「ブーストをかける」や「ブーストする」という言い方を聞いたことはありませんか?
カタカナ表記で日本語でも浸透している言葉ですが、本来の英語”boost”の意味を聞かれたら、正確に答えられる人はどのくらいいるでしょうか?

「ブースト」も”boost”も同じ意味と思われがちですが、じつは”boost”は名詞と動詞の2種類の使い方があり、用法によっていろんな意味と解釈を持つ単語です。

今回は、そんな意外と知られていない英単語“boost”の正しい意味と使い方をはじめ、カタカナの「ブースト」との違い、スラング表現について解説していきます。

 

“boost”の意味

"boost"の意味

“boost”は、日本語で使われる「ブースト」の意味だけではなく、ほかにもいろいろな意味を持っています。

  • 【名詞】
    押し上げ、後援、励まし、景気あおり、商品の景気づけ
    (値段の)つり上げ、(生産量の)増大・増加
  • 【動詞】
    (…を)押し上げる
    (…を)後押しする、強化する、宣伝する
    (値段を)つり上げる、(生産量を)増加する
    (士気や気力を)高める

参考:Weblio英和辞書

辞書には上記のようにたくさんの意味が載っているので、「判断に迷う」「なんだか難しい」と思ってしまう人もいるかもしれませんが、”boost”には複数の意味があるということをまずおさえておきましょう。

 

名詞「後援、励まし」

名詞として使われている”boost”は、「後援、励まし」という意味を表します。

英英辞典には以下のように定義されており、人に自信を与えたり、何かの目的のために役立てたりすることを指しています。

  • an improvement or increase, or an action that causes this
    改善や増加、またはそれを引き起こす行為
  • a push from below that lifts a person or thing
    人や物を持ち上げる下からの後押し
  • something that gives someone more confidence, or that helps something increase, improve, or become successful
    誰かに自信を与えるもの、または何かを増加、改善、または成功させるのに役立つもの

参考:
Cambridge Dictionary
Longman Dictionary of Contemporary English

【例文】

Aさん
The community will get a boost from a new mall.
訳)新しいショッピングモールができたことで、地域は活気づくことでしょう。
Aさん
Mike gave his friend Lisa a boost to overcome her difficulties.
訳)マイクは、友人のリサが壁を乗り越えられるよう後押ししました。
Aさん
Your strong and kind words gave me a boost.
訳)あなたの強くて優しい言葉が、わたしに勇気を与えてくれました。

 

動詞「押し上げる」

動詞”boost”の1つ目の意味は、「~を押し上げる」です。
物理的にものや人を下から上へ(後ろから前へ)押し上げたり、持ち上げたりすることを表します。

【例文】

Aさん
Henry’s father boosted him up over the fence.
訳)ヘンリーの父は、彼を押し上げて塀を越えさせました。
Aさん
Lily was boosted onto the stage by a special device.
訳)リリーは、特別な仕掛でステージに上げられました。
Aさん
Daniel’s powerful kick boosted him up to the surface.
訳)ダニエルの力強いキックは、彼を水面まで押し上げました。

 

動詞「後押しする、強化する、宣伝する」

動詞”boost”には、「(人を)後押しする」や「(ものを)宣伝する」といった意味もあります。
励ましの言葉をかけて誰かの背中を押してあげたり、広告や宣伝によって商品の販売を促進・強化したりするときに使われます。

【例文】

Aさん
David goes to the gym once every three days to boost his muscles.
訳)ディヴィッドは、筋力アップのため3日に1回はジムへ通っています。

Aさん
This activity is meant to boost their teamwork and open up new opportunities.
訳)この活動は、チームワークを高め、新たなチャンスを広げることを目的としています。
Aさん
The new advertisement campaign of his firm helped boost sales.
訳)彼の会社の新しい広告キャンペーンが、売上アップに貢献しました。

 

動詞「高める、元気にする」

動詞”boost”が表す3つ目の意味は、「(士気や気力を)高める」「元気にする」です。
意味合いとしては名詞の「励まし」に近く、メンタルの強化やモチベーションアップなどを表現したいときにぴったりの英語といえます。

【例文】

Aさん
We need to keep in-person social interaction with someone to boost our mental health.
訳)心の健康のためには、誰かと直接関わることが必要です。
Aさん
Regular exercise can help to boost your metabolism and improve your overall health.
訳)定期的に運動することは、新陳代謝を高め、健康全般の改善に役立ちます。
Aさん
Listening to music might be a great way to boost your motivation and get you through tough work.
訳)音楽を聴くことで、モチベーションが上がり、つらい仕事も乗り切れるかもしれません。

 

動詞「つり上げる、増加する」

動詞”boost”は、価格や数値、量などを「つり上げる」「増加する」という意味も持っています。
ガソリンなどのエネルギーや、売上といった金額の上昇・増加について説明するときに適した表現です。

【例文】

Aさん
The new service helped boost net profit by 15%.
訳)新しいサービスを導入したことで、純利益が15%も増加しました。
Aさん
Our charity seeks to boost donations through social media and events.
訳)わたしたちは、ソーシャルメディアやイベントを通して、寄付を増やすことを目指しています。
Aさん
Short pop-up events and lower operations costs would be one of the ways to boost revenue.
訳)短時間のポップアップイベントを開催したり、運営コストを削減したりすることは、収益を上げる方法のひとつでしょう。

 

“boost”と「ブースト」は全く同じではない

"boost"と「ブースト」は全く同じではない

カタカナでよく聞かれる日本語「ブースト」は、英語”boost”の意味と似てはいるものの、全く同じではないため、使い方によっては誤解を招いてしまうこともありえます。
英語の”boost”は、「後押しする、強化する、増加する」といった意味で使われる場合が多く、わたしたちが普段耳にする「ブースト」と混同しないよう注意が必要です。

「ブースト」は、分野によっていろいろな解釈をされるため、本来の英語の意味とまた少し違っているところもあります。

分野によって異なる「ブースト」の意味

IT分野 システムの処理能力を一時的に引き上げる
コンピューターに負荷をかけ強制的に能力を増大する
音楽分野 音量全体を押し上げる
低音や高音を調節、増強する
自動車分野 エンジン圧力を高める
スマホ・タブレット分野 使用頻度の低いアプリを削除する
写真や動画などのキャッシュデータを消去する
ゲーム分野 アイテムやスキルなどを使って、攻撃力をアップさせる

 

“boost”はスラングで「盗む」

"boost"はスラングで「盗む」

最後に、”boost”が持つスラングとしての意味を紹介したいと思います。

“boost”は、「盗む、万引きする」という意味で使われることがあります。
世界共通ではありませんが、アメリカ英語ではよく聞くスラングなので覚えておくと役立ちます。

なお、”boost”のはっきりとした語源はわかっていませんが、一説ではドイツ語の”busten”(破壊する)や古英語”boosten”(脅迫する)に由来するともいわれています。
「破壊」や「脅迫」などの意味から連想すると、スラングとしての「盗む」という悪い意味も理解しやすいのではないでしょうか。

【例文】

Aさん
Jacob was arrested for boosting cars.
訳)ジェイコブは、車を盗んで逮捕されました。
Aさん
Someone boosted my wallet on the train.
訳)電車の中で、誰かが私の財布を盗りました。

 

まとめ

わたしたちが意外と知らない英単語”boost”について、正しい意味と使い方、さらにカタカナ表記の「ブースト」との違い、アメリカ英語でのスラング表現を紹介しました。

“boost”には、名詞と動詞2通りの使い方があり、用法によってさまざまな意味があります。
カタカナで日本語として浸透してしまっている英語は、つい日本語と同じように使ってしまいがちです。

後押しや励ましだけでなく、宣伝や強化、数の増加などいろいろな意味を持つ”boost”。
スラングとしては、盗みや万引きといった意味まであり、一度で覚えるのは難しいかもしれません。
今回紹介した例文を参考に、ひとつひとつの意味をしっかり理解して、正しく使いこなせるようになっていきましょう。

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