「お手数ですが」
「お手数おかけしました」
「お手数おかけして申し訳ございません」
3つとも同じ「お手数」を使った言葉ですが、それぞれニュアンスが微妙に違っていることは、日本人ならすぐにわかるのではないでしょうか。

日本語には、同じ言葉なのに使う状況によって意味が異なるものが意外とたくさんあります。

今回は、クッション言葉、謝罪、感謝も表す日本語特有の言い回し「お手数」について解説していきます。ビジネスシーンで役立つ英語表現も紹介するので、ぜひ最後までチェックしていってください。

「お手数」は日本ならではの言い回し

「お手数」は日本ならではの言い回し

「お手数ですが」という表現に代表される「お手数」は、日本の特にビジネスの場面でよく使われている言葉です。会話やメールの相手に、手間や時間を取らせてしまったことを詫びる気持ちを表しています。

じつは英語には、「お手数」の訳にぴったり当てはまる単語がありません。そのため、海外の人にとっては「同じ『お手数』なのにどうして意味が全然違うの?」と混乱してしまうことも少なくないのです。

「お手数」を使った日本語を英語に変換するときは、状況やニュアンスに応じて明確に表現を使い分ける必要があります。

下記の2つの例を参考に、「お手数おかけしてすみません」の違いを確認してみましょう。

  • 「ありがとう」の意味を込めて言うとき

日本語では「すみません」とお礼を言ってもなんの問題もありませんが、英語では、”Thank you”を使ってはっきりと感謝を述べないと伝わらないので注意しましょう。

Aさん
Thank you for your help all the time.
訳)お手数かけしてすみません(いつもありがとうございます)。

 

  • 「申し訳ない」という意味を込めて言うとき

察したり含みを持たせたりすることなく、言葉通りに気持ちを伝え合う英語のコミュニケーションにおいて、謝るときは”apologize”を使ってしっかりと謝罪を述べる必要があります。

Aさん
I apologize for bothering you.
訳)お手数おかけしてすみません(手を煩わせてしまい申し訳ございません)。

日本語では同じ「お手数」を使った表現でも、英語にすると混乱や誤解を招いてしまいがちです。「お手数」の直訳は、英語にはないこと、状況によって正しく使い分けることが大切だということをしっかり覚えておきましょう。

「お手数」を意味するいろいろな英語表現

「お手数」を意味するいろいろな英語表現

日本ならではの言い回しである「お手数」を英語で正しく伝えるための表現を紹介します。

相手への気遣いからよく使われるクッション言葉をはじめ、感謝と謝罪の気持ちを込めた表現を例文で確認していきましょう。

クッション言葉の「お手数ですが」

「お手数ですが」は、忙しそうな相手へ声をかけるときや目上の人に対する敬意を込めてよく使われるクッション言葉です。

ぴったり当てはまる英語はないので、”I am sorry~”や”I apologize~”、”Excuse me~”を使って気遣いの気持ちを表現します。

Aさん
I’m very sorry to trouble you, but please confirm them.
訳)お手数ですがご確認よろしくお願いいたします。
Aさん
I am sorry to trouble you, but would you explain a little more in detail?
訳)お手数ですが、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか?
Aさん
Sorry to bother you, but could you call me back later?
訳)お手数ですが、後ほど折り返しのご連絡をいただけると幸いです。
Aさん
I apologize for the inconvenience. It would be great if you can do this for me.
訳)ご迷惑おかけしますが、ご対応いただけると幸いです。
Aさん
Excuse me for the interruption, but can I ask you a quick question.
訳)お手数ですが、ひとつだけ質問してもよろしいでしょうか?

「お手数ですが」とともによく使われる「恐れ入りますが」を表すときは、”I’m afraid~”や”Would[Could] you~?”を使った言い方もあります。

Aさん
I’m afraid I won’t be able to attend the seminar next week.
訳)恐れ入りますが、来週のセミナーには参加できそうにありません。
Aさん
Would you mind sending me that document?
訳)お手数ですが、そのファイルを送っていただけますか?
Aさん
If it’s not too much to ask, could you work on the correction shortly?
訳)ご無理でなければ、すぐに修正していただけるとありがたいです。

”This is hard for me to say~”は、初心者でもわかりやすく使いやすい表現なので覚えておくと便利です。

Aさん
This is hard for me to say, but I don’t think I’ll have time.
訳)非常に申し上げにくいのですが、時間があるとは思えません。

”With all due respect”は、相手の発言に対して反対の意見を言うときによく使われるフレーズで、ワンランク上のスマートな印象を与えてくれます。

Aさん
With all due respect, this isn’t what we asked for.
訳)恐れ入りますが、これは弊社が希望していたものと異なります。

謝罪を込めた「お手数おかけします」

「お手数をおかけして申し訳ございません」を伝える場合の「お手数」に合う英語はないので、はっきりと謝罪の言葉を使って表現しなければなりません。

Aさん
I’m sorry for your inconvenience caused by the change in specifications.
訳)仕様の変更でお手数をおかけいたします。
Aさん
We apologize for any inconvenience caused by our mistake.
訳)弊社のミスによりお手数をおかけしてしまい申し訳ございません。

なお、迷惑をかけたことを謝罪するときは、”terribly”や”sincerely”を使って「本当に申し訳ない」の気持ちを強調して伝えます。

Aさん
I am terribly sorry. I won’t let this happen again.
訳)お手数おかけして本当に申し訳ありません。二度とこのようなことが起きないようにいたします。

また、謝罪を受け入れてもらいたいという意味で、下記のような言い方をするときもあります。

Aさん
I hope that you accept my deepest apologies. I will replace it immediately.
訳)大変申し訳ございません、すぐに交換いたします。

感謝を込めた「お手数おかけします」

「お手数をおかけしました」には、感謝と謝罪の意味が含まれています。日本人だとなんの違和感もないように思われる言葉ですが、海外の人にとっては、解釈しづらく、混乱を招いてしまうことも少なくありません。

感謝の気持ちを表す「お手数おかけしました」と英語で言いたいときは、はっきりと”Thank you”もしくは”I appreciate”を使って表現しましょう。

Aさん
I appreciate your time in advance.
訳)お時間をいただきありがとうございました。
Aさん
Thank you for helping at such a busy time.
訳)お忙しいところお手伝いいただき、ありがとうございました。

感謝の意味の「お手数おかけしました」と似た意味で「恐縮です」と言いたいときは、下記のような表現も使えます。

Aさん
Thank you! I am really grateful.
訳)本当にありがとうございます。誠に恐縮です。
Aさん
It’s so kind of you.
訳)親切にしていただき大変恐縮です。

まとめ

日本語特有の言い回し「お手数」を意味するさまざまな英語表現を紹介しました。

英語には「お手数」を一言で表す単語がないので、状況に応じていろいろな表現を使い分けて日本語に近い意味を表す必要があります。

今回紹介した表現を覚えておくと、ビジネスシーンではもちろん、普段の生活においても、言葉遣いが丁寧な人、気遣いのできるちゃんとした人という印象を持ってもらえます。

シンプルでストレートな英語と思いやりと尊敬が込められた日本語。どちらも言語ならではの良さを生かして、上手に使いこなせるようになれるといいですね。