この世に生を受けて、やがて10年になるこの年齢、「2分の1成人式」という言葉があるように、もうそろそろイモムシが蝶へ変わる時期かもしれません。

思春期に入る前の微妙な年ごろの子供達は、どんな発達をして、親はどういう風に対応したらいいのか・・・言葉のアプローチや海外の子育て情報を交えながら、考えてみましょう!

身体的特徴

身長が伸び、体重も増えて内臓器官の成熟とともに、体の変化が表れてくる

このころになると、男子は筋肉質のがっしりした体に、女子は丸みを帯びた女性らしい体へと変化し始めます。学童がなくなるせいか、家庭で過ごすことが増え、だらだらとおやつを食べる癖がつく子どもが増え、それが肥満につながる場合もあります。

このころから肥満体質になってしまうと、ゆくゆく成人病予備軍になってしまう恐れがあるので、食生活や運動面を見直してみましょう。

  • 肥満・・・obesity
  • 成人病・・・lifestyle diseases

運動能力がほぼ確実になり、敏捷性、技巧性に優れてくる

10~12歳ごろは、子供の身体能力、運動能力が著しく発達する時期で、これを「ゴールデンエイジ」といいます。この時期に経験するさまざまな動作によって脳が刺激され、運動神経も発達していきます。具体的に言うと、この時期の子供は初めて見る動作でも直感で習得する能力、「即座の習得」ができるのです。

そしてこの時期に習得した動作は、大人になっても落ちないという特徴があるようです。例えば、自転車に乗れる、サッカーのリフティングができる・・・などはこの時期を逃すと、なかなか難しいというのです。このゴールデンエイジの時期に、たくさんの種類のスポーツを経験させることが大切です!

体力がついてくるとともに、生活習慣の基本が崩れることがある

体力がついてくることで、長く起きていられるようになるうえ、あまり運動しないで室内で過ごしているとエネルギーが余ってしまい、結果ゲームをしたり、スマホなどを見たりして生活のリズムが狂ってしまう子どもも見られます。

夜更かしをする、朝起きられない、朝食を食べない、集中力がなくなりボーッとしてしまう・・・などの悪循環を起こしがちです。日中しっかり運動させ、早寝早起きさせるなどの生活習慣を見直してみるのもいいでしょう。

  • 生活習慣・・・lifestyle habit

情緒的発達

情緒的発達

自然や宇宙に興味を持つ

このころの年齢は、急に知性が発達し自然や宇宙、社会現象などに興味を持つようになります。このような時期に多くの自然体験や経験が、感動したり共感したりする感情を生み出し、探求心を育てることになります。

最近流行りのキャンプなどに参加させ、自然に触れ、ネットがない社会体験をさせるのは、生きる知恵もつき、価値のある経験になるのではないでしょうか?

  • 社会現象・・・social phenomenon
  • 自然現象・・・natural phenomenon

10歳の壁

9歳の発達の記事でも触れましたが。9歳、10歳にぶつかる壁は年齢とともに少しづつですが変化していきます。

  • 相手に対して嫉妬心を感じるようになる。

9歳ごろから自分より優れている友達に対して、劣等感を持ち、それが「嫉妬心」へと変化していきます。ネガティヴな感情から、相手を攻撃したり、または無視をする、ほかの友達に悪いうわさを流すなどの行動に出ることがあります。

本音と建前が分かるようになってくる

幼児期や、小学校低学年の頃は、思ったことを口にする、いわゆる「本音」を言っても周りは許してくれますね。しかし、中学年以降になると、本音ばかり言っていては人間関係がうまくいかないことに気づいてきます。

建前、それはその場をスムーズに、雰囲気を崩さないようにするための体外に向けた小さな「嘘」といえるかもしれません。特に日本では、相手を傷つけないために、大人も必要とする社会的スキルであり、それを見て過ごしている子供たちがその意味を理解していくのです。

例えば、何かプレゼントをもらって、自分が好きでもないものだったとしても、「わあ、ありがとう!これ欲しかったんだ!」というと、その場は気持ちよく過ごせる、というような日本特有の社会的スキルを、この年頃で身に着けていくのです。

友達の本心がわかりにくくなり、「私は嫌われているんじゃないかな?」という不安感を持つことがあります。このように、「9歳の壁」「10歳の壁」は、人間関係に悩んだり、肯定的な感情と否定的な感情が入り乱れ、葛藤する気持ちを抱えるようになり、時としてイラついて反抗的な態度をとる時期でもあります。

親はどうしたらいい?

「そんなことで悩むな!」「だからだめなんだよ」など否定をしてしまうと、子どもはますます「自分はダメなんだ」とういう劣等感を植え付けられ、自信を喪失してしまいます。

まず、子供の気持ちに寄り添い、「共感」をしてあげること。「そういうこともあるよね。ママが子供の頃もそんなことがあったな」と共感してもらうことで、安心感が生まれます。そして、それが自分の存在価値につながるのです。そして共感した上で、その子が出来そうな解決策を提案してあげるといいでしょう。

ここで、「それだったらママが先生に言ってあげる!」と言ってしまったら、せっかくの自立心が育たなくなってしまいますね。親としては心配でしょうが、できるだけ自分で解決できるアドバイスをしてあげましょう。

もちろん、深刻ないじめだったり、不登校につながるような問題があったら別ですが、必ず親が味方している、という安心感を持たせてあげましょう。お家では、子どもと一緒に本を読んでみる、お手伝いをしてもらって感謝する、などを積み重ね、「自分はできる」という自分の存在価値を肯定し、ありのままの自分を好きになれるように、大人が働きかけてあげることがこの「9,10歳の壁」を「飛躍の壁」に変えるカギかもしれません!

発達障害とは?

近年、親の悩みの第一に挙げられるのに「子供の発達障害」があります。ちょっと落ち着きがない、内気である、ということから、やみくもに「発達障害」のレッテルを張ることは問題とは思いますが、逆に発達障害を気づかずに、大人になって社会的生活が出来ないなどの大きな問題になる前にサポートすることが大切になります。

発達障害とは、脳機能の発達のアンバランスにより、行動面・情緒面に様々な特徴が表れ、そのために生活上の困難を抱える状態を言います。代表的な発達障害として

  • ・注意欠陥・多動症(ADHD)
  • ・学習障害(SLD)
  • ・自閉スペクトラム症(ASD)

などがあげられます。
早めに気づくことでその子に合った環境を整え、専門家のアドバイスを通して、療育をすることによって、生活上の困難さを減らすことが出来ます。

また、ほかの子と違うことで自信を失いがちの子供も、自分の得意なことを伸ばしていくことで、自分らしく生きていける道を見出せるようです。そのためにも発達面で心配なことがあったら、周囲のサポート機関や医療機関に相談しましょう。

海外の子育て

海外の子育て

イギリスの叱り方

イギリスは、学校ごとに「𠮟るべき行為」のガイドラインがあります。これは、各学校における「いけないこと」を決めているというのです。そして、𠮟り方にも段階があり、軽い注意(reminder)、それでも改善されない場合は警告(warning)、その後何回警告を受けたか、というように、グリーン→アンバー→レッドの3種類のカードが順に渡されます。さすがサッカー発祥の地、イギリスならではのシステムですね!

フィンランドの場合

フィンランドでは、普段から親子のコミュニケーションの時間を多くとり、話し合うことが多いため、しつけもとことん話し合う形が多いようです。特に騒がない、大きな声を出さない、というしつけがなされているため、叱るときも親も自分の子だからと言って、大声で𠮟りつけることはタブーとされているようです。ちょっと耳が痛い話ですね!

ドイツは10歳で人生が決まる?

ドイツはいわゆる「受験」の制度はありません。ドイツの小学校は「基礎学校」といって、4年制です。そしてその後、ドイツでは「進路の選別」ともいえるものが小学校卒業後に行われて、3つのコース

  • 基幹学校
    5年制。卒業後、職業訓練を受けながら働く、昔でいう中卒就職などのイメージ
  • 実科学校
    6年制。卒業後、上級専門学校に進んで職業教育を受ける。イメージは工業・商業高校から専門学校へ進学するパターン。
  • ギムナジウム
    8、9年制。卒業後、大学に入学する。中高一貫校から大学進学をするイメージ

に分かれます。
この3つのコースに分かれることが、その後の進路、いわゆる人生が大きく変わるというのです。

例えば、基幹学校の生徒が大学に入学する資格はなく、もし大学に行きたいと思うなら、まず基幹学校でいい成績を取り、実科学校に編入し、そして実科学校を卒業した後でギムナジウムに編入というプロセスが必要になります。

つまり、小学校の時の成績や、自分が将来どんな道に進みたいか、で進路が決まるわけですが、実際のところは親の学歴や職業に左右されていることが多いようです。小学生でも成績が悪いと留年する制度があったり、ギムナジウムに進学しても、授業についていけなければ実科学校に編入させられることもあると言います。

受験はないにしろ、「行きたい学校に入りました」であとは勉強しなくなるような日本の制度とは大きく違いますし、逆に厳しいシステムだと言えるかもしれませんね。10歳くらいで将来を考えなければならない、というのも賛否両論あるようです。

まとめ

心も体も大人に近くなり、手はかからなくなったものの、精神的な葛藤が始まり、思ってもないような言動に出たりして、親も衝撃を受けてしまい、感情的になってしまいがちですね。

現代は情報も氾濫し、子供たちの感情も乱れたり、不安が多い中でのこの年齢の変化に親は寄り添い、共感し、できることをほめて自己肯定感を持たせ、自分はこの世に無まれてきた無二の存在だとわかってもらえるように向き合いたいものです。