英語の動詞の中には、人や物に対して「~させる」という意味を持つ使役動詞と呼ばれるものがあります。これを自由自在に使いこなせるようになれば、表現の幅が大きく広がりますので、少しでも英語力をアップさせたいという方は、ぜひ使い方をマスターしておくと良いでしょう。ここでは、代表的な使役動詞の意味や使い方を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

makeの意味と使い方

makeは、一般動詞としては「~を作る」や「~をする」といった意味で用いられる単語ですが、使役動詞として使った場合には、「~させる」という意味になります。

正しい用法と誤った用法

使役動詞のmakeを能動態の文章で使用する場合には、「主語+make+目的語+原型不定詞」という順番になります。この場合のmakeは、前述したように「~させる」という意味になりますが、そのニュアンスは無理強いをするというものです。そのため、嫌がる娘に対して母親が読書をすることを強制したというような場合に、Aさんのような使い方をするのが正しい用法となります。一方、Bさんのような使い方は正しくありません。夫が妻に世話を強制するのは違和感があるからです。もしこのような文章を書いたら、ドメスティックバイオレンスについて記載しているのだと思われてしまうでしょう。

Aさん
The mother made her daughter read the book.
訳)母親は娘に本を読ませた
Bさん
The husband made his wife care about him.
訳)夫は妻に自分の世話をさせた

受動態で用いるmake

使役動詞のmakeは、受動態の文章で使用することも可能であり、その場合の文法は、「主語+be動詞+made+to+動詞の原型」となります。動詞の前にtoを入れるというのを忘れがちですので、しっかりと覚えておくようにしましょう。例えば、先ほどの母親が娘に本を読ませたという例文を受動態にすると、下記となります。

Aさん
The daughter was made to read the book by her mother.

事物を主語にする場合

makeは、人以外が主語になる場合に使用することも可能です。その場合の用法は、「主語+make+目的語+原型不定詞」となります。

Aさん
The earthquake made the house break.
訳)地震によって家が壊れた

letの意味と使い方

letは基本的に使役動詞として用いられる単語です。日本語にすると、「~に~させる」という意味になりますが、強制的な意味合いがあるmakeと違って、letの場合は、望んでいることを認めるというニュアンスがより強くなります。

正しい用法と誤った用法

使役動詞のletは、「主語∔let+目的語+原型不定詞」という文脈で使用されます。そのため、Aさんが本来の正しい用法です。一方、Bさんの使い方は正しくありません。生徒が自ら廊下に立つのを望むというのは考えられないので、この場合はletではなく、無理やり立たせたというニュアンスになるmakeを使うのが正解です。

Aさん
I will let my ​daughter go to the park if she would like to do so.
訳)もし本人が望むのであれば、私は娘に公園に行かせてやる

Bさん
The teacher let the student stand in the corridor.
訳)先生はその生徒を廊下に立たせた

letを使った慣用表現

使役動詞のletを使った慣用表現として良く用いられるのが、歌のタイトルとしても知られる「let it be」というものです。これは、「何とかなるさ」、「なすがままに」といった意味で、この一言だけで用いられることが多い表現です。ふとした時に口走れるようになっておくと、「この人は英語ができるな」と思ってもらえますので、ぜひ身に着けておくと良いでしょう。

getの意味と使い方

getは一般動詞として使う場合には、「獲得する」という意味合いです。「~をゲットした」といったように和製英語としてそのまま使われるケースも少なくありません。このgetは、to不定詞と組み合わせることによって使役動詞として用いることもできます。get単独では使役動詞にならないという点に注意しなければなりません。

正しい用法と誤った用法

使役動詞のgetは、「主語∔get+目的語+to不定詞」という文脈で用いられ、「~に~させる」や「~に~してもらう」といった意味となります。makeやletのように強制や許可といった強いニュアンスは持っておらず、どちらかというと当然のことをやってもらったというような中立的な意味合いで用いられます。似たような意味合いで用いられる使役動詞として、次に取り上げるhaveがありますが、それと比べるとgetの方が「(お願いして)~してもらう」というニュアンスが色濃く出ます。一方、無理強いしたような場合には、getを使うのは正しくないので、makeなどの他の使役動詞を用いた方がよいでしょう。

Aさん
I got my father to drive to the station.
訳)父親に(お願いして)駅まで車で送ってもらった

過去分詞との組み合わせ

getの目的語が人以外になる場合には、to不定詞の代わりに過去分詞を用いるのが基本です。具体的には、「主語∔get+目的語(人以外)+過去分詞」という流れになります。

Aさん
I got my phone repaired.
訳)携帯電話を修理してもらった

もし、「I got my phone to repair.」と言ってしまうと、「携帯電話に修理をさせた」というおかしな意味になってしまうので、間違えないように注意しなければなりません。

なお、getを過去分詞と組み合わせると、「~を~してもらう」という使役の意味のほかに、「~を~される」という被害の意味や、「~を~してしまう」という完了の意味にもなります。

Aさん
I got my wallet stolen.
訳)財布が盗まれた

Aさん
I need to get the homework done by dinner.
訳)夕食までに宿題を終わらせなければならない

haveの意味と使い方

一般動詞としてのhaveは、「~を持つ」という意味で用いられますが、使役動詞として使うことも可能です。

正しい用法と誤った用法

使役動詞としてのhaveは、「主語∔have + 目的語 + 原型不定詞」という文脈で用いられ、「~に~させる」や「~に~してもらう」といった意味になります。getと同じように、強制や許可といった強いニュアンスは含まない中立的な文脈で使用される単語ですが、getと違うのは、haveの方が当然のことをやってもらうという意味合いがより強いという点にあります。

Aさん
I had my mother take me to the clinic when I caught a cold.
訳)風邪をひいたときに母親に病院に連れて行ってもらった

母親が病気の娘を病院に連れて行くのはごく自然なことですが、もし嫌がる母親に無理やり頼み込んで病院に連れて行ってもらったというニュアンスを出したいのであれば、haveを使うのは正しくありません。その場合には、haveに変えて、makeを使った方が良いでしょう。

過去分詞との組み合わせ

haveは、getと同じく、過去分詞と組み合わせて、使役や被害、完了を表すことが可能です。例えば、「先ほど財布を盗まれた」という場合の表現として「I got my wallet stolen」という文章を紹介しましたが、getの代わりにhaveを使って、「I had my wallet stolen.」と言い換えても同じ意味になります。

なお、haveと同じように、原型不定詞や過去分詞と組み合わせて使える動詞として知覚動詞があります。知覚動詞というのは、seeやhearのように、物事を知覚でとらえることを表現するために用いられる動詞で、原型不定詞と組み合わせると「~が~するのを見る/聞く」、過去分詞と組み合わせると「~が~されるのを見る/聞く」といった意味になります。こちらも使役動詞と併せて使いこなせるようにしておきましょう。

使役動詞が使えれば表現の幅が広がる

以上で見てきたように、代表的な使役動詞は、make、let、get、haveの4つしかありません。これらの使い方をマスターするだけで、英語の表現の幅は大きく広がりますので、なるべく効率的に英語力をアップさせたい場合には、まずはこの4つの単語を使いこなせるようにするとよいでしょう。ついでに知覚動詞も習得できれば、なおベターです。