皆さんはご自宅で「スリッパ」を使いますか?
私は普段ビーチサンダル型のスリッパを使っています。最初こそ鼻緒に違和感がありましたが、慣れると素足感覚で非常に心地よく、季節を問わず家ではビーチサンダル姿で過ごしています。
さて、ということで今回のテーマは「スリッパ」です。日本では日常的に使う言葉ですが、果たして英語では何と言うのでしょうか。日本でしか通じない和製英語なのか、はたまた全く違う言い方があるのか、気になりますね。
また、記事の後半では日本と海外のスリッパ文化の違いについても解説するので、「部屋の中ではどうしてスリッパを履くんだろう?」と疑問に感じていた方は、ぜひチェックしてください。
それでは、早速始めていきましょう!
「スリッパ」は英語で何て言う?
スリッパは英語でも “slipper” と言います。発音記号は「slípɚ」で、カタカナだと「スリパー」に近い発音です。
slipper という単語は、もともと「滑る」を表す動詞 “slip” から来ています。動詞に -er を付けると「~する人、~する物」を表すので、slipper を直訳すると「滑る物」という意味になります。
消しゴムを表す “eraser” が「消す(erase)物」、料理で使う “peeler(ピーラー)” が「剥く(peel)物」なのと同じ構造ですね。
Hey, I have a new joke “A sleeper wearing slippers.” How’s it?
訳)ねえ、新しいジョークができた。「スリッパを履いて寝る人」
That joke left us cold. You’re a “slipper” in Japanese meaning.
訳)そのジョークは寒いわ。日本語で言うところの「スベる人」だね。
slipper は複数形にするのが普通
英語の slipper を使うときは、たいてい複数形の “slippers” で使う点に注意しましょう。
英語では、2つセットで使うものは通常 “~s” と複数形にして使います。たとえば、ズボン(trousers)や靴(shoes)、箸(chopsticks)など、全て2つセットで使うのが前提なので、複数形にするのが一般的です。ちょっと変わったところでは眼鏡(glasses)も複数形。なぜかといえば、右と左でレンズ(glass)が2つあるからですね。
これらと同じ理由で、左右1組で使うスリッパも基本的には slippers と複数形になります。
ただし、敢えて左右の片方を表したい場合は “a slipper” もしくは “a pair of slippers” と単数形で表すこともあります。状況に合わせて使い分けましょう。
I bought slippers, but there’s only a slipper in the box.
訳)スリッパを買ったんだけど、箱の中には片方しか入ってなかったんだ。
That’s too bad.
訳)かわいそうに。
slipper はアメリカとイギリスではあまり使われない?
以上見てきたように、スリッパは英語でも slipper(slippers)と言いますが、実際アメリカやイギリスでは同様のものを指して “scuff(スカッフ)” や “mule(ミュール)” と呼ばれることの方が多いです。
アメリカでは scuff が、イギリスでは mule が好まれます。また、どちらの場合も slippers と同じ理由で、実際は scuffs、mules と複数形で使われるのが一般的。
ちなみに、アメリカやイギリスで slipper と言うと、日本のようなカカトの無い室内履きではなく、学校の上履きのような形状の靴を連想する場合が多いです。そのため、バレエシューズやダンスシューズなどを指して slipper が使われることもあります。
同じスリッパ(slipper)という単語でも、日本と海外でニュアンスに違いがあるので、ぜひ覚えておきましょう。
We call Japanese slippers “scuffs” in the U.S.A.
訳)アメリカでは日本のスリッパを「スカッフ」と呼ぶよ。
And we usually call them “mules” in the U.K.
訳)そしてイギリスでは大抵「ミュール」と呼ぶんだ。
日本と海外のスリッパ文化の違い
そもそも、私たち日本人はなぜスリッパを使うのでしょう。また、海外では日本と同じように靴を脱ぐのでしょうか、それとも家でも靴のままで過ごすのでしょうか。
ここでは、日本と海外のスリッパ文化の違いについて、深掘りしてみましょう。
そもそも日本ではなぜスリッパを使うのか?
そもそも、日本にスリッパ文化が生まれたのは明治の頃です。
長年の鎖国時代を経て開国したばかりの当時、日本にはさまざまな国から外国人が訪れました。その際、土足のまま家に上がる人が大勢いたため、それを防ぐために生まれたのが、現在のスリッパの原型だといわれています。
当時それらは「上靴(上沓)」と呼ばれ、それを海外の人向けに説明するため、英語に訳したのが slipper だったようです。今でも一部地域では上履きを上靴と呼びますが、その源流もここにあるかもしれませんね。
その後、英語呼びする方がおしゃれ(ハイカラ)という理由から、上靴よりもスリッパという呼称が好まれ、その文化が現在にまで至っているという流れです。日本でのスリッパと英語圏の slipper のニュアンスにズレがある原因も、ここにあると考えてよさそうですね。
アメリカやイギリスでは家でも靴を脱がない?
アメリカやイギリス、その他のヨーロッパ諸国では、基本的に家でも下履き、つまり土足で過ごします。
これらの国では、素足は常に靴で覆われている箇所であるため、素足を他人にさらすのは恥ずかしいことだと感じられます。そのため、滅多なことでは靴を脱がないと言われてきました。
しかし、それも国際交流が盛んになった現代では変わってきており、屋内ではスリッパなどのルームシューズを履くケースも増えてきました。そのため、海外でお宅にお邪魔する際は、以下のように靴を脱ぐべきかどうか一度聞いてみるとよいでしょう。
Do I have to take off my shoes before entering?
訳)入る前に靴を脱いだ方がよいですか?
家で靴を脱ぐ国は日本だけ?
家で靴を脱ぐのは日本独特の文化だと思われがちですが、実際は多くの国に同様の文化があります。
たとえば、インドネシアやベトナムなど、東南アジアでは多くの国で靴を脱ぐ文化があります。高温多湿なため、土足で室内が汚れやすいからでしょう。お隣の韓国でも靴を脱ぐのが普通なようです。
また、ノルウェーやカナダなど、雪が多く降る国でも室内では靴を脱ぐようです。外の雪を家の中に持ち込まないためでしょう。その他、トルコのように宗教上の理由で靴を脱ぐ国もあります。
国によって、スリッパを履くか裸足や靴下の状態で過ごすかに違いはありますが、「海外=室内でも靴で過ごす」と決めつけないことが大切ですね。
まとめ
今回は「スリッパ」を表す英語表現について、詳しく確認してきました。
スリッパは英語でも同じく slipper と言いますが、アメリカ英語では scuff、イギリス英語では mule と呼ぶことが多いです。また、実際に使う際は左右1組が普通なので、slippers と複数形になります。
そもそもアメリカやイギリスなどの海外では、家でも土足で過ごすのが一般的なので、スリッパを使う機会は多くありません。しかし、最近では家では靴を脱ぐ家庭が世界的に増えてきているので、今後 slipper という言葉が使われる機会が増えてくるかもしれませんね。
それでは、これからも楽しい英語学習を。
Let’s enjoy!!