」のつくことわざをご紹介する前に、「牛」の英語をみていきましょう。
「牛」というと、「cow(カウ)」と覚えた方が多いのではないでしょうか。しかし、英語の「牛」は種類によってさまざまな言い方があります。
- 「cow」は正確には「乳牛」、または「雌牛」です。
- 「bull」は、「去勢していない雄牛」です。
- 「ox」は、「去勢した雄牛」です。
- 「cattle」は家畜として飼われている「畜牛」のことで、雌牛と雄牛に関係なく、一群の牛を指す「複数名詞」です。
- 「食用の肉(牛)」になっている場合は「beef」です。
- 「calf」は、「仔牛」のことで、特に生後1年未満の牛に使う表現です。
牛の英語や牛の鳴き声を英語で紹介している下記の記事もご参照ください。
丑年を英語で言うと?
次に、十二支の「丑年」を英語で言ってみましょう。
丑年を英語で言うと、「the Year of the Ox」となります。なぜ干支に 「Ox」 が使われるようになったかというと諸説ありますが、Oxが中国で人々の生活になじみがあったことが関係していると言われています。
「土用の丑の日」にはウナギを食べると言われていますが、その「土用の丑の日」を英語では何というのでしょうか。
「The midsummer day of the ox」などと言います。直訳すると、「真夏の丑の日」になりますね。
牛のつくことわざ
それでは、「牛」のつくことわざの意味と英訳をみていきましょう。
牛の角を蜂がさす
「牛の角を蜂がさす」は、痛くもかゆくもないことを例えた「ことわざ」です。大きな体と丈夫な角を持つ牛を、小さな体の蜂がさしたところで効果がないことが由来しています。
英語では
「A bee stung a horn of a cow.」
と翻訳することができます。
“sting”は(蜂などの)昆虫が「~を刺す」という意味で、”stung”は”sting”の過去形です。
暗がりから牛
「暗がりから牛」は、暗がりに牛がいても、いるのかいないのか分からないことから、物事が明確でないことを例えた「ことわざ」です。また、ゆったりと動く牛の動きに例えて動作が鈍いことも意味します。
英語では
「Cows came out of the dark.」
と翻訳することができます。
come out of とは「~から出てくる」という意味です。
牛は水を飲んで乳とし 蛇は水を飲んで毒とす
「牛は水を飲んで乳とし 蛇は水を飲んで毒とす」は、まったく同じものでも活用の仕方次第で毒にも薬にもなることの例えた「ことわざ」です。これは鎌倉中期の仏教説法集「沙石集」に記されている言葉です。
英語では
「Cows drink water and make milk, snakes drink water and make poison.」
と翻訳することができます。
牛に対して琴を弾ず(うしにたいしてことをだんず)
「牛に対して琴を弾ず」は、中国の字典『祖庭事苑』にて、魯の公明儀が牛の前で名曲を奏でたが牛はただ草を食べていたという故事に基づいた「ことわざ」です。
名曲を知らぬ牛に琴を弾いて聴かせたところで、牛はその名曲を理解できません。人も同じように、愚かな人にはいくら立派な話をしても無意味であることを例えています。
ちなみに、【「馬」のつく「ことわざ」を英語に!5選】でも紹介した、「馬の耳に念仏」も同じ意味を持つ言葉です。
英語では
「Let the cow hear the harp.」
と翻訳することができます。
let使役動詞で、「let A 〇〇」で「Aに○○させる」の意味です。
また、琴はハープとして翻訳しています。
牛を馬に乗り換える
「牛を馬に乗り換える」は、劣ったものから優れたものに乗り換えることを意味する「ことわざ」です。のろのろと歩みの遅い牛から、足の速い馬に乗り換えることで、自分に不利なものから有利なものに切り替えることの例えです。
英語では
「Switch cattle to horses.」
と翻訳することができます。
“cattle”とは牛のことで、主に家畜として飼われている牛を指します。
牛は牛連れ馬は馬連れ
似たものどうしは集まりやすいことのたとえ。また、似たものどうしが集まると物事がうまくいくことのたとえです。
英語では
「Birds of a feather flock together.」
「Similar minds think alike.」
と翻訳することができます。
牛に引かれて善光寺参り
他人の誘いや思いがけない偶然で、よい方向や結果に導かれることのたとえ。最初は気が進まなかったことでもやってみれば、ラッキーなことにつながるという意味です。
善光寺は江戸時代中期の国内旅行の人気スポットだったと言われています。
英語では
「be led to do good by some accidental event」
と翻訳することができます。
牛の歩み
進み方が遅いことのたとえで、「牛歩」と言います。
英語では
「At a snail’s pace」
「At a turtle’s pace」
などと翻訳することができます。
牛の角突き合い
仲が悪く、いつも口げんかばかりしていることです。お互いに相手を良く思わず、顔を合わせるとすぐに言い争いが始まる関係のことです。暴力を振るうのではなく、口先でののしり合うことに使われます。
「角突き合い」を英語で言うと、
「be at odds」
と翻訳することができます。
牛耳を執る
集団の中心となって思うままに主導権を握ることを言います。中国の春秋戦国時代、同盟を結ぶときは、中心となる人物が牛の耳を裂いて出した血をすすって結束を誓い合ったという故事に由来します。「牛耳る」という言葉もここから出たものです。
英語では
「to be the leader 」
「to control」
「to take the lead in 」
と翻訳することができます。
鶏口となるも牛後となるなかれ
大きな組織の末端で働くより、小さな組織の長として働いた方が良いという意味で使われます。
「鶏口」は、鶏のくち、頭のこと。「牛後」は、牛の尻。
大企業で働いているのも良いことでありますが、大きな組織の歯車のように感じることもあるかもしれません。零細企業で働く場合、担当する仕事も幅広く、やりがいを実感することもあるでしょう。
英語では
「Better be the head of a pike than the tail of a sturgeo 」
と翻訳することができます。
角を矯めて牛を殺す
小さな欠点を直そうとして、かえって全体をだめにしてしまう意味になります。
牛の曲がっている角をまっすぐに直そうとして、かえって牛を殺してしまい、肝心なものをだめにしてしまうことのたとえです。
欠点は少ない方がいいかもしれませんが、その欠点が自分の長所になる場合があるかもしれません。また他人の小さな欠点に対しても、目くじらを立てず、見過ごしてあげたり、優しく諭せる広い心を持っていくのがいいですね。
英語では
「That is like throwing the baby out with the bathwater. 」
と翻訳することができます。
牛に経文
いくら言い聞かせても何の効果もないことのたとえです。「経文」はお経のことで、牛にお経を聞かせてもありがたいとも思わず、何の効果もないことから言われています。
英語では
「To talk to the wind.」
と翻訳することができます。
まとめ
今回は「牛」のつく言葉にまつわる「ことわざ」をまとめてみました。
今回は、私にはあまり聞き慣れない「ことわざ」だらけでしたが、ゆっくりと歩く「牛」にちなんだ「ことわざ」が多く見受けられました。「急がば回れ」という「ことわざ」もありますし、時には牛のようにゆっくりと考えてみることも必要かもしれませんね!
今後もさまざまな「ことわざ」や「名言」を翻訳していきますので、お楽しみに!