今回のテーマは「救世主」です。英語で救世主を表す言葉には大きく2種類ありますが、それぞれの違いについて、詳しく確認していきます。
また、記事の後半ではより使いやすい、救世主を意味するスラング表現についても解説します。これを読めば、英語でも場面に合わせて適切な「救世主」を使い分けられるようになるはずです。
それでは、早速始めていきましょう!
「救世主」は英語で何て言う?
「救世主」は英語で “savior(saviour)”、あるいは “messiah” と言います。
一括りに「救世主」といっても、これら2つの表現はニュアンスが異なります。それぞれの違いについて、次の見出しから詳しく確認していきましょう。
救世主①:savior(saviour)
「救世主」の意味で最もよく使われるのは、“savior(saviour)” という表現です。発音記号は【ˈseɪviər】で、カタカナだと「セイヴィアー」のように聞こえます。
綴りに savior と saviour の2種類がありますが、savior は主にアメリカ英語で、saviour は主にイギリス英語で使用される傾向にあります。
savior はもともと「救う(save)人(-or)」が原義になっています。そのため、文字通り命の恩人的な人に対しても使えますが、スラング的にカジュアルな場面でもしばしば使用されます。
He is my savior.
訳)彼は私の救世主だ。
なお、the Saviour と大文字で表記する場合は、「誰もが知る “例の救世主”」というニュアンスで、キリスト教におけるイエスキリストを指すことも多いです。この場合、ラテン語に近い綴りであることから、イギリス式の Saviour の綴りの方が好んで使用されます。
savior とsaver は何が違う?
savior と似た単語に saver がありますが、こちらは通常「節約家」や「倹約家」を表します。
save はもともと「救う」という意味ですが、そこから発展して「(危険などから)保護する、守る」という意味になりました。その後、人以外にも使われるようになり、「お金を保護する」ことから「節約、倹約」という意味になった次第です。
savior とsaver に使われている -or と -er はどちらも「○○する人、物」の意味で、”player” や “doctor” など、通常はいずれか一方が使われます。
今回のように、ニュアンスに応じて -or と -er の両方が使い分けられるのは、非常に珍しいケースだといえるでしょう。
救世主②:messiah
「救世主」を英語で表す際、”messiah” という表現もよく使われます。発音記号は【məˈsaɪə】で、カタカナだと「メサイア」と聞こえます。
messiah はもともと古代ヘブライ語で「油を注がれる者」を意味していました。その時代、王や祭司などを決める重要な儀式において、頭にオリーブの油を注いでいたようです。そこから、重要な任を与えられた人を比喩的に messiah と呼ぶようになりました。
そして、後世に語り継がれるほどに重要な任を与えられ、多くの人々に信仰された「イエスキリスト」が誕生したことにより、それ以降は特に「救世主」を指して messiah が使われるようになりました。ちなみに、キリストを表す “Christ” も、もともとはギリシア語で「油を注がれる者」を意味する言葉に由来しています。
そのため、messiah は非常に宗教色の強い表現です。英語圏はキリスト教が下地にあるため、スラング的に messiah が使われることが多いですが、無宗教の人が使うには少々レベルの高い表現だといえるでしょう。
In Christianity, the Messiah is Jesus Christ.
訳)キリスト教における救世主は、イエス・キリストです。
「メシア」という読み方は英語じゃない?
日本語では救世主の意味で「メシア」と呼ぶことがありますが、これは前述の messiah をヘブライ語に忠実に発音したものです。
そのため、英語で同様に「メシア」と発音しても通じない可能性が高いので注意しましょう。
Jesus(ジーザス)は救世主じゃない?
キリスト教における救世主である「イエスキリスト」を英語表記すると “Jesus Christ” となります。そこから、Jesus 単体でも「救世主」の意味にはなるのですが、実際は「おお神よ」と嘆きや苦しみ、怒り、失望などを表現する際にスラング的によく使われます。
そのため、救世主という意味で使うと誤解に繋がりかねないので、なるべく使わない方がよいでしょう。
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救世主を表すスラング表現
ここからは、日常会話でスラング的に「救世主」を表す英語表現として “lifesaver”、”hero”、”the one” の3種類をご紹介します。
それぞれのニュアンスを理解して、日々の会話に取り入れていきましょう。
lifesaver
“lifesaver(ライフセイヴァー)” は、「命の恩人」というニュアンスで使われるスラング表現です。
先述の通り、saver 単体だと「節約家、倹約家」という意味になりがちですが、“○○ saver” とすれば、「○○を救う人」の意味になります。つまり、lifesaver で「命を救う人」ということです。
実際に命を救われた場合だけでなく、比喩的にも使える便利な表現だといえるでしょう。
You saved me when I was about to be hit by a car. You are a lifesaver.
訳)自動車に轢かれそうになった私を助けてくれて、あなたは救世主です。
hero
“hero(ヒーロー)” は、「英雄、主人公」というニュアンスで使われるスラング表現です。
日本語でもカタカナ英語で「ヒーロー」として定着していますが、イメージとしては漫画やRPGゲームの主人公を想像してもらえればよいでしょう。悪者から世界を救うように、かっこよく助けてくれた恩人に対して使える表現です。また、messiah などと違って宗教色も薄いので、より気兼ねなく使えるでしょう。
You didn’t succumb to the department head’s harassment; you are the hero of this department.
訳)部長のパワハラに屈しなかったあなたは、この部署の救世主です。
the one
“the one” は、「例の人」というニュアンスで使われるスラング表現です。
日本語でも、自分を助けてくれた人に敬意を込めて「あのお方」などと言うことがありますが、それと同じようなイメージです。敢えて名前などを出さず婉曲的に表現しています。
ただし、the one は文脈によって「意中の人、恋人」という意味にもなるので、使いどころには注意が必要です。
You are the one.
訳)君は救世主だ。
Huh, am I being proposed to right now?
訳)え、俺って今告られてる?
まとめ
今回は「救世主」を表す英語表現について、詳しく確認してきました。
「救世主」は英語で “savior” を使って表現するのが一般的です。“messiah” もよく使われますが、こちらはキリスト教が下地になった表現なので使用シーンには注意しましょう。
また、日常会話でスラング的に言う際は、”life saver” や “hero”、”the one” などが使われることもあります。今回ご紹介したことを参考に、英語でも「救世主」をニュアンスに合わせて使い分けていきましょう。
それでは、これからも楽しい英語学習を。
Let’s enjoy!!